#4.
INTRODUCTION 04 参加型Webinarの進め方 症例 → 問い → 情報開示 → 病態 → 明日からの行動 症例 問い 情報開示 病態 明日からの行動 各Caseの冒頭で、まず参加者に判断してもらいます。 CHAT / REACTION 安心してよい? CHAT / REACTION 次に何を見る? CHAT / REACTION 何を追加で測る? CHAT / REACTION 誰へ共有し、
何を始める?
#5.
CASE 1|pH正常でも安心しない 05 pH 7.40――この血液ガス、安全ですか? pHが正常でも、安全とは限らない。 ・pH 7.40 ・基準範囲内 ・この数字だけで「異常なし」と判断してよいか? pH
7.4 あなたは次に何を考えますか
#6.
CASE 1|pH正常でも安心しない 06 症例:発熱、嘔吐、呼吸苦 血液ガスは、患者の状態と一緒に読む。 68歳女性。2型糖尿病、慢性腎臓病。 2日前から発熱と食欲低下があり、本日、嘔吐と呼吸苦を認めて救急外来を受診した。 項目 | 所見 意識 | JCS 1 血圧 | 92/54 mmHg 心拍数 | 118/分 呼吸数 | 30/分 SpO2 | 93%(室内気) 体温 | 39.0℃ Blood Gas
Analysis 血液ガスは、
患者の状態と一緒に読む。
#7.
CASE 1|pH正常でも安心しない 07 参加者への問い:次にどこを見ますか? pHの次に、HCO3−とPaCO2を確認する。 次に確認するものは? 1. pHが正常なので評価終了 2. HCO3−とPaCO2 3. 血糖値だけ 4. SpO2だけ Blood Gas
Analysis
#8.
CASE 1|pH正常でも安心しない 07 参加者への問い:次にどこを見ますか? pHの次に、HCO3−とPaCO2を確認する。 次に確認するものは? 1. pHが正常なので評価終了 2. HCO3−とPaCO2 3. 血糖値だけ 4. SpO2だけ 今回のチェック順: pH → HCO3− → PaCO2 Blood Gas
Analysis pHの次に、
HCO3−とPaCO2を確認する。
#9.
CASE 1|pH正常でも安心しない 08 pHは正常、HCO3−は15 HCO3−低下を見たら、代謝性アシドーシスを疑う。 項目 | 結果 pH | 7.40 HCO3− | 15 mmol/L pHは正常だが、HCO3−は明らかに低下している。 この時点で「正常な血液ガス」ではない。 pH
7.4 HCO3−低下を見たら、
代謝性アシドーシスを疑う。
#10.
CASE 1|pH正常でも安心しない 09 PaCO2 25――これは代償ですか? PaCO2の変化を、確認せず「代償」と決めつけない。 項目 | 結果 pH | 7.40 PaCO2 | 25 mmHg HCO3− | 15 mmol/L 代謝性アシドーシスではPaCO2が低下する。 しかし、25 mmHgは適切な代償範囲なのか? CO₂
25 PaCO2の変化を
「適切な代償」と決めつけない。
#11.
CASE 1|pH正常でも安心しない 10 Winter式で「代償の範囲」を計算する 代謝性アシドーシスのPaCO2は、予測値と実測値を比較する。 Winter式: 予測PaCO2 = 1.5 × HCO3− + 8 ± 2 今回のHCO3−は15 mmol/L。 1.5 × 15 + 8 = 30.5 ± 2 mmHg 予測範囲: 28.5~32.5 mmHg 実測PaCO2: 25 mmHg 実測値は予測よりも低く、代償範囲を逸脱している
#12.
CASE 1|pH正常でも安心しない 11 AGは計算するだけでなく補正する 低AlbではAGが過小評価されるため、補正AGまで確認する。 追加検査: 項目 | 結果 Na | 138 mmol/L Cl | 100 mmol/L HCO3− | 15 mmol/L Alb | 4.0 g/dL AG = Na − Cl − HCO3− = 23 補正AG = AG + 2.5 ×(4 − Alb) 今回はAlb 4.0 g/dLのため、補正AGも23。 ・低Albでは、見かけのAGが低く
なり、AG開大を見逃し得る。 ・敗血症、高齢者、低栄養では特に
Albを確認する。
AG開大を見つけたら、
何の酸が増えているかを考える。
#13.
CASE 1|pH正常でも安心しない 12 AG開大――乳酸とケトンを分けて測る AG開大の原因を、推測だけで決めない。 追加検査: 項目 | 結果 乳酸 | 6.1 mmol/L 血中β-ヒドロキシ酪酸 | 0.4 mmol/L この症例では、
AG開大の主な原因として乳酸アシドーシスを考える。 背景にある敗血症、循環不全、低灌流を評価する。 AG
23 AG開大の原因を、
推測だけで決めない。
#14.
CASE 1|pH正常でも安心しない 13 混合性酸塩基異常の全体像 乳酸アシドーシスと呼吸性アルカローシスが同時に存在する。 1. HCO3− 15 mmol/L:代謝性アシドーシス 2. 補正AG 23:AG開大 3. 乳酸 6.1 mmol/L:乳酸アシドーシス 4. Winter式の予測PaCO2:28.5~32.5 mmHg 5. 実測PaCO2 25 mmHg:予測より低い したがって、 ① AG開大性代謝性アシドーシス ②呼吸性アルカローシス が併存する混合性酸塩基異常と考える。
#15.
