#4.
W.B. O’Shaughessy 1809-1889 1893年 ドイツ 1826年-1837年にコレラによる2回目のパンデミックが発生。この流行で初めてヨーロッパでの感染が拡大。1 L/hrの激しい下痢・脱水でフランスだけで10万人が死亡した。 1831年イギリスの法医学者O’Shaughnessyはコレラ患者の尿や血液を解析して、コレラ患者では血液から水、塩、アルカリが欠乏していることを突き止めた。塩分の補充が治療につながるかもしれないことを提唱するが、具体的な方法までは行われなかった。 コレラの世界的流行
#5.
Thomas Latta
1796-1833 1832年O’Shaughnessyの発見をもとに、イギリスの内科医のThomas Lattaにより、コレラ患者に対し輸液を行い劇的に死亡率を低下させた、と世界で初めての輸液治療が報告された。 Latta’s solution
Na+: 68 mEq/L, Cl-:59 mEq/L, HCO3-: 9 mEq/L Latta T. Lancet 18:274-7. 1832. 輸液の黎明期 しかし、この時代消毒法の概念はなく、水・塩分の補給は出来ても、感染症で亡くなってしまう患者も多く、ただちに臨床に取り入れられたわけではなかった。
1885年イタリアの医師Cantaniにより、0.4%NaClと0.3%NaHCO3の溶液を皮下注射し、ふたたびコレラに対して輸液の重要性が再発見された。 Arnold Cantani
1837-1893
#6.
Sydney Ringer
1835-1910 1883年イギリスの薬理学者のSydney Ringerにより、NaだけでなくKやCaを混入している方が、より心臓の動きが保たれ、より生理的であることを報告。Ringer’s solutionの始まりとなる。 Ringer S. J Physiol 4:29-42, 1883. 生理学としての溶液組成の発展 Hartog Jacob Hamburger
1859-1924 1883年オランダの生理学者Hamburgerは、食塩水濃度と赤血球の形態変化を研究し、0.9%NaCl溶液が最も“生理的“であると発見。生理食塩水のはじまりとなる。生理食塩水が輸液に使われるようになったのは1891年頃からのようである。 Hamburger HJ. Lancet 198:1039-45, 1921.
#7.
Frederick Ringer
1835-1910 Ringer’s solutionを開発したSydney Ringerの弟のFrederick Ringerは長崎でホームリンガー商会を設立して、貿易事業を展開した。 旧リンガー邸 リンガーハットのRingerは彼の名前のことだそうです。
(ハットは“小さな家“という意味) 余談ですが・・・
#8.
Alexis Hartmann
1898-1968 1932年アメリカの小児科医のAlexis Hartmannは輸液により発症するアシドーシスを補正するため、リンゲル液に乳酸を添加したHartmann‘s solutionを報告した。
➡現在のハルトマン液(乳酸リンゲル液)の誕生 Hartmann AF, et al. J Clin Invest 11:345-55, 1932. Hartmann’s solution
Na+: 131 mEq/L, K+: 5 mEq/L, Ca2+: 2 mmol/L, Cl-:111 mEq/L, Lactate: 29 mmol/L 輸液成分の進歩 James Lawder Gamble
1883-1959 1932年から1942年にかけてアメリカの生理学者のGambleは、これまでの抽象的だった体液の電解質組成をGamblegramを用いて明瞭化するなど、現在の体液生理学という新しい概念を築いた。 Gamblegram
#9.
輸液製剤の開発 高津忠夫
1910-1974 1962年アメリカの小児科医ダロウやバトラーなど病態に応じた輸液組成を参考に、東大小児科の高津教授はソリタTシリーズを誕生・販売させた。
(SOLution of TAkatsuでソリタとなるよう。)
それまでは乳酸リンゲル液、生理食塩水、5%ブドウ糖液しかなかったが、この販売により患者の病態に合わせた輸液組成の選択肢が大きく広がることになる。 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?page=2&id=8527 http://ringer.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/9_66d4.html
#10.
輸液の総論
#11.
輸液でできること 輸液を始めるときには目的を明確にして必ずゴールを想定する。
患者さんの状態は一定ではないので、状態に合わせたゴールを適宜見直す。 体内水分量の補充(血管内脱水、細胞内脱水、体液分布異常)
体液組成の補正(Na、Kなど電解質や酸塩基、Albなど)
蘇生輸液(心拍出量増加)
維持輸液(絶食患者の維持)
栄養補充
ラインキープ(薬剤投与、有事に備えて)
#12.
輸液をするにあたって考えること ① 投与経路
輸液の目的を達成する最も非侵襲的な方法を選択する。 ② 輸液の目的の確認
救急外来や病棟での急変であれば蘇生輸液が最初の目的になる。
初療後、また落ち着いた入院患者さんであれば、維持輸液および補充輸液が合わさったような目的になる。※入院患者では完全に維持輸液ということはあまりない。 補充輸液の場合は何が足りなくなる病態なのか、また検査結果から何が足りなくなっているのかを把握して、補充を考える。
食事がとれない人であれば、SPN(栄養補助)・TPNが目的になる。
#13.
① 末梢
簡便、高浸透圧輸液は不可(浸透圧比3以下にする必要がある)、漏れる可能性がある。
② 中心静脈
中心静脈への投与では高浸透圧輸液(高カロリー液など)が可能で、末梢のように漏れることはない。しかし、挿入が末梢より煩雑でリスクがあることや、感染が問題となる。
アプローチはCVカテーテル(内頚・鎖骨下・鼠経)とPICC(上腕)がある。PICCの方が感染率は低く、挿入に伴うリスクも低いが、トリプルルーメンまでしかない。
③ 皮下
吸収が緩やかなため大量輸液は不可で、等張液以外は疼痛や発赤などの副作用があるため、使用できる製剤は限られている。緩和ケア・在宅などで見直されている 輸液の投与経路
#14.
④ ミッドラインカテーテル
2024年に新しくミッドラインカテーテルというものも発売された。
上腕静脈から挿入し、カテーテルの先端を腋窩静脈付近に留置する。レントゲン不要。 輸液の投与経路 https://www.cardinalhealth.jp/content/dam/corp/cah-japan/web/documents/press-release/cardinal-health-jp-news-release-20240205.pdf PICCに比べ血流感染等の合併症の発生率が少ないと言われており、静脈留置針に比べ長期間(14日間程度)の留置が可能。
PICCに比べ血栓の合併症が多いため、15日以上使用する場合はPICCが適している。
高カロリーには適していない。
#15.
感染防止のためのカテーテルの管理 ① 末梢
末梢静脈カテーテルの留置時間が72時間を超えると、血栓性静脈炎の発生率や菌の定着率が増加することが明らかになっている。静脈炎の発生率は72時間と96時間で差はないため、留置部位は72時間から96時間間隔で交換する。
② 中心静脈
CRBSIを予防するために、定期的にカテーテルを交換しても発生率は低下しない。正常に機能しており、局部的あるいは全身的な合併症を引き起こす根拠がない限り、CVカテを定期的に交換する必要はない。
透明ドレッシング剤は7日毎に張り替え、その際にはアルコールを含んだ0.5%を超える濃度のクロルヘキシジンで消毒をする。
③ 皮下
1~4日毎に注射針、チューブを交換する。 Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infection, 2011. CDC やや余談ですが…
#16.
感染防止のためのカテーテルの管理 ① 末梢
末梢静脈カテーテルの留置時間が72時間を超えると血栓性静脈炎の発生率や菌の定着率が増加することが明らかになっている。静脈炎の発生率は72時間と96時間で差はないため、留置部位は72時間から96時間間隔で交換する。
② 中心静脈
CRBSIを予防するために、定期的にカテーテルを交換しても発生率は低下しない。正常に機能しており、局部的あるいは全身的な合併症を引き起こす根拠がない限り、CVカテを定期的に交換する必要はない。
透明ドレッシング剤は7日毎に張り替え、その際にはアルコールを含んだ0.5%を超える濃度のクロルヘキシジンで消毒をする。
③ 皮下
1~4日毎に注射針、チューブを交換する。 やや余談ですが… ちなみにCDCガイドライン2011には、
「CRBSI発生を低減するため、1日1回2%クロルヘキシジンで皮膚の清拭を行うこと」
が推奨されています。ICU患者を1日1回2%クロルヘキシジンで皮膚の清拭と石鹸+水で清拭した患者より一次性血流感染症の罹患率が有意に低かった(1000人当たり感染件数4.1:10.4)そうです。 標準的にICUではやっているのでしょうか?? ※2025年3月でもCDCガイドライン2011が最新版 Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infection, 2011. CDC
#17.
カテーテル関連敗血症 ■CVカテーテル感染を起こしてしまったら、抗菌薬使用前に JAID/JSC感染症治療ガイドライン2017―敗血症およびカテーテル関連血流感染症 経皮的血液採取
の血液培養 カテ先培養 カテよりの血液培養 または で同じ菌が検出されることをもって診断。カテのほうが検出されない場合は、ほかの臓器の感染症は否定する必要がある。 と 少なくとも1セット 原則としてはカテーテル抜去と早期に抗菌薬使用を行う。
透析カテーテルでほかに挿入部位がないなど、カテーテルを温存する場合は抗菌薬ロック療法を行う。
温存した場合でも72時間後の血培で陽性の場合は抜去すべきである。 温存できることもあります。
#18.
体液分布・組成 の知識 輸液を考えるにあたって必要な
#19.
大塚製薬HPより 体の年齢別水分量 成人での体液量計算には、「体重×0.6」を行うが、高齢者やさらに脱水傾向があるようなら係数を0.5に変更することも考慮する。
#20.
細胞内液
24L 細胞外液
12L 40% 20% 細胞間質
9L 血管内
3L 15% 5% 体重 60 kg 総体液 36L 60% 体液の分布
#21.
体液の電解質組成 大塚製薬HPより 大塚製薬HPより
#22.
