#4.
西洋式の食生活では1日だいたい600-900 mOsmの溶質を尿中に排泄している。
尿の濃縮と希釈能力は50-1200 mOsm/Lである。
600 mOsm/day排泄するとして、最大尿量は600/50で12L、最小尿量は600/1200で0.5Lとなる。これより水分摂取が多いと過剰な水分を排泄できず低Na血症になる。0.5Lより少ないと余分な溶質が排泄できず腎不全となる。 尿浸透圧
#5.
溶質のもとになるのは、主にタンパク質と電解質。糖分や脂肪摂取は溶質負荷とはならない。
極端な食事で溶質摂取が少ない場合、例えば100 mOsm/dayのときは、2 L以上の飲水で低Na血症をきたすことになる。 Eur J Endocrinol. 170:G1-47, 2014. 尿浸透圧 低ナトリウム血症鑑別フローチャート ※詳細は低ナトリウム血症のスライド参照
#6.
腎機能障害進行とともに尿浸透圧の上限が減少していく。腎不全患者では尿浸透圧を高くすることができない。AKIで尿浸透圧が500 mOsm以上高い場合は腎前性が示唆される。 尿浸透圧 [mOsm/L] 血清Cr [mg/dL] BMC Nephrol. 16:46, 2015. 尿浸透圧
#7.
尿蛋白・アルブミン
#8.
尿蛋白定量は尿の濃縮具合の影響を除外するため、Crも一緒に測定をし、Crで除した値を使用する。Urinary protein creatinine ratio(UPCR)という。単位は[g/gCr]が通常使用される。
尿蛋白定量UPCRはネフローゼ症候群の診断、CGA分類、CKDでの心血管死亡、腎予後予測に重要な指標である。
UPCRは1gあたりのCr排泄量に対する尿蛋白量となり、男性であればだいたい1日あたりのCr排泄量が1gのため1日排泄量に近似できるとされる。女性や高齢者ではCr排泄量は1 gにならないためUPCRを1日蛋白排泄量として考えた場合、過剰評価となる。 尿蛋白定量
#9.
Ninomiya T, et al. J Am Soc Nephrol. 20:1813-21, 2009. 心血管イベント 尿蛋白・アルブミン定量 尿アルブミン量増加と腎機能低下は独立して心血管および腎イベントを増加させる。 ADVANCE試験のサブ解析。55歳以上の糖尿病患者11,140人の解析結果。 腎イベント
#10.
尿アルブミン測定もCrと一緒に測定をし、Crで除した値を使用する。Urinary albumin creatinine ratio(UACR(もしくは単にACR))という。単位は[mg/gCr]が使用されることが多い。
尿アルブミン測定は高価(102点、ちなみに尿蛋白は7点)であり、保険上糖尿病、または糖尿病早期腎症に対し3か月に1回。顕性腎症で尿蛋白でなく尿アルブミンを定量する意義は乏しい。 尿アルブミン定量
#11.
尿蛋白と尿潜血がでているときに、糸球体性か非糸球体性かの判別に蛋白定量が有用な時がある。
尿Alb/TP比>0.59で感度97.3%、特異度100%で糸球体性といえる。 Noriko Ohisa, et al. Am J Kidney Dis. 52:235-41, 2008. W G Guder, et al. Clin Biochem. 26:277-82, 1993. 尿中IgGが高値(IgG/Alb比=>0.2)ならば、下部尿路からの出血を考える。(尿Alb >100 mg/gCrのとき) 糸球体性か非糸球体性か
#12.
尿ナトリウム定量
#13.
基本的に尿ナトリウムはRAA系亢進により尿中の排泄は低下する。低Na血症、高Na血症やvolume depressionの場合に鑑別診断や輸液療法において有用な指標となる。
低Na血症で尿浸透圧が100 mOsm/kgより大きく、尿Naが30 mmol/L未満の場合は低有効動脈血液量を鑑別に挙げるとされる(hypovolemic hyponatremia)。 尿ナトリウム定量
#14.
(中略) Eur J Endocrinol. 170:G1-47, 2014. 尿ナトリウム濃度 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症鑑別フローチャート ※詳細は低ナトリウム血症のスライド参照
#15.
■ Fractional Excretion of sodium (FENa)
=(尿中へ排泄されたNa)/(糸球体で濾過されたNa)
=(UNa×尿量)/(PNa×GFR)
GFRをCCrで代用し(UCr×尿量)/PCrを代入
= (UNa/PNa )/ (UCr/ PCr)となる
1%がカットオフとされているが、Na摂取量、GFR、利尿薬の影響を受けることに留意。また経時的に評価を継続することも有用。
尿ナトリウム定量
#16.