CASE 1|pH正常でも安心しない 14 なぜpHは正常になったのか? 2つの異常が逆方向に働き、pHだけが正常に見えていた。 AG開大性代謝性アシドーシス: ・乳酸上昇 ・pHを低下させる 呼吸性アルカローシス: ・過換気によるPaCO2低下 ・pHを上昇させる 両者がpHへの影響を打ち消し合い、
pH 7.40に見えていた。 pH
7.4 2つの異常が逆方向に働き、
pHだけが正常に見えていた。
#16.
CASE 1|pH正常でも安心しない 15 病態が見えたら、次の行動へ 酸塩基異常の名前を付けるだけで終わらない。 この患者で考える病態: ・敗血症 ・循環不全・低灌流 ・乳酸アシドーシス ・呼吸性アルカローシスの合併 次の行動: 1. ABCと重症度を再評価する。 2. モニタリングと静脈路を確保する。 3. 敗血症を疑い、上級医へ速やかに共
有する。 4. 培養採取、抗菌薬、輸液、循環評価
へ進む。 5. 乳酸、循環動態、血液ガスを再評価
する。
#17.
CASE 1|pH正常でも安心しない 16 明日からどう動くか pH正常でも、HCO3−・AG・PaCO2まで確認する。 明日からの4ステップ: 1. pH:正常でも評価を止めない。 2. HCO3−:低下していれば代謝性
アシドーシスを疑う。 3. PaCO2:Winter式で代償が妥当
か確認する。 4. AG:Albで補正し、開大していれ
ば増えている酸を探す。 その後: ・乳酸、ケトン、腎機能、薬剤・中毒を
確認する。 ・症状とバイタルサインを合わせて病態
を考える。 ・異常を初期対応と再評価へつなげる。
#18.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 17 AG 28、血糖320――DKAですか? AG開大と高血糖を見ても、DKAと即断しない。 72歳男性。
2型糖尿病、慢性腎臓病。 3日前から発熱と食欲低下があり、本日、倦怠感が強くなって救急外来を受診した。 初期検査: 項目 | 結果 AG | 28 血糖 | 320 mg/dL Cr | 3.2 mg/dL 参加者への問い: あなたなら、次に何を見る?
#19.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 18 AGとは「測っていない酸」の手掛かり AG開大は診断名ではなく、何らかの酸が増えているサインである。 AGは、通常測定している電解質の差
から「測定されていない陰イオン」の増加を推測する値。 AG = Na − Cl − HCO3− 酸が増えるとHCO3−が消費され、
その酸に由来する陰イオンが増える
ため、AGが開大する。 AG 28から分かること: ・何らかの酸が増えている AG 28だけでは分からないこと: ・何の酸か ・原因がひとつか
#20.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 19 AG開大を見たら、3方向へ分ける まず乳酸、血中ケトン、腎機能を別々に確認する。 今回の実践フロー: 1. 乳酸 ・敗血症、ショック、低灌流はないか 2. 血中ケトン ・DKAやその他のケトーシスはないか 3. 腎機能 ・酸を排泄できているか
#21.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 20 乳酸5.8――敗血症と低灌流を考える 乳酸上昇を見つけたら、循環と感染を同時に評価する。 追加データ: 項目 | 結果 乳酸 | 5.8 mmol/L 血圧 | 88/52 mmHg 心拍数 | 112/分 呼吸数 | 28/分 体温 | 38.9℃ この時点で考える病態: ・敗血症 ・循環不全・低灌流 ・乳酸アシドーシス ただし、乳酸上昇=敗血症ではない。
#22.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 21 血中ケトン4.6――DKAだけではない ケトン上昇を確認しても、AG開大のすべてをDKAだけで説明しない。 追加データ: 項目 | 結果 血中β-ヒドロキシ酪酸 | 4.6 mmol/L 血糖 | 320 mg/dL 血中ケトンは明らかに上昇している。 DKAを考える所見だが、乳酸5.8 mmol/Lと腎機能悪化もあり、AG開大をDKAだけで説明することはできない。 感染・敗血症がDKAの誘因となり、複数の酸が同時に増えている可能性を考える。 β-OHB ケトン上昇を確認しても、AG開大のすべてをDKAだけで説明しない
#23.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 22 Cr 3.2――腎臓もAG開大に関与している? 腎機能悪化があれば、酸の排泄低下も考える。 腎機能の経過: 項目 | 今回 | 3か月前 Cr | 3.2 mg/dL | 2.0 mg/dL BUN | 68 mg/dL | 38 mg/dL eGFR | 18 mL/min/1.73m² | 30 mL/min/1.73m² 慢性腎臓病に急性腎障害が重なっている。 腎機能悪化により酸の排泄が低下し、尿毒症性の酸がAG開大に加わっている可能性がある。 AG 腎機能悪化があれば、
酸の排泄低下も考える。
#24.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 23 このAG開大は「敗血症+DKA+腎機能悪化」 乳酸アシドーシス、DKA、尿毒症性アシドーシスは併存し得る。 症例を統合する: 確認項目 | 結果 | 解釈 乳酸 | 5.8 mmol/L|敗血症・低灌流 ケトン体| 4.6 mmol/L| DKA Cr | 3.2 mg/dL | 腎臓病 AG開大の主な原因: 1. 敗血症・低灌流による乳酸
アシドーシス 2. DKAによるケトアシドーシス 3. 腎機能悪化による酸排泄低下
#25.