血管内外は蛋白質などの高分子は移動できず、電解質と水は自由に移動する。したがってアルブミンなどの高分子は血管内にとどまる。
細胞内外は電解質の移動は自由にできず、水は自由に移動する。細胞外にはナトリウムが多いため、ナトリウムは血管内および間質など細胞外の容量を増やすように働く。
尿素は水と同様に細胞内外も自由に移動するが、均一になるには時間はかかる。
全ての区画の浸透圧は等しい。 各区画の特徴 https://www.almediaweb.jp/nutrition/part1/04.html
#23.
細胞内 間質 輸液した後の各区画への分布 血管内 8 3 1 細胞外 細胞内 間質 血管内 8 3 1 細胞外 輸液した容量が輸液の種類によりどのように生体の区画に分布するかを考えてみる。 血管内に輸液を12マス分入れたと仮定する。 輸液量
12マス
#24.
アルブミンの場合 細胞内 間質 血管内 8 3 1 細胞外 アルブミンは血管内にとどまるため、全量が血管内にとどまることになる。5%アルブミンだと、血管内のアルブミンより濃度が若干濃く、血管内にむしろ間質から引き込み、入れた総量より血管内ボリュームは若干増加する。
Alb 1gの投与で循環血漿量は20mL増加するとされている。
目安としてAlb 1.0 g/dL上昇させたい場合、BW [g]のAlbを投与すればいい。 製剤の添付文書にはNa濃度は上は160 mEq/L未満と書かれている。使用に当たってはNa負荷にもなることを認識しておく必要がある。(20%アルブミン製剤で実際に測定してみるとだいたい90 mEq/Lである)
#25.
生理食塩水/5%ブドウ糖の場合 細胞内 間質 血管内 8 3 1 細胞外 輸液が生理食塩水の場合、すべて細胞外液に分布する。
したがって血管内に残るのは1/4がのこる。 細胞内 間質 血管内 8 3 1 細胞外 輸液が5%ブドウ糖の場合、すべて区画に分布する。
したがって血管内には1/12が分布する。
#26.
生理食塩水/5%ブドウ糖の場合 細胞内 間質 血管内 8 3 1 細胞外 輸液が生理食塩水の場合、すべて細胞外液に分布する。
したがって血管内に残るのは1/4がのこる。 細胞内 間質 血管内 8 3 1 細胞外 輸液が5%ブドウ糖の場合、すべて区画に分布する。
したがって血管内には1/12が分布する。 このように輸液したときに、どのように体に分布していくかに関しては古典的Starlingの法則の考えを基本にしています。
血管内に生食を入れると・・・、①血管内の静水圧が上がり、②血管内から水が出て、③静水圧と浸透圧が均衡するところで平衡状態に達するというようにです。
実際にはこんなに単純ではなく、より理解を深めるため、Starlingの法則に関して詳しく解説します。
#27.
Starlingの法則
#28.
Starlingの法則 Ernest H. Starling
1866-1927 皮下や腹腔内に注射した液体がどのように血管内に吸収されるか不明であった。1896年イギリスの生理学者のStarlingが犬の大腿に生理食塩水を注射し、人工的に血液を灌流した実験により、血管内外の静水圧、膠質浸透圧が釣り合うように水は移動するとしたStaring principleを発表した。 E H Starling. J Physiol. 19(4):312-26, 1896. Starlingは式としてあらわさなかったが、その後1927年にアメリカの生理学者Landisがカエルの実験結果などを用いて、血管内外の水分移動に関するスターリングの概念を式で表した。 Eugene M. Landis
1901-1987 C Charles Michel, et al. Acta Anaesthesiol Scand. 64(8):1032-1037, 2020. 丹羽琢哉他. 血栓止血誌. 34(6):628-632, 2023.
#29.
Starlingの式 JV/Aは毛細血管壁面積当たりの液体の移動率を示している。正の値の時は血漿から組織へ、負の値の時は組織から血漿へ液体が移動していることを示している。 Kは毛細血管濾過係数(Lp、Kfと記されることもある)。毛細血管壁の透水性と液体が透過する面積を合わせた係数。 PP-PIは血漿膠質浸透圧ー間質膠質浸透圧。血管内に引き込む力を表している。
sはStavermanの反発係数と呼ばれるもので、毛細血管壁の膠質透過性を示している。 丹羽琢哉他. 血栓止血誌. 34(6):628-632, 2023. C Charles Michel, et al. Acta Anaesthesiol Scand. 64(8):1032-1037, 2020. PC-PIは毛細血管静水圧ー間質静水圧。血管外に押し出す力 p
#30.
初期の血管内外の水の移動の考え方 Landisは1930年に初めて人での爪郭部での毛細血管圧を測定した。測定結果は毛細血管圧は35-45 mmHgから12-15 mmHgへ低下していくものであった。
間質の静水圧や膠質浸透圧を測定する技術はまだなく、無視できるほど小さいとされた。
この測定結果から毛細血管での水の出納に関して右のような動脈に近い方では血管外へ漏出するが、静脈に近くなると血管内へ水分は移動するモデルが提唱された。
σは1と近似され、Starlingの式は以下と考えられた。 毛細血管内圧(PC)[mmHg] 濾過 吸収? PP
(25 mmHg) JV/A = K(PC-PP) 動脈側 静脈側 動脈側 静脈側 動脈側ではPc> PCとなるため濾過、
静脈側ではPc> PCとなるため吸収となる。 Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. PPは25 mmHgで固定
#31.
初期モデルへの疑問 初期モデルは1960年代後半まで受け入れられてきた。
1968年ウサギの腸間膜や大網の血管での実験で、Zweifachは毛細血管よりは常に水分は濾過されており、吸収が行われているのは全く観測されなかったと報告した。そのためStarlingのモデルは再考する必要があるとした。 Benjamin W. Zweifach
1911-1997 B.W. Zweifach, et al. Microvasc Res. 1(1):83-101, 1968. C. Charls Michel
1938-2024 C C Michel, et al. J Physiol. 388(1):421-35, 1987. 1987年Michelはかつて1927年にLandisが報告した実験を再現し、毛細血管内の圧力を変化させて水分の出納をみた結果に関して、圧力を変化させた直後(transient-state)と変化させて数分経ってから(steady-state)では水の動きが大きく異なることを発見し報告した。その結果では血管内への水分の吸収は確認されなかった。
#32.
血管内圧力変化による水分の移動 毛細血管濾過率 Jv/A 10-3 mm s Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. 濾過 吸収 Steady state Transient state Transient stateは毛細血管内圧を変更した直後の水分の動きを測定した結果。これが古典的な測定結果で25 mmHgを境に吸収と濾過が切り替わっている。
Steady stateは少なくとも2分置いてから測定したもので、吸収は観測されていない。これはのちに判明した血管内への水の移動は確認されないとされた結果と一致する。 数分時間が経つだけで、どうしてこのような変化が起こるのか? 血管内静水圧
(Pc)[mmHg]
#33.
血管内圧力変化による水分の移動 これを理解するためには実験の手順を知る必要がある。
Transient stateでは、高い血管内圧に保ったのちに血管内圧を目的の低い圧力に変化させて、すぐに測定を行っている。それぞれの状態を検討してみる。 の状態 血管内から水が濾過されていくため、周囲の膠質浸透圧は低下している状況が作られる。 ※ 膠質浸透圧物質 Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. 血漿浸透圧 間質浸透圧 間質静水圧 血管内静水圧
#34.
血管内圧力変化による水分の移動 の状態 (transient) 血管内圧を低下させた直後は血管内浸透圧が高い状態で血管内への水の流入が起こる。 の状態 (Steady state) 時間がたって間質の膠質浸透圧は再び上昇し、間質圧は低下するため、血管内への水の移動は起きなくなる。 Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. 血漿浸透圧 間質浸透圧 間質静水圧 血管内静水圧
#35.
血管内圧力変化による水分の移動 の状態 (transient) 血管内圧を低下させた直後は血管内浸透圧が高い状態で血管内への水の流入が起こる。 の状態 (Steady state) 時間がたって間質の膠質浸透圧は再び上昇し、間質圧は低下するため、血管内への水の移動は起きなくなる。 Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. 血漿浸透圧 間質浸透圧 間質静水圧 血管内静水圧 この実験結果からは、
定常状態では血管内から血管外に水分は移動し、逆の吸収は起こっていない。
血管内から漏出する水分が間質の浸透圧を低下させ、静水圧を上昇させる方向に働いている。これは血管からの漏出を抑えるfeedback的な役割がある。
ということがわかる。
#36.
間質圧と膠質浸透圧の測定 1994年にsoaked wick methodという方法を用いて、上腕の間質の浸透圧と静水圧を測定した結果が初めて報告された。 DO Bates, et al. J Physiol. 477(Pt 2):355-63, 1994. 丹羽琢哉他. 血栓止血誌. 34(6):628-632, 2023. 7.4-(-2.1)で9.5 0.9*(22.4-15.4)で6.3 論文で測定されたPcは静脈圧であり、細静脈はより高い圧を呈するため、毛細血管での水分の移動を考えると次のスライドのようになる。 7.4 mmHg -2.1 mmHg 15.4 mmHg 22.4 mmHg 結果⊿P>⊿Pとなり水分は血管外へ出ていく。 p
#37.
間質圧を考慮したStarlingの法則 Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. 毛細血管内圧(PC)[mmHg] 過去の間質圧測定前のモデル 動脈側 静脈側 動脈側 静脈側 濾過と吸収の境となる血管内圧はこれまで考えられていたよりも低く、毛細血管では全ての区間にわたり、血管内の水分は漏出することが分かった。 濾過と吸収の境となる血管内圧(=Pc0) =(sPp-sPi+Pi)
#38.
