#4.
患者中⼼の医療技法 2.全⼈的に理解する 1.健康・疾患・病いの経験を探る てがかり・きっかけ Disease 疾患 健康 Illness 感情・解釈 影響・期待 病歴・診察 検査 3.共通の理解基盤を ⾒出す 問題 ゴール 役割 統合していく ⼈ 近位コンテクスト Health 意味・⽬標 病い 相互意思決定 遠位コンテクスト 個⼈(Person) ・disease, illness, health ・発達 ・スピリチュアリティ ・個⼈と家族ライフサイクル 近位コンテクスト ・家族 ・経済的安定 ・教育 ・雇⽤ ・趣味 ・社会サポート 遠位コンテクスト ・コミュニティ ・⽂化 ・経済 ・医療制度 ・社会歴史 ・地理 ・メディア ・医療制度 ・エコシステム (⾃然環境・気候・気象など) 4.患者・医師関係を強化する Stewart M, et al. Patient-Centered Medicine: Transforming the clinical method. 3rd ed. Radicliffe Publishing, 2013.より引⽤・改変(岡⽥唯男 翻案)
#5.
健康(Health)とは︖ 1. 健康・疾患・病いの経験を探る Ø 健康の定義は時代によってさまざま →時代とともにより 主観性・個別性 を重視している 病気の有無 ▼ 精神的・社会的に満たされた状態 ▼ ⽣活の資源 ▼ 環境に適応できる⼒ てがかり・きっかけ Disease Illness 感情・解釈 影響・期待 病歴・診察 検査 Health 意味・⽬標 Ø その⼈にとっての ⽣きがい・意味・⽬的 は何だろう︖ 「私は毎⽇元気に仕事に⾏けていたら健康です」という⼈もいれば、 「毎⽇晩酌が出来れば健康やわ」という⼈もいると思います → これが個⼈の「健康観」です 統合していく
#6.
疾患(Disease)とは︖ • 〇⽇前からこの症状で、聴診したらこういう⾳が聞こえるな… • 検査の結果は⾎液検査が〇〇で、レントゲンが〇〇になっているなぁ • 〇〇症候群や〇病があるのかもしれないな • 精神的なストレスも増悪に関わっていそうだな • 仕事も原因になっているかもしれない… 1. 健康・疾患・病いの経験を探る てがかり・きっかけ Disease Illness 感情・解釈 影響・期待 病歴・診察 検査 Health 意味・⽬標 医療者は病歴や診察・検査などから 病気を推測したり、 今後の治療を考えたりしますよね 統合していく
#7.
病い(Illness)とは︖ • すごく熱が出てて怖いな。インフルエンザだったらどうしよう︖ • はやく熱を下げて欲しい。検査とかはあとでもいいから… • 前に家族がインフルエンザで倒れたことがあるんだよな。 家族に移したら嫌だなぁ。 • 仕事も⻑いこと休まないといけないけど、そんなに休んでいられないよ… 1. 健康・疾患・病いの経験を探る てがかり・きっかけ Disease Illness 感情・解釈 影響・期待 病歴・診察 検査 Health 意味・⽬標 患者さんは、 病院にいろいろな想いを抱いて 受診されますよね 統合していく
#8.
病い(Illness)の⼿掛かり︕ 1. 健康・疾患・病いの経験を探る 「かきかえ(FIFE)」︕ か き か え 感情 • • • どんな感情を抱いているのか︖ 話を「よく聴いて」どう想っているのか探ってみよう︕ (不安なのか︖怒っているのか︖など) 期待 • • • 何を期待して(病院に来て)いるのか︖ 「何か、病院でしたい検査などはありますか︖」 (検査をしてほしい、話をきいてほしい、など) 解釈 • • • 何を期待病気に対してどんな解釈モデルをしているのか︖ 「ご⾃⾝はどういう病気が⼼配ですか︖」 (インフルエンザだと思う︕癌に違いない︕など) 影響 • • • ⽣活にどんな影響があるのか︖ 何に困っているのか︖ (仕事を休めない、⾞が運転できない、など)
#9.