CASE 2|AG開大は診断名ではない 24 明日からどう動くか AG開大を見たら、酸を分けて測り、原因ごとに行動する。 明日からの実践フロー: 1. AG開大を確認する ・診断名ではなく、酸が増えているサインと
捉える 2. 乳酸を測る ・敗血症、ショック、低灌流を評価する 3. 血中ケトンを測る ・DKAの有無を確認し、陽性でも原因検索を
止めない 4. 腎機能を確認する ・酸の排泄低下が加わっていないか考える 5. 複数病態を統合する ・ひとつの原因ですべて説明できるか問い直す この症例での行動: ・敗血症を疑い、上級医へ速やかに共有する ・培養採取、抗菌薬、輸液、循環評価へ進む ・DKAに対する輸液、インスリン、K管理を
院内手順に沿って進める ・乳酸、血中ケトン、血液ガス、腎機能を
経時的に再評価する
#26.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 25 糖尿病患者の腹痛・嘔吐――胃腸炎ですか? 糖尿病+腹痛+嘔吐では、血糖値にかかわらずDKAを鑑別に入れる。 46歳女性。2型糖尿病。血糖値186mg/dL 前日から食欲がなく、本日、腹痛と嘔吐が続くため救急外来を受診した。 項目 | 所見 意識 | 清明 血圧 | 104/66 mmHg 心拍数 | 112/分 呼吸数 | 28/分 SpO2 | 98%(室内気) 体温 | 37.8℃ 身体所見: ・口腔内乾燥 ・皮膚ツルゴール低下 ・上腹部を中心とした腹痛 ・頻呼吸 血糖値だけでDKAを除外しない。 あなたなら、次に何を見る?
#27.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 26 参加者への問い:DKAを疑うサインは? 腹痛・嘔吐だけでなく、脱水と頻呼吸を病態のサインとして捉える。 この患者でDKAを疑う手掛かり: 1. 糖尿病 2. 腹痛・嘔吐 3. 食事摂取不良 4. 脱水 5. 頻呼吸 追加で確認すること: ・糖尿病治療薬 ・インスリン中断 ・SGLT2阻害薬 ・発熱・感染徴候 ・血糖、HCO3−、AG、pH、血中ケトン
#28.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 27 血糖186――DKAを除外できますか? 血糖値だけでDKAを除外しない。 追加情報: 項目 | 結果 血糖 | 186 mg/dL 内服薬 | SGLT2阻害薬あり 食事摂取 | 前日からほぼなし 参加者への問い: 血糖186 mg/dLなら、DKAではない? 血糖値だけでは除外できない。 考える病態: ・正常血糖DKA ・飢餓性ケトーシス ・感染症・敗血症 ・その他の腹部疾患 あなたなら、次に何を見る?
#29.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 28 AG開大――次に乳酸とケトンを分けて測る AG開大を確認したら、乳酸と血中ケトンで酸の内訳を調べる。 血液ガス・電解質: 項目 | 結果 pH | 7.29 PaCO2 | 31 mmHg HCO3− | 14 mmol/L Na | 137 mmol/L Cl | 101 mmol/L AG | 22 追加測定: 項目 | 結果 乳酸 | 1.8 mmol/L 血中ケトン体| 5.2 mmol/L AG開大の主な原因として
ケトアシドーシスを考える。
#30.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 29 尿ケトンは入口、血中ケトンで確認する 尿ケトンはスクリーニングに活用し、疑いが残れば血中β-ヒドロキシ酪酸で確認する。 尿ケトンの位置づけ: ・簡便で、ケトーシスのスクリーニング
として有用 ・主にアセト酢酸を検出する ・DKAで優位となるβ-ヒドロキシ酪酸を直接
測定できない ・DKA早期にはケトーシスを過小評価する
ことがある ・尿は現在の血中濃度を即時には反映しない 血中ケトン体の利点: ・現在のケトーシスを直接・定量的に評価
できる ・SGLT2阻害薬使用中、食事摂取不良、血糖
が高くない症例の評価に役立つ ・経時変化から治療反応を評価しやすい 尿ケトンだけでDKAを除外しない。 ・ケトメーター使用により簡便かつ迅速
に結果確認できる
#31.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 29 尿ケトンは入口、血中ケトンで確認する 尿ケトンはスクリーニングに活用し、疑いが残れば血中β-ヒドロキシ酪酸で確認する。 スタットストリップ:
3-ヒドロキシ酪酸とPOCTのヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、NADなどの反応で生じたe-を測定
この電子流を電気化学法によって検出することで3-ヒドロキシ酪酸濃度を測定
測定範囲:0.1-7.0mmol/L
測定時間:0.8μLで10秒
特徴:Htなど22種の干渉物質影響を低減
#32.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 30 DKAで、なぜ腹痛が起こる? DKAそのものが、腹痛の原因になり得る。 DKAで腹痛が起こる背景: 1. 高度アシドーシス ・代謝異常が強いほど腹部症状が目立つこと
がある 2. 脱水・低灌流 ・循環血液量低下が腹部症状に関与する 3. 腸管運動低下 ・脱水や電解質異常が腸管機能へ影響する 4. 麻痺性イレウス ・重い代謝・電解質異常で起こり得る 機序の詳細を暗記するのではなく、 「DKAは腹痛を起こし得るため、胃腸炎だけで説明しない」 と理解する。
#33.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 31 DKAと診断――原因検索は終了? DKAと診断した時点で、思考を止めない。 DKAを確認した後に探すもの: 誘因・併存疾患 | 確認する手掛かり 感染症 | 発熱、局所症状、感染源 敗血症 | 循環不全、意識変容、臓器障害、乳酸 急性膵炎 | 持続する上腹部痛、背部痛、膵酵素 胆道感染 | 右上腹部痛、黄疸、胆道系酵素 DKAは腹痛の原因になるが、腹痛の原因がDKAだけとは限らない。 β-OHB DKAと診断した時点で、
