#4.
序 論 労作性狭心症の疾患概念 労作性狭心症: 動脈硬化性プラーク ・慢性発症の冠動脈疾患。 ・生活習慣病を背景とした、冠動脈内膜の動脈硬化性プラークによる冠動脈の狭窄が主体(例外あり)。 冠動脈の狭窄により心筋への血流低下が起こり、心筋虚血症状を呈する。 ・冠動脈CTや冠動脈造影で、肉眼で確認出来るレベルの大血管に明確な閉塞性病変を認める。(IOCA) IOCAは分かった。鑑別対象のINOCAって何? INOCAは、負荷をかけずに造影しても大血管に閉塞性病変がない冠動脈疾患を指します。 INOCA=冠攣縮性狭心症(VSA) + 微小血管狭心症(CMD) VSAはアセチルコリンやエルゴノビン負荷をかけると、大血管で血管攣縮が起こり、冠動脈狭窄が肉眼で確認できる。 CMDは肉眼では大血管の閉塞性病変が確認出来ないが、目に見えない微小血管レベルで血管抵抗の上昇や拡張 障害、血管攣縮などで血流障害を来す。特殊ワイヤーで圧を図って診断しますが、詳細は本稿では扱いません。
#5.
序 論 冠動脈の解剖 大動脈 (Aorta) 右冠動脈 (RCA) seg.1~4 左冠動脈 (LCA) seg.5~15 左冠動脈主管部 (LMT=LMCA) seg.5 左前下行枝 (LAD) seg.6~10 左回旋枝 (LCX) seg.11~15 一般的な臨床的重要度: LMT >> LAD > RCA > LCX (LMT = LAD + LCX) 個人差:anomalyによっては重要度の順位が変動することはある。 とはいえ、殆どの場合においてLMTが一番重要である。
#6.
序 論 疫学 ・厚生労働省発表 2022年の人口動態統計: 急性心筋梗塞を除くその他の狭心症が原因となった死亡は41,159人である。 これは心疾患死亡のうち17.7%を占める。 急性心筋梗塞による死亡は心疾患死亡のうち13.7%に留まる。 今や冠動脈疾患の死因は、心筋梗塞よりもその他の狭心症の方が多い。 ・労作性狭心症の有病率: 疫学研究の成績によってばらつきがあり、一致した見解が得られていない。 厚生労働省発表の患者調査(確定数)によれば、虚血性心疾患の患者数は 139,000人(平成8年)→65,200人(令和2年)と減少傾向にはある。 ただしICD-10準拠の病名登録の数を追っているだけであるため、実情を反映しているとは言い難い。 厚生労働省 令和4年(2022)人口動態統計 E-STAT 患者調査 / 令和2年患者調査 確定数 全国編 報告書
#7.
序 論 危険因子(久山町スコア) ①性別 女性: 0p 男性: 7p ④血清LDL-C : <120 120~139 : 140~159 : : 160~ ②収縮期血圧 : ~120 120~129 : 130~139 : 140~159 : : 160~ ③糖代謝異常 なし: 0p あり: 1p 0p 1p 2p 3p 4p 0p 1p 2p 3p ⑤血清HDL-C ~60 : 0p 40~59 : 1p <40 : 2p ⑥喫煙 なし: 0p あり: 2p ①~⑥の合計ポイントを計算 健康な男性 = sBP160~ + LDL160~の女性 男性であるだけでかなりのハイリスク。 合計ポイント 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70~79歳 0 <1.0% <1.0% 1.7% 3.4% 1 <1.0% <1.0% 1.9% 3.9% 2 <1.0% <1.0% 2.2% 4.5% 3 <1.0% 1.1% 2.6% 5.2% 4 <1.0% 1.3% 3.0% 6.0% 5 <1.0% 1.4% 3.4% 6.9% 6 <1.0% 1.7% 3.9% 7.9% 7 <1.0% 1.9% 4.5% 9.1% 8 1.1% 2.2% 5.2% 10.4% 9 1.3% 2.6% 6.0% 11.9% 10 1.4% 3.0% 6.9% 13.6% 11 1.7% 3.4% 7.9% 15.5% 12 1.9% 3.9% 9.1% 17.7% 13 2.2% 4.5% 10.4% 20.2% 14 2.6% 5.2% 11.9% 22.9% 15 3.0% 6.0% 13.6% 25.9% 16 3.4% 6.9% 15.5% 29.3% 17 3.9% 7.9% 17.7% 33.0% 18 4.5% 9.1% 20.2% 37.0% 19 5.2% 10.4% 22.9% 41.1% 久山町スコアによる動脈硬化性疾患発症予測モデル 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
#8.