■ 24時間食塩摂取量(g)
=蓄尿Na [mEq/day]/17
■ Spot尿での24時間食塩摂取量推定
<田中法>
・ 24時間尿Na排泄量(g/日)=21.98×〔随時尿Na(mEq/L)/随時尿Cr(mg /dL)/10×24時間尿Cr排泄量予測値〕0.392
・ 推定1日食塩摂取量(g/日)=24時間尿Na排泄量(mEq/日)÷17
*24時間尿Cr排泄量予測値(mg/日)=体重(kg)×14.89+身長(cm)×16.14-年齢×2.04-2244.45
ほか川崎法、INTERSALT formulaがあるが、いずれも疫学研究には使用できるが、個々の患者では誤差が大きく実臨床では信頼性にかけるため使用できない。あくまで参考所見。 尿ナトリウム定量
#17.
尿クロール定量
#18.
代謝性アルカローシスの鑑別で用いる。
嘔吐や胃液吸引により代謝性アルカローシスとなる。このとき尿中に陰性に荷電しているHCO3-が排泄が多くなり、その陰性荷電にひかれてNa+も排泄されてしまうため、尿中Na濃度は高値となる。
したがって尿中Naは細胞外液量減少の指標とならず、代謝性アルカローシスの時は尿中Cl値を細胞外液量や有効循環血漿量の指標として用いる。カットオフは20 mEq/L
高度の低K血症(2mEq/L以下)や尿細管障害があるときは尿中Clも細胞外液量や有効循環血漿量の指標にならない。
尿クロール定量
#19.
Kamel SK, et al. Kidney Int Rep. 6:1211-1224, 2021. 尿クロール定量 嘔吐 急性 慢性 利尿薬 急性 慢性 有効循環血液量が低下している患者での尿中Na濃度と尿中Cl濃度
#20.
尿カリウム定量
#21.
■腎でのカリウム排泄能力は非常に余裕があるため、尿中のKを気にするときは低K血症の時である。 健常者に1日400 mEqのカリウムを経口で負荷したときの血清Kと尿Kとアルドステロンの推移 UpToDate T J Rabelink, et al. Kidney Int. 38:942-7, 1990. 尿カリウム定量
#22.
■低K血症時の尿中K排泄の評価方法としては3つ。
UKが>20 mmol/L以上
UK/UCr >17.6-22.1 mEq/gCr以上 (単位に注意)
TTKG >3-4以上 ■TTKG TransTubular potassium gradient
腎臓でのK排泄量の指標。
水再吸収が行われる前の尿細管内K濃度と血漿K濃度の比 TTKG = (尿中カリウム / 血清カリウム) / (尿浸透圧 / 血清浸透圧)
={(尿中カリウム) / (尿浸透圧 / 血清浸透圧)} /血清カリウム
尿カリウム定量
#23.
TTKG TransTubular potassium(K) Gradient
■TTKGが有効な前提条件
アルドステロンが作用するSegmentでの浸透圧が血漿浸透圧とほぼ等しい。
アルドステロン作用後、IMCDではKの排泄は行われず、水の再吸収のみが行われる。
尿浸透圧が血漿浸透圧より高い。
尿中Na濃度が25mEq/L以上
(Naと交換でKは排泄されるため) ➡その後、IMCDにおいて尿素が再吸収され、浸透圧が大きく変化することが明らかとなり、前提条件が崩れたため使用を推奨しない、とTTKGを提唱したHalperin自身が論文を出している。 Miner Electrolyte Metab. 12:234-8, 1986. Curr Opin Nephrol Hypertens. 20:547-54, 2011.
#24.
Shih-Hua Lin, et al. Arch Intern Med. 164:1561-6,2004. 細胞内シフト型低K血症と尿排泄増加型低K血症での尿中K量の評価 尿中K濃度ではあまり区別がつかない。 尿中K濃度 [mmol/L] 血漿K濃度 [mmol/L] 尿カリウム定量
#25.
Shih-Hua Lin, et al. Arch Intern Med. 164:1561-6,2004. TTKG 血漿K濃度 [mmol/L] TTKGではしっかり区別がついている。 使用は推奨されていないが 尿カリウム定量
#26.
