テキスト全文
パーキンソン病と食事の重要性
#1. パーキンソン病と食事 Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital
Daisuke Yamamoto
#2. パーキンソン病で推奨される食事は? 体重減少を防ぐ食事
便秘予防のための食事
薬の吸収をよくする食事
骨折を予防する食事
病気の進行を防ぐ食事
#3. 体重減少は問題になる 体重減少の原因 消費エネルギーの増加 食事摂取量の減少 パーキンソン病症状による 食欲低下による パーキンソン病患者は安静時における代謝が亢進している。 Archives of Neurology, 2006;63(6): 803–808. PD患者の体重減少は高頻度(24〜70%)で認められ、予後悪化や死亡率上昇と関連 栄養不良はPDの進行とともに増加し、運動症状・非運動症状を悪化させる Frontiers in Aging Neuroscience, 2020;12:1–12
#4. 体重減少による悪影響
体重減少は以下のようなリスクを増加させます: Clinical Nutrition, 2014, PMID: 23706972 栄養状態の悪化は疾患進行・QOL低下と関連する。
便秘予防のための食事法
#6. 便秘予防のための工夫 パーキンソン病で便秘はほぼ必発。
かつ、生活の質を低下させる。
#7. 便秘対策:食物繊維の摂取 食物繊維の摂取• 1日20〜30gの食物繊維摂取が推奨されます。• 水溶性、不溶性の両方をバランスよく摂ることが大切。 Journal of Neurology, 2001;248(Suppl 3):III63–III70
#8. 便秘対策:水分摂取を増やす
• 便秘改善には1.5〜2L/日の水分摂取が必要。• 特に食物繊維と併用することで効果を発揮。• 温かい飲み物(白湯、ハーブティーなど)で腸の反応性を高めることも有効。• 朝一番のコップ1杯の水も排便反射を刺激。
#9. 便秘対策:腸内環境の改善
• 腸内環境の改善を目的に、発酵食品や乳酸菌、食物繊維の摂取が勧められます。 Journal of Neurology, 2020;267(9):2507–2523 プロバイオティクス:乳酸菌、ビフィズス菌など
健康に有益な効果をもたらす生きた微生物で、十分量を摂取すると宿主(ヒト)に良い影響を与えるもの
プレバイオティクス:善玉菌(特にビフィズス菌)の増殖促進する
腸内の有益菌(善玉菌)を選択的に増やす栄養素で、宿主の健康に寄与する非消化性成分
#10. 便秘対策:食事パターン • 朝食をしっかり摂ることが排便反射を促す。• 食事の時間を一定に保ち、腸のリズムを整える。
便秘対策のまとめと例
薬の吸収に影響する食事
#13. 薬の吸収に食事は関係する
食事によって薬の吸収が悪くなることもある。
#14. 高タンパク食は薬の吸収を悪くする • 理由:
タンパク質に含まれるアミノ酸(特に分岐鎖アミノ酸)は、レボドパと同じ輸送体で吸収され、競合阻害を起こすため、薬剤の効果が低下する可能性があります。
• 対策: - 朝・昼は低タンパク食(例:パン・果物・野菜中心) - 夕食でまとめて摂る「プロテインリディストリビューションダイエット(PRD)」が効果的。 Neurology, 1987. PMID: 3813440
骨折予防と病気進行に効果的な食事
#15. 骨折を予防する食事
ビタミンD・カルシウムの補充
パーキンソン病では転倒・骨折のリスクが高く、
骨粗鬆症対策としてビタミンD・カルシウムの摂取が重要。 Journal of Neurology, 2013. PMID: 23640150
#16. 病気の進行に効果のある食事
地中海食の有用性
地中海食(野菜、果物、魚、オリーブオイル、ナッツ中心の食事)は、
パーキンソン病含め、神経変性疾患の予防・進行抑制に有用とされる。 Movement Disorders, 2019. PMID: 31392755
オススメメニューの紹介
#17. オススメメニュー:朝食
🕗 朝食(低タンパク)
・全粒パン1枚(バター少量)・バナナ1本・野菜スープ(かぼちゃ、にんじんなど)・温かいルイボスティー or 白湯・低タンパク、高食物繊維・便秘対策、抗酸化、消化に優しい構成
#18. オススメメニュー:昼食
🕛 昼食(低タンパク)
・十六穀米おにぎり1個・青菜とじゃがいもの味噌汁・ブロッコリーとにんじんのサラダ(オリーブオイルドレッシング)・キウイフルーツ半個・ビタミンCや食物繊維を多く含み、抗酸化作用を意識
#19. オススメメニュー:おやつ
🕒 間食
・ヨーグルト(低脂肪)+はちみつ少量・ほうじ茶 or 麦茶・腸内環境を整えるプロバイオティクス摂取・栄養補助にも◎
#20. オススメメニュー:夕食 🕕 夕食(高タンパク・高栄養)
・焼き鮭または鶏の照り焼き・ひじきと大豆の煮物・ほうれん草ときのこのおひたし・玄米ごはん・豆腐とわかめの味噌汁・牛乳または豆乳・タンパク質をこのタイミングでしっかり摂取・ビタミンDとカルシウムも補給・野菜と豆類で食物繊維もしっかり
食事のバランスと知識の重要性
#22. 最後に:バランスは大切。こだわりすぎないのも大切。ただし、知識は大切。一通りは知っておくこと。