症 状 労作性狭心症の症状 心窩部(みぞおち)の圧迫感、膨満感、疼痛。 首、顎、肩、背中、腕に不快感を伴う場合もある。(放散痛) 労作で増悪することが多い。 症状を自覚しない狭心症もある。(無症候性心筋虚血) 特に糖尿病性神経障害などを患っている場合には注意。 ただし、非特異的胸痛、心不全、肺炎、呼吸性疼痛、腹部疾患に伴う疼痛との鑑別を要する。 狭心症 らしくない 狭心症 らしい ・体幹の中心 ・圧迫感 ・絞られるような ・掴まれるような ・重苦しい ・締め付けられるような ・労作性の / ストレスに起因する ・胸骨の裏の ・左寄りの ・鈍い ・うずくような ・突き刺すような ・右寄りの ・引き裂くような ・破れるような ・胸やけ ・鋭い ・一過性の ・移動性の ・胸膜性の(呼吸性の) ・姿勢により変化する 2021 AHA/ACC/ASE/CHEST/SAEM/SCCT/SCMR Guideline for the Evaluation and Diagnosis of Chest Pain
#9.
評 価 検査前確率と臨床的尤度比 ① 胸骨下(または頸部,顎,肩,腕)の絞扼感または締め付けられるような痛み ② 運動や精神的ストレスによる増悪 ③ 安静もしくはニトログリセリンによる5分以内の症状緩和 典型的狭心症 非典型的狭心症 非狭心症性 呼吸困難 年齢 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 30~39 3% 5% 4% 3% 1% 1% 0% 3% 40~49 22% 10% 10% 6% 3% 2% 12% 3% 50~59 32% 13% 17% 6% 11% 3% 20% 9% 60~69 44% 16% 26% 11% 22% 6% 27% 70~ 52% 27% 34% 19% 24% 10% 3つ陽性 2つ陽性 1または0 :典型的狭心症 :非典型的狭心症 :非狭心症性 問診・検査 病歴・既往歴 ・心血管疾患、他血管疾患の既往 ・脂質異常症、糖尿病、脳卒中、末梢血管疾患、慢性腎臓病 ・若年性冠動脈疾患の家族歴 ・喫煙歴 安静時心電図 ・異常Q波 ・ST-T異常 安静時心エコー図 32% 尤度比を構成する要素 ・左室壁運動異常 14% 12% 閉塞性冠動脈疾患の検査前確率(PTP) スクリーニング時点で 検査前確率(PTP) × 臨床的尤度比(CL) = 修正後検査前確率 を求めておく。 血液・尿検査 ・脂質プロファイルの異常 ・血糖値、耐糖能異常 閉塞性冠動脈疾患の臨床的尤度比(CL) 厳密な計算は難しい。 概ね高めか低めかの判断になる。 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
#10.
評 価 非侵襲的画像評価のフロー 修正後検査前確率 低:<5% 中:5%~85% 高:>85% 経過観察 負荷イメージング (負荷SPECT等) 冠動脈CT 運動負荷心電図 冠動脈Caスキャン 検討可能 閉塞性病変 なし 閉塞性病変あり (LMTかLMT相当 病変以外) 経過観察 (INOCA考慮) 負荷イメージング またはFFR-CT とりあえずカテーテル、の時代ではなくなった。 非侵襲的画像評価を経てから、が原則。 閉塞性病変あり (LTMかLMT相当 病変) 至適薬物療法 至適薬物療法 症状の残存 症状の残存 侵襲的冠動脈造影検査(CAG) 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
#11.