思考を止めない。
#34.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 32 腹痛が改善しない――もう一度考える 代謝異常が改善しても腹痛が続くなら、別の原因を再検索する。 治療後の再評価: ・血中ケトンは低下 ・HCO3−とpHは改善 ・脱水も改善 ・しかし、上腹部痛が持続 再評価する: 1. 腹痛の部位と性状 2. 腹膜刺激徴候 3. 発熱・循環動態 4. 膵酵素・肝胆道系検査 5. 必要に応じた腹部画像検査
#35.
CASE 3|血糖だけでDKAを除外しない 33 明日からどう動くか 血糖値だけでDKAを除外せず、診断後も誘因と併存疾患を探し続ける。 糖尿病患者の腹痛・嘔吐を見たら: 1. 血糖値だけでDKAを除外しない ・脱水、頻呼吸、食事摂取不良を確認する 2. 薬剤歴を確認する ・インスリン中断、SGLT2阻害薬 3. 血液ガスを順に評価する ・pH → HCO3− → PaCO2 → AG 4. AGの原因を調べる ・乳酸と血中β-ヒドロキシ酪酸を分けて測る 5. 原因検索を続ける ・感染症、敗血症、急性膵炎、胆道感染 6. 経時的に再評価する ・ケトン、酸塩基、循環、腹痛の変化
#36.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 34 下痢、食思不振、息苦しさ 代謝性アシドーシスでは、呼吸状態も同時に評価する。 66歳男性。 5日前から下痢と食思不振が続き、全身倦怠感、手足の力が入りにくい感じ、息苦しさが出現したため救急外来を受診した。 項目 | 所見 意識 | 傾眠傾向 血圧 | 94/58 mmHg 心拍数 | 108/分 呼吸数 | 22/分 SpO2 | 95%(室内気) 身体所見: ・口腔内乾燥 ・四肢筋力低下 ・浅い呼吸 呼吸数が保たれていても、
一回換気量が低下すれば
肺胞換気は不足。
#37.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 35 HCO3− 12、PaCO2 45――これは代償? PaCO2が変化していても、適切な代償とは限らない。 血液ガス: 項目 | 結果 pH | 7.05 PaCO2 | 45 mmHg HCO3− | 12 mmol/L 電解質: 項目 | 結果 K | 1.9 mmol/L 参加者への問い: 代謝性アシドーシスだから、PaCO2 45 mmHgも「代償」と考えてよいでしょうか? あなたなら、次に何を見る?
#38.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 36 なぜ代謝性アシドーシスでPaCO2が下がる? 酸性化を感知すると過換気が起こり、CO2を排出する。 代謝性アシドーシスでは: 1. HCO3−が低下する 2. pHが低下する 3. 呼吸中枢が換気を増やす 4. CO2をより多く排出する 5. PaCO2が低下し、pH低下を部分的に和らげる これは呼吸性代償であり、原因そのものを治しているわけではない。 CO₂ 酸性化を感知すると過換気が起こり、CO2を排出する。
#39.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 37 Winter式で予測PaCO2を計算する 代謝性アシドーシスでは、予測PaCO2と実測PaCO2を比較する。 Winter式: 予測PaCO2 = 1.5 × HCO3− + 8 ± 2 今回のHCO3−は12 mmol/L。 1.5 × 12 + 8 = 26 ± 2 mmHg 予測範囲: 24〜28 mmHg 実測PaCO2: 45 mmHg
#40.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 38 実測PaCO2が予測より高い――換気不全を疑う 予測より高ければ、呼吸性アシドーシスの合併である。 Winter式との比較: ・予測PaCO2:24〜28 mmHg ・実測PaCO2:45 mmHg 病態解釈: 1. 代謝性アシドーシス 2. 呼吸性アシドーシス 3. 換気不全 原因として確認するもの: ・意識障害 ・鎮静薬・オピオイドなど ・COPD ・神経筋疾患 ・呼吸筋疲労 ・重度低K ・低P ・低Mg
#41.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 39 予測より低い場合は? 実測PaCO2が予測より低ければ、呼吸性アルカローシスの合併を考える。 Winter式による3つの判断: 実測PaCO2 | 解釈 予測範囲内 | 呼吸性代償はおおむね妥当 予測より高い | 呼吸性アシドーシス合併・換気不全 予測より低い | 呼吸性アルカローシス合併 予測より低い場合に考えるもの: ・敗血症 ・疼痛 ・低酸素 ・肝不全 ・妊娠
#42.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 40 K 1.9――呼吸筋も動けなくなる 重度低Kでは、呼吸筋麻痺によるII型呼吸不全も考える。 この患者の所見: ・K 1.9 mmol/L ・四肢筋力低下 ・浅い呼吸 ・PaCO2 45 mmHg ・代謝性アシドーシスに対する代償不十分 重度低Kでは、 ・全身の筋力低下 ・呼吸筋も骨格筋であり、低Kの影響を受ける ・呼吸筋の筋力低下・麻痺 ・肺胞低換気 ・PaCO2上昇 ・II型呼吸不全 ・重度低Kでは致死的不整脈も合併し得る 直ちに確認するもの: ・K値と他の電解質 ・四肢・呼吸筋の筋力 ・呼吸様式、SpO2、血液ガス ・心電図 ・K補正前後の呼吸状態とPaCO2の変化
#43.