組織によるStarling圧の違い Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. ほとんどの組織でも同様に血管から水分がつねに濾過されているという結果であった。
例外は腎、腸管で、どちらも吸収が役割としてあるためと考えられる。 Levick JR, Exp Physiol. 76(6):825-57,1991. 細静脈圧(PC)[mmHg] 濾過と吸収の境となる血管内圧(=Jv/Aが正となる(Pc0)) (sPp-sPi+Pi) 濾過 吸収 常に血管から水分が濾過されているとすれば、濾過された水分はその後どうなっているのか?
#39.
リンパ管への流入 血管から濾過された水分はリンパ管へ流れ、体循環へ戻る。そのリンパ流量は1日8 Lにも達すると言われている。
定常状態ではほとんどの組織では、毛細血管から水分が濾過されていることが判明した後、1990年代前半にStarlingの圧から推定される濾過量は、実際に観測されるリンパ管流量よりかなり多いことが指摘され始めた。 K Aukland, et al. Physiol Rev. 73(1):1-78, 1993. 観測結果から推定されるPc0 毛細血管内圧(PC)[mmHg] 動脈側 静脈側 濾過と吸収の境となる血管内圧(=Jv/Aが正となる) =(sPp-sPi+Pi) Thomas E Woodcock, et al. Front Vet Sci. 8:623671, 2021. あまりに測定結果が確かであることから測定誤差や局所の生理的変化ではないとされ、この計算と実測の相違(Paradox)がなぜ生じるのか、様々な理論が提唱された。
#40.
血管のグリコカリックス このParadoxを血管に存在するグリコカリックスが解決してくれた。 グリコカリックスとは一体何か? グリコカリックスは、細胞の表面を覆う糖タンパクとして、存在そのものは1960年代にすでに明らかにされていた。 末廣浩一他、日臨麻会誌 43(5):439〜443, 2023 Hans Vink 黒いのは赤血球でわずかに内側を通っているのがわかる。
Bは赤血球が通ったところを白くしている。 1996年にHans Vinkらにより、毛細血管の内腔を通る赤血球は血管の径よりも少し内側を通っている(AB)ことが報告された。
A B 血管径は5.4 mm 赤血球の通路は4.7 mm H Vink, et al. Circ Res. 79(3):581-9, 1996.
#41.
血管のグリコカリックス このParadoxを血管に存在するグリコカリックスが解決してくれた。 グリコカリックスとは一体何か? グリコカリックスは、細胞の表面を覆う糖タンパクとして、存在そのものは1960年代にすでに明らかにされていた。 末廣浩一他、日臨麻会誌 43(5):439〜443, 2023 Hans Vink 1996年にHans Vinkらにより、毛細血管の内腔を通る赤血球は血管の径よりも少し内側を通っている(AB)ことが報告された。
A B C D H Vink, et al. Circ Res. 79(3):581-9, 1996. さらにグリコカリックスを破壊すると、赤血球は血管と同じ径となる(CD)ことが報告された。
この論文でグリコカリックスは血管の透過性に関与している可能性は言及されているが、詳しくは触れられていない。
#42.
血管のグリコカリックスの構造と役割 グリコカリックスは細胞に付着したプロテオグリカンを主軸として、枝のようにグリコサミノグリカン(GAG)鎖がつながっている。そこにアルブミンやヒアルロン酸、トロンボモジュリン、アンチトロンビンIII(ATIII)などが結合している。 Cosimo Chelazzi, et al. Crit Care. 19(1):26, 2015. 血栓形成防止やNO産生からの血管拡張作用、白血球の接着や移動の制御なとの役割があるとされ、とくに血管の透過性に関して中心的な役割がある。
#43.
血管内皮の構造 RH Adamson, et al. J Physiol. 557(Pt 3):889-907, 2004. 1 cm2当たりの血管内皮細胞の周囲長の累計は12-20 mにもなる。 タイトジャンクション グリコカリックス タイトジャンクション そもそも血管内皮からどのように水分は漏れているのか? 細胞間隙が閉じていないことがわかる。
#44.
血管内皮の構造 RH Adamson, et al. J Physiol. 557(Pt 3):889-907, 2004. 1 cm2当たりの血管内皮細胞の周囲長の累計は12-20 mにもなる。 タイトジャンクション グリコカリックス タイトジャンクション そもそも血管内皮からどのように水分は漏れているのか? 細胞間隙が閉じていないことがわかる。 血管内皮同士の結合部分はすべてぴったりくっついているわけではない。
間隙の90~99%はタイトジャンクションが存在して物理的に水もほとんど通さないような構造になっているが、一部タイトジャンクションを形成していない領域が存在する。このタイトジャンクションを形成していなところから血管内の水分が漏出する。
#45.
RH Adamson, et al. J Physiol. 557(Pt 3):889-907, 2004. Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. 蛋白濃度(血漿比)[%] グリコカリックスの役割 グリコカリックス 限外濾過 間質蛋白の逆拡散 血管管腔側 間質側 間質液 細胞間隙液 グリコカリックスからの距離 [nm] グリコカリックス下腔 グリコカリックスは内部にアルブミンを有しながらも、蛋白の透過性は非常に低い。
#46.
間質と血漿の膠質浸透圧を揃えた実験 古典的なStarlingの式での理論上の濾過量と比較して、実際に観測された量は少なくなっていた(前述のParadox)。
そこで、2004年に間質と血管内の膠質浸透圧を同じにして血管からの水分漏出を調査する実験が行われた。 RH Adamson, et al. J Physiol. 557(Pt 3):889-907, 2004. 結果としてはStarlingの式から計算されるよりも明らかに漏出は少ないことが判明した。
この実験結果からPiを用いるのではなく、グリコカリックス下腔の膠質浸透圧(Pg)とした場合に計算が合うことが分かった。
このPiの代わりにPgを使用した式が改訂Starlingの式と呼ばれる。 Starlingの式
からの予測
ΔP=0
#47.
Levick JR, et al. Cardiovasc Res. 87(2):198-210, 2010. 改訂Starlingの式 スターリングの式の中で浸透圧に関するPp-Piに関しては、実はミクロでみると圧較差はグリコカリックス下腔の膠質浸透圧(Pg)と血漿の膠質浸透圧との圧較差に従うこととなり、 Pp-Pgとなる。 Starlingの式 改訂Starlingの式 この概念の進化により、多くの臨床的な事象を説明できることになった。 ※Pi>Pgなので、Jvは改訂スターリングの方が低くなる。
#48.
臨床的な現象との一致 –hypovolemia- 人を用いた研究で、900 mL血液を抜いたあとに輸液をした場合と抜かずに輸液をした場合で比較をしたところ、血液を抜いた群の方が血管内にとどまった輸液量が多かった。
全身麻酔中の患者では輸液の細胞間質への移動は低下し、血管内にとどまっており、この効果は平均血圧が低いほど血管内にとどまる輸液量が多かった。 D Drobin, et al. Anesthesiology. 90(1):81-91, 1999. C A Ewaldsson, et al. Br J Anaesth. 87(3):406-14, 2001. これまでのStarlingの式ではPc低下しΔPは低下、血管からの漏出が少なくなることでPiが上昇しΔPは低下するためJv/AはPcと相殺するように働くため、変化が相殺され、血管よりの水分漏出はあまり変わらなそう。 25 19 2 0 22 15 22 19 定常状態 Hypovolemia =K*16 s=1として計算 =K*16 あくまでイメージ
#49.
人を用いた研究で、900 mL血液を抜いたあとに輸液をした場合と抜かずに輸液をした場合で比較をしたところ、血液を抜いた群の方が血管内にとどまった輸液量が多かった。
全身麻酔中の患者では輸液の細胞間質への移動は低下し、血管内にとどまっており、この効果は平均血圧が低いほど血管内にとどまる輸液量が多かった。 D Drobin, et al. Anesthesiology. 90(1):81-91, 1999. C A Ewaldsson, et al. Br J Anaesth. 87(3):406-14, 2001. 改訂Starlingの式ではPgは低く保たれるため、Pcの低下により血管よりの水分漏出は低下する。 25 19 2 0 22 4 22 5 定常状態 Hypovolemia =K*5 s=1として計算 =K*2 あくまでイメージ 臨床的な現象との一致 –hypovolemia-
#50.
全身の炎症が惹起される状態(敗血症、術後、外傷など)では血管内皮のグリコカリックスが大きく障害をうける。
グリコカリックスが障害を受けることで、それまでせき止められていた血漿タンパク(緑の粒)が間質へ漏れることになり、Pgを上昇させ血管から水分が漏出しやすくなり、さらに間質の蛋白濃度も上昇するため水分が間質にとどまりやすくなる。
実際にICU入室患者に4%Albを使用するか晶質液を使用するかを比較した試験ではAlbの方が血管内にとどまり、循環不全を改善してくれそうだが、28日以内の死亡率は有意差がなかった。
この研究のpost hoc解析で頭部外傷の患者では4%Alb使用群が有意に死亡率上昇が認められた。Albが大量に漏出し脳浮腫が増悪したためと考えられる。 –全身炎症状態- John A Myburgh et al. N Engl J Med. 369(13):1243-51, 2013.
#51.
かつて細胞外液量を測定するのにアイソトープが使用されていた。1959年に出血性ショックの患者に輸液を測定したあと、細胞外液量を測定すると輸液をした後にむしろ減少していると報告された。
この投与された輸液は機能しない区画に入ったと考えられ、non-functional ECFと名付けられた。これがThird Spaceの起源となる。
しかし、のちにこれは測定上の誤りで、正しく測定された場合は尿として体外に出てるか間質にとどまっていることが判明した。
したがって、 Third Spaceとは? 飯島毅彦. 臨床麻酔 42(2):173-180. 2018. Birgitte Brandstrup, et al. Surgery. 139(3):419-32, 2006. 外傷、敗血症、手術など侵襲によりサードスペースができる。 たくさん水を入れる必要がある。 これはまちがい!! ということになります。
#52.
