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健康診断での蛋白尿の概要と注意点
#2. はじめに 2 ⾎尿を伴う場合は別スライド参照 ・本スライドでは無症状+蛋⽩尿のみに関して解説する ⾎尿を伴う場合は『健康診断で要精査 尿潜⾎の対応⽅法』を参照
蛋白尿対応フローチャートの詳細
#3. 蛋⽩尿対応フローチャート 健康診断で蛋⽩尿 陰性 <尿検査再検> ⼀過性蛋⽩尿 陽性+30歳未満 陽性+30歳以上 <起⽴性蛋⽩尿の評価> □ 早朝尿(+随時尿) 陰性 起⽴性蛋⽩尿 陽性 <原因検索> □ 尿蛋⽩定量、尿中クレアチニン □ ⾎清クレアチニン □ ⾼⾎圧、糖尿病の罹患歴確認 <腎臓内科に紹介> □ 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外の疾患を疑う □ 尿蛋⽩/尿中クレアチニン⽐≧0.5g/gCr □ ⾎尿 □ eGFR<50ml/分/1.73m2 腎硬化症疑い 糖尿病関連腎臓病 疑い <腎硬化症> <糖尿病関連腎臓病> ⾮専⾨医でも管理
#4. 蛋⽩尿対応フローチャート 健康診断で蛋⽩尿 陰性 <尿検査再検> ⼀過性蛋⽩尿 陽性+30歳未満 陽性+30歳以上 <起⽴性蛋⽩尿の評価> □ 早朝尿(+随時尿) 陰性 起⽴性蛋⽩尿 陽性 <原因検索> □ 尿蛋⽩定量、尿中クレアチニン □ ⾎清クレアチニン □ ⾼⾎圧、糖尿病の罹患歴確認 <腎臓内科に紹介> □ 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外の疾患を疑う □ 尿蛋⽩/尿中クレアチニン⽐≧0.5g/gCr □ ⾎尿 □ eGFR<50ml/分/1.73m2 腎硬化症疑い 糖尿病関連腎臓病 疑い <腎硬化症> <糖尿病関連腎臓病> ⾮専⾨医でも管理
#5. 尿検査再検 再検で陰性なら⼀過性蛋⽩尿として健診フォロー ・健康診断で蛋⽩尿が指摘され受診した場合は尿検査定性を再検査する ・再検査で蛋⽩尿陰性であれば⼀過性蛋⽩尿として健康診断でフォロー可能 ・⼀過性蛋⽩尿の原因としては 発 熱 、 急 性 疾 患 、 過 度 な 運 動 、 ス ト レ ス 、 尿 路 感 染 症 な ど が あ る 1) ・⼀過性蛋⽩尿は若者に多く、 1 8 歳 未 満 の 約 1 2 % 2)、 ⼤ 学 ⽣ の 約 4 % 3)で 認 め た と の 報 告 が あ る 1)『Isolated proteinuria in asymptomatic patients』 PMID︓7463951 2)『Isolated proteinuria: analysis of a school-age population』 PMID︓7131137 3)『The value of urine screening in a young adult population』 PMID︓14760038 5
#6. 蛋⽩尿対応フローチャート 健康診断で蛋⽩尿 陰性 <尿検査再検> ⼀過性蛋⽩尿 陽性+30歳未満 陽性+30歳以上 <起⽴性蛋⽩尿の評価> □ 早朝尿(+随時尿) 陰性 起⽴性蛋⽩尿 陽性 <原因検索> □ 尿蛋⽩定量、尿中クレアチニン □ ⾎清クレアチニン □ ⾼⾎圧、糖尿病の罹患歴確認 <腎臓内科に紹介> □ 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外の疾患を疑う □ 尿蛋⽩/尿中クレアチニン⽐≧0.5g/gCr □ ⾎尿 □ eGFR<50ml/分/1.73m2 腎硬化症疑い 糖尿病関連腎臓病 疑い <腎硬化症> <糖尿病関連腎臓病> ⾮専⾨医でも管理