Shih-Hua Lin, et al. Arch Intern Med. 164:1561-6,2004. 尿中K/Cr比 [mmol/mmol] 血漿K濃度 [mmol/L] 尿中K/Cr比でもしっかり区別がついている。
TTKGが推奨されていない現状では尿K/Cr比が有効な指標と思われる。
腎以外の原因で低K血症の時は、K/Cr比は1.5 mmol/mmol (13.3 mEq/gCr)未満となり、高K血症時には20 mmol/mmol (177 mEq/gCr)を超える。 尿カリウム定量 Halperin ML. Afr J Nephrol. 20:22-4,2017.
#27.
神経性食思不振症や神経性過食嘔吐症の場合、しばしば尿Kが増加する。
理由としては、隠れて利尿薬を使用しているケースや尿のアルカリ化や低マグネシウム血症、二次性のアルドステロン症などが原因と考えられる。
そうした場合、尿Kの検査だけでは鑑別できないが、尿Na/尿Clが鑑別に役立つという報告もある。 尿カリウム定量
#28.
低カリウム血症の原因別尿中K排泄 神経性食思不振症* 下剤使用 利尿薬中止 利尿薬使用 Gitelman症候群 Bartter症候群 神経性食思不振症* 下剤使用 利尿薬中止 利尿薬使用 Gitelman症候群 Bartter症候群 dRTA Kun-Lin Wu, et al. Am J Med. 130:846-855,2017. *神経性過食嘔吐症含む
dRTA;遠位尿細管性アシドーシス TTKG 尿中K/Cr比(mmol/mmol) dRTA 神経性食思不振症や神経性過食嘔吐症の場合でも、尿Kが増加する。
TTKGも尿中K/Cr比も上昇するため、尿中Kのみでは鑑別が困難。
一方下剤使用によるものは、尿中K排泄は低下しているのがわかる。
下痢でも低マグネシウム血症や脱水による二次性アルドステロン症をきたした場合は尿中K排泄は増加する。
#29.
神経性食思不振症* 下剤使用 利尿薬中止 利尿薬使用 Gitelman症候群 Bartter症候群 神経性食思不振症* 下剤使用 利尿薬中止 利尿薬使用 Gitelman症候群 Bartter症候群 dRTA dRTA Kun-Lin Wu, et al. Am J Med. 130:846-855,2017. *神経性過食嘔吐症含む
dRTA;遠位尿細管性アシドーシス 低カリウム血症の原因別尿中Na+/Cl-排泄 嘔吐などによると尿細管に重炭酸が多くなることにより、Na+排泄は増加するため、尿Na+/Cl-はそういった患者では有用な指標になる。
尿Na+/Cl-比(mmol/mmol) 尿FENa+/FECl-比
#30.
神経性食思不振症* 下剤使用 利尿薬中止 利尿薬使用 Gitelman症候群 Bartter症候群 dRTA Kun-Lin Wu, et al. Am J Med. 130:846-855,2017. *神経性過食嘔吐症含む
dRTA;遠位尿細管性アシドーシス すこし余談ですが 尿中のCa/Cr比は利尿薬、Bartter症候群、遠位型尿細管性アシドーシス以外では上昇してこないため、さらなる病態解釈に使用できる。
尿Ca2+/Cr比(mmol/mmol)
#31.
尿尿素窒素
#32.
■組織蛋白や食事蛋白の分解により生じたアミノ酸の分解産物であるアンモニアが、肝臓の尿素サイクルで代謝されて尿素となる。臨床的に使用する場合は主に以下の3つ
1日蛋白摂取量の計算
Maroniの式 蛋白摂取量[g/day]
=(尿中尿素窒素[g/day]+0.031x体重)x6.25
FEUNを計算
FEUN<35%で腎前性急性腎不全。利尿薬使用などでNa排泄量が修飾されている場合に使用。 尿中尿素窒素定量の使い道
#33.
窒素バランス
栄養の指標の一つ。生体はエネルギーが不足すると、筋肉などの体タンパク質を分解したアミノ酸からエネルギーを産生します。アミノ酸の代謝産物である尿素は尿中に排泄されるので、その排泄量を調べることでエネルギーの利用状況を知ることができる。
窒素バランス(g/day)
=〔投与アミノ酸(g)/6.25〕-〔尿中尿素窒素g/day)×5/4〕
正の状態 摂取(N)>排泄(N):成長期、妊娠
平衡状態 摂取(N)=排泄(N):健常成人
負の状態 摂取(N<排泄(N):栄養不良状態、術後、感染症、重度の外傷、糖尿病 尿中尿素窒素定量の使い道
#34.