Third Spaceとは、現代的な考え方でいうと全身炎症状態でグリコカリックスが崩壊し、通常よりも間質に水分が漏れやすく、かつ留まりやすくなった病態を指す。 手術中の輸液の行方は? 飯島毅彦. 臨床麻酔 42(2):173-180. 2018. 輸液したから血管内容量が増えるわけではない。 整形外科の手術患者を対象に術中輸液投与量と血管内残存量を見た結果では相関が見られない。 Akiko Nishimura, et al. Anesth Analg. 123(4):925-32, 2016.
#53.
Third Spaceとは、現代的な考え方でいうと全身炎症状態でグリコカリックスが崩壊し、通常よりも間質に水分が漏れやすく、かつ留まりやすくなった病態を指す。 手術中の輸液の行方は? 飯島毅彦. 臨床麻酔 42(2):173-180. 2018. 整形外科の手術患者を対象に術中輸液投与量と血管内残存量を見た結果では相関が見られない。 一方で血管外流出量は輸液量に依存して増加していた。
病態的に意味のない過剰輸液は臓器うっ血を増悪させ予後を悪化させることにつながる。 輸液したから血管内容量が増えるわけではない。
#54.
ネフローゼ症候群など低アルブミン血症になっても、胸水は貯まるが肺水腫にはならない。肺の浮腫は呼吸不全から致命的となりうるため、肺には防御機構が備わっている。 肺の浮腫防御機構 1978年にヒヒを用いた研究が報告された。血漿交換を行い血漿タンパクをリンゲル液に置換した。血漿の膠質浸透圧を急激に下げた状態では、体重は16%増加し、腹水や四肢の浮腫は著明に認められた。しかし、肺重量は変わらず肺水腫は起きなかった。
これは肺には間質の蛋白を効率的に排泄して肺間質の膠質浸透圧を低下させることができ、さらにリンパ流量を通常の7倍にまで増加させることができるためであることが分かった。 C K Zarins et al. Circ Res. 43(6):925-30, 1978. ほか組織はリンパ流量は6倍まで増加していたが、間質の膠質浸透圧を低下させる作用はなく、肺独特の機能である。
静水圧増加による血管内水分の漏出はほか組織と大きく変わらないため、心不全により静水圧上昇すると肺水腫になってしまう。
#55.
蘇生輸液の考え方 ・・・とはいっても、内科医で救急の輸液(外傷や周術期)はわかりませんので、内科医も行う敗血症の輸液を中心に説明します。 すいません
#56.
敗血症の初期の定義 これまで敗血症とは
「体内の感染巣から細菌や真菌などの微生物およびその代謝産物が持続的に血液中に移行している状態」
と定義され、血液培養で細菌やその構成成分であるエンドトキシンが検出されることが診断には必要だった。
そして1990年代前半重症敗血症の死亡率は46%と非常に高く、敗血症に対する治療戦略の改善や確立は重要な議題であった。 Sepsisはギリシャ語の有機物が微生物により劣化する現象を表現するために用いられていた単語からきており、紀元前430年にヒポクラテスがその意味で使用したことが確認されている。 ヒポクラテス
BC. 460- BC. 370頃 森口武史. 山梨医科学誌 37(1):11-19, 2022. 松田直之. 日本外科感染症学会雑誌 18(3,4):339-345, 2021. Elizabeth K Stevenson, et al. Crit Care Med. 42(3):625-31, 2014.
#57.
敗血症の初期の定義 Boneは敗血症による多臓器不全は全身の炎症性サイトカインが関与するとして、1992年に感染症と敗血症の使い分けに全身性炎症反応症候群(SIRS)という新しい概念を導入した。敗血症は感染症、あるいは感染症が疑われる状態においてSIRSが確定した場合に敗血症と診断するとした。この定義がのちにSepsis-1と呼ばれる。 松田直之. 日本外科感染症学会雑誌 18(3,4):339-345, 2021. Roger C. Bone
1941- 1997 このSepsis-1の定義のもと、1990年代前半に敗血症の本態とされた炎症の制御のためステロイド、TNF-a阻害薬やToll-like receptor阻害薬など30を超える臨床試験が行われたが、ことごとく失敗に終わった。
#58.
ショックによる末梢酸素供給の仮説 敗血症ショックにより、多臓器不全になるのは循環不全により全身の末梢組織が酸素不足になるためである。この酸素不足には酸素欠乏と酸素負債がある。
酸素欠乏は、酸素供給量が酸素消費量を上回ると生じる。末梢組織は酸素不足になると酸素の取り込みを3割程度増大させて対応するが、さらに酸素供給が減る 三島史朗. 東医大誌. 74(4): 409-415, 2016 と酸素供給量に依存して酸素消費が低下し始める。この地点をcritical pointと呼び、これを下回ると酸素欠乏になり、乳酸が増え、代謝性アシドーシスが進行する。 治療により酸素供給量が増加し、critical pointを超えたとしても酸素負債は残っている。酸素負債の遷延が生命徴候の正常化後に臓器障害を発生させる。
これがショックによる遷延性臓器障害の理論的背景である。
#59.
酸素負債に対する治療アプローチ 1988年Shoemakerは酸素負債をいち早く解消するため、酸素運搬量の到達目標を正常よりも高い位置に置いたsupranormal法という治療法を提唱した。目標としたのは心係数>4.5 L/min/m2, 酸素運搬量>600 mL/min/m2 である。 三島史朗. 東医大誌. 74(4): 409-415, 2016 William C. Shoemaker
1923-2016 術後患者や重症外傷患者を対象にした臨床試験では死亡率や臓器不全の発生頻度を抑える結果が当初示された。しかし、その後2000年にショック患者では有意差が示されなかったことが報告された。さらに2003年には輸液や輸血量が多くなり、腸管が浮腫み腹部コンパートメント症候群の合併症が増えることが判明した。このためsupranormal法は治療の表舞台から姿を消すことになる。 一方で外傷患者の臨床研究の生存例と死亡例の解析から、生存例の方が72時間までの酸素運搬量が高値であるが、その後は有意差を認めないことが判明した。 早期の治療介入が重要であることや、酸素運搬量など目標を設定して治療を行う治療法は次なる治療法へと受け継がれていくことになる。
#60.
Early Goal-Directed Therapyの登場 2001年にEarly Goal-Directed Therapy, EGDTという治療法が非常にいい成績を収めたとNEJMに報告された。Keyとなる論文なので詳しく触れておきたい。 介入:6時間以内にCVP、MAP、ScvO2、尿量を目標に達するように輸液や輸血、昇圧薬を使用 対照:通常治療 CVP、MAP、尿量を目標に達するように輸液や輸血、昇圧役を使用 評価:血圧、脈拍、尿量、体温、乳酸地、臓器不全スコア、死亡率、血管収縮薬使用、人工呼吸使用、入院期間など E Rivers, et al. N Engl J Med. 345(19):1368-77, 2001.
#61.
Early Goal-Directed Therapyの概要 E Rivers, et al. N Engl J Med. 345(19):1368-77, 2001. 通常治療との違いはScvO2がないこと。
#62.
EGDTの方法 E Rivers, et al. N Engl J Med. 345(19):1368-77, 2001. 酸素投与+/-挿管人工呼吸 CV挿入、A-line 鎮静+筋弛緩(挿管なら) EGDTをしっかりと行うためには、CVを挿入して、CVPとScvO2を測定する必要がある。
CVP8-12 mmHgを達成するまで500 mLの晶質液を30分ごとに投与。
MAP<65 mmHgなら血管収縮薬を投与開始。MAP>90 mmHgなら血管拡張薬を使用開始。
ScvO2<70%なら、Ht>30%となるように輸血。
上記達成してもScvO2<70%ならドブタミンを2.5γで開始し、達成するまで30分毎に2.5γずつ増量。Max 20γ。
入院後は担当医は振り分けは知らされていない。
#63.
輸液量の比較 E Rivers, et al. N Engl J Med. 345(19):1368-77, 2001. 6時間まではStandard群が3,500 mL、EGDT群が5,000 mLとなっているが、72時間までのTotalの輸液量は有意差がなく、ともに13,400 mL程度となっている。 輸血はEGDTの方が多い。
#64.
結果 E Rivers, et al. N Engl J Med. 345(19):1368-77, 2001. 結果、死亡率はStandard群で46.5%、EGDT群で30.5%と死亡率を劇的に改善させた。
#65.
Sepsis-2とバルセロナ宣言 2001年にSIRSの特異度を補完する目的で、24項目の補助診断項目が追加された。(Sepsis-2)臓器障害の項目もあり、全身の炎症を治療や評価対象とするのではなく、臓器不全の進行を抑制することに重きが置かれ始めた。 Elizabeth Slade, et al. Crit Care. 7(1):1-2, 2003. 2002年に敗血症に対するEGDT療法や強化インスリン療法など、有効な治療のエビデンスが蓄積し始めたことを背景に、5年で敗血症の死亡率を25%低下させることを目標にした世界的なSurviving Sepsis Campaign (SSC)が開始された(バルセロナ宣言)。 ただ項目が多すぎてあまり浸透しなかったようです。 SSCは敗血症の認知を広めること、正確な診断基準を作成すること、ガイドライン作成など6つの柱からなる。2004年に最初のガイドライン(SSC guideline, SSCG)が示された。
(2021年に第5版が発表されている。日本版SSCGは2024年が最新版である。)
#66.
EGDT後の輸液量の変化 2004年のSSCガイドラインでEGDTが推奨された。 EGDT論文では6時間までに平均5,000 mL、72時間で13,000 mLもの大量輸液をされていた。大量輸液をされていた論文内容を受け、臨床現場ではやや盲目的に大量の輸液を入れることに重点が置かれていた状況であった。
実際に、CVPやScvO2を見ながら輸液療法がおこなわれていたのはそれぞれ27%、15%であったという報告もある。 Rory O'Neill, et al. J Emerg Med. 42(5):503-10, 2012.
#67.