1. 健康・疾患・病いの経験を探る Ø 以下を統合して考えていくことがここでは重要になります ü [健康] その⼈がどういうところに健康を⾒出しているのか ü [病い] その⼈が何を求めて受診したのか ü [疾患] 考えられる疾患や検査・診断・治療 てがかり・きっかけ Disease Illness 感情・解釈 影響・期待 病歴・診察 検査 Health 意味・⽬標 Ø これらを通して⾒ると、患者さんごとに必ずしも決まった検査・治療が あるわけではなく、個別の解釈が必要 になってくることが分かります 統合していく
#10.
2. 全人的に理解する 全⼈的な理解とは…︖ 疾患 Ø ⼀⾔でいうとその患者さんその⼈⾃⾝の「歴史」 Ø 個⼈の想いが直接的に関わっている要素と、 その⼈の歴史に関わってきた近い背景(近位コンテクスト)と 遠い背景(遠位コンテクスト)がある 病い 健康 ⼈ 近位コンテクスト 遠位コンテクスト 個⼈(Person) ・disease, illness, health ・発達 ・スピリチュアリティ ・個⼈と家族ライフサイクル 近位コンテクスト ・家族 ・経済的安定 ・教育 ・雇⽤ ・趣味 ・社会サポート 遠位コンテクスト ・コミュニティ ・⽂化 ・経済 ・医療制度 ・社会歴史 ・地理 ・メディア ・医療制度 ・エコシステム (⾃然環境・気候・気象など)
#11.
2. 全人的に理解する 近位コンテクスト Ø 個⼈の疾患・病い・健康に対する考え⽅、家族構成や家族のライフサイクルのどの位置にいて発達課題が どうか…など、個⼈個⼈によってさまざまであり、それを形作るのが「家族」であり「地域」である Ø つまり家族や仕事、趣味などに影響されてそういった想いが形作られる 遠位コンテクスト Ø 国の⽂化・医療制度・気候・メディアなどがそういった個⼈や家族、地域に(間接的に)影響している
#12.
3. 共通の理解基盤を見出す Ø 時には1. 2. と同時並⾏に、そして時には1. 2. に再度⽴ち返りつつ共通の理解基盤を⾒出していく Ø これまでの情報収集や分析を経て、 ü 受診している健康問題とは何か︖ゴールは︖ ü それぞれ(医師-患者)の役割は︖ ü 以上を各々(医師-患者)がどう考えているか︖ というところを深めていき、相互の意思決定に⾄るプロセスの部分であり、 最も重要な部分 と⾔える Ø こうして問題、ゴール、役割を共有して相互意思決定に臨む 3.共通の理解基盤を ⾒出す 問題 ゴール 役割 相互意思決定
#13.
3.共通の理解基盤を ⾒出す 4. 患者・医師関係を強化する Ø こうして 1〜3 のステップを経て、そして時には繰り返して、医師-患者関係を強化していく
#14.
Take Home Message Ø Disease (疾患) と Illness (病い) を交互に聞きながら本⼈の Health (健康観) を明らかにして、 その⼈の背景を意識しながら共通基盤を⾒出すことで医師-患者関係の結びつきは強くなり、 患者満⾜度の⾼い医療を⾏うことができる Ø Disease (疾患)、Illness (病い)、Health (健康観) は個別性が⾼く、個別の解釈が必要になる Ø 患者さんにも歴史があり、遠位近位コンテクストを背景として個⼈の思いが形成されている Ø 共通基盤を⾒出して相互意思決定し、患者・医師関係を強化していくことが⼤切である
#15.
患者中⼼のケアって︖ 〜患者中⼼の医療技法から考える〜 実践編 DIO🦌総合診療医 (Twitter:@generection1)
#16.
患者中⼼の医療技法(おさらい) 2.全⼈的に理解する 1.健康・疾患・病いの経験を探る てがかり・きっかけ Disease 疾患 健康 Illness 感情・解釈 影響・期待 病歴・診察 検査 3.共通の理解基盤を ⾒出す 問題 ゴール 役割 統合していく ⼈ 近位コンテクスト Health 意味・⽬標 病い 相互意思決定 遠位コンテクスト 個⼈(Person) ・disease, illness, health ・発達 ・スピリチュアリティ ・個⼈と家族ライフサイクル 近位コンテクスト ・家族 ・経済的安定 ・教育 ・雇⽤ ・趣味 ・社会サポート 遠位コンテクスト ・コミュニティ ・⽂化 ・経済 ・医療制度 ・社会歴史 ・地理 ・メディア ・医療制度 ・エコシステム (⾃然環境・気候・気象など) 4.患者・医師関係を強化する Stewart M, et al. Patient-Centered Medicine: Transforming the clinical method. 3rd ed. Radicliffe Publishing, 2013.より引⽤・改変(岡⽥唯男 翻案)
#17.