起立性蛋白尿の評価方法と注意点
#7. 起⽴性蛋⽩尿の評価 7 30歳未満であれば早朝尿を採取して評価する ・起⽴性蛋⽩尿は⽴位で蛋⽩排泄量が増加するが、 臥位になると蛋⽩排泄量が正常化する疾患である ・良性疾患であるため健康診断でフォロー可能 ・ 若 年 者 に 多 く み ら れ 、 3 0 歳 以 上 で は 稀 な 疾 患 1)で あ る た め 、 3 0 歳 未 満 の 蛋 ⽩ 尿 に 対 し て は 起 ⽴ 性 蛋 ⽩ 尿 の 評 価 2)を ⾏ う ①就寝直前に排尿し、その後は臥位をたもつ ②起床直後に採尿(早朝尿)し、尿蛋⽩/クレアチニン⽐を調べる ③(⽐較のために同⽇⽇中に採尿した随時尿もあるとよい) ④早朝尿で尿蛋⽩陰性であれば起⽴性蛋⽩尿の診断 1)『Isolated proteinuria in asymptomatic patients』 PMID︓7463951 2)Up To Date『Assessment of urinary protein excretion and evaluation of isolated non-nephrotic proteinuria in adults』 閲覧⽇︓2024/09/04
#8. 蛋⽩尿対応フローチャート 健康診断で蛋⽩尿 陰性 <尿検査再検> ⼀過性蛋⽩尿 陽性+30歳未満 陽性+30歳以上 <起⽴性蛋⽩尿の評価> □ 早朝尿(+随時尿) 陰性 起⽴性蛋⽩尿 陽性 <原因検索> □ 尿蛋⽩定量、尿中クレアチニン □ ⾎清クレアチニン □ ⾼⾎圧、糖尿病の罹患歴確認 <腎臓内科に紹介> □ 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外の疾患を疑う □ 尿蛋⽩/尿中クレアチニン⽐≧0.5g/gCr □ ⾎尿 □ eGFR<50ml/分/1.73m2 腎硬化症疑い 糖尿病関連腎臓病 疑い <腎硬化症> <糖尿病関連腎臓病> ⾮専⾨医でも管理
原因検索のための検査項目
#9. 原因検索 9 以下の検査をルーティンで提出する □ 尿蛋⽩定量、尿中クレアチニン □ ⾎清クレアチニン □ ⾼⾎圧、糖尿病の罹患歴確認 ( □ 腹 部 エ コ ー *) ( □ 尿 免 疫 電 気 泳 動 *) * 上 記 の 検 査 は U p To D a t e 1 ) に 記 載 さ れ て い る 項 ⽬ で あ る 腹部エコーや尿免疫電気泳動まで検査するかは各⾃のセッティングや臨床経験による 1)Up To Date『Assessment of urinary protein excretion and evaluation of isolated non-nephrotic proteinuria in adults』 閲覧⽇︓2024/09/04
#10. 蛋⽩尿対応フローチャート 健康診断で蛋⽩尿 陰性 <尿検査再検> ⼀過性蛋⽩尿 陽性+30歳未満 陽性+30歳以上 <起⽴性蛋⽩尿の評価> □ 早朝尿(+随時尿) 陰性 起⽴性蛋⽩尿 陽性 <原因検索> □ 尿蛋⽩定量、尿中クレアチニン □ ⾎清クレアチニン □ ⾼⾎圧、糖尿病の罹患歴確認 <腎臓内科に紹介> □ 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外の疾患を疑う □ 尿蛋⽩/尿中クレアチニン⽐≧0.5g/gCr □ ⾎尿 □ eGFR<50ml/分/1.73m2 腎硬化症疑い 糖尿病関連腎臓病 疑い <腎硬化症> <糖尿病関連腎臓病> ⾮専⾨医でも管理
腎臓内科への紹介基準と流れ