尿尿酸
#35.
尿酸は糸球体で自由に濾過をされる。最終的な排泄は濾過された10%程度となり、90%が尿細管で再吸収を受ける。
尿細管では分泌有意なセグメントと吸収有意なセグメントがあるため、古典的にな尿細管でのモデルとして、4-コンポーネントモデルが提唱されていた。 腎での尿酸排泄 4-コンポーネントモデル 1. 濾過 2. 再吸収 3. 分泌 4. 分泌後
再吸収 (99%) (50%) (40%) このモデルは生理学的、薬理学的な結果より推測されたもので、分子生物学的に証明されたものではなかった。 2001年に尿酸トランスポーターのURAT1が発見されて以降、尿細管で尿酸の分泌と再吸収を担う輸送体が発見されこのモデルは過去のものとなった。
(現在の輸送体モデルに関しては
「低ナトリウム血症」の「SIAD(H)での低尿酸血症」を参照) 細谷龍男.慈恵医大誌. 121:49-54, 2006.
#36.
腎での尿酸排泄の指標としてはFEUAが使用される。
正常値は5.5-11.1%
ADHはV1受容体を介して腎尿酸排泄を亢進させることが示唆されている。尿崩症では低尿素窒素、高尿酸になることが多い。尿酸排泄率はADH作用の一つの指標となる。 尿酸排泄 ■FEUAの活用
低Na血症の鑑別において、利尿薬使用時は利尿薬による低Na血症かSIADHによるものかの鑑別にFEUAが有用であることが報告されている。
FEUA=<12%であれば、SIAHDというより、利尿薬による塩分喪失が主因の低ナトリウム血症の可能性が高いと言える。
Wiebke Fenske, et al. J Clin Endocrinol Metab. 93:2991-7, 2008.
#37.
腎前性腎不全 FEUA FEUA [%] 5 腎前性の診断にFEUAはカットオフ12%とすると感度特異度はそこまで高くないが、5%とすると特異度は上がる。低NaでSIADHかどうかの判定には12%がカットオフとしている。 J Am Soc Nephrol. 4:1429-37, 1994. 腎前性または腎性のAKI患者でFEUAを評価した結果。 腎性 腎前性
#38.
尿Ca検査
#39.
尿中のCaはFECaとmg/gCrの2種類が使われることが多い。鑑別で尿中のCaが重要となるケースは少なく、Bartter症候群とGitelman症候群の区別や高Ca血症の鑑別診断で使用される。
尿のCa排泄が低下するため、高Ca血症をきたすものは3つ。
サイアザイド系利尿薬
ミルクアルカリ症候群
家族性低Ca血症性高Ca血症(familial hypocalciuric hypercalcemia, FHH)
である。
尿Ca検査
#40.
高Ca血症診断アルゴリズム FECa<0.0115のFHHに対する感度は85%、特異度は88%、陽性的中率は85%であり、FECa>0.02だとFHHは否定できる。pPTH(500-1000人に1人)に比べ、FHHはかなりまれな疾患(78,000人に1人)なので慎重に診断。
pPTH患者1000人でのFECaの研究では2/3の症例で〈0.02であった報告もあり、0.02未満の特異度は高くはない。 A Renaghan, et al. Nephrol Dial Transplant. 33:549-551, 2018. Edwina C Moore, et al. Endocr Pract. 24:988-994, 2018. 尿Ca検査 FHH; Familial Hypocalciuric Hypercalcemia
家族性低Ca尿症性高Ca血症
#41.
尿中Ca濃度の測定はビタミンDやCa製剤投与時に高カルシウム血症をきたしていないかを知るためにも有用。高カルシウム尿症は、尿路結石や腎障害の原因になると考えられており、UCa/Cr>200㎎/gCrの高カルシウム尿症を呈した時は減薬が必要。
サイアザイド利尿薬では尿中Ca排泄は低下するが、ループ利尿薬では尿中Ca排泄は増加する。 尿Ca検査
#42.
尿リン検査
#43.
尿中リン排泄の評価で使用するものは以下の4つ。
FEPO4 リン酸排泄率
低P血症ではFEPO4が5%以上で排泄亢進。
24時間排泄iP
低P血症では100mg/day以上で排泄亢進。
%TRP 尿細管リン再吸収率
(1-FEPO4)*100
④ TmP/GFR 尿中リン酸排泄閾値
次のページ 尿リン検査
#44.