検 査 心電図、心エコー 運動負荷心電図の陽性基準: 狭心症: 0.1 mV以上の水平型ないし下行傾斜型のST下降 (安静時ST下降のある場合,付加的な0.2 mV以上の下降) 心筋梗塞後心筋虚血: 異常Q波誘導のST上昇を伴わない0.1 mV以上のST下降 感度(68%)・特異度(77%)が低いため、運動負荷心電図は初期診断検査として用いることはできない。 無症状~軽症状の患者において、労作性狭心症の除外の補助診断として用いても良い、程度の意義しかない。 (推奨class IIb) 心エコーの所見: 左心室壁運動異常 (局所性、または全周性) ※壁運動異常を伴わない場合もある JCS 慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版) 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
#12.
検 査 冠動脈CT 冠動脈CT: 造影剤を用いて冠動脈を評価する。 長所: ・経皮的冠動脈造影(CAG、いわゆるカテーテル検査)をしなくても、比較的低侵襲で冠動脈形態評価が可能。 ・感度が93%と高く、冠動脈疾患の見逃しが少ない。 ・外来で施行可能であり簡便。 ・64列multi slice CT以上があれば可能なので、施行できる施設が多い。 短所: ・特異度が53%と低いため、擬陽性が多くなる。(冠動脈CT単独では「はずれを引く」CAGが増える。) ・あくまで「見た目の狭さ」を見ているに過ぎないので、本当に血流が低下しているか(機能的虚血)はわからない。 ・ステント内の再狭窄の評価、石灰化が多い血管(特に透析症例)では評価が難しい場合が多い。 ・造影剤を使用するため、高度の腎不全や造影剤アレルギー症例には使用出来ない。 ・体動でartifactが発生し読影困難となるため、安静を保持出来ない症例には不向き。 ・脈拍が早い場合にはartifactが発生しやすい。(β遮断薬を用いて徐脈にさせてから評価) ・VSA、CMDは評価出来ない。(これらを疑わないとならないような胸痛にはCAGが必須) 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
#13.
検 査 FFR-CT、Caスキャン FFR-CT: 冠動脈CTでFFR(冠血流予備量比、後述)を計測する。 ・CTで機能的虚血評価が可能。 見た目の狭窄度ではなく、血流の低下を数値で評価できる。 <0.80で有意な虚血と評価出来る。血行再建の適応条件。 >0.80で陰性である状態を、studyの名前にあやかって 循環器内科は「defer」と記載、呼称することがある。 <0.80 =陽性 施設基準が厳しく、FFR-CTを施行できる施設は限られる。 Caスキャン: 非造影CTで冠動脈の石灰化を数値化する ・正確にはAgaston score。 将来の冠動脈疾患リスクを予測する。 0 10 1 極低 低 400 100 中 高め 高 リスク Updates on Fractional Flow Reserve Derived by CT (FFRCT). Current Treatment Options in Cardiovascular Medicine 22(17) July 2020.
#14.
検 査 負荷心筋血流SPECT SSS – (負荷欠損スコア) SRS = (安静欠損スコア) SDS (差分欠損スコア) %SDS= SDS 左心室全体の心筋量 LAD領域 - %SDSが10%以上であれば、薬物治療よりも 血行再建術の予後が良いとする報告。 = 血行再建を行った前後で%SDSが5%以上 の改善があれば、予後が良いとする報告。 LCX領域 RCA領域 負荷をかけた時、 十分な血流がある部分 ない部分 安静時、 十分な血流がある部分 ない部分 有意虚血 =治療すべき狭心症が疑われる部分 =上の例ではLAD領域の虚血疑い Viability無し 陳旧性心筋梗塞や、心筋症等による 線維化のため死んでいる心筋 =血行再建の意義なし 少なくとも%SDS 5%以上の症例で 血行再建することが望ましい。
#15.
