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糖尿病患者の高血圧、脂質コントロール

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2022/5/13
舞浜 太郎

市中病院

高血圧、脂質異常症ともに治療開始のタイミングを遅らせないことが重要です。糖尿病患者の高血圧、神経障害進行例、脂質異常症で気を付けるべきことをまとめました。

◎目次

・Take Home Message

・糖尿病の治療目標を再確認しよう

・高血圧、脂質異常症を管理する意義

・糖尿病患者の高血圧の特徴

・糖尿病患者の降圧目標値

・糖尿病患者の降圧薬の選択

・降圧薬の糖尿病や脂質への影響

・降圧薬の糖尿病や脂質への影響

・生活習慣の改善とは

・糖尿病患者の脂質異常症の特徴

・糖尿病患者の脂質目標値

・糖尿病患者の脂質異常症治療

・脂質異常症の生活習慣のポイント

・高血圧や脂質異常症合併患者の糖尿病治療薬


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糖尿病患者の高血圧、脂質コントロール

  1. 糖尿病患者の高血圧、 脂質コントロール 舞浜太郎 日本糖尿病学会専門医

  2. Take Home Message • 高血圧、脂質異常症ともに治療開始のタイミングを遅らせない • 高血圧は早朝高血圧を起こしやすいため家庭血圧の測定を • 神経障害進行例では起立性低血圧に注意! • 脂質異常症は高TG血症、VLDLの増加で動脈硬化を促進しやすい • 合剤の使用でポリファーマシーを防ごう

  3. 糖尿病の治療目標を再確認しよう ✓ 糖尿病の治療目標:QOLを保つ、健康な人と変わらない寿命を確保する 血管合併症を防ぐために 血圧や脂質異常症のコントロールが必要

  4. 高血圧、脂質異常症を管理する意義 ✓ 冠動脈疾患では LDLコレステロール と TG(トリグリセリド)が危険因子 ✓ 脳卒中では 収縮期血圧 が危険因子 ✓ 厳格なコントロールを行うことで脳血管イベントは58%も抑制される研究結果も 糖尿病患者の特徴も入れていますので、普段の外来診療に役立ててください 血圧やコレステロールが高値でも経過観察を続けられている方もいるので、 治療を遅らせないように意識しましょう

  5. 糖尿病患者の高血圧の特徴 ✓ 血圧の日内リズムが障害され、夜間就寝中の血圧が低下しない ことが多い(non-dipper) ✓ 早朝高血圧を起こしやすく、心血管疾患のリスクになるといわれている ✓ 糖尿病性神経障害が進むと 起立性低血圧 を起こしやすくなる → 臥位高血圧のこともあるため注意 ✓ 非糖尿病患者の約2-3倍ほど多い 座位だけでなく、時々臥位や立位での血圧測定も有用 家庭血圧測定は必須

  6. 糖尿病患者の降圧目標値 血圧 140/90 mmHg 以上 内服開始 血圧 130-139/80-89 mmHg 生活習慣の改善で降圧が見込める 場合は1ヶ月後に再評価 ※3か月を超えない範囲で、生活習慣の改善による降圧を試しても良い 必須降圧目標値は 130/80 mmHg 未満 家庭血圧は 125/75 mmHg 未満

  7. 糖尿病患者の降圧薬の選択 ✓ ARB、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬が第一選択薬 ✓ 糖尿病腎症2期以上の場合はARBかACE阻害薬を 尿中微量アルブミン尿 30 mg/g・Cr 以上 ✓ 単剤でのコントロールが不十分であれば2剤を併用する 糖尿病患者のサイアザイド系利尿薬は、インスリン抵抗性の悪化や 尿酸上昇の副作用があるため第一選択薬には使用していません 使用する場合も少量にとどめることを忘れずに! 個人的には、3剤目には腎症進展例や心不全合併例では MR(ミネラルコルチコイド受容体)拮抗薬を使用することが多いです

  8. 降圧薬の糖尿病や脂質への影響 ARB ACE阻害薬 Ca拮抗薬 MR拮抗薬 糖尿病への 影響 インスリン抵抗性 改善 インスリン抵抗性 改善 インスリン抵抗性 改善 なし 脂質代謝への 影響 LDLコレステロール 低下 なし なし なし ✓ Ca拮抗薬などの配合 薬が豊富 付記事項 ✓ 高齢者やCKD患者で は腎機能の悪化や高 K血症に要注意 ✓ 副作用のひとつである 空咳は東アジア人に多 いとされ注意が必要 ✓ DPP-4阻害薬との併用 で血管神経性浮腫が増 加するとの報告がある ✓ 速効性ニフェジピンでは インスリン抵抗性を悪化 させるとの報告があるた め長時間作用型を用いる ✓ 高K血症や女性化乳房 などの性ホルモン異常 に注意

