#4.
関節リウマチ (rheumatoid arthritis: RA)とは? • 自己免疫的機序による破壊性関節炎 • 炎症の主座は滑膜 (関節内腔を裏打ちする組織) • かつては生命予後を著しく損なう疾患 - 非可逆的な関節変形によるADL低下 - 慢性炎症持続による心血管系リスク上昇 - 治療薬 (≒ステロイド) の有害事象
#5.
関節リウマチ (rheumatoid arthritis: RA)とは? 2010 ACR/EULAR RA分類基準:6点以上でRAと分類 腫脹または圧痛関節数 1個の大関節 2〜10個の大関節 1〜3個の小関節 4〜10個の小関節 11関節以上 (すくなくとも1個は小関節) 血清学的検査 RFも抗CCP抗体も陰性 RFか抗CCP抗体のいずれかが低値陽性 (基準上限3倍以内) RFか抗CCP抗体のいずれかが高値陽性 滑膜炎の持続期間 6週間未満 6週間以上 急性期炎症反応 CRPも赤沈も正常値 CRPか赤沈が異常値 0 1 2 3 5 0 2 3 末梢関節に 多発する 自己免疫性 持続性 0 1 0 1 関節炎
#6.
RAの疫学 • 日本の患者数:約80万人 • 発症率・有病率は女性(1.7%)>男性(3.6%) • 好発年齢は30-50代だが、最近では高齢発症例も多い - 発症は若年でも「長生き」するようになり高齢患者はさらに増加 • 妊娠可能年齢女性の発症が多い → 治療薬選択に影響 - 例:MTX (RAの第一選択薬) は催奇形性あり導入前に検討必要
#7.
RA発症の遺伝素因 • HLA-DR:最大の遺伝素因 (遺伝素因の10-30%) - とくにHLA-DRB1の”shared epitope”が強く関与 (抗原提示に関連) • ほかの代表的なRAに関連する遺伝子 - PTPN22 (T細胞受容体からのシグナルを負に制御) - STAT4 (I型IFNなどのシグナル伝達に関わる) - PADI4 (蛋白のシトルリン化に関連)
#8.
RA発症の環境因子 • 喫煙:肺の慢性炎症を介してRA関連自己抗体が誘導される - shared epitopeを持つ患者で喫煙歴(+) → 21倍RAになりやすい! • 細菌:とくに歯周炎に関連するporphyromonas gingivalis • 肥満 • 化学物質:シリカ、その他化学肥料や溶剤など
#9.
RAの症状:関節炎 • 多関節痛:手・手指・足趾などの末梢関節に起こりやすい • 上肢 (手や手指) の関節痛は自覚しやすく初発症状として多い - 下肢優位:反応性関節炎・結晶性関節炎の可能性を考慮 • 朝のこわばり:1時間以上続くのがRAに特徴的 • 上記の症状がある程度の期間続く (分類基準的には≧6週間)
#10.
RAの関節外症状 • 肺・気道の病変:間質性肺炎、胸膜炎、濾胞性気管支炎など • リウマトイド結節 • その他 - リウマトイド血管炎:皮膚症状、末梢神経障害、強膜炎など - アミロイドーシス - Felty症候群
#11.
RAの診断:病歴 • 関節の”炎症”に関連した病歴 - 安静時のこわばり (朝に症状が強い) - 労作時で症状が緩和する • 慢性の経過で、発症日は特定できないことが多い - 特定できる:リウマチ性多発筋痛症や結晶性関節炎の可能性を考慮
#12.
RAの診断:診察 • そもそも痛いのは”関節”なのか? - 関節外:滑液包、腱やその付着部、神経原性 • 痛みの性状や可動域 (ROM) である程度推測できる - 関節:痛み 自動時=他動時 / ROM 自動時=他動時 - 関節外:痛み 自動時>他動時 / ROM 自動時<他動時 • RA”以外”を示唆する筋骨格所見 - 指趾炎や腱付着部炎:脊椎関節炎の可能性を考慮
#13.
RAの診断:診察 • 関節”炎”を示唆する所見を拾いあげる - 腫脹・圧痛・発赤・熱感 (後2つは小関節だと出にくい) • 関節以外の所見も大切 - 皮膚:他疾患 (例:掌蹠膿疱症や乾癬) を示唆する所見はないか? - 肺:聴診で間質性肺炎を示唆する所見はないか? - 眼:強膜炎 (RAやGPA)、ぶどう膜炎 (SpAやBD) - その他全身の臓器
#14.