患者中心の医療技法 Patient ceentered clinical method(PCCM) Ø Disease (疾患) と Illness (病い) を交互に聞きながら本⼈の Health (健康観) を明らかにして、 その⼈の背景を意識しながら共通基盤を⾒出すことで医師-患者関係の結びつきは強くなり、 患者満⾜度の⾼い医療を⾏うことができる Ø Disease (疾患)、Illness (病い)、Health (健康観) は個別性が⾼く、個別の解釈が必要になる Ø 患者さんにも歴史があり、遠位近位コンテクストを背景として個⼈の思いが形成されている Ø 共通基盤を⾒出して相互意思決定し、患者・医師関係を強化していくことが⼤切である
#18.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例①> ⽥中さん(仮) 70歳男性 ü 畑仕事と孫のお世話が⽣きがいの⽣粋の⽇本⼈ ü あなたはいつも受診している診療所のスタッフです ü ⽥中さんは「畑仕事してるし元気元気︕」「健康診断︖親はずっと歳をとるまで元気だったから受け ない︕」「孫と野菜収穫して⼀緒に縁側に座って⾷べるのが楽しみだ︕」と仰られて、 ⾎圧のお薬だけ処⽅して世間話になることが多いです ü ⽥舎住まいで、新鮮な野菜・⾁・井⼾⽔などの環境で育ちました ある暑い夏の⽇、娘・孫の帰省中に、 畑仕事中にふらついたとのことで娘に連れられ受診しました
#19.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例①> • 熱中症かなぁ…(解釈) • 熱中症かな︖重症度はどうだろう︖ • 熱中症で倒れるとは、⽼いたもんだ。悲しいな(感情) • ⽔分摂ってたのかな︖他の病気はないだろうか︖ • 今年の夏は暑いってテレビでもやってたし、⽔分摂って • 眼球結膜が⾊が薄いような… 気を付けてたのに。早く点滴して帰りたい(希望) • あれ︖ Hb 5.6 mg/dL︕︖ • 娘に⽂句⾔われたらどうしよう、⼊院とかになったら 野菜収穫出来ないし嫌だ。絶対今⽇帰るぞ(影響) • 畑仕事が毎⽇できれば元気︕ Disease Illness 病歴・診察 検査 感情・解釈 影響・期待 Health 意味・⽬標
#20.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例①> その後… ü 健康な両親のもとで育った⽥中さんは、これまで健康診断を受けたことがありません ü ⾎液検査で予想外に Hb 低値で上部消化管出⾎の可能性があることが分かりました ü 胃がんの可能性が最も⾼く、医学的には早期に上部消化管内視鏡検査・治療が必要です もう点滴終わったら帰ってもいいだろ︖熱中症だろ︖ 畑の収穫時期なんだよ さて、あなたはどう声掛けをするでしょうか︖
#21.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例①> さらにその後… ü 胃がんの可能性を知った⽥中さんは、友⼈が胃がんで亡くなっていたことを思い出します ü 家族である娘は胃がんの検査・治療を説得しています ü しかし、やはり本⼈は孫と⼀緒に畑で収穫することを希望しています 背景 ⽇本はピロリ菌が多く、胃がんが多い国です 国⺠皆保険のおかげで治療費は⽐較的安く済みます また、例えば北欧であれば熱中症の⼼配はしなかったかもしれません さて、あなたならどうしますか︖
#22.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例①> Ø 検査については、何とか同意を得られました → 不幸中の幸いで、胃がんは ESD が可能であるレベルであることが分かりました Ø 本⼈との共通のゴール︓「孫との収穫が可能なうちに⼊院 → 退院を⽬指す」 → 以下のことがわかり、本⼈の同意を得て胃がんの ESD ⽬的に近くの病院に紹介としました ü その間は娘さん・娘婿さんが畑仕事を変わってくれる ü スムーズに退院出来れば、退院後に畑仕事が出来る可能性が⾼い Ø 退院後無事に孫と畑での野菜を収穫して楽しめた⽥中さんは、満⾜そうに、 「他のところも診てもらっておこうかな」と仰られ、健康診断を受けることにされました