診 断 経皮的冠動脈造影(CAG) 薬物療法を受けていても改善しない狭心痛、LMT病変疑いの場合に はclass Ia。CTやシンチで結論に至れない場合、心不全合併の狭心症 疑いの場合にはclass IIa。低リスクだけどとりあえずCAGはclass III。 穿刺箇所 上腕動脈: 上腕神経麻痺risk 橈骨動脈: Risk少な目、◎ まずはここを検討 透析シャント側 穿刺禁 いわゆる検査カテーテル。 狭心症の確定診断に用いる。 概ね4Fr(約1.3mm)の検査用カテーテルの先端を左冠動脈、右冠動脈の入口部まで進め、 冠動脈に直接造影剤を流し込むことで、血管の狭窄の程度を見た目で評価する。 動画、かつ必要に応じて心臓を色々な方向から映せるので解像度が高い。 Seg.6 75% 狭窄度: Seg.11 90% 橈骨動脈遠位側: 安全だがまだ新しく 主流ではない 総大腿動脈: 後腹膜血腫risk 仮性動脈瘤risk 右冠動脈 狭窄なさそうだし 0%かなー。 左冠動脈 LAD seg.6 75% LCX seg.11 90%かなー。 0%、25%、50%、75%、90%、 99%(流れが遅い; slow flow)、 100%(完全閉塞; CTO) から選んで、各部位ごとに狭窄度を 決定。 あくまで医師の主観に依存する…
#16.
診 断 FFR/NHPRs 医師が見た目の印象で狭さを決めていては客観性に欠けるのでは?本当に血流低下しているの? 概ね75%以上の狭窄度の場合、機能的虚血評価としてFFR/NHPRsを追加施行します。 FFR <0.80 NHPRs(iFR / RFR / DFR / dPR) <0.89 で有意虚血。(血行再建すべき) FFRとは? Pa FAME II試験5年後報告。 FFR<0.80の場合 PCI(経皮的血行再建術)群は 薬物治療群よりも 全死亡+緊急血行再建を減らした。 冠動脈に圧力計測ワイヤーを挿入。 血管拡張薬を冠動脈に注入した状態で 最上流地点の血圧(Pa)と 最下流地点の血圧(Pd)を測定する。 FFR = Pd NHPRsにはそれぞれ異なった測定方法、理論、利点などあるが 専門的すぎるので本稿では割愛。 Pd Pa <0.80で有意虚血 血管内の圧力と血流は相関するので、 最上流と最下流の圧力比を見ることで 血流障害の程度を定量評価できる。 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
#17.
診 断 血行再建の適応 医療保険的には… 実際、血行再建するか否かどう決めるの? 診療報酬点数 K549 経皮的冠動脈ステント留置術 3 その他のもの21,680点(急性心筋梗塞・不安定狭心症を除く) CAGして狭窄病変を同定する。 概ね75%以上の狭窄を病変としてpickupする。 (LMTは50%でout) (LAD>RCA>LCXの順で見た目以上に 虚血が強い場合が多い) ア 機能的虚血の原因である狭窄病変 (FFR/NHPRs、負荷血流SPECTで評価可能) イ 心臓カテーテル法における 90%以上の狭窄病変 (CAGで評価可能) ウ その他医学的必要性が認められる病変 (要カンファレンス) 狭窄病変にFFR/NHPRsして 機能的虚血の有無を調べる ア イ ウのうちどれか一つを満たせば算定できる。 (保険上はCAGで90%狭窄と指摘することでPCIの算定自体はできる。) ガイドライン的には… (虚血心筋の量が微妙な場合は) CAG前後に負荷心筋血流SPECT →%SDSを評価する ・LMCA病変を有する患者において、心血管リスクの低減目的で血行再建を行う。(class I) ・広範な心筋虚血をもたらす冠動脈病変に対し、共同意思決定に基づく血行再建を行う。(class I) ・有意な冠動脈病変があり、OMTでも生活が制限される狭心症症状を有する場合、 共同意思決定に基づく血行再建を行う。(class I) ・心不全や左室機能障害、進行した腎臓病、あるいはフレイルを伴う患者において、 症例ごとにリスクとベネフィットを考慮する。(class IIa) 厚生労働省 平成30年度診療報酬改定 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療 (LMT病変、心筋虚血域が大きい、 症状が強い、プラークが不安定な場合には 治療のメリットが大きいことを説明し) 血行再建の希望があるか患者さんと 話し合って決定する あくまで判断の主体は患者さんにあるが、病変を放置することで予測される 心筋梗塞や心不全のリスクが高い場合には、血行再建を躊躇うべきではない。
#18.