大量輸液は害の可能性 2002年5月の2週間にICUに入院したヨーロッパ24ヶ国の198施設の3147例の対規模な解析(SOAP study)が2006年に報告された。 Jean-Louis Vincent, et al. Crit Care Med. 34(2):344-53, 2006. ■SOAP study 患者背景 敗血症患者の死亡率は高く、最初の72時間での敗血症患者での輸液量は敗血症でない患者と比較して3倍以上となっていました。
#68.
大量輸液は害の可能性 Jean-Louis Vincent, et al. Crit Care Med. 34(2):344-53, 2006. 結果、敗血症患者で死亡率と最も強い相関が認められたのはSAPS II score, 年齢と輸液過剰であったと報告された。 ■ICUでの敗血症患者での死亡リスク因子
#69.
大量輸液の弊害 2006年のSOAP studyの報告を受け、VASST studyの登録患者778例の解析が行われ2011年に報告された。 John H Boyd, et al. Crit Care Med. 39(2):259-65, 2011. 輸液Balanceにより4群に分けたところ、輸液Balanceが多い群で生存率の低下が認められた。
12時間までで3000 mL程度のIN overまでは生存率の低下は明らかではない。
#70.
興味深いのはCVP<8の患者では輸液が多い方が予後が良くなった。EGDTが推奨しているCVPが8-12では逆に輸液量が多いほうが予後は悪かった。また輸液量とノルエピネフリンの使用量に相関は認められなかった。 John H Boyd, et al. Crit Care Med. 39(2):259-65, 2011. 大量輸液の弊害 CVPで見てみると、CVPが高い方が生存率の低下することが明らかになった。
#71.
EGDTの妥当性の検証 こういった背景からEGDTの再検証をする必要性が生じ、大規模はRCTが行われた。
ProCESS Investigators. N Engl J Med. 370(18):1683-93, 2014 May. ARISE Investigators. N Engl J Med. 371(16):1496-506, 2014 Oct. ProMISe Trial Investigators. N Engl J Med. 372(14):1301-11, 2015 Apr. いずれの試験でもEGDTで死亡率の改善は認められなかった。有意性が示せなかったことは後にReviewが発表される。一方で、このころ敗血症の定義が変化した。
#72.
敗血症の定義の変化 Sepsis-3 Sepsis-2では臓器障害の評価項目が出現し、敗血症で死亡につながるのは組織循環不全による多臓器不全であることが明らかになってきた。また敗血症で臓器不全を合併していた8人に1人がSIRS診断基準を満たしていないことから、SIRSが必ずしも臓器不全の進行を捉えられるものではないことが判明した。
2016年に敗血症の定義が
「感染症や感染症を疑う状態において臓器不全が進行する病態であり,感染に対する調節不全の宿主応答によって 引き起こされる生命を脅かす臓器不全」
と変更された。そして診断にはquick SOFAスコア,qSOFAと sepsis- related organ failure assessment,SOFAスコアを用いることが推奨された。 松田直之. 日本外科感染症学会雑誌 18(3,4):339-345, 2021.
#73.
Sepsis-3 敗血症.com.(https://xn--ucvv97al2n.com/medical_personnel/history/)
#74.
EGDTの優位性が示せなかった理由 早期輸液必要性が広く認識され、6時間目までの輸液に差が出なかったことが死亡率に差が出なかったことにつながった。
EGDTのProtocolのCV挿入やScvO2測定など必ずしも必要ではない。 Wesley H Self et al. Ann Emerg Med. 72(4):457-466, 2018. 救急外来受診後6時間目までの輸液量 [L]
#75.
早期輸液必要性が広く認識され、6時間目までの輸液に差が出なかったことが死亡率に差が出なかったことにつながった。
EGDTのProtocolのCV挿入やScvO2測定など必ずしも必要ではない。 Wesley H Self et al. Ann Emerg Med. 72(4):457-466, 2018. むしろCV 8-12 mmHgを目指すというより、組織循環を保てていれば、臓器うっ血を抑制する意味から、輸液量は少ない方がよいのではないか? EGDTの優位性が示せなかった理由
#76.
制限輸液の検証 ◆対象
敗血症性ショックでICU入室した18歳以上の患者
敗血症性ショックの定義:感染症、もしくは感染症疑いがあり、乳酸イオン 2 mmol/L以上で昇圧薬使用し、24時間以内に1L以上輸液がされている。
◆研究デザイン、参加人数
International multicenter open-label randomized noninferiority trial. 2223人
ヨーロッパの国々 Tine S Meyhoff, et al. N Engl J Med. 386(26):2459-2470, 2022. ◆介入
>制限輸液
①乳酸イオン4 mmol/L以上
②昇圧薬使用でも平均血圧50 mmHg以下
③mottling score >2
④尿量が0.1 mL/kg/hr未満
上記のときに250-500 mLの晶質輸液
◆期間
Entryから90日まで
◆Primary outcome
死亡 -CLASSIC trial-
#77.
制限輸液の検証 Tine S Meyhoff, et al. N Engl J Med. 386(26):2459-2470, 2022. ランダム化前に両群とも3000 mL程度の輸液がされている。
#78.
制限輸液の検証 Tine S Meyhoff, et al. N Engl J Med. 386(26):2459-2470, 2022. 両群に有意差が認められなかった。 輸液量
#79.
制限輸液の検証 Nathan I Shapiro et al. N Engl J Med. 388(6):499-510, 2023. 2023年にもアメリカから昇圧薬を使用して輸液を制限するCLOVERS trialの結果が発表された。対象患者がより軽症だったり、より早期に介入したり、輸液投与基準は異なるものの、結果としては同じく有意差は認められなかった。
#80.
敗血症での新たな指標 これまでの研究ではCO、SCVO2、CVP、MAPなどの全身的な血行動態指標や、 CRT、尿量、mottling skinの臨床症状を指標にしてきた。しかし、これまでの研究をみてくると、敗血症の予後と相関は認められるものの完全な指標とはいえない印象である。
敗血症での臓器障害は微小循環障害による組織虚血が重要な原因として認識されている。乳酸イオン、CRTは組織灌流を評価する方法として推奨されているが、現在微小循環障害を評価する方法として舌下の血流をイメージングする手法が進んでいる。 Jean-Louis Vincent et al.N Engl J Med. 369(18):1726-34, 2013. A. 健常者の舌下血流 B. Septic shock患者の舌下血流
#81.
舌下微小循環モニタリング 敗血症性ショックのOutcomeと最も強い相関が報告され、多臓器不全で亡くなる患者ではショックの全身動態指標での改善が認められても、舌下微小循環の改善が認められていなかった。また微小循環と全身動態指標に相関は認めなかった。
敗血症に限らず、重症患者での今後の重要なモニタリングやPoint-Of-Careとしても使用がされてくる可能性がある。
問題点としては、この微小循環を改善する確立した特異的な治療が現在存在しないことである。 Elisa Damiani, et al. Front Med (Lausanne). 10:1212321, 2023. Matthieu Legrand, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2025 May 19. Online ahead of print. プロスタサイクリンの安定類似化合物のイロプロストは微小循環を改善する見込みがあり、循環障害を示す敗血症性ショック患者に対してRCTが行われた結果が2025年発表されたが有意な改善は認められなかった。
とはいえ、微小循環の改善は未解決のターゲットであり、今後の動向に注目である。 P T Goedhart, et al. Opt Express. 15(23):15101-14, 2007.
#82.
敗血症での昇圧薬 昇圧薬は血管収縮薬と強心薬に分けられる。血管収縮薬は敗血症性ショックにおいて早期に蘇生輸液とともに併用を検討してよい。
一般にカテコラミン使用は不整脈誘発の可能性があり、とくに高用量での使用には注意が必要。必要ならしかたないが、なるべく使用量は減らす意識を持つことが大事。 Jean-Louis Vincent et al.N Engl J Med. 369(18):1726-34, 2013.
#83.
Jean-Louis Vincent et al.N Engl J Med. 369(18):1726-34, 2013. つづき 2) Anthony C Gordon, et al. JAMA. 316(5):509-18, 2016. 敗血症での昇圧薬
#84.
晶質液 vs アルブミン 2004年にオーストラリアとニュージーランドの16施設のICUに入室した患者に蘇生輸液として4%Alb投与もしくは生食投与した群それぞれ3500人を比較した試験(SAFE study)がある。(アルブミン群ではすべて4%アルブミンを使用!) Simon Finfer, et al. N Engl J Med. 350(22):2247-56, 2004.
#85.
晶質液 vs アルブミン Simon Finfer, et al. N Engl J Med. 350(22):2247-56, 2004. 全体としては28日生存率に有意差はなかった。
Subgroup解析では“Severe sepsisあり”では、ややAlb betterだったが有意差は見られなかった。
#86.
晶質液 vs アルブミン 2007年にSAFE studyの頭部外傷患者でのpost hoc analysisが報告された。アルブミン使用群、生食使用群それぞれ200例以上が解析され、24か月時点での生存率はアルブミン使用群で有意に低い結果となった。 SAFE Study Investigators, et al. N Engl J Med. 357(9):874-84, 2007. 脳には間質に漏れたアルブミンを取り除くリンパ組織がない(髄膜のみある)ため、ほかの組織に比べて膠質浸透圧効果が悪く出ている可能性がある。
#87.
晶質液 vs アルブミン 2014年にsevere sepsisでアルブミンを3 g/dLを目標にアルブミンを投与することが有益なのではないかという指摘があり、severe sepsis患者にアルブミンと晶質液を投与して比較する研究が行われた(ALBIOS study).
この研究ではイタリアの100のICUが参加しopen-label RCTが組まれた。20%Alb+晶質液もしくは晶質液単独に分けられ、28日間20%Alb 300 mL/日を3 g/dLを維持するように投与された。しかし、有意な死亡率低下は認められなかった。 Pietro Caironim et al. N Engl J Med. 370(15):1412-21, 2014.
#88.