FEPO4はGFRの影響を受けるが、TmP/GFRはGFRから独立した腎臓でのリン酸の再吸収閾値と血清リン濃度との関連を知る指標である。(正常値2.6‐4.4 mg/dL)
「Tmp/GFRが低下している」というのは腎臓のリン酸の再吸収閾値の低下(尿中へのリン酸の排泄が始まる血中リン酸濃度の低下)、つまり腎臓でのリン酸の再吸収の減少を意味する。
TmP/GFRを血清Ca濃度異常時の腎における副甲状腺ホルモン作用を知るための指標(低いとPTH作用亢進、高いと作用低下)として使用できる。 %TRP=<0.86の場合
Tmp/GFR =%TRP x 血清リン
%TRP>0.86の場合
TmP/GFR = (0.3 x %TRP)/(1-(0.8 x %TRP)) x 血清リン TmP/GFR 尿中リン酸排泄閾値
#45.
近年尿中へのリン排泄量と尿細管障害の関係が報告されている。
CKD進行に関してはこれまで糸球体内圧という観点でCKD進行予防が考えられてきた。ARB、SGLT2阻害薬のCKD進行予防効果は糸球体内圧低下という機序を介したものである。
CKD進行予防の新たな視点として単位ネフロン当たりのリン排泄量が増加することにより、尿細管障害が誘導され、CKD進行に寄与していることが明らかになってきている。 尿中リン酸排泄と尿細管障害 重要な視点と考えられるので少し詳しく扱いたいと思います。
#46.
生体でのCaとPの挙動 Makoto Kuro-O. Curr Opin Nephrol Hypertens. 32(4):344-351, 2023. 腸管で食べ物からリンが吸収され、生体内に入るとCaと増加したリンが溶解度をこえると非結晶性のリン酸カルシウムが析出してくる。 Kazuhiro Shiizaki, et al. J Clin Invest. 131(16):e145693, 2021. 非結晶性
CaPi 非結晶性
CaPi 500 nm 電子顕微鏡写真
#47.
生体でのCaとPの挙動 Makoto Kuro-O. Curr Opin Nephrol Hypertens. 32(4):344-351, 2023. 非結晶性のCaPiはFetuin-Aという蛋白と結合して、CPPを形成する。最初に形成されるCPPを CPMという。 Fetuin-Aは陰性荷電しているが、CPMは電気的に中性となり、糸球体を通過し尿中へ排泄される。 非結晶性
CaPi calciprotein particle, CPP
calciprotein monomer, CPM
#48.
生体でのCaとPの挙動 Makoto Kuro-O. Curr Opin Nephrol Hypertens. 32(4):344-351, 2023. 腎不全だと糸球体から十分に濾過されず、また血中リン濃度も上昇してくるため、CPMはCPP1へと成熟していく。そしてCPP1は骨に作用してFGF23の分泌を亢進させる。 非結晶性
CaPi calciprotein particle, CPP
calciprotein monomer, CPM
#49.
生体でのCaとPの挙動 Makoto Kuro-O. Curr Opin Nephrol Hypertens. 32(4):344-351, 2023. さらにCPP1は結晶化したCaPiを含むCPP2へと成熟していく。CPP2は細胞毒性を持ち、アポトーシスを誘導する。(マグネシウムやビスフォスフォネートはCPP2への成熟を抑制する。) 非結晶性
CaPi calciprotein particle, CPP
calciprotein monomer, CPM
#50.
生体でのCaとPの挙動 Makoto Kuro-O. Curr Opin Nephrol Hypertens. 32(4):344-351, 2023. 非結晶性
CaPi calciprotein particle, CPP
calciprotein monomer, CPM さらにCPP1は結晶化したCaPiを含むCPP2へと成熟していく。CPP2は細胞毒性を持ち、アポトーシスを誘導する。(マグネシウムやビスフォスフォネートはCPP2への成熟を抑制する。) 尿細管内でCPP2が形成された場合尿細管障害をきたすと考えられる。
尿細管内でCPP2は形成されるのか?
#51.
尿細管腔でのCPP2は形成される Kazuhiro Shiizaki, et al. J Clin Invest. 131(16):e145693, 2021. リン酸カルシウム結晶に結合する蛍光色素を用いたマウス実験で高リン食で近位尿細管S3セグメントに粒子状のシグナルが検出された。 通常食 高リン食 リン酸カルシウム結晶は赤く光る。
#52.