CASE 4|Winter式で換気不全を見抜く 41 明日からどう動くか PaCO2は代償だろうと決めつけず、呼吸数ではなくPaCO2で換気を見る。 代謝性アシドーシスを見たら: 1. Winter式を計算する ・予測PaCO2 = 1.5 × HCO3− + 8 ± 2 2. 実測PaCO2と比較する ・高い:呼吸性アシドーシス・換気不全 ・低い:呼吸性アルカローシス合併 3. 換気不全の原因を探す ・薬剤、COPD、神経筋疾患、呼吸筋疲労 ・重度低K、低P、低Mg 4. 低Kを見逃さない ・K、筋力、呼吸状態、心電図 ・補正前後の呼吸状態とPaCO2を比較する 5. 緊急性を共有する ・モニタリング、電解質補正、呼吸管理 6. 再評価する ・K、PaCO2、pH、筋力、呼吸状態
#44.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 42 1週間の嘔吐――息苦しさと筋力低下 嘔吐が続く患者では、酸塩基異常と電解質異常を同時に考える。 70歳女性。 1週間前から嘔吐と食事摂取不良が続き、全身倦怠感、手足の筋力低下、息苦しさを認めて救急外来を受診。 項目 | 所見 意識 | 清明 血圧 | 98/62 mmHg 心拍数 | 104/分 呼吸数 | 18/分 SpO2 | 95%(室内気) 身体所見: ・口腔内乾燥 ・四肢筋力低下 ・呼吸はやや浅い
#45.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 43 PaCO2 52――これは換気不全? PaCO2高値だけで、呼吸性アシドーシスと決めない。 血液ガス・電解質: 項目 | 結果 pH | 7.53 HCO3− | 42 mmol/L PaCO2 | 52 mmHg K | 2.1 mmol/L Cl | 82 mmol/L 参加者への問い: PaCO2 52 mmHgは、換気不全でしょうか?
#46.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 44 主病態は代謝性アルカローシス pHとHCO3−から主病態を決めてから、PaCO2を解釈する。 確認手順: 1. pH 7.53 ・アルカレミア 2. HCO3− 42 mmol/L ・上昇 3. 主病態 ・代謝性アルカローシス 4. PaCO2 52 mmHg ・代償か、呼吸性アシドーシス合併かを確認する Blood Gas
Analysis pHとHCO3−から主病態を
決めてから、PaCO2を解釈。
#47.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 45 なぜ代謝性アルカローシスでPaCO2が上がる? 身体は換気を抑え、CO2を保持してアルカレミアを和らげようとする。 代謝性アルカローシスでは: 1. HCO3−が上昇する 2. pHが上昇する 3. CO2を排出しすぎると、アルカレミアがさらに悪化
するため換気抑制 4. PaCO2を上昇させ、pH上昇を部分的に補正する これは呼吸性代償である。 ただし、低酸素を来すほど無制限に換気を抑えることはできない。 CO₂ アルカレミア改善のため身体は換気を抑え、CO2保持。
#48.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 46 予測PaCO2と実測PaCO2を比べる PaCO2高値の意味は、予測範囲と比較して判断する。 代謝性アルカローシスの予測PaCO2: 予測PaCO2 ≒ 0.7 ×(HCO3− − 24)+ 40 ± 2 今回: 0.7 ×(42 − 24)+ 40 = 52.6 ± 2 mmHg 予測範囲: 約51〜55 mmHg 実測PaCO2: 52 mmHg 実測値は予測範囲内であり、
PaCO2上昇は代謝性アルカローシスに対する生理的代償と考える。
#49.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 47 嘔吐は、なぜ低Cl・低K・アルカローシスを作る? 嘔吐、Cl欠乏、循環血液量低下、RAA系活性化が病態を維持する。 嘔吐から代謝性アルカローシスが続く流れ: 1. 胃酸のH+を喪失 ・HCO3−が相対的に増加する 2. Cl欠乏 ・腎臓からHCO3−を排泄しにくくなる 3. 循環血液量低下 ・RAA系が活性化する 4. アルドステロン作用 ・Na再吸収、腎からKとH+が失われる 5. 低K ・アルカローシスをさらに維持する 嘔吐で低Kになる機序として胃液中のK
喪失もあるが、その影響は比較的小さい。 実際には、循環血液量低下に伴うRAA系活性化とアルドステロン作用により、腎からのK排泄が増加することが低Kの主因である。 この病態は典型的なCl欠乏性代謝性アルカローシスである。