晶質液 vs アルブミン 2025年にアメリカの220の医療機関のデータを用いて、AKIとseptic shockを合併した患者でアルブミンを使用した群としなかった群で腎代替療法の有無、死亡率を調べたretrospective, inverse probability-of-treatment weighted cohort studyが報告された。5%アルブミンを使用した場合では死亡率・腎代替療法に有意差はなかった。
しかし、25%アルブミンを入院初日に使用した場合、死亡or腎代替療法が有意に多い結果となった(OR, 1.43; 95% CI, 1.16-1.76)。
一方、2024年のメタアナリシスではseptic shockの患者で高浸透圧Alb使用群で有意に死亡率が低下した(OR, 0.82; 95% CI, 0.68-0.98 )という報告や、2022年に肝硬変と敗血症を合併した症例では死亡率は変わらないものの、3時間後平均血圧65 mmHgに到達した割合が高く、透析が必要になった割合も低いと報告もある。 Jonathan Bannard-Smith, et al. J Intensive Care Soc. 25(3):308-318, 2024. Asad E Patanwala, et al. Chest. 167(4):1090-1098, 2025. Rakhi Maiwall, et al. J Hepatol. 77(3):670-682, 2022.
#89.
晶質液 vs アルブミン ALBIOS studyでSepsis発症から6-24時間以内に治療を開始した場合や、septic shock患者1121人ではアルブミンの方が死亡率は低かった(43.6 vs. 49%, p= 0.03)ことなどから、ドイツでSeptic shock患者を対象にしたRCT(ARISS trial)が行われている。2022年7月に最後の患者のEntryが終わっており、現在報告まちである。 ガイドライン上は蘇生輸液としてアルブミンは初期輸液に使用することは推奨されていません。適応としては、大量輸液にても低血圧が遷延する症例や必要とする症例や低アルブミン血症を有する症例での使用が推奨されています。 Yasser Sakr, et al. Trials. 21(1):1002. 2020. アルブミン使用により死亡率は変わらないものの、全身循環指標が早期に改善する効果は認められています。ただ、間質へのアルブミン漏出が問題になるのは閉鎖空間臓器の脳や腎で間質浮腫による臓器障害がリスクになることを考慮して使用するべきと思います。 日本版敗血症ガイドライン2024
#90.
生食 vs リンゲル液 蘇生輸液で使用するものとして、人工膠質液は敗血症では禁忌となっている。
生食 vs リンゲル液ではこれまでに複数の研究が報告されている。生食輸液ではCl負荷による高Cl性アシドーシス、腎機能障害の発症が問題となる。生存率に関してはあまり確立したデータは少ない。2018年に報告されたSMART clinical trialはアメリカの単施設でICU入室患者を対象にそれぞれ6700人程度を比較した大規模な実験が報告された。結果死亡率は変化ないが、腎機能障害発症が生食で有意に高かった。
さらに、敗血症患者に限ったでのpost-hoc analysisが2019年に報告された。 Ryan M Brown, et al. Am J Respir Crit Care Med. 200(12):1487-1495, 2019. 30日生存率、および腎イベントはリンゲル液でよい結果であった。 Matthew W Semler, et al. N Engl J Med. 378(9):829-839, 2018.
#91.
生食 vs リンゲル液 Fernando G Zampieri, et al. JAMA. 326(9):1-12, 2021. 現状は生食かリンゲル液かどちらがよいかはっきりはしていません。敗血症での生食大量輸液は害があるケースもあるというこでで、リンゲル液を選択するケースが多くなるのかと思います。
ただ現状は外傷性脳損傷患者では生食を選択した方がいい可能性があります。 2021年にブラジルの75施設のICUに入院したそれぞれ5300人を比較した試験(BaSICS trial)では90日生存率はそれぞれ27.2%、26.4%で有意差は認められなかった。また腎機能障害発症率も有意差がなかった。サブグループ解析で敗血症ありでも生存率に有意差はなかった。外傷性脳損傷の患者では生食の方が有意に死亡率が低かった。
2022年にオーストラリアとニュージーランドの53施設のICU入室患者でそれぞれ2500人を比較した試験(PLUS trial)でも90日生存率はそれぞれ21.8%、22.0%で有意差は認められなかった。また腎機能障害発症率も有意差がなかった。 Simon Finfer, et al. N Engl J Med. 386(9):815-826, 2022.
#92.
現状の敗血症の輸液方針まとめ 平均血圧65 mmHgを目標として、循環不全のモニタとして乳酸値、CRTを指標とする。
初期輸液で3時間以内に30 mL/kg程度の輸液を行う。(体重50kgで1500 mL)
生食より調整晶質液(リンゲル液)を使用し、人工膠質液は使用しない。
低血圧を伴う敗血症に対して、蘇生輸液と並行して早期に血管収縮薬を投与する。
血管収縮薬としてはノルアドレナリンを使用し、さらに昇圧が必要な場合はバゾプレシンを併用する。バソプレシン追加はノルアドレナリンが0.2γ以上など早めの使用が望ましい可能性があり1)、ノルアドレナリンが0.2γを切ってきたら、抗利尿ホルモン効果が前面に立って低Na血症になってくるため中止をしていく。
5%アルブミン製剤の使用は晶質液を用いた標準治療に反応せず、大量の晶質液を必要とする場合には投与を検討してよい。 1) Alexandre Kalimouttou, et al. JAMA. 333(19):1688-1698, 2025. 日本版敗血症診療ガイドライン2024
#93.
DKAでの初期輸液 糖尿病診療ガイドライン2024 糖尿病性ケトアシドーシスでは10%の水分と7-10 mEq/kgのNa、3-5 mEq/kgのKが不足していると推定される。
生理食塩水で500-1000 mL/hr (15-20 mL/kg/hr)で輸液を開始し、循環動態に応じて250-500 mL/hrを目安に調整する。
急激な浸透圧低下による脳浮腫に注意し、血糖値が250-300 mg/dLとなれば、ブドウ糖を含む低調電解質輸液の点滴静注を行う。血漿浸透圧が正常化し、意識状態が改善するまでは血糖値は250-300 mg/dLを維持し、その後は150-200 mg/dLを目標とする。
インスリンは速効型インスリンを生食に混注して0.1単位/kg/hrの速度を目安に持続静注を開始する。50-75 mg/dL/hrの速度で血糖が低下することが期待される。
Kが3.3 mEq/L未満の場合はインスリン開始や増量は行わず、20-30 mEq/hrの速度を目安に3.3 mEq/L以上になるまで補充した後で、インスリンの開始・増量を行う。
#94.
DKAでの初期輸液 糖尿病診療ガイドライン2024 糖尿病性ケトアシドーシスでは10%の水分と7-10 mEq/kgのNa、3-5 mEq/kgのKが不足していると推定される。
生理食塩水で500-1000 mL/hr (15-20 mL/kg/hr)で輸液を開始し、循環動態に応じて250-500 mL/hrを目安に調整する。
急激な浸透圧低下による脳浮腫に注意し、血糖値が250-300 mg/dLとなれば、ブドウ糖を含む低調電解質輸液の点滴静注を行う。血漿浸透圧が正常化し、意識状態が改善するまでは血糖値は250-300 mg/dLを維持し、その後は150-200 mg/dLを目標とする。
インスリンは速効型インスリンを生食に混注して0.1単位/kg/hrの速度を目安に持続静注を開始する。50-75 mg/dL/hrの速度で血糖が低下することが期待される。
Kが3.3 mEq/L未満の場合はインスリン開始や増量は行わず、20-30 mEq/hrの速度を目安に3.3 mEq/L以上になるまで補充した後で、インスリンの開始・増量を行う。
ガイドライン上では生理食塩水となっていますが、生理食塩水は細胞外液のCl濃度よりも高く、Cl負荷はアシドーシスの要因となります。ケトアシドーシスの病態にさらにアシドーシスの要因を追加する処置が正しいのか?という疑問は前からありました。
#95.
DKAでの初期輸液 DKAに乳酸リンゲル液と生食を比べたRCTが行われ、そのメタアナリシスが2022年に報告された。最終的には3つのRCT、total 316例が解析され、結果としてはリンゲル液の方がDKAの回復が早いという結果であった。
より大規模なRCTが必要とされ、2024年にpilot studyとなるBRISK-ED trialが報告された。リンゲル液群(n=25)生食群(n=27)で比較され、DKA回復までの時間はリンゲル液群で有意に短かった。 Jesus Alfonso Catahay, et al. Heart Lung. 54:74-79, 2022. Justin W Yan, et al. Emerg Med J. 41(2):103-111, 2024.
#96.
DKAでの初期輸液 DKAに乳酸リンゲル液と生食を比べたRCTが行われ、そのメタアナリシスが2022年に報告された。最終的には3つのRCT、total 316例が解析され、結果としてはリンゲル液の方がDKAの回復が早いという結果であった。
より大規模なRCTが必要とされ、2024年にpilot studyとなるBRISK-ED trialが報告された。リンゲル液群(n=25)生食群(n=27)で比較され、DKA回復までの時間はリンゲル液群で有意に短かった。 Jesus Alfonso Catahay, et al. Heart Lung. 54:74-79, 2022. Justin W Yan, et al. Emerg Med J. 41(2):103-111, 2024. 最近DKAに初期輸液として生食とリンゲル液を比較した報告が出てきています。2024年のBRISK-EDはpilot studyで見込みがありそうな結果だったので、今後大規模RCTで検証されると考えています。現状は生食使用でいいと思いますが、今後リンゲル液になる可能性もありそうです。
#97.
維持輸液の考え方
#98.
水・電解質(特にNa, K, Cl)は余剰分を体に貯留することが困難なため,必要な分をそのつど補給する必要がある.
通常“予想される生理的体液喪失”とはどれくらいかを知っておくことで、輸液を組むときにどれくらい入れるべきか考える際の重要な情報となる。
生理的体液の喪失
#99.