RAの診断:検査 • 血液検査 - 関節”炎” を示唆:CRP、赤沈 - 自己免疫反応を示唆:リウマトイド因子、抗CCP抗体 • 画像検査 - 単純X線写真 - 超音波 - その他:MRI
#15.
リウマトイド因子 (rheumatoid factor: RF) • IgGのFc部分を認識する自己抗体 • RA診断において感度80% (病初期50%) / 特異度50-80% - RA以外の疾患でも陽性になる、高齢者では健常人でも • 無症候陽性でもその後のRA発症リスクが上昇するという報告あり
#16.
抗CCP抗体 • RA発症に深く関与しているシトルリン化蛋白に対する抗体 - 商業ベースで”環状”シトルリン化ペプチド (CCP) 抗体が測定可 • RFよりRA診断における感度 (60-80%)・特異度 (90-95%以上) は高い - しかし他疾患でも陽性になりうるのはRFと同様 • 関節破壊の予測因子になりうる
#17.
リウマチトイド因子(RF)/抗CCP抗体 RAの診断となったひとにおける陽性の割合(%) 抗CCP抗体 + - + 63 5 - 18 14 RF Mewar D, et al. Arthritis Res Ther. 2006;8(4):R128.
#18.
RF/抗CCP抗体が陽性になる疾患 リウマトイド因子 疾患 関節リウマチ ほかの自己免疫性疾患 一次性シェーグレン症候群 全身性エリテマトーデス 強皮症 全身性血管炎 感染症 感染性心内膜炎 梅毒 B型肝炎 C型肝炎 HIV感染症 結核 ほかの疾患 肝硬変 クリオグロブリン血症 原発性硬化性胆管炎 健常人 50歳 70歳 頻度(%) 70 抗CCP抗体 疾患 頻度(%) 乾癬性関節炎 全身性エリテマトーデス 8.6 7.8 シェーグレン症候群 5.7 脊椎関節炎 2.3 強皮症 6.8 40 8-37 25 76 10-20 15 C型肝炎/クリオグロブリン血症 変形性関節症 3.5 B型肝炎 若年性特発性関節炎 0.6 リウマチ性多発筋痛症 0 25 100 45-70 血管炎/多発血管炎性肉芽種症 結核 4.7 多発筋炎/皮膚筋炎 線維筋痛症 0 痛風/偽痛風 0 75-95 15-35 20-35 5-20 5 10-25 Suresh E. Cleve Clin J Med. 2019;86(3):198-210 2.2 7.7 4.3 2.7 Aggarwal R, et al. Arthritis Rheum. 2009;61(11):1472-1483.
#19.
RAの画像検査:X線 • 関節炎・関節痛の鑑別に有用 - 疾患に典型的な画像所見を同定 • 関節破壊の進行度の評価 • RA疑い:手足 (RAで変化が出やすい) を2方向で撮影 - 有症状部位があればそこも追加検討 - 荷重関節は立位で撮影が望ましい (裂隙狭小化をみるため) - 頚椎症を疑う症状や全身麻酔前:頚椎も評価 (2方向+前後屈)
#20.
RAの画像検査:X線 早期 中等症 関節裂隙狭小化 骨びらん 重症 亜脱臼 晩期 骨強直 亜脱臼・ムチランス変形
#21.
X線写真読影の「お作法」 ABCDs • Alignment (配列):尺/橈側偏位、亜脱臼、carpal height ratioの変化 • Bone (骨):関節周囲骨密度低下 (関節炎の影響) • Cartilage (軟骨):関節裂隙狭小化、骨びらん • Distribution (分布):PIP/MCP/手/MTP関節が対称性に • soft tissue (軟部組織): 滑膜炎による腫脹
#22.
RAの画像検査:超音波 • 関節炎の検出 - 触診で評価が難しい関節 (肩や股など) の評価 - RA発症や関節破壊進行の予測因子になりうる • 筋骨格系疼痛の鑑別 - リウマチ性多発筋痛症:滑液包炎や上腕二頭筋腱鞘炎 - 結晶性関節炎:結晶沈着を示唆する所見 - その他:外傷や神経障害 (例:手根管症候群)
#23.
本スライドのまとめ • RAとは:自己免疫的機序による破壊性関節炎 • 最大の遺伝素因はshared epitope、環境因子は喫煙 • 病歴:慢性の経過を確認 • 診察:関節”炎”の同定、関節外症状でRAらしさ/らしくなさを探す • 検査:RF/抗CCP抗体は「陽性=RA」というわけではない