#50.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 48 K 2.1――今は代償、明日は換気不全かもしれない 現在は代償でも、重度低Kから換気不全へ進む可能性がある。 現在の判断: ・実測PaCO2 52 mmHgは予測範囲内 ・現時点では呼吸性代償として説明できる しかし重度低Kが進行すると、呼吸筋麻痺によって換気不全へ移行し得る。 ・全身の筋力低下 ・呼吸筋の筋力低下・麻痺 ・肺胞低換気 ・II型呼吸不全 ・心電図異常・致死的不整脈 予測よりPaCO2が上昇する、呼吸が浅くなる、意識が悪化する場合は、呼吸性アシドーシスの合併を疑う。 確認するもの: ・K、Mg、P ・四肢・呼吸筋の筋力 ・呼吸数だけでなく、呼吸の深さとPaCO2 ・心電図 ・補正前後の呼吸状態と血液ガス
#51.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 49 明日からの判断:高いPaCO2を3段階で見る 主病態、予測値、臨床像の順に確認する。 PaCO2高値を見たら: 1. 主病態を確認する ・pHとHCO3−を見る ・代謝性アシドーシスか、代謝性アルカローシスか 2. 予測PaCO2と比較する ・予測範囲内:生理的代償 ・予測より高い:呼吸性アシドーシス・換気不全 ・予測より低い:呼吸性アルカローシス合併 3. 患者を見る ・意識、呼吸の深さ、筋力、薬剤、
肺疾患 ・K、Mg、P、心電図
#52.
CASE 5|代謝性アルカローシスの代償 50 Case 5 Take Home Message PaCO2高値を見ても、換気不全と決めつけない。 まず病態を考え、 予測値と実測値を比較し、 代償か混合性障害かを判断する。 追加で忘れない: ・嘔吐ではH+・Cl喪失から代謝性アルカローシスを来す ・RAA系活性化と腎からのK排泄が低Kを悪化させる ・低Kはアルカローシスを維持する要因である ・重度低Kでは呼吸筋麻痺・II型呼吸不全を来し得る ・重度低Kでは呼吸筋麻痺、致死性不整脈にも注意する ・代償範囲内でも、経時的な換気評価が必要 ACT 明日からの行動
#53.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 51 発熱と倦怠感――重症に見えない? 見た目や血圧だけで安心せず、頻呼吸を病態のサインとして捉える。 72歳女性。 3日前から発熱と食欲低下があり、本日、倦怠感が増悪したため救急外来を受診した。 項目 | 所見 血圧 | 108/64 mmHg 心拍数 | 112/分 呼吸数 | 30/分 SpO₂ | 95%(室内気) 体温 | 39.1℃ 身体所見: ・意識清明 ・軽度脱水 ・呼吸促迫
#54.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 52 PaCO₂ 28――良い数字ですか? PaCO₂低値を安心材料にせず、低下した理由を考える。 血液ガス: 項目 | 結果 pH | 7.49 PaCO₂ | 28 mmHg HCO₃⁻ | 21 mmol/L 参加者への問い: PaCO₂ 28 mmHgを、どう解釈しますか? ・CO₂が低いから呼吸状態は良い? ・過換気を起こす病態が隠れている?
#55.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 53 主病態は呼吸性アルカローシス pH、PaCO₂、HCO₃⁻の順に、主病態を決める。 1. pH 7.49 ・アルカレミア 2. PaCO₂ 28 mmHg ・低下 3. HCO₃⁻ 21 mmol/L ・急性の呼吸性変化に伴う軽度低下として説明可能 主病態: 急性呼吸性アルカローシス Blood Gas
Analysis pH、PaCO₂、HCO₃⁻の順に主病態を決める。
#56.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 54 なぜPaCO₂が下がる? PaCO₂低値は、過換気を起こす病態の結果である。 呼吸性アルカローシス: 過換気 ↓ CO₂排出増加 ↓ PaCO₂低下 ↓ pH上昇 代表的な原因: ・敗血症・発熱 ・低酸素 ・疼痛 ・肝不全 ・妊娠 ・不安・中枢性過換気 ・薬剤・中毒
#57.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 55 敗血症ではPaCO₂低下が早期の手掛かりになる PaCO₂低下は、敗血症を疑う早期の手掛かりになり得る。 敗血症では、複数の病態が並行して起こり得る。 ・炎症性サイトカイン、発熱、肺病変、低酸素 ・過換気 ・PaCO₂低下 ・循環不全・組織低灌流 ・乳酸上昇 ・炎症・循環不全 ・臓器障害 PaCO₂低下と乳酸上昇の順序は一定ではない。 PaCO₂低下は、敗血症を疑う早期の手掛かりになり得る。
#58.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 56 追加データ――PaCO₂低値の理由が見えた 呼吸性アルカローシスから、敗血症と感染源検索へ進む。 追加検査: 項目 | 結果 乳酸 | 3.8 mmol/L WBC | 18,000/μL CRP | 15 mg/dL 胸部CT: ・右下葉肺炎 病態: ・肺炎 ・敗血症 ・急性呼吸性アルカローシス ・乳酸上昇