尿 = 水 + 溶質
溶質の尿中排泄量 600 mOsm/日程度(10 mOsm/kg/日)
正常な腎臓は尿を50 – 1200 mOsm/Lに希釈・濃縮できる
最小の尿量
1200 mOsm/Lの尿で600 mOsmの溶質を排泄→ 500 ml/日
最大の尿量
50 mOsm/Lの尿で600 mOsmの溶質を排泄→ 12 L/日 尿量 ※溶質を排泄するのに最低限必要な尿量が保てないと,老廃物が蓄積していく.
尿量がこの500 ml/日(400 ml/日のことも)を下回った場合、排泄するべき溶質を排泄できなくなる。
乏尿が400 ml未満というのは、この考えからきている。 ※腎臓では50 mOsm/L以下には尿を希釈できないため、これ以上の多飲になると水貯留をきたし、低ナトリウム血症を発症する。溶質摂取が極端に少ない場合にも、低ナトリウム血症をきたす。
#100.
In Out 飲水 食事 代謝水 尿量 便量 不感
蒸泄 体重 60 kgの人が平衡を保つためのIn/Outバランス 300 900 100 水分のIN-OUT 体内で栄養素を代謝すると水が生じる.(大体 5 ml/kg/日)
例) ブドウ糖代謝
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O 嘔吐/下痢がなければ、便に含まれる水分は100 ~ 200 ml/日 気道および皮膚から蒸散する水分.
(合計 15 ml/kg/日)
個人差が大きい 定数部分をまとめると・・・
#101.
In Out 飲水 食事
(1000 ml/日) 尿量 体重 60 kgの人の平衡を保つには大体, 食事量 + 飲水量 + 輸液量 = 尿量 + 700 (ml) 700 = したがって、尿量1 L/日に保つなら1.5 ~ 2L/日の水が必要となる。 水分のIN-OUT Inの不足分が維持に必要な輸液量になる。
#102.
② Na
Naは尿への排泄をかなり抑制することができるが,1 mEq/kgBW程度は必要である。(NaCl 1g中のNa = 17 mEq)
③ K
Kは尿細管でNaと交換されるため尿中排泄があまり抑制できない.0.5~1 mEq/kgBW程度喪失する。腎不全であってもカリウムフリーの輸液を継続するといずれ低カリウム血症になる。
電解質のIN-OUT 以上から60 kgのヒトの場合,
水1500~2000 ml,Na 60 mEq,K 30 mEq程度必要 ソルデム3A 4本
水 2000 ml,Na 70 mEq,K 40 mEq このため
3号液 = 維持液
と呼ばれる。
#103.
<Gambleらが大戦中の囚人を対象に行った古典的研究> 絶食状態での蛋白異化の抑制 水のみで絶食(0キロカロリー)させると、6日間で蛋白質が400 g 失われた.
蛋白質400 gは筋肉2 kgに相当するため絶食は1日0.3 kg筋肉量を減少させる.
また,この異化速度はブドウ糖を100 g (400 kcal)投与することで半分に抑えられたため、絶食状態では0 kcalにはしないようにした方が望ましい。
#104.
補充輸液の考え方
#105.
どこに,なにが,どの程度足りないかを考える.
①どこに(区画)
細胞外液の欠乏(volume depletion)=Na欠乏型脱水
⇒ 低血圧/ショックを呈する⇒生理食塩水などで補正
細胞内液の欠乏(dehydration)=水欠乏型脱水
⇒ 高Na血症を呈する⇒5%ブドウ糖液で補正
*細胞外液も同時に不足していることが多い。
循環を安定させるため、細胞外液欠乏分を先に補充してから、自由水補充の順番が原則。 体液欠乏に対する考え方
#106.
Dileep N. Lobo, et al. Basic Concepts of Fluid and Electrolyte Therapy. Bibliomed. 2014. 喪失した体液により組成が異なる. 胃液の喪失は酸・Clを大量に喪失するため,低Cl性代謝性アルカローシスになりやすい.生理食塩水などが適する. 腸液の喪失は細胞外液に近いため、ラクテックなどが用いやすい.
小腸ストマなどで大量の場合はHCO3の喪失によるアシドーシスの進行が起こるため,生理食塩水などは適さない. 発汗は比較的低張で,低張液でもよいが,重篤な熱中症などでは血管内容量も低下しているため生理食塩水などが適する. 体液欠乏に対する考え方 ②なにが
#107.
体液欠乏に対する考え方 ②なにが ■Na、水
Na濃度の低下が必ずしも体内Na量の低下を示すものではない。 Edelmanの式 血液中のナトリウム濃度は体内のナトリウム+カリウムと体液量により規定される。 ■血清Na濃度の決定因子 TBW; total body water PNa = Na+E + K+E TBW Na濃度は、水とNa+Kのバランスで決まる。
輸液は水分総量とNa量が影響するため、基本的にはTotal 水分量とNa+K量の輸液濃度で考えることが大切。Na絶対量で議論できない。
#108.
体液欠乏に対する考え方 ②なにが ■Na、水 ざっくり考えると尿中のNa+K濃度を参照して、輸液のNa(+K)濃度より低ければ補正されていくと考えられる。尿中と投与輸液の濃度差が大きいと補正速度が速くなりすぎる可能性があるため注意が必要。
高Na血症で細胞内脱水の場合は高Naでも尿Naは著明に低下している。この場合、水分補充が行われ有効循環血漿量が補充されてくると、急激に尿Na濃度は上昇する。そのため、輸液に対する検査結果が大きく変化するため注意が必要。 基本的な考え方として 尿中(Na++K+) < 血清Na+
の場合は血清Naは上昇していく。 尿中(Na++K+) > 血清Na+
の場合は血清Naは低下していく。
#109.
体液欠乏に対する考え方 ②なにが ■K K欠乏がどこから来ているのかをまず確認する。細胞内シフトによる低K血症(甲状腺機能亢進症、急激なアルカローシス)の場合は補充により原病の治療に伴い急なK上昇をきたすことがあるため、安易に補充はしない。とくに甲状腺。 Halperin ML. Afr J Nephrol. 20:22-4,2017. 細胞外シフトでなければ、尿か便(下痢)から喪失が原因。
尿中K濃度を測定し、K/Cr比が>13.3 mEq/gCr(簡易的にはK>20 mEq/L以上)であれば尿からKが喪失している可能性が高い。
Mg低下があればMgも一緒に補充しないとよくならない。
#110.
体液欠乏に対する考え方 ②なにが ■K K補充は原則は内服で行う。Kを75 mEq経口投与すると60-90分後にはKが1-1.4 mEq/L上昇する。1回につき1 mEq/kgのK投与は安全と考えられ、経口での急速補正も可能。塩化カリウムは胃粘膜障害をきたすので、大量の水と摂取し、眠前は避ける。細胞内に移っていくため、繰り返しの投与が必要。
輸液で投与する場合は、末梢からでは40 mEq/Lの濃度を超えないように、20 mEq/hr以下の投与量になるようにするのが原則。濃度は血管痛や静脈硬化の原因となるためで、中心静脈であればそれ以上の濃度でも可能。
藤田芳郎、他.研修医のための輸液 水電解質 酸塩基平衡 第2版 2024.
#111.
③ どの程度
急性の体液減少では体重変化が鋭敏であるが,測定できないこともある.
・バイタル(頻脈・低血圧)
・口腔・腋窩の乾燥、・ツルゴール低下(高齢者では偽陽性多い)
・尿量低下(<0.5 mL/kg/hr)
・Capillary refilling timeの延長(特異度90%以上)
・エコーでIVC径測定
・胸部レントゲンでの心胸郭比(過去のものがあればその変化)
などが参考になるが、“これ一つで十分!”という指標はなく、病歴なども含め多角的な指標を用いて総合的に判断するしかない.
高齢者は輸液の安全域が狭いため,必要なケース(ショックなど)を除き,過剰すぎない輸液量に留めるほうが安全.
体液欠乏に対する考え方
#112.
栄養補充 栄養投与の原則は経腸栄養が原則。なんらかの理由で経腸栄養が投与できないときに経静脈栄養を考える。
末梢からの輸液は浸透圧比が3までなので十分な栄養量を投与することはできない。補助ではなく、TPNを考えるのであれば中心静脈が必要である。
急性期の重症患者や抗炎症状態と考えられる症例では、異化亢進状態にあるため、必要カロリーをすべて補うことはしない。(permissive underfeeding)
4日目以降に必要カロリーを目指して投与量を上げていく。
#113.
TPNの成分 TPNの成分としては ブドウ糖
アミノ酸
電解質(Na、K、Cl、Ca、iP、Mg)
ビタミン
微量元素(Zn、Cuなど)
脂肪 がある。 基本的には既成製剤があり、キットになっているものが使用できるので原則キットを使用する。
様々キットがあるが、含まれているものにより製剤種類が異なる。(ハイカリックはブドウ糖と電解質のみ、フルカリックは脂肪と微量元素以外入っているなど)
#114.
TPN投与の実際 TPN投与開始時には、refeeding syndromeのハイリスクかどうかに注意する。あまり食べられていなかった患者では末梢から行くような濃度で緩徐に投与を開始。低K、低iP、低Mgなどある場合は、補充してからor補充しながら低カロリーで投与を開始する。
糖尿病がある患者では血糖が当然ながら上昇するため、ブドウ糖15gに1単位で混注し、糖尿病がない場合でも50gに1単位程度混注してスライディング管理とする。スライディングで使用したインスリンを翌日に追加して混注という運用が多い(と思います)。血糖は180未満を達成するようにコントロールする。
脂肪製剤は重症患者では7日間程度は投与は避け、以降0.06 g/kg/hr程度の緩徐な投与を行う。血栓形成や感染、肝障害など注意する必要があるが、緩徐に投与することでこれらの副作用発生は抑えられる。必須栄養素であるため投与は必要である。欠乏で皮脂欠乏、脱毛、脂肪肝、免疫不全、血栓形成、血小板減少などを発症する。 宇佐美眞、他.静脈経腸栄養. 25(2) :591-596. 2010.