#11. 腎臓内科への紹介基準 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外を疑うなら紹介 ・腎硬化症、糖尿病関連腎臓病は有病率が⾼い疾患であるため、 後述する「らしい経過」に合致すれば⾮専⾨医でも管理可能 ・以下の項⽬に該当する場合は腎⽣検を検討するため腎臓内科に紹介する □ 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外の疾患を疑う □ 尿 蛋 ⽩ / 尿 中 ク レ ア チ ニ ン ⽐ ≧ 0 . 5 g/gCr □ ⾎尿 □ e G F R < 5 0 ml/分/1.73m2 * 紹 介 基 準 は 『 「型」が⾝につく蛋⽩尿・⾎尿の診かた・考えかた』 を 参 考 に 作 成 し た 『 CKD診療ガイドライン2023』 で は よ り 早 期 の 紹 介 が 推 奨 さ れ て い る た め 、 各⾃のセッティングや臨床経験により判断する 11
#12. 蛋⽩尿対応フローチャート 健康診断で蛋⽩尿 陰性 <尿検査再検> ⼀過性蛋⽩尿 陽性+30歳未満 陽性+30歳以上 <起⽴性蛋⽩尿の評価> □ 早朝尿(+随時尿) 陰性 起⽴性蛋⽩尿 陽性 <原因検索> □ 尿蛋⽩定量、尿中クレアチニン □ ⾎清クレアチニン □ ⾼⾎圧、糖尿病の罹患歴確認 <腎臓内科に紹介> □ 腎硬化症、糖尿病関連腎臓病以外の疾患を疑う □ 尿蛋⽩/尿中クレアチニン⽐≧0.5g/gCr □ ⾎尿 □ eGFR<50ml/分/1.73m2 腎硬化症疑い 糖尿病関連腎臓病 疑い <腎硬化症> <糖尿病関連腎臓病> ⾮専⾨医でも管理
腎硬化症の診断基準と治療法
#13. 腎硬化症 13 ⻑期間の⾼⾎圧により腎機能障害が⽣じる ・⻑期間の⾼⾎圧に伴い、 動脈硬化による腎臓の⾎管狭窄が進⾏し腎機能が低下する疾患 ・除外診断であるため、他疾患が想定される場合は鑑別を優先する 腎硬化症らしい経過 腎硬化症らしくない経過 ・緩徐に進⾏する腎不全 ・受診ごとに進⾏する腎機能障害 ・左室肥⼤等を伴う⻑期間の⾼⾎圧既往 ・短期間の⾼⾎圧の既往 ・蛋⽩尿はあっても軽度(1g/⽇未満) ・⾼度の蛋⽩尿、⾎尿 ・⾎尿はなし ・⾼⾎圧に先⾏する蛋⽩尿 『「型」が⾝につく蛋⽩尿・⾎尿の診かた・考えかた』(⽇本医事新報社)
#14. 腎硬化症 治療 14 ARB/ACE阻害薬を⽤いた降圧治療が中⼼ ・蛋⽩尿、糖尿病の有無を踏まえて降圧⽬標と降圧薬を選択する 慢性腎臓病患者への降圧⽬標と推奨降圧薬 蛋⽩尿(ー) 糖尿病 降圧⽬標 第1選択薬 蛋⽩尿(+) なし あり 140/90mmHg未満 130/80mmHg未満 130/80mmHg未満 (家庭⾎圧 135/85mmHg未満) (家庭⾎圧 125/75mmHg未満) (家庭⾎圧 125/75mmHg未満) ARB/ACE阻害薬 カルシウム拮抗薬 サイアザイド系利尿薬 ARB/ACE阻害薬 『CKD診療ガイド2024』(東京医学社)
糖尿病関連腎臓病の診断と治療
#15. 糖尿病関連腎臓病 15 5-10年以上の糖尿病歴と他の合併症の存在を確認 ・⾼⾎糖に伴い細⼩⾎管合併症として神経症→網膜症→腎症の順に進⾏する ・典型例ではまずアルブミン尿、蛋⾃尿の増加を認め、その後eGFRの低下が進⾏する ・除外診断であるため、他疾患が想定される場合は鑑別を優先する 糖尿病関連腎臓病らしい経過 糖尿病関連腎臓病らしくない経過 ・5-10年以上の糖尿病歴 ・糖尿病発症5年以内の蛋⽩尿出現 ・糖尿病性神経障害の存在 ・突然の蛋⽩尿増加、中等度以上の⾎尿 ・糖尿病性網膜症の存在 ・他の糖尿病合併症を認めない ・早期腎症→顕性腎症→eGFR低下の経過 ・急激な腎機能悪化 『「型」が⾝につく蛋⽩尿・⾎尿の診かた・考えかた』(⽇本医事新報社)