#59.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 57 呼吸数30――数字ではなく病態を見る 呼吸数は診断名ではなく、患者に起きている病態の結果である。 呼吸数30/分: 過換気 ↓ PaCO₂低下 しかし、呼吸数だけでは原因は分からない。 同時に確認する: ・PaCO₂とpH ・SpO₂と呼吸の深さ ・発熱・疼痛 ・循環状態 ・乳酸 ・感染徴候と感染源 呼吸数22回/分以上はqSOFAの構成要素の一つであり、感染症患者で敗血症を警戒する重要な所見である。
#60.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 58 明日からどう動くか PaCO₂低値から、敗血症の評価と初期対応へつなげる。 PaCO₂低値を見たら: 1. 主病態を決める ・pH、PaCO₂、HCO₃⁻を確認する 2. 呼吸性アルカローシスの原因を考える ・敗血症、低酸素、疼痛、肝不全、妊娠など 3. 敗血症を疑う所見を探す ・発熱、頻脈、頻呼吸、循環、臓器障害 4. 乳酸を測定する ・値だけでなく、上昇した理由と経時変化を見る 5. 感染源を検索する ・診察、培養、尿・胸部・腹部など 6. 初期対応と再評価へ進む ・培養、抗菌薬、輸液、循環評価 ・PaCO₂、乳酸、呼吸・循環状態を再評価
#61.
CASE 6|PaCO₂低値は安心材料ではない 59 Case 6 Take Home Message PaCO₂低値を見たら、過換気の原因を探す。 最重要メッセージ PaCO₂低値を見たら安心しない。 呼吸性アルカローシスを確認し、 過換気の原因を探す。 発熱・頻脈・頻呼吸があれば敗血症を疑い、 乳酸測定と感染源検索へ進む。 ACT PaCO₂低値を見たら、過換気の原因を探す。
#62.
PRACTICAL FLOW|明日からのチェック手順 60 血液ガスは、この順番で見る 順番を固定すると、見逃しが減る。 1. pH 2. HCO3− 3. PaCO2 4. AG 5. 乳酸・血中ケトン 6. 腎機能・薬剤・感染・臨床背景 7. 初期対応と再評価 ひとつの数値だけで結論を出さず、上から順に病態を組み立てる。
#63.
PRACTICAL FLOW|明日からのチェック手順 61 pHで止まらない――HCO3−とPaCO2へ pHが正常でも、代謝性異常と呼吸性異常を探す。 1.pH ・酸性、アルカリ性、正常範囲のどこにあるか ・正常でも評価を終了しない 2.HCO3− ・低下:代謝性アシドーシスを疑う ・上昇:代謝性アルカローシスを疑う 3.PaCO2 ・呼吸性変化があるか ・代謝性アシドーシスでは、Winter式で代償
が妥当か確認する 予測PaCO2 = 1.5 × HCO3− + 8 ± 2
#64.
PRACTICAL FLOW|明日からのチェック手順 62 PaCO2は「高い・低い」ではなく、予測と比べる 予測範囲から外れれば、別の呼吸性異常が合併している。 代謝性アシドーシスでの判断: 実測PaCO2 | 解釈 | 次に考えること 予測範囲内 | 呼吸性代償はおおむね妥当 | 原因となる代謝性病態 予測より高い | 呼吸性アシドーシス合併 | 換気不全 予測より低い | 呼吸性アルカローシス合併 | 敗血症、疼痛、低酸素など 予測より高い場合に確認する: ・意識障害 ・鎮静薬・オピオイド ・COPD ・神経筋疾患・呼吸筋疲労 ・重度低Kによる呼吸筋麻痺
#65.
PRACTICAL FLOW|明日からのチェック手順 63 AGは計算・補正し、酸の内訳を調べる AG開大を見たら、乳酸と血中ケトンを分けて測る。 4.AG AG = Na − Cl − HCO3− 低AlbではAGが過小評価される。 補正AG = AG + 2.5 ×(4 − Alb) 5.乳酸 ・敗血症、ショック、低灌流などを評価する ・乳酸上昇=敗血症とは限らない ・「なぜ上昇したか」を考える 6.血中ケトン ・DKA、飢餓、アルコールなどを考える ・尿ケトンはスクリーニングとして活用する ・ケトメーターを積極的に使用する
#66.
PRACTICAL FLOW|明日からのチェック手順 64 最後は患者背景と行動につなげる 検査値の名前付けで終わらず、病態・初期対応・再評価へ進む。 7.腎機能・薬剤・感染・臨床背景 ・腎機能、尿量、K ・糖尿病、食事摂取、飲酒 ・インスリン中断、SGLT2阻害薬、鎮静薬 ・発熱、感染源、循環不全 ・腹痛、嘔吐、呼吸状態、意識 糖尿病+腹痛・嘔吐では: ・DKAを疑う ・乳酸と血中ケトンを分けて測る ・感染症、敗血症、膵炎、胆道感染を探す 8.初期対応と再評価 ・危険な病態を上級医・チームへ共有する ・原因に応じた初期対応を開始する ・血液ガス、乳酸、ケトン、K、腎機能、循環
呼吸を再評価する
#67.