#115.
調整が必要なケース キットは腎不全や肝不全などがない人を対象に作成されているため、腎不全の人から見ると、キットは①投与水分量多い、②NPC/N比が低い、③K、iP含有量が多い、ということが主に問題になる。
腎不全の人の場合は、キット製剤を使用せずに患者さんの状態に合わせて主に上記を調整して高カロリー輸液を作成する。
よくやる方法としては腎不全用のハイかリックRFはブドウ糖濃度が50%と高く、腎不全で注意が必要なKやiPが含まれていない。そこにNPC/N比が300-400程度(透析中なら200程度)になるように腎不全用アミノ酸製剤を足し、総合ビタミン剤、必要に応じて電解質、微量元素製剤、インスリンを混注して作成することが多い。
#116.
透析中の栄養補充 透析中に透析回路から経静脈的栄養療法を行うことができ,これをIntradialytic parenteral nutrition: IDPNという.
通常中心静脈からしか投与できない高濃度ブドウ糖も投与でき,外来透析でも可能.
透析1回につき4 kcal/kg/日程度の補充にしかないらないため, 20 kcal/kg/日以下の摂食量の場合,他の栄養療法の併用が必要.
処方例) 以下を透析中投与,4時間かけて
*高血糖に注意
*脂肪乳剤を使用する場合もある 1回の透析で400 kcal (1日200 kcal分)であり,あくまで補助.
#117.
輸液製剤の種類とポイント
#118.
輸液製剤のおおまかな種類
#119.
代表的な電解質輸液製剤 暗記しておくといいです。
#120.
水は浸透圧物質を含まず,輸液すると溶血が起こる.これを避けるため浸透圧物質としてブドウ糖を加えている.
自由水の補充に用いる。高張性脱水ではよい適応.
一般論として浸透圧比 > 3 の輸液は静脈炎をきたすため,末梢からは投与できない.ブドウ糖のみの製剤の場合,濃度は10%、20%、50%、70%まであるが末梢からは投与可能なのは10%まで.
5%ブドウ糖液
#121.
NaClのみを含み、血漿と等張になるよう調整した輸液(等張液)で,細胞外液に分布する。脱水やショックなど、血管内ボリューム増加が必要なときに用いる。
Kを含んでいないので、腎機能がわからない場合も使用しやすい。
大量輸液でCl負荷となり,高Cl性代謝性アシドーシスを来す。
ただし1- 2 L/日程度で問題になることはまれ。 生理食塩水
#122.
細胞内外にどのように分布するかは、ナトリウム濃度をみて、細胞外に分布する生理食塩水と細胞内外一様に分布する5%ブドウ糖液の混合で割合が変わるというイメージが最も考えやすい。 ナトリウム濃度による体内分布 Na:77 mEq/Lなら・・・ 生理食塩水
Na:154 mEq/L 5%ブドウ糖
Na:0 mEq/L 154 0 77
#123.
1号液から4号液に行くに従い、Na濃度は低下していく。原則Lactateはすべてに入っている。そこにKやリンが入っているか、入っていないかの違いがある。開発時は1号液から4号液という投与順序という意味合いがあったが、現在では順序という意味合いはなく、単に種類という意味で考えた方がよい。病態に合わせて選択していく。1号液はKが入ってなくNa濃度も外液ほど高くないため、病態もあまりわからないときには使用しやすいので、これだけは開始液と言ったりして順序という意味合いも残っている。4号液(術後回復液)といったりするが、そういう意味合いで使用することはほぼない。基本的にはブドウ糖が入っているので、食事がとれない場合はビタミンB1の添加は忘れないようにする。 1~4号液について
#124.
half-saline (1/2生食)と呼ぶ人もいる.
細胞外液の補充もでき,ある程度の自由水が含まれ,
カリウムも含まない.開始液ともいう.
K freeなので腎不全患者の輸液にも使いやすい. 1号液
#125.
1.5~2 L/日輸液すると1日に必要な水・電解質が補充できる
ので、維持液という。
Kを20 mEq/L含むため,高Kの患者には使用しない。
グルコースの濃度によって、
・ソルデム3 (Na 50 mEq/L, Glu 2.7%)・あまり使われない
・ソルデム3A (Glu 4.3%)
・ソルデム3AG (Glu 7.5%)
がある。 3号液 (ソルデム3A)
#126.
急性期や周術期は、ストレス・疼痛・嘔吐等でADH過剰になりやすく、水が貯留しやすい。このため入院患者で低張輸液を長期継続すると医原性低Na血症を起こしやすい。過剰輸液を避けつつ、維持液よりも等張液に近い組成にしたほうがよい場合も多い。
維持液使用時の注意 Eur J Endocrinol. 170:G1-47, 2014.
#127.
NaClにKとCaを加え、組成を血漿に近づけたものをリンゲル液という。
リンゲル液に乳酸を添加したものがラクテック。
リンゲル液に酢酸とD-グルコースを添加したものがヴィーンD。
乳酸リンゲル液・酢酸リンゲル液
#128.
末梢からエネルギー・アミノ酸を投与することを目的とした、ビタミンB1配合糖加低濃度アミノ酸輸液。末梢栄養輸液(Peripheral Parenteral Nutrition; PPN)で用いる。
ブドウ糖 7.5%、アミノ酸 30 g/L (kcal/N 64)、維持液濃度の電解質(Na 35 mEq/L, K 20 mEq/L)、微量元素の一部,ビタミンB1などを含み、420 kcal/Lのカロリー投与が可能。
(1日4本 + 脂肪乳剤で1000 kcal程度入れられる)
ビーフリード ①浸透圧比が3と高く、静脈炎などを起こしやすく、電解質補正液を添加できない。
②肝・腎不全の患者への投与はしにくい。
③500 mL/Bを6時間で投与する必要がある。
④ビタミンB1 (チアミン)は500 mL中に0.75 mg。含まれている。
などに注意が必要。 ※チアミンの一日摂取推奨量は30代男性で1.2 mg。一本では必要量に達しない。
#129.
なぜこんな中途半端な%かというと、NaHCO3の分子量は84なので、HCO3-濃度はちょうど1000 mEq/Lになる。※ちなみに1.26%という製剤もあり、こちらは生理食塩水と同じNa濃度になる。
本剤投与時にはNaも1000 mEq/L投与される。250 ml投与してしまうと生食1500 ml相当のNa負荷になる。
20~60 ml程度の少量投与することはあるが、アシドーシスの補正目的にメイロンを大量投与することの有用性は乏しく、あまりお勧めしない。
ICU入室の代謝性アシドーシス患者に重曹を投与しpH>7.3に保っても,死亡率は改善しなかった.
(重症のAKIを発症した症例に限ったサブ解析では生存率・RRT施行率を少し改善)
(Lancet, 2018) 注意したい薬剤 -メイロン8.4%-
#130.
「炭酸水素ナトリウム誤投与による急変死亡について」令和元年11月19日 京都大学医学部附属病院 より引用. メイロン誤投与事件 入院していた腎不全と心不全のある成人患者に、造影剤腎症(CIN)予防のための重曹液投与の際に1.26%重曹液ではなく、8.4%メイロン1Lを誤投与した。患者は手や肩のつりなど訴えたが心停止。いったん心拍再開したものの、胸骨圧迫による肺からの出血など、二重三重のミスが重なり、急変死亡した。
なお、1L投与により
0.9%食塩水:9gの食塩負荷
1.26%重曹液:約9gの食塩負荷
8.4%メイロン:約60gの食塩負荷
となる。
CIN予防には生食で統一する病院が多くなったと思われる。
#131.
血液製剤 おまけ
#132.
血液200mL中のRBCを抽出したものを1単位としている。RBC-LR 1単位 140mL
Ir=Irradiated(照射)
LR=Leukocytes Reduced(白血球除去)
2023年3月から使用期限が採血後21日間から28日間に延長された。
■2単位入れた場合のHb上昇予測 ■ Na、K濃度 RBC
#133.
血液200mL中の血小板を抽出したものを1単位としている。
PC-LR 1単位 20mL Plt:0.2x1011
製剤としては他、2、5、10、15、20単位がある。
凝固因子も含まれており、PC 20単位中の凝固因子活性はFFP 3単位に相当する。
10単位の輸血で、血小板数は2~3万/mL程度上昇することが予想されるが、個体差が大きい。
5単位/1時間の投与速度が標準的 PC
#134.
血液200mL中の血漿を抽出したものを1単位としている。
FFP-LR 1単位 120mL
製剤としては他、2単位、4単位がある。
FFP 1単位投与で600/kg のフィブリノーゲンの上昇が期待できる。
Na負荷になるという認識も持っておいた方がいい。 FFP 新鮮凍結血漿
#135.
多人数の血漿をプールして、冷エタノール法により製造された蛋白成分。95%以上がアルブミン。
5%、20%、25%溶液がある。
60℃で10時間以上加熱処理がされており、ウイルス感染の危険性はほとんどない。※これまでに報告なし
Na濃度は160mEq/L以下となっているが実際は大体90mEq/L程度。
Alb 1gの投与で循環血漿量は20mL増加するとされている。
目安としてAlb 1.0 g/dL上昇させたい場合、BW [g]のAlbを投与すればいい。 アルブミン
#136.
輸液を開始するときは、しっかりと目的を明確にして経口(経管)投与を優先して不必要な輸液は避けるようにしましょう。
急性期の血管内外の輸液の動きは単純ではなく、病状推移を適切な間隔で確認しながら、輸液を調整していくことが必要です。
まだEvidenceが確立されていないことも多く、新しい事実からこれまでの治療法が間違いであることもあります。定期的に情報をアップデートして自身の治療法を見直していくようにしましょう。 まとめ