補 記 Ischemia試験の衝撃 Ischemia試験(2020.4) Ischemia試験の長期報告(2022.11) ・中等度以上の心筋虚血を有する労作性狭心症患者を以下に分ける。 ①薬物治療のみ 群 (ただし経過中に必要になったらPCI(経皮的冠動脈形成術; カテーテル治療)などの血行再建は施行する) ②薬物治療 + 最初からPCI 群 死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、心不全、心停止の複合イベントについて 中央値3.2年の経過で①②に有意差がつかなかった。 →労作性狭心症にPCIしても意味が無いんじゃないの? 中央値5.7年の経過で、 A:①②で複合イベントについて有意差がつかなかった。 B:②で心臓死が減少した。 労作性狭心症にPCIする意義を問われた衝撃の試験。 C:②で非心臓死(詳細不明、死因の軸は癌と感染症と記載)が増加した。 ・導入時点でLMT病変を除外している(一番予後を左右するはず) →労作性狭心症にPCIすると心臓死は減るけど非心臓死が増えて ・②は手技直後の心筋梗塞が多く、技術に結果が左右されるのでは? 結局イベントを減らせないならPCIしても意味が無いんじゃないの? ・4年経過時点で①の約20%が結局血行再建されている。 など考える点は存在するものの、今本当にPCIすべきかどうかを 熟慮せねばならない、血行再建するしないに関わらず至適内科治療 殺伐としたカテ業界にPREVENT試験が!! に尽力する必要がある結果であることは間違いない。 上記は急性冠症候群には当てはまらない。こちらは急を要する。 N Engl J Med 2020;382:1395-1407 Circulation. 2023;147:8–19
#19.
補 記 PREVENT試験の再衝撃 PREVENT試験(2024.4) ・50%以上の狭窄病変がある。 ・FFR<0.80(機能的虚血)の有無を問わない。 ・ACSを起こしやすい脆弱性プラークを示す下記のうち2つ以上を満たす。 (1) 最も狭い箇所の血管面積 < 4.0 mm2 (2) 血管面積に占めるプラーク面積 > 70% (3) 4mmセグメント法における脂質コアスコア > 315 (4) TCFA(脂質プラークの表面を守っている線維性被膜が薄い) を ①PCI+薬物治療の群 ②薬物治療だけの群 に分けて追跡(中央値4.3年)。 心臓死、標的血管の心筋梗塞、虚血血管のそれ以降の血行再建、 不安定狭心症による入院 の複合リスクで評価。 2年時点で ①0.4%vs②3.4%/HR 0.11/95%CI 0.03-0.36/p =0.0003 7年時点で ①6.5% vs②9.4%/HR 0.54/95%CI 0.33-0.87/p = 0.009 これまでの試験の多くが現時点での機能的虚血があること (FFR/NHPRsや負荷心筋血流SPECTで陽性) を前提にしていた中で、本試験は機能的虚血の有無を問わない。 今この瞬間に血流が低下しているような高度狭窄じゃなくても、 将来的に爆発してACSとなり未来の心機能を大きく損なう ような危険度の高い地雷が埋まっているのなら、爆発する前に ステントで地雷処理した方が予後が良かったよ、と言っている試験。 機能的虚血による予後評価の限界を示唆するとともに 血管内プラークの性状評価の重要性を強く示唆する。 かつ、Ischemia試験などで否定されかかっていた予防的PCIの 有用性を改めて示した試験でもある。 まだだ まだ終わらんよ https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)00413-6
#20.