#16. 糖尿病関連腎臓病 治療 SGLT2阻害薬が第1選択 ・HbA1c7%以下を⽬標に、糖尿病、⾼⾎圧、脂質異常症の管理に加えて、 ⾷事療法、運動療法、禁煙指導も含めた集約的治療が推奨される ・尿蛋⽩/尿中クレアチニン⽐を3-6ヶ⽉ごとに測定 (試験紙で尿蛋⽩陰性なら尿中アルブミン/クレアチニン⽐測定) ・ 薬 物 治 療 1) ▶ S G LT 2 阻 害 薬 ︓ 第 1 選 択 、 e G F R 1 5 ml/分/1.73m2未 満 で は 新 規 に 開 始 し な い ▶ARB/ACE阻害薬︓蛋⽩尿を有する⾼⾎圧合併例で使⽤ ▶MR拮抗薬︓微量アルブミン尿以上を呈する場合に使⽤ フ ィ ネ レ ノ ン ( ケ レ ン デ ィ ア ®) や エ サ キ セ レ ノ ン ( ミ ネ ブ ロ ®) ▶GLP-1受容体作動薬︓肥満で使⽤を考慮、エビデンスはまだ少ない 1)『CKD診療ガイド2024』(東京医学社) 16
尿試験紙による蛋白尿の検出と対応
#17. おまけ ・尿試験紙で検出できる尿蛋⽩ ・尿蛋⽩(±)の対応
#18. 尿試験紙で検出できる尿蛋⽩ 18 尿中のアルブミンを主に検出 尿中に排泄される主な蛋⽩ アルブミン 微量アルブミン尿 (30-299mg/gCr) 顕性アルブミン尿 (300mg/gCr以上) 尿試験紙で 検出しにくい 尿試験紙で 検出しやすい ⼼⾎管疾患の予測因⼦ →糖尿病関連腎症病は 尿アルブミンを測定 β2ミクログロブリン (β2MG) ベンス・ジョーンズ 蛋⽩ その他(IgG、TammHorsfall蛋⽩など) 尿試験紙で 検出しにくい 尿細管疾患で増加 多発性⾻髄腫など →尿試験紙()でも 疑う場合は 尿免疫電気泳動 ・ 尿 試 験 紙 は 尿 蛋 ⽩ 1 + で 蛋 ⽩ 濃 度 3 0 mg/dL、 尿 蛋 ⽩ 2 + で 1 0 0 mg/dLに 統 ⼀ さ れ て い る ・ 尿 試 験 紙 は 尿 中 ア ル ブ ミ ン (300mg/gCr以上)を 主 に 検 出 す る た め 、 尿蛋⽩定量と尿試験紙に乖離がある場合は他の蛋⽩の存在を検討する
#19. 尿蛋⽩(±)の対応 2年連続(±)なら他の蛋⽩尿と同様に精査 ・ 1 ⽇ 尿 量 を 1 L (10dL)と 仮 定 す る と 、 正 常 上 限 の 1 5 0 mg/⽇の 蛋 ⽩ 尿 は 1 5 mg/dLと な り 、 これは尿蛋⽩(±)に相当するため、尿蛋⽩は(+)から陽性と判断する考え⽅がある ・⼀⽅『CKD診療ガイド2024』には 「尿蛋⽩(±)の約60%が微量アルブミン尿相当以上だったとの検証結果もあり、 健診で2年連続尿蛋⽩(±)の場合には医療機関へ受診勧奨を⾏い、 医療機関では随時尿で尿蛋⽩/尿Cr⽐を算出し評価することが望ましい。」 と 記 載 が あ る (『CKD診療ガイド2024』 p.17-20の記載を⼀部改変して引⽤) <結論> ・1年のみ(±) → 翌年の健康診断でフォロー ・2年連続(±) → 他の蛋⽩尿陽性と同様に精査 19
参考文献と関連資料
#20. 参考⽂献 20 ・CKD診療ガイドライン2023(東京医学社) ・CKD診療ガイド2024(東京医学社) ・「型」が⾝につく蛋⽩尿・⾎尿の診かた・考えかた(⽇本医事新報社) ・誰も教えてくれなかった尿検査のアドバンス活⽤術(医学書院) ・ジェネラリストのための内科診断リファレンス第2版(医学書院) ・Up To Date 閲覧⽇︓2024/09/08 Assessment of urinary protein excretion and evaluation of isolated non-nephrotic proteinuria in adults