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EBM的診断推論の基本概念と誤解
#1. EBM -診断- 東京北医療センター 総合診療科 戸田智也
#2. 問題 事前確率 50% 感度 10% 特異度 90% 事後確率は?
#3. 診断に関する誤解 検査で陽性 診断 検査で陰性 除外
事前確率と尤度比の重要性
#4. 診断に関する誤解 ○×△は 特異度 97% であり 陽性 ならほぼ 診断確定
#5. System1的な診断をSystem2的に 言語化できる 事前確率・尤度比を意識して後輩に説明できる
#6. EBM的診断推論 1. 診断の基本 2. 総論 3. 事前確率 4. 尤度比 5. ベイズの定理 6. Tips
#7. EBM的診断推論 1. 診断の基本 2. 総論 3. 事前確率 4. 尤度比 5. ベイズの定理 6. Tips
#10. 証拠から推理 (検査で事後確率) 情報を集める (問診,身体所見) 犯人を推理する (事前確率を決める) 何か事件が起こる 犯人を推理する (事前確率を決める)
診断プロセスにおける確率の変動
#11. 診断のプロセスは確率の上げ下げ C 可 能 性 B 容疑者A 容疑者B 容疑者C A 容疑者D D 時間
#12. 診断のプロセスは確率の上げ下げ C 可 能 性 B A病 B病 C病 A D病 D 時間
#13. EBM的診断推論 1. 診断の基本 2. 総論 3. 事前確率 4. 尤度比 5. ベイズの定理 6. Tips
#14. EBM的診断は ベイズの定理を通した 事前確率から事後確率の算出である
#15. 診断のプロセスは確率の上げ下げ 事 前 確 率 尤度比 事 後 確 率 C病 時間
ベイズの定理と事前確率の算出
#16. ベイズの定理 a b 事前確率 c 事前オッズ a b 事後確率 c c+d a a+b d 事後オッズ ×尤度比 Likelihood Ratio(LR) c d
#17. EBM的診断推論 1. 診断の基本 2. 総論 3. 事前確率 4. 尤度比 5. ベイズの定理 6. Tips
#18. 事前確率は System1的な感覚的要素も大きい 確定するルールはない
#19. 事前確率を決めるもの 疫学(流行具合,有病率) 問診 既往歴 身体所見
#20. 過去の事件 (既往歴) 社会情勢・周囲の事件 被害者との関係 過去の事件 身体的特徴・体格など (疫学:流行具合、有病率) (問診) (既往歴) (身体所見)
尤度比の解釈と診断への影響
#21. EBM的診断推論 1. 診断の基本 2. 総論 3. 事前確率 4. 尤度比 5. ベイズの定理 6. Tips
#23. 尤度比 Likelihood Ratio(LR) ベイズの定理で,診断の可能性を上下させる変数 満たす ある検査の基準 陽性尤度比(LR+) 満たさず 陰性尤度比(LR-) *感度:Sensitivity(Sn) 特異度:Specificity (Sp) Sn 1-Sp 1-Sn Sp
#24. 尤度比 Likelihood Ratio(LR) ベイズの定理で,診断の可能性を上下させる変数 ほぼ除外 そこそこ 可能性下げる 意味無し 0.2 1 0.1 そこそこ 可能性上げる 5 ほぼ確定 10 脳梗塞に対して 頭部CT陰性 虫垂炎だという 尿管結石に対して 外科医の直感 ACSに対して 尿潜血陰性 両上肢の放散する胸痛 髄膜炎に対して Jolt accentuation陰性
感度・特異度の重要性と実践
#26. Sn・Sp 一方ではダメだ! SpPin SnNout とは言うが Sn 0.1, Sp 0.9では Sn 0.9, Sp 0.1では Sn, Spの両方が重要だ
#27. EBM的診断推論 1. 診断の基本 2. 総論 3. 事前確率 4. 尤度比 5. ベイズの定理 6. Tips
#28. ベイズの定理 a b 事前確率 c 事前オッズ a b 事後確率 c c+d a a+b d 事後オッズ ×尤度比 Likelihood Ratio(LR) c d
#29. ベイズの定理 a b 事前確率 a b 30% a a+b 事前オッズ c c c+d ×尤度比 LR+ 7, LR- 0.2 d 事後確率 事後オッズ c d
#30. ベイズの定理 30 70 事前確率 30% 75% 30 30+70 事前オッズ 30 70 210 70 事後確率 210 210+70 ×尤度比 LR+ 7 事後オッズ 210 70
検査性能と事前確率の関係
#31. ベイズの定理 30 70 事前確率 30% 7.9% 30 30+70 事前オッズ 30 70 6 70 事後確率 6 6+70 ×尤度比 LR- 0.2 事後オッズ 6 (=30☓0.2) 70
#32. EBM的診断推論 1. 診断の基本 2. 総論 3. 事前確率 4. 尤度比 5. ベイズの定理 6. Tips
#33. 感度/特異度はどこに書いてある? UpToDate DynaMed ジェネラリストのための内科診断リファレンス
#34. 検査性能が良すぎる時は過信しない 複数資料で比べる 横断研究の批判的吟味では以下を特にチェック 症例数が少ない時(脱落が多い) 対象患者が実臨床と違う 疾患を疑う状況ではなく,病気のある人/病気のない人で分けられていると過大評価になる
#35. 事前確率がやはり大切 検査がアクションにつながるのは診断に迷うとき 確定診断にならない 周囲流行なし 施設入所者の誤嚥後の発熱 最流行期で家族内 インフルエンザ発生の発熱 事前割合( %) アクション変わらない インフルエンザ抗原の診断(LR +:7.0 LR -:0.3) 10 5 2 1.5 1 0.67 0.5 0.2 0.1 1% 9.2% 4.8% 2.0% 1.5% 1.0% 0.7% 0.5% 0.2% 0.1% 5% 34.5% 20.8% 9.5% 7.3% 5.0% 3.4% 2.6% 1 .0% 0.5% 10% 52.6% 35.7% 18.2% 14.3% 10.0% 6.9% 5.3% 2.2% 1.1% 20% 71.4% 55.6% 33.3% 27.3% 20.0% 14.3% 11.1% 4.8% 2.4% 30% 81.1% 68.2% 46.2% 39.1% 30.0% 22.3% 17.6% 7.9% 4.1% 40% 87.0% 76.9% 57.1% 50.0% 40.0% 30.9% 25.0% 11.8% 6.3% 50% 90.9% 83.3% 66.7% 60.0% 50.0% 40.1% 33.3% 16.7% 9.1% 60% 93.8% 88.2% 75.0% 69.2% 60.0% 50.1% 42.9% 23.1% 13.0% 70% 95.9% 92.1% 82.4% 77.8% 70.0% 61.0% 53.8% 31.8% 18.9% 80% 97.6% 95.2% 88.9% 85.7% 80.0% 72.8% 66.7% 44.4% 28.6% 90% 98.9% 97.8% 94.7% 93.1% 90.0% 85.8% 81.8% 64.3% 47.4% アクション変わらない 除外できない
実践的な診断アプローチの提案
#36. 明日から 「事前確率」を〜%と設定 検査の「尤度比」を調べる
#37. 2024年 T-GAP東京北スライドコンテスト投票結果 ナイスデザイン,おめでとうございます! 同率1位 戸田先生:グラフィックノベル風診断 海永先生:浮世絵風抄読会イントロ 沖中先生:ウィキッド風タイトル 川幡先生:某収集ケーム風選択画面 同率2位