尿細管腔でのCPP2は形成される Kazuhiro Shiizaki, et al. J Clin Invest. 131(16):e145693, 2021. リン酸カルシウム結晶に結合する蛍光色素を用いたマウス実験で高リン食で近位尿細管S3セグメントに粒子状のシグナルが検出された。 通常食 高リン食 リン酸カルシウム結晶は赤く光る。 では、尿細管内でリンがどの程度の濃度になったら尿細管障害をきたしてくるのだろうか?
#53.
近位尿細管腔でのリン濃度の推定 血清中と原尿中のリン濃度は等しく、近位尿細管の下流に達した時のリンの濃度は排泄率をかけた値となる。また近位尿細管では70%水分も再吸収されるため、濃縮係数3.33を掛けて計算をする。 Kazuhiro Shiizaki, et al. J Clin Invest. 131(16):e145693, 2021. ePTF; estimated phosphate concentration of proximal tubule fluid, 推定近位尿細管リン濃度
Sp;血清リン濃度
リン排泄率 血清リン濃度は式から最終的に消える。リン負荷が大きな問題。
#54.
ePTFと尿細管障害・FGF23 FGF23が上昇してくるePTFp濃度と尿細管障害のマーカーであるL-FABPが上昇してくるePTFp濃度は同じで、2.3 mg/dLを超えてくると障害をきたしてきていた。 黒尾誠.腎と透析.95(3):277-82., 2023.
#55.
FGF23と腎イベント 2型糖尿病患者でePTFpが上昇してくるFGF23の値をカットオフとして、腎イベントの発現率をみたところ、FGF23<53で有意に腎イベント発生が少ない結果となっていた。 Kazuhiro Shiizaki, et al. J Clin Invest. 131(16):e145693, 2021.
#56.
FGF23と腎イベント 2型糖尿病患者でePTFpが上昇してくるFGF23の値をカットオフとして、腎イベントの発現率をみたところ、FGF23<53で有意に腎イベント発生が少ない結果となっていた。 Kazuhiro Shiizaki, et al. J Clin Invest. 131(16):e145693, 2021. まだePTFpを指標にした臨床研究の結果はないが、今後の研究結果がまたれる。
#57.
尿Mg検査
#58.
低Mg血症の原因は腎排泄亢進か腸管の吸収低下、あるいは排泄の亢進である。
尿中Mg>24㎎/日、あるいはFEMg>2.5%であれば腎排泄亢進が原因と考える。
FEMg = UMg x SCr/(0.7 x SMg) x UCr ■腎でのMg排泄亢進の原因
多尿
薬剤(ループ利尿薬、サイアザイド利尿薬、シスプラチン、アムホテリシンB、カルシニューリン阻害薬、アミノグリコシド、ホスカルネット、アルコール、抗EGFR抗体)
先天性疾患による腎排泄増加(Bartter症候群、家族性低Mg血症(Claudin16/19、CaSR、TRPM6、FXYD2などの変異)) 尿Mg検査
#59.
ループ利尿薬は短期的には尿中Mg排泄を増加させる。長期的には遠位尿細管でのMg再吸収が起きるため、尿中Mg排泄は変化しない。
サイアザイド系利尿薬でもCa排泄とは異なり、尿中Mg排泄は増加する。
高Ca血症でもK再吸収を担うROMKの機能低下により、尿中Mg排泄は増加する。
しかし原発性副甲状腺機能亢進症による高Ca血症ではPTHの直接的なMg再吸収促進作用があるため尿中Mg排泄は増加しない。 尿Mg検査
#60.
シクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬(CNI)投与で低Mg血症が生じる。これは遠位曲尿細管に存在してMgの再吸収を担っているTRPM6の発現が低下し、尿Mg排泄が亢進するためである。 カルシニューリン阻害薬とMg CNI投与で腎機能障害が生じるが、低Mg血症を治療(経口でMg投与)することで、間質の線維化を完全に抑制できたというラットでの実験結果がある。CNI投与時には血清Mgに注意を払う必要がある。 Tom Nijenhuis, et al. J Am Soc Nephrol. 15(3):549-57, 2004. Katsuyuki Miura, et al. Transplantation. 73(3):340-7, 2002. CNIはほかに尿中K排泄を低下させ、高カリウム血症をきたしたり、尿中尿酸排泄も低下させ、高尿酸血症をきたす。尿中リン排泄を亢進し、低リン血症もきたす。
#61.
