#4.
本研究(PREVENT CLOT)の目的
Background ・骨折患者の血栓予防について低分子ヘパリンとアスピリンそれぞれの有効性を
比較した試験は少ない。
・本研究は
整形外科外傷患者における血栓塞栓症の転帰に関して
アスピリンが低分子ヘパリンに対して非劣性であるかどうかの評価
を目的とした。
#5.
Methods 多施設ランダム化非劣勢試験
アメリカとカナダの外傷センター 21施設
研究期間:5年間
スポンサー: Patient Centered Outcomes Research Institute (PCORI)
Methods
#6.
●成人患者(≥18歳)のうち以下の条件を満たす
・四肢骨折に関して手術治療を受けた
・骨盤または寛骨臼骨折に関して手術治療または保存加療を受けた
※上肢外傷の定義:肩から手関節まで 下肢骨折の定義:股関節から中足骨まで
※手指(手根骨、中手骨、指骨)・前足部(中足骨、指骨)の骨折は除外 組み入れ基準
Methods
#7.
●受傷後48時間以上経過
●試験組み入れのICまでに3回以上の血栓予防薬が投与された
●過去6か月以内にVTEの既往あり
●すでに長期間の血液凝固阻止剤(低用量アスピリンやプラビックスなどの
血小板阻害剤を除く)を投与されている
●慢性血栓症の既往あり
●ヘパリンによるHITの既往、アスピリンアレルギーの既往あり
●医学的理由により高用量のアスピリン(1日1回81mg以上)を投与されている
または高用量のアスピリンによる治療を受ける予定の患者
Methods 除外基準
#8.
●患者は低分子ヘパリン投与群とアスピリン投与群に1対1に割付
●1対1の比率の無作為化割付は、統計調整システム(the Research
Electronic Data Capture system)がコンピュータで生成した乱数を用いて
層別された可変順列ブロックサイズによって作成した
●割り付けられている事は研究者、医療スタッフ、患者のいずれも認識していた
●割り当てられた血栓予防薬はデータのモニタリング、判定、解析のため隠蔽され
て投与された
無作為化割付
Methods
#9.
介入方法(アスピリン投与群)
Methods ●アスピリン81mgを1日2回投与
●栓予防の期間は、治療期間の適切な期間についての合意が得られなかったため、
各病院の臨床プロトコルに基づいて退院時に終了するか、継続とするか
判断することを許可した
※血栓予防の指示や期間は、群分けに基づいて変更しないよう各施設に指示
#10.
介入方法(低分子ヘパリン投与群)
Methods ●エノキサパリン30mgを1日2回皮下投与
●肥満、腎臓病、その他の適応症の患者には、各施設のプロトコールに従って
投与量の調節が許可された
#11.
試験プロトコール
Methods ●各群に割り当てられた血栓予防薬の用量の80%に従う
・入院期間中に手術のために薬剤が中止されるなどの医学的理由で予定された
薬剤投与が行われなかった場合は許容する
●退院時に血栓予防薬を処方する場合、その患者に無作為に割り当てられた
血栓予防薬とするである
■上記2つの条件を満たした患者を、プロトコルに準拠していると判断
#12.
Primary outcome
Methods ●当初のprimary outcome:肺塞栓症による死亡
➡無作為化後90日時点での全死因死亡に変更
・2021年1月にプロトコルの公表、統計解析計画の最終化、募集の完了、
試験データのレビューの前に、primary outcomeは変更された
➡分類の誤りや原因特異的死亡のリスクとの懸念があったため
●90日後の無作為化後の詳細不明の患者に関する追加の死亡情報を得るため、
LexisNexis Accurintデータベース、Limited Access Death Master Fileを
使用
#13.
Secondary efficacy outcome
Methods ●非致死的肺塞栓症、深部静脈血栓症、出血性合併症
●委員会は両群の割り当てを隠蔽化し、特に肺塞栓症に関連する死亡に焦点を
当てて原因特異的死亡を審査した
●原因特異的死亡は3つの等級に区分
➡①肺塞栓症に関連する
②肺塞栓症に関連する可能性がある
③肺塞栓症に関連しない
#14.
