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市中病院
メトホルミンを使用するときにいろんな疑問ありませんか?本スライドを理解してメトホルミンの理解を深めていただけたら幸いです。
◎目次
・メトホルミンで知っておきたい3つのポイント
・①-1 メトホルミン=インスリン抵抗性改善薬
・①-2 メトホルミンの薬理作用(一部のみ)
・①-3 メトホルミンの位置づけ(海外)
・①-4 メトホルミンの位置づけ(日本)
・①-5 メトホルミンのHbA1c低下作用、安さ
・②と③ 注意すべき副作用
・②-1 メトホルミンの副作用 乳酸アシドーシス
・②-2 メトホルミン開始時の確認項目
・③-1 メトホルミンの副作用 胃腸障害
・③-2 メトホルミン投与後・・・
・③-3 start low, go slow
・具体的に・・・
・メトホルミン開始するときの声かけ(一例)
・Take Home Message
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メトホルミンは 太っている人 しか効かない? 下痢とか嘔気など 腹部症状が多い メトホルミンを 使用するときの疑問 乳酸アシドーシス のリスク DPP-4阻害薬とか SGLT2阻害薬より いいところある?
メトホルミンで知っておきたい 3つのポイント ① インスリン抵抗性改善薬といえばメトホルミン ② メトホルミン使用する前に腎機能eGFR>30を確認 (致死的な乳酸アシドーシスを防ぐ) ③ start low, go slow---消化器症状を少なくするために--(怠薬につながる胃腸障害を防ぐ) 「とりあえずDPP-4阻害薬処方」 から脱却しましょう!
①-1 メトホルミン=インスリン抵抗性改善薬 • 現在のガイドラインではインスリン分泌非促進系に分類 (以前はインスリン抵抗性改善薬と記載されていたため 馴染みは強いかも) • 低血糖は単剤ではほぼ起きない • 非肥満例でも有効 インスリン分泌が保たれている方なら 副作用に注意して積極的に使用しましょう チアゾリジン薬は浮腫や体重増加など 副作用が多く使いにくい印象です
①-2 メトホルミンの薬理作用(一部のみ) 肝臓 糖新生 骨格筋 糖取り込み メトホルミン 膵臓 インスリン分泌 ~ 脂肪組織 糖取り込み
①-3 メトホルミンの位置づけ(海外) • ADA(米国糖尿病学会)、EASD(欧州糖尿病連合)の ガイドラインでは第一選択薬として推奨 • 理由として以下の3点が列挙されている ・HbA1c低下作用 ・安価 ・安全性 2022年版では動脈硬化疾患の既往や高リスク、 心不全、CKDを合併する場合はGLP-1受容体作動薬、 SGLT2阻害薬の選択をより強く推奨されています
①-4 メトホルミンの位置づけ(日本) • 日本のガイドラインでは 「患者の病態、合併症の有無、薬剤の作用特性などを考慮して薬 剤を選択する」 と記載されている 日本人は、欧米人と比較してインスリン分泌の 低下も血糖上昇の原因なので海外のガイドラインを そのまま鵜呑みにして使用するのは注意!
①-5 メトホルミンのHbA1c低下作用、安さ • メトホルミンはSU(スルホニル尿素)薬やチアゾリジン薬と 同等もしくは同等以上の血糖降下作用がある • 非肥満例でも肥満者と同等の血糖降下がみられる • 最大投与量の2250mg/日でも、薬価は66.9円/日(3割負担なら 20円/日) 症例にもよるが500mg/日でHbA1c 0.3%程度、 1000mg/日で0.8%程度下げるイメージです コスパ最強で非専門医の先生ももっと使用して 欲しいなと思っています(個人の感想)
②と③ 注意すべき副作用 • 頻度はまれだが重症な副作用:乳酸アシドーシス • 軽症だが頻度が多い副作用:消化器系(下痢、嘔気、食欲不振、 消化不良など) これらの副作用を起こさないように 確認することを次のスライドから 説明していきます。
②-1 メトホルミンの副作用 乳酸アシドーシス • 乳酸アシドーシスは予後不良で死亡例の報告もあり 迅速な治療が必要 • 添付文書上では10万患者年あたり約3件と記載されている ただし、禁忌や慎重投与例に投与しているケースが多いため 使用しない患者を理解できていれば問題ない 私はメトホルミンが原因の 乳酸アシドーシスは遭遇したことないです
②-2 メトホルミン開始時の確認項目 • 前提条件 経口摂取問題なし、ADL自立 • 腎機能 禁忌はeGFR<30、eGFR<45なら新規開始は避ける • 年齢 75歳以上であれば新規開始は慎重に • 低酸素血症が起こりうる併存症 コントロールできていない心不全、呼吸不全では使用しない • 飲酒習慣 大量飲酒例では禁忌、少なくとも休肝日を作れる(指示を守れる) 人かどうかが大事
③-1 メトホルミンの副作用 胃腸障害 • 開始時/増量時に、下痢・嘔気・食欲不振などの消化器症状が 出現することがある • 下痢が続く場合や食事がとれなくなってしまう場合は 中止するが、2,3日でおさまることが多い • 事前に伝えておかないと患者の判断で内服中止にする ケースが多い
③-2 メトホルミン投与後・・・ メトホルミン投与後の外来で 患者「あの薬飲み始めてすぐに、吐き気がして下痢もありました。 薬局の説明書に副作用で書いてあったのでやめました。薬はほと んど全部余っています。他の薬に変えてください。」 このようなケースは処方方法や 説明の仕方で防げることもあります ポイントはstart low, go slowです
③-3 start low, go slow • 低用量(500mg/日以下)から開始して徐々に増量する方法 • 消化器系の副作用による治療中断を避けるために大切 用量依存的に効果は増すため、 最初は血糖降下作用は大きくない この点もあわせて説明しないと 「薬剤増やしたのにHbA1c下がらない」 と言われることも・・・ 私は最初の1ヶ月は副作用の確認に徹して 次に1000mg/日まで増量することが多いです
具体的に・・・ • 48歳、女性 BMI22 健康診断は毎年受けていて、血糖値が高めとずっと言われていた。 先日受けた健康診断でHbA1c 7.5%、空腹時血糖値145mg/dLの ため受診を指示された メトホルミン使用できそうだと感じたら • 問診で、既往歴や併存症/飲酒習慣を聴取 • 採血で腎機能(eGFR)を確認 抗GAD抗体/血中Cペプチドで2型糖尿病、インスリン分泌評価も忘れずに
メトホルミン開始するときの声かけ(一例) • はじめは少ない量から始めます。副作用をできるだけ少なくするためです。 下痢や吐き気などの症状が出る場合がありますが、多くの場合は2,3日で おさまります。人によってひどい下痢や食事がとれなくなる場合が あるのでその時は連絡してください。 • この薬は量が増えるほど血糖値を下げる作用が強くなります。今回は 少ない量で出してますので、次回のHbA1cは大きく下がりません。 そのときは量を少しずつ増やしましょうね。 • 複数回(朝夕or毎食)に分けて内服する薬なので忘れないように 気を付けてください。
Take Home Message • インスリン抵抗性改善薬といえばメトホルミン インスリン分泌保たれていたら積極的に投与の検討を 経口血糖降下薬の中でコスパ最強!! • 使用前には腎機能eGFR>30の確認を 開始時は腎機能、年齢、低酸素血症、飲酒習慣を確認 • start low, go slowで消化器症状を抑える工夫を 始める時は少量(500mg/日)から、声かけ大事