治 療 至適内科治療(OMT) 症状緩和目的 ・短時間作用型の硝酸薬(ニトロ) ・β遮断薬(陳旧性心筋梗塞や心不全+例) ・カルシウム拮抗薬(VSAの併発疑い例) 症状緩和目的 ・抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル) ただし一次予防(心血管イベントを起こし ていない場合)では出血リスクのみが上昇 するので、漫然と長期投与しない。 生活習慣是正 運動療法 食事療法 禁煙 血圧管理 ・脂質低下療法 症状に基づいて増量 治療抵抗性の場合、長時間作用型硝酸薬 (ニコランジル、一硝酸イソソルビド) 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
#21.
治 療 至適内科治療(抗血小板薬) 日本版HBR(出血リスク) あり OAC内服 血栓リスク(CREDO-Kyotoリスクスコア等) あり 入院中 (~2週間) PCI後はしばらく抗血小板薬2剤(DAPT)が基本。 ただし出血リスクも上がるので、可能な限り早く 抗血小板薬1剤(SAPT)へ減量したい。 なし なし 低い 高い OAC+DAPT DAPT DAPT DAPT OAC 3カ月 + クロピドグレル or プラスグレル SAPT 心房細動、左室内血栓、深部静脈血栓症、肺塞栓、CTEPH 器械弁留置などが絡むと経口抗凝固薬(OAC)の 併用が必要となるためさらに複雑化する。 (基本はOACをDAPT/SAPTよりも優先) 出血性合併症の多さは下記のイメージ。 OAC>>>アスピリン>プラスグレル≧クロピドグレル SAPT SAPT 12カ月 OAC SAPT= クロピドグレル アスピリン or or プラスグレル 出血リスクと血栓リスクを天秤にかけて、 DAPT期間を決める。 SAPT DAPT= クロピドグレル or アスピリン + プラスグレル OAC= ワルファリン or DOAC 左記は日本循環器学会(2020年ガイドライン)出典だが アメリカ(2023AHA guideline)も ヨーロッパ(2019ECS guideline)も それぞれ違うことを言っており、統一された見解は無い。 DOAC= ダビガトラン or リバーロキサバン or アピキサバン or エドキサバン 2020年 JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法
#22.
•. 2022 Aug 10;51(4):1276-1290. 治 療 至適内科治療(生活習慣病) 糖尿病 狭心症患者の生活習慣病管理の目標達成値 心不全(HFrEF)との関係から ACE阻害薬/ARB/ARNI、MRA、β遮断薬が好み 脂質 血圧 治療前と比較して<50% かつ LDL-C ≦70mg/dL ・ストロングスタチン ↓↓ ・エゼチミブ ↓ ・PCSK9阻害薬 ↓↓↓↓ (+・インクリシラン) ↓↓↓↓ 禁煙 統一見解なし。ひとまず、 HbA1c<7.0%(個人背景による) 絶対に完全禁煙 1日1本から死亡率や心疾患、各種癌リスク↑ 早期禁煙が全死亡リスクを減らす。 Int J Epidemiol . 2022 Aug 10;51(4):1276-1290. 若年:<130/80mmHg 老年:<140/90mmHg [著者の降圧力の強さイメージ △~◎] ・ACE阻害薬/ARB/(ARNI):〇~◎ ・MRA:△~〇(種類による) ・Ca拮抗薬:△~◎(種類による) ・利尿薬(サイアザイド):△~〇 +β遮断薬:△、α遮断薬:△~〇 高血圧ガイドライン2019 生活習慣 ESC 糖尿病合併心血管疾患ガイドライン2023。 ただしHbA1c<6.5%の強化治療では死亡率の増加も 認められ、低血糖を起こさないように個人背景を鑑みた 目標値設定が必要。下記も参考に。 2019GL抜粋 2023マニュアル 2016高齢者 なお、ESC2023GL:血糖降下薬の心血管系への 影響は以下の通り。 心不全絶対リスク+0.4%/年の副作用。 心不全例では禁忌!! 有効性〇: SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の大部分、ピオグリタゾン 有効性- 安全性〇: DPP4阻害薬、リキシセナチドとエキセナチド、インスリン、グリメピリド 節酒、肥満解消、食事療法、 運動(週3以上、30分以上) 心血管系への試験未評価: メトホルミン、SU薬 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 2022 年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療
#23.