Secondary efficacy outcome
Methods ●非致死的な肺塞栓症も委員会によって審査
➡massive肺塞栓症、submassive肺塞栓症、臨床的に重要な肺塞栓症
無症状で部分的な肺塞栓症として報告
●深部静脈血栓症の発生は、近位または遠位によって細分化
#15.
Secondary safety outcome
Methods ●出血イベント、創傷合併症、手術部位感染
◎出血イベント
・重要な部位や臓器に対する有症状の出血
・24時間以内にHb値が20g/L以上低下または赤血球2単位以上の輸血を
必要とした出血
・再手術を必要とした出血
◎創傷合併症:創部のドレナージや血種除去などの再手術を要した創部
◎手術部位感染:再手術を要する深い切開部位または創部感染
※米国疾病管理予防センター(CDC)の基準に従って定義
#16.
アウトカムの確認
Methods ●無作為割り付けの後90日以内に、すべての試験アウトカムは患者への
面接または電話によって確認された(92%のデータを集計)
●90日以内にフォローを中止した患者や電話連絡に応答しなかった患者
は、LexisNexis Accurintを使用して死亡情報を検索し、Death Master Fileに
アクセスし、公的記録から追加の連絡先情報を取得した。未知のアウトカム
情報を持つ全患者について、コールセンターを活用し少なくとも3回は電話を
かけた。
#17.
サンプルサイズ計算
Methods ●試験で使用された標本サイズの計算において、低分子量ヘパリン群における
死亡率のベースラインは1.0%と仮定した
●死亡率に対する非劣性marginは0.75%.に設定
●12,200人のサンプルサイズが、アスピリンが低分子量ヘパリンと比較し非劣性
であるかどうかを判断するために必要と判断した(95% power)
●中間解析を2回実施し、O'Brien-Flemingの停止境界と7.5%の欠損を考慮
●中間解析は、両群の割り当てが隠蔽化された状態で、調整センターアナリストに
よって実施され、安全委員会によって評価された
●中間解析からの変更はなかった
#18.
統計解析
Methods ●主な解析は意図解析法を用いた。
●主要なアウトカムは治療固有のKaplan-Meier推定器を使用して評価
●上側限界96.2%の両側信頼区間(2つの中間分析を考慮)および
非劣性マージン0を用いて非劣性を評価
●非劣性基準が満たされた場合、優越性を検討することを計画した
#19.
統計解析
Methods ●二次解析では、入院中の薬剤の服用量が少なくとも80%以上を準拠し、退院時に
ランダムに割り当てられた血栓予防薬を処方された患者の検討を行った。
●すべてのSecondary outcomeのリスク差推定と95%信頼区間を報告したが
形式的な仮説検定は行わなかった。
●治療特異的な90日間のアウトカム発生率を報告した。
●二次アウトカムの信頼区間の幅を多重比較のために調整しなかったため、
95%信頼区間から治療効果を推論することはできない。
●すべての分析は、R Software, version 4.0.2 (R Project for Statistical
Computing)を使用して実施された
Regenerate response
#20.
本研究のまとめ
Methods
#21.
Result (図や表は論文参照)
#22.
Result 12211人が同意を得て
ランダム化 アスピリン投与群6101人 低分子量ヘパリン投与群6110人 57332人がスクリーニング
#23.
患者背景
Result ●男性が多数(62.3%) ●平均年齢は44.6±17.8歳
●Injury Severity Scoreの中央値は9(四分位範囲4-10)
●人口統計、医学的、外科的特徴は意図分析と
規定プロトコル人口の両方の群で類似しており、
対象集団を代表するものであった
●3328人(27.3%)は骨折外傷のみが血栓症のリスク要因
●69.2%は同意習得前に低分子量ヘパリンを2回未満投与
●平均入院期間は5.3±5.7日
●5447人の患者(45.4%)は退院時に免荷
4373人の患者(36.4%)は退院時に荷重を許可
#24.