尿細管マーカー検査
#62.
■NAG N-acetyl-b-D-glucosaminidase
尿細管細胞が障害を受けると、尿細管上皮細胞のライソソームから尿に逸脱する。
若干の日内変動があり、朝が高く、日中から夜間にかけて排泄量が少なくなるため、24時間蓄尿での評価が望ましい。随時尿の場合早朝尿を用いるか、Cr比で評価する。(7U/L未満、0.9-2.4U/gCr未満)
pH4.0以下、pH8.0以上では失活によって見かけ上低値となる。 尿細管マーカー検査
#63.
■b2ミクログロブリン b2-macroglobulin, b2MG
分子量11,800と小さいことから、糸球体を自由に通過し、尿細管で99.9%が再吸収される。近位尿細管細胞が障害を受けると、再吸収が低下し尿中排泄が増加する。
pH5.5以下の酸性尿中では不安定で変性しやすく偽性低値を示す。
ウイルス感染、悪性腫瘍、自己免疫疾患などでは血中b2MGは増加し、尿中排泄も増加する。
尿pHの影響を受けないα1MGも尿細管のマーカーとなりえるが、濃度の変動幅が小さいことと測定法により測定値のばらつきがあることからバイオマーカーとしては使用しにくい。 尿細管マーカー検査
#64.
糸球体疾患と尿細管疾患での尿中β2MGの上昇の程度を腎機能別に結果を解析した結果。 基準上限との比 腎不全が進行すると、糸球体疾患でも尿中β2MGは上昇し、鑑別には使用しずらくなる。 3.2 44 68 80 J Clin Pathol. 45:561-7, 1992. 腎機能と尿中β2MG
#65.
急性腎不全バイオマーカー
#66.
■NGAL (neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin)
分子量25kDaのリポカリンスーパーファミリーに属する蛋白で好中球分泌顆粒から発見された。虚血や炎症に速やかに反応して、Henle上行脚や集合管に発現し尿中や血中に分泌される。
心臓手術後、敗血症、薬剤性のAKIのバイオマーカーとして注目されている。
2017年2月から保険診療が可能となった。算定可能回数は診断時の1回とAKIに対する1連の治療につき3回が上限となる。210点
CKDでも糖尿病、非糖尿病にかかわらずNGALが高いほどCKD進行と関連していた報告があり、CKDの進行予測因子としての可能性もある。 急性腎不全バイオマーカー Amanda H Anderson, et al. Am J Kidney Dis. 77(1):56-73.e1, 2021.
#67.
■L-FABP (ヒトL型脂肪酸結合蛋白)
分子量14kDaのリポカリンスーパーファミリーに属する脂肪酸結合蛋白。腎臓の近位尿細管上皮細胞での虚血などによる酸化ストレスが、遊離脂肪酸を細胞毒性の強い過酸化脂質に変換させると、L-FABPはこの過酸化脂質と強く結合し、尿細管腔へ排出することにより腎保護的に作用すると考えらえている。
尿中のL-FABPの上昇は尿細管障害と強く関連している。
NGALよりも膿尿や血尿の影響を受けにくい。
心臓手術後、敗血症、薬剤性のAKIのバイオマーカーとして注目されている。
2011年から保険診療が可能となった。算定可能回数は3か月に1回に限られている。210点
CKDの進行予測にも使用でき、尿蛋白よりも感度が高いといわれている。中等度CKD(CCr 45程度)を対象とした研究ではCKD進行した群では有意にL-FABPが高値でカットオフは17.4 mg/gCrであった。
急性腎不全バイオマーカー Atsuko Kamijo, et al. J Lab Clin Med. 145(3):125-33, 2005. Maja Mizdrak, et al. J Pers Med. 12(4):548, 2022.
#68.
KIM-1(kidney injury marker-1)
正常腎ではほとんど発現していないが、腎虚血後の近位尿細管細胞の管腔側にで特異的に発現亢進し、KIM-1の一部が尿中に排泄される。回復期に上昇するため、NGALやL-FABPよりも上昇は遅い。酸性尿で安定性が著しく低下するため、安定した測定に課題がある。
IL-18
IL-1ファミリーに属する分子量22kDaの炎症性サイトカインで、単球やマクロファージ以外にも虚血や腎障害で近位尿細管細胞内でも産生が亢進し、炎症反応を惹起する。KIM-1と同様にNGALやL-FABPよりも上昇は遅く、敗血症や悪性腫瘍でも上昇するので特異度に問題がある。 保険適応でない急性腎不全バイオマーカー
#69.