#23.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例②> ⽊村さん(仮) 50歳⼥性 ü あなたはいつも受診している診療所のスタッフです ü 昔からとある遺伝病(ハンチントン病)で、うつ症状なども出現しており、症状緩和のために内服をした ほうが医学的には楽になると思われましたが、拒薬が激しく、内服薬は飲まないと⾔われていました ü 診療所には定期的に受診してくれています ü ⺟を⾃⾝が30歳のころにハンチントン病の悪化で亡くしており、昔から短命家系でした ある⽇、歩⾏が不安定になり、⾞いすで受診されました いつにも増して精神症状も悪化しているように⾒えます (普段から関係性を構築していた)あなたは、 もう少し「なぜ拒薬するのか︖」について PCCM を⽤いて診療を進めることにしました
#24.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例②> 1. 健康・疾患・病いの経験を探る • 2. 全⼈的に理解する 「⺟が亡くなった年齢に近づいてきて、⾃分も⻑⽣きできないのではと思っている。でも、内服も注射もした くない。それでも死にたくない。」 • 「病気は治らないのでしょう。それならばもう(薬を使っても)意味ないのではないですか︖」 • 「⼦供のころから、短命家系だったためジャンクフードなどは⾷べずに出来るだけ⾃然のものに触れて過ごし ていました。薬は⼈⼯物なので出来るだけ頼りたくないです。」 • 「動くのは難しくなってきても痛みがなく、出来るだけ⼈に頼らないようにしていきたい。親族も⼤変なので 迷惑をかけたくない」 このようなお話を聴取出来ました
#25.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例②> 3. 共通の理解基盤を⾒出す Ø 服薬を嫌がる理由を理解したあなたは、服薬をしない⼿段で⾝体的なサポートができるような ⼿法を考えていきました Ø あなたは介護申請をしつつ介護の⼿配をして、訪問診療に移⾏する準備などを 進めていくことにしました 3.共通の理解基盤を ⾒出す 問題 ゴール 役割 相互意思決定
#26.
患者中心の医療技法を使った診療を体験してみましょう! <事例②> その後… Ø 実は、受診を続けていたのは、 「ここなら対等な関係として診てくれるし、薬を強制されることもない」 というようなことを待合いで話していたということも分かりました Ø 患者の視点を聴くことで初めて薬を飲みたくない理由を理解でき、 病いの体験を聞いて全⼈的に理解する ことでうまく診療を継続出来た事例となったのでした
#27.
患者中心の医療技法、 なんとなくイメージできましたでしょうか? 「これって意味あるの…︖」 「いつも普通にやっていると思うけど…」 安⼼してください︕︕ エビデンスはしっかりあります︕︕
#28.
患者中心の医療技法の研究結果 Ø 患者中⼼の医療技法は体調不良や不安からの回復に繋がり、検査と専⾨医への紹介が少なくなった J Fam Pract. 2000 Sep;49(9):796-804. Ø 患者中⼼の医療技法によって検査費⽤の低下を認めた The Annals of Family Medicine September 2005, 3 (5) 415-421 Ø 患者中⼼ケアによって専⾨医受診率低下、⼊院率低下、検査数低下、1 年間の医療費低下を認めた J Am Board Fam Med. May-Jun 2011;24(3):229-39. Ø 患者中⼼の医療技法を使う医師に診療を受けた患者は医療費が削減した Patient Educ Couns. 2011 Oct;85(1):46-52.
#29.
Take Home Message Ø Disease (疾患) と Illness (病い) を交互に聞きながら本⼈の Health (健康観) を明らかにして、 その⼈の背景を意識しながら共通基盤を⾒出すことで医師-患者関係の結びつきは強くなり、 患者満⾜度の⾼い医療を⾏うことができる(患者中⼼の医療技法; PCCM) Ø PCCM を実際に実践することで考えるべき背景は実は多岐にわたっている Ø 患者中⼼の医療技法には様々な効果が⽰されており、医療費の低下や体調不良、不安からの回復 などが謳われている