研究介入の遵守状況
Methods ●入院プロトコル遵守基準を満たす
アスピリン群5778例(94.7%) 低分子量ヘパリン群5291例(96.9%)
●試験薬の入院中平均投与回数
アスピリン群8.6±10.8回 低分子量ヘパリン群9.1±10.5回
●退院時には、91%の患者が血栓予防を受けていた
アスピリン群93.6% 低分子量ヘパリン群88.8%
●退院時の処方された血栓予防薬の期間の中央値(四分位範囲)
アスピリン群21日(19-21) 低分子量ヘパリン群21日(14-21日)
#25.
Primary outcome
Result ●プロトコルへの遵守が厳密であった87.4%の患者を含めたプロトコル分析でも
同様の結果が得られた。
●85.9%がプロトコルに遵守しており、試験薬の入院中平均投与回数は
13.1±12.1回であった。
●年齢別にみた、60歳未満の患者と60歳以上の患者で死亡に関する治療効果に
差は見られなかった。 アスピリンは、低分子量ヘパリンと比較し
無作為化後90日時点での全死因死亡率において非劣性
#26.
Secondary outcome
Result ●肺塞栓症に起因する死亡率においても、肺塞栓症以外に起因する死亡率に
おいても、両群群間で90日後の確率差は同程度(-0.02%, -0.03%)
●肺塞栓症に関連した可能性がある死亡率もprimary outcomeの差と類似(-0.08%)
●非致死性の肺塞栓症の発生数(-0.00% 95%CI、-0.43から0.43)
アスピリン群の90人(90日後発症率1.49%)
低分子量ヘパリン群の90人(90日後発症率1.49%)
●非致死性の肺塞栓症の多くはランダム化後7日以内に発生(四分位範囲3-22) 両群の肺塞栓の発生率、肺塞栓に関連した死亡率に差はなし
#27.
Primary / Secondary outcome
ITT集団とプロトコル毎の集団における
全死亡と原因特異的死亡の推定差異
Result 両群に差はなし
#28.
Secondary outcome
Result ●VTE発生数(差0.80%、95%CI、0.28から1.31) 有意差あり(アスピリン多)
アスピリン群151人(90日後発症確率2.51%)
低分子量ヘパリン群103人(90日後発症率1.71%)
●末梢性:発生率の差0.58%(95%CI、0.20から0.96)
●大腿部:発生率の差0.25%(95%CI、-0.12から0.62)
●深部静脈血栓症の発症から無作為化までの中央値の期間は16日 アスピリン群でVTEの発生数が多い
#29.
Safety outcome
(アスピリン群vs低分子ヘパリン群)
Result ●出血合併症(90日間の発生率)
834人(13.72%)vs 869人(14.27%)
●出血イベントの中央値発生時間
両群とも投薬開始後2日(四分位範囲1-4日)
●創部合併症(90日間の発生率)
8人(0.13%) vs 14人(0.23%)
●深部手術部位感染症(90日間の発生率)
103人(1.73%)vs 93人(1.55%)
●その他の重篤な副作用は両群で同様 両群でほぼ同等
#30.
Discussion
#31.
●Primary outcome
アスピリン群は低分子量ヘパリン群と同等の予防効果を示した(非劣性)
●Secondary outcome
・肺塞栓症に関連する死亡および非致死性肺塞栓症の発生率においても
アスピリン群と低分子量ヘパリン群で同等の結果が得られた。
・低分子量ヘパリン群はアスピリン群よりもVTEの発生率が少なかった
(2.51%vs1.71% 95%CI 0.28〜1.31)
●Safety outcome
両群の安全性リスクの差は認められず、患者の年齢による差もなかった 本研究の結果のまとめ
Discussion
#32.
●当研究の結果はこれまでの先行研究と一致しており、整形外科外傷後の
致命的な血栓塞栓症発症の予防においてアスピリンは低分子量ヘパリンと同様に
安全で効果的であることを示している
●当研究において低分子量ヘパリン群は、アスピリン群に比べてVTE発生率が
少なかった
➡この結果は、以前に行われた人工股関節または人工膝関節置換術を受けた
患者を対象にした3つの試験のポイント推定値と一致しており、
そのうち2つの試験で報告された差は統計的に有意ではなかった 先行研究との比較
Discussion
#33.