  9. 降圧薬の糖尿病や脂質への影響 利尿薬 糖尿病への 影響 脂質代謝への 影響 インスリン抵抗性悪化 インスリン分泌低下 TG上昇 β遮断薬 α1遮断薬 インスリン抵抗性悪化 インスリン抵抗性改善 LDLコレステロール上昇 TG上昇 LDLコレステロール低下 TG低下 ✓ 血管拡張性のβ遮断薬の場合は インスリン抵抗性改善、脂質代 付記事項 ✓ 悪影響を避けるために低用量 (常用量の1/2程度)にとどめる 謝への悪影響もみられない ✓ 低血糖を起こした場合に症状が マスクされ、遷延する可能性が あるため注意が必要 ✓ 神経障害のある患者では起立性 低血圧に注意

  10. 生活習慣の改善とは① 男:20-30 g/日、女:10-20 g/日  高血糖の改善  減塩  減量  アルコールは適量に(ただし血糖コントロール良好な場合)  運動習慣  禁煙 糖尿病患者は血圧の食塩感受性が亢進していることが多いため、 減塩指導の重要性が高いです 適度なアルコールは心血管疾患の発症を抑制させる可能性が 報告されていますが、日本人2型糖尿病患者では抑制効果が みられなかった点に注意です 血糖コントロールが良好、合併症が軽度、脂質代謝異常がない、 自制心がある方などは適量であれば許可をしています

  11. 生活習慣の改善とは② 男:20-30 g/日、女:10-20 g/日  高血糖の改善  減塩  減量  アルコールは適量に(ただし血糖コントロール良好な場合)  運動習慣  禁煙 喫煙は大血管障害、細小血管障害のリスク因子であるだけでなく、 脂質異常症、メタボリックシンドロームの発症リスクを上げます 禁煙指導は日々の外来で抜けがちなので意識しましょう

  12. 糖尿病患者の脂質異常症の特徴 ✓ 高TG血症 と 低HDLコレステロール血症 が特徴的 ✓ 内臓脂肪蓄積により small dense LDLを上昇させ動脈硬化を促進しやすい ✓ 内臓脂肪蓄積から生じるインスリン抵抗性が悪化要因のひとつ ✓ まずはLDLコレステロール高値が最優先 ガイドラインでも発症早期から脂質異常の管理を行うことが記載されています LDLコレステロールが高値の場合は、甲状腺機能低下症、家族性高コレステ ロール血症、ネフローゼ症候群などの疾患も鑑別しましょう

  13. 糖尿病患者の脂質目標値 単位:mg/dL LDL コレスロール 一次予防 二次予防 HDL コレステロール TG <120 高リスクなし <100 高リスクあり <70 non-HDL コレステロール <150 ≧40 <150 ✓ 冠動脈疾患の既往がある場合は二次予防 ✓ 以下は高リスク因子  非心原性脳梗塞  メタボリックシンドローム  末梢動脈疾患  喫煙  慢性腎臓病  主要危険因子の重複 <130 <100

  14. 糖尿病患者の脂質異常症治療① ✓ まずはLDLコレステロールを目標範囲内に ✓ はじめに使う薬剤はスタチン、セカンドラインとしてエゼチミブ → スタチン増量より併用の方がLDLコレステロールが下がる ✓ LDLコレステロールが目標範囲内となった場合はnon-HDLコレステロール値を確認 → 高リスク症例を見つけ出す スタチンでは新規糖尿病発症のリスク上昇もありますが、 動脈硬化性疾患の予防効果の方が大きいです

  15. 糖尿病患者の脂質異常症治療② ✓ TGを治療対象にする場合は空腹時採血で評価 ✓ TG高値の場合にはフィブラート系が、TG下げるほかに、HDLコレステロール上昇や small dense LDLの低下が期待できオススメ ✓ スタチンとフィブラート系を併用することは2018年に重要な基本的注意に変更 → 併用する場合は受容体に対して選択性が高いフィブラート系(ペマフィブラート®)が無難 フィブラート系は腎機能障害患者では禁忌になるので注意 合剤をうまく使ってポリファーマシーを防ぐ意識も大切です

  16. 脂質異常症の生活習慣のポイント ✓ 高血圧や糖尿病の食事・運動療法が基本! ✓ 食事に関しては 250kcal ほど減らす ➢ 総エネルギーに対する脂肪エネルギーを 20-25% に抑える ➢ コレステロール摂取量が 200 mg/日を超えない ✓ TGやHDLコレステロールを変化させるためには3%以上の減量が必要 飽和脂肪酸を減らし、n-3系不飽和脂肪酸に置き換えることもオススメです 糖質制限は相対的に脂肪エネルギーの増加を起こしやすく、脂質異常症の悪化 が起こらないように注意

  17. 高血圧や脂質異常症合併患者の糖尿病治療薬 ✓ 高血圧には SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬 ✓ 脂質異常症には SGLT2阻害薬、メトホルミン、ピオグリタゾン 降圧薬やスタチンなどを使用しても目標に届かない場合に 上記の薬剤を糖尿病治療で使用する場合があります 個人的にはSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬での 減量効果に期待して使用することが多いです 体重減少は糖尿病治療にもつながりますので、 体重を減らすきっかけを作ることも意識しています

  18. 参考文献 糖尿病専門医研修ガイドブック改訂第8版, 2020 動脈硬化性疾患予防ガイドライン, 2017 高血圧治療ガイドライン, 2019

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