治 療 血行再建 - PCI(経皮的冠動脈形成術) ④A:ステント留置して仕上げ (現在はほとんど第3世代薬剤 溶出性ステント:DES) ①:冠動脈にワイヤーを通す ②:病変性状をエコーなどで評価 (IVUS OCT OFDI) ③:必要に応じて病変をバルーン拡張 (semi-compliant balloon) (non-compliant balloon) (scoring balloon) ④B:薬剤コーテッドバルーン(DCB) して仕上げ
#24.
治 療 血行再建 – CABG(冠動脈バイパス術) ①:左内胸動脈(LITA)-LAD: 重要度の高いLADを守るために開存率の良い LITAを用いることがGold standard ① ② ④ の 採 取 元 ②:右内胸動脈(RITA)-LCA: 右冠動脈より左冠動脈に使用することを推奨されて いる。LITA/RITAをともにグラフトに使用した場合 糖尿病、COPD症例などでは縦隔炎リスクが上昇。 ⑤ ③:胃大網動脈(GEA)-RCA: 腹部大動脈の第3分枝であるため、第1分枝のITAと 比較して灌流圧が低いので、血流が残っている血管 に結合すると閉塞リスクあり。血管攣縮リスクあり。 ④:橈骨動脈(RA)-XXX ③ ⑤の採取元 : LITA-LADの補助グラフトとしてや、複合グラフト、 シーケンシャルグラフトなどの補助的役割。 ⑤:大伏在静脈(SVG)-XXX: 唯一の静脈グラフト。創部合併症や感染リスクを 下げる目的で使用されるが、動脈グラフトより総じて 開存性が低い。LCXやRCAに用いる。 安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018 年改訂版)
#25.
治 療 血行再建の選択 PCI/CABG PCI 2枝病変以上にはCABGが優勢。以下の4条件を満たしていればPCIしても良い。 CABG 推奨クラス エビデンス レベル 推奨クラス エビデンス レベル LAD近位部病変(-) I C IIb B LAD近位部病変(+) IIa C I C SYNTAX score ≦ 22 I B I A SYNTAX score 23~32 IIa B I A SYNTAX score ≧ 33 III B I A SYNTAX score ≦ 22 IIa B I A SYNTAX score 23~32 IIb B I A SYNTAX score ≧ 33 III B I A 2ステント必要性(-) 分岐部病変 I B 2ステント必要性(+) 分岐部病変 IIb B 2ステント必要性(-) 分岐部病変 IIa B 2ステント必要性(+) 分岐部病変 IIb 1枝病変 糖尿病(-) 2枝/3枝病変 糖尿病(+) 2枝/3枝病変 SYNTAX score ≦ 22 ステント非留置の LMT病変 SYNTAX score 23~ 32 SYNTAX score ≧ 33 低左心機能(LVEF < 35%) SYNTAX score 冠動脈病変の場所、性状、分岐など から病変の複雑性、予後を推定する。 I A I A ・LAD近位部病変がなく ・病変の数が少なく、複雑ではなく ・分岐部では2ステントが不要で ・心機能が保たれている 他にも ・重症の大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症など、一緒にopeで治せる弁膜症あり ・糖尿病あり ・高度腎機能障害 があるとCABGが優勢となる。 ただし、 ・SYNTAX score、STS score、Euro score2、Japan score1/2 でリスク計算した結果、CABGが危険と判断される ・患者さんが侵襲度の高いCABGを希望しない などの理由から、日本ではPCIで治療される場合が多い。 B III B I A IIb C I B 3枝病変に対する第2世代薬剤溶出性ステントを用いたPCI vs CABGの検討でも CAB
#26.
Take home message ① とりあえずカテーテル、は許されない時代。 検査前確率&臨床的尤度の評価 + 術前画像評価が必要。 ② とりあえず血行再建、は許されない時代。 病変のリスク、臨床症状の程度を踏まえて、医師と患者で協働して治療方針を決定する。 ③ 侵襲的治療を行う前に必ず必要となるのは、生活習慣の改善と 薬理学的治療を包括した至適内科治療である。