●本試験におけるPrimary outcomeは、Cochraneレビューの外傷患者における
血栓予防の指定項目であること、科学的信頼性の観点から
無作為化後90日時点での全死因死亡を選択した
●ただし、血栓予防薬の比較において非致死的な血栓塞栓症の予防の重要性も
慎重に考慮する必要があるため、VTEおよびSafety outcomeの比較も行った 当研究のアウトカム設定について
Discussion
#34.
本研究の限界
Discussion ●入院時の参加同意習得前に最大2回の低分子量ヘパリン投与が許可されて
おり、これらの投与による影響が懸念される
●入院中および退院後の血栓予防期間は定められていなかった
●Secondary outcomeはオープンラベルデザインの研究であったため
診断の疑いや監視バイアスの影響を受ける可能性がある
※Primary outcomeは死亡率であり、肺塞栓症関連死亡や肺塞栓症発生件数に
ついては盲検で判定されたため、リスクは軽減されている
●主要アウトカムは、登録後に肺塞栓症に関連した死から全死因に変更された
※結果を把握する前にプロトコルを公表、統計分析計画を決定し募集を完了させた
#35.
●試験に限界はあるが、アスピリンは低分子量ヘパリンよりも低コストで投与が
簡単であるため、臨床的に有意義な結果である
●試験は21の他施設で実施され、追跡率(96.8%)と遵守率は高い(87.4%)
●各群の割り当て結果をを知らない審査委員会が死亡および肺塞栓症のすべての
アウトカムを確認している 著者らの意見
Discussion
#36.
Conclusion 整形外科外傷患者において、アスピリンによる血栓予防は
低分子量ヘパリンによる血栓予防と比較し90日の死亡予防において
非劣性であった
Conclusion
#37.
内的妥当性
#38.
外的妥当性 ●対象はアジア人でないことや、ベースのBMIなどが不明であるが
多施設研究ではある
●対象患者が本邦の疫学と異なる(平均年齢は44.6±17.8歳と若い点など)
●本邦の施設ではヘパリンカルシウム皮下注製剤(未分化ヘパリン)を使用している
割合が高く、低分子ヘパリンの使用率は低い傾向がある
#39.
私見 ●死亡率に差がないとはいえ、アスピリンの方がVTEのリスクが高い傾向があるので
臨床でやや使いにくさを感じる
●そもそも、抗血小板薬でありVTE予防に適応のないアスピリンを血栓予防薬として
使用したまま退院もしくは転院させた場合、後医は混乱してしまうかもしれない
●上肢単独の外傷も本試験には含まれており、真に知りたい下肢や骨盤骨折後の
免荷や荷重制限のある患者に対する血栓予防薬の効果や安全性の評価とは
異なる結果になっている可能性がある
#40.
私見 ●一方で、1日2回皮下注射の介入が1日2回内服で済むという患者さんへの侵襲度
の低下や簡便さは無視できないメリット
●現行の保険適応を考慮すると、例えばPCIや脳梗塞によりバイアスピリンを
内服されている整形外科外傷で血栓予防薬が必要そうなときで、転院先で
ヘパリンカルシウム皮下注対応ができない場合、離床の見込みを加味して
まあ、アスピリンを飲んでいるから大丈夫かも…?と推察できるかもしれない
※そもそもDAPTなどの患者は本研究の除外項目なので不正確
※ヘパリンカルシウム皮下注とアスピリンの直接比較ではない
(血栓発生率 未分化ヘパリン>低分子ヘパリン という背景も加味すればあり…?)
#41.
https://dancing-doctor.com/minna-qq/
#42.
医学の学び・医学書レビューを発信させていただいています 公式LINEアカウント(定期動画配信+限定情報!)
https://line.me/R/ti/p/%40339dxpov ブログ(勉強ノート・医学書レビュー)
https://dancing-doctor.com/