AGT(Angiotensinogen)
腎ではRASの構成成分がすべて存在しており、腎臓内でRASが完結している。成人の高血圧患者、IgA腎症患者、2型糖尿病患者において尿中AGTがその発症と進展のバイオマーカーとして有用であることが報告されている。
TIMP-2、IGFBP7
TIMP-2, IGFBP7はともに細胞周期に関連する蛋白で、G1細胞周期に停止させる。細胞周期を呈しさせることで細胞死を抑制し、腎保護に働くと考えられている。
AKIの発症予測として優れたバイオマーカーであることが報告されている。 保険適応でない急性腎不全バイオマーカー
#70.
尿アニオンギャップ
#71.
腎での酸排泄は以下の3つの方法で行われる。
尿の酸性化
滴定酸(主にリン酸)の排泄
アンモニウムイオンの排泄
この中で1,2は代謝性アシドーシスなど酸排泄が必要な時に変化できるのは限定的で、最も重要なのはアンモニウムイオン(NH4+)としての排泄である。
AG正常の代謝性アシドーシスの鑑別で腎での酸排泄障害によるものか、腎以外によるものか(主に下痢)を判別するために、尿中のNH4+の量を調べる必要がある。 腎での酸排泄 坂口悠介.日内会誌.111(5):949-56, 2022.
#72.
日常臨床で尿中のNH4+を直接測定するためには、尿採取から3時間以内に測定することが必要だったり、尿にウレアーゼ産生菌がいないことなど条件があるためルーチンにおこなうことできない。
尿中のNH4+の量を推測する指標として尿アニオンギャップがある。
■前提条件
尿中の陽イオンと陰イオンの総和は等しい。
尿中の主要な陽イオンはNa+、K+、NH4+であり、陰イオンはCl-、HCO3-、リン酸などである。
HCO3-は代謝性アルカローシス以外の状態ではほとんどが近位尿細管で再吸収を受ける。
リン酸や硫酸イオンの1日排泄量はほぼ一定で約80 mEqである。 尿アニオンギャップ 1日の尿中イオン排泄 Na+ + K+ + NH4+= 80 + Cl-
#73.
Urinary AG = Na+ + K+ - Cl- = 80 - NH4+ 腎での酸排泄が正常なら代謝性アシドーシスの状態では近位尿細管でのアンモニアの酸性が亢進し、酸の排泄が促進されるため、尿中NH4+が増加する。その結果、尿AGは負の値をとる。 尿アニオンギャップ
#74.
腎不全や遠位尿細管性アシドーシスの状態で腎での酸排泄に問題がある場合はNH4+の排泄が低下するため代謝性アシドーシスの状態にもかかわらず、尿AGは正の値をとる。 尿アニオンギャップ
#75.
尿中浸透圧ギャップ
#76.
尿AGが正であっても腎での酸排泄障害と鑑別が困難な場合がある。それは測定されない陰イオンが尿中に増える場合であり、糖尿病性ケトアシドーシスおよび飢餓でのケトン尿、トルエン中毒の馬尿酸イオン排泄に伴うAG正常代謝性アシドーシスが挙げられる。
これらの病態では遠位型RTAと同様にAG正常、尿AGが正とRTAと同様のパターンを呈する。
このような病態とRTAとの鑑別には尿浸透圧ギャップが有用である。 予測尿浸透圧 2 x (Na+ + K+) + UN/2.8 + Glc/18 尿浸透圧ギャップ 尿浸透圧ギャップ=[実測浸透圧]ー[予測浸透圧]
#77.
浸透圧ギャップを2で割った値が尿中NH4+の推定値となる。
正常では尿浸透圧ギャップは10-100 mOsm/kg程度。
代謝性アシドーシスの状態で、尿浸透圧ギャップが200を超えている場合は、腎での酸排泄は出来ており、腎以外でのアシドーシスの原因(腸管からのHCO3-喪失など)と考えられらる。
尿中AGを計算するときは浸透圧ギャップも計算した方がより正確。 尿浸透圧ギャップ Mandana Rastegar, et al. Am J Kidney Dis. 69(2):296-301, 2017.
#78.
定量は常に提出するものではないですが、病態をより深く知るために欠かせない検査です。
うまく使いこなして、臨床に生かしていきましょう。 おわりに