PRACTICAL FLOW|明日からのチェック手順 65 ポケットカード:当直の5つの合言葉 迷ったときは、この5行へ戻る。 pHだけで止まらない。 AGで決めつけない。 PaCO2は計算する。 乳酸とケトンを分けて測る。 患者を見る。 確認順: pH → HCO3− → PaCO2 → AG → 乳酸 → 血中ケトン → 臨床背景 → 行動・再評価
#68.
CASE 7|統合問題 66 血液ガスは正常? pH 7.40を見て、評価を終えてはいけない。 74歳男性。 発熱、食欲低下、呼吸苦があり、救急搬送された。 項目 | 値 血圧 | 102/64 mmHg 心拍数 | 118/分 呼吸数 | 32/分 SpO₂ | 94%(室内気) 体温 | 39.0℃ 血液ガス: 項目 | 値 pH | 7.40 PaCO₂ | 25 mmHg HCO₃⁻ | 15 mmol/L 参加者への問い: この血液ガスは、本当に正常でしょうか?
#69.
CASE 7|統合問題 67 まずpHを見る――でも、そこで止まらない pH正常でも、異常同士が打ち消し合っている可能性がある。 項目 | 値 | 解釈 pH | 7.40 | 正常範囲 PaCO₂ | 25 mmHg | 低下 HCO₃⁻ | 15 mmol/L | 低下 pHは正常だが、PaCO₂とHCO₃⁻は明らかな異常値。 この時点で考えること: ・代謝性アシドーシスがあるのか ・PaCO₂低下は代償として妥当か ・複数の酸塩基異常が併存していないか
#70.
CASE 7|統合問題 68 HCO₃⁻ 15――AGを計算する HCO₃⁻低下を見たら、AGを計算して増えている酸を探す。 追加データ: 項目 | 値 Na | 140 mmol/L Cl | 100 mmol/L HCO₃⁻ | 15 mmol/L AG = Na − Cl − HCO₃⁻ AG = 140 − 100 − 15 = 25 次の問い: 何の酸が増えているのか? 考える酸: ・乳酸 ・ケトン体 ・尿毒症物質 ・中毒物質
#71.
CASE 7|統合問題 69 PaCO₂ 25――Winter式で確認する PaCO₂低下を代償だろうと決めず、予測値と比較する。 Winter式: 予測PaCO₂ = 1.5 × HCO₃⁻ + 8 ± 2 今回: 1.5 × 15 + 8 = 30.5 ± 2 mmHg 予測範囲: 28.5〜32.5 mmHg 実測PaCO₂: 25 mmHg 実測値は予測より低い。 解釈: 呼吸性アルカローシスの合併
#72.
CASE 7|統合問題 70 pH 7.40の中に、2つの異常があった 混合性酸塩基異常だから、pHが正常に見えていた。 存在する異常: 1. AG開大性代謝性アシドーシス ・HCO₃⁻ 15 mmol/L ・AG 25 2. 呼吸性アルカローシス ・実測PaCO₂ 25 mmHg ・Winter式の予測より低い それぞれのpHへの作用: ・代謝性アシドーシス:pHを下げる ・呼吸性アルカローシス:pHを上げる 両者が打ち消し合い、pH 7.40に見えている。
#73.
CASE 7|統合問題 71 病態は「肺炎による敗血症」 pH正常は正常を意味しない。 追加データ: 項目 | 値 乳酸 | 6.2 mmol/L 胸部CT: ・右下葉肺炎 病態の統合: 肺炎 ↓ 敗血症 ├─ 循環不全・低灌流 │ → 乳酸上昇 │ → AG開大 │ → HCO₃⁻低下 │ → 代謝性アシドーシス │ └─ 炎症・発熱・肺病変 → 過換気 → PaCO₂低下 → 呼吸性アルカローシス ↓ 両者が相殺 ↓ pH 7.40
#74.
CASE 7|統合問題 72 Case 1〜7:ここまでの総復習 7つのCaseはすべて「数字ではなく病態を読む」ための練習である。 Case | 学んだこと Case 1 | pH正常でも安心しない Case 2 | AG開大は診断名ではない Case 3 | 血糖正常でもDKAを除外しない Case 4 | PaCO₂高値+予測超過 → 換気不全 Case 5 | PaCO₂高値+予測範囲内 → 生理的代償 Case 6 | PaCO₂低値 → 過換気の原因検索 Case 7 | pH正常+混合性異常 → 総合問題 判断の原則: ・pH正常でも止まらない ・PaCO₂は予測値と比較する ・AG開大では何の酸が増えている
かを探す ・最後は患者の病態へつなげる
#75.
CASE 7|統合問題 73 講演全体のTake Home Message 血液ガスは正常値を見る検査ではなく、危険な病態を拾う検査である。 1. pH正常は安全宣言ではない 2. AG開大は診断名ではない 3. PaCO₂は眺めない。計算する 4. 血糖値だけでDKAを除外しない 5. DKA、敗血症、乳酸アシドーシスを見逃さない 6. 数字ではなく病態を考える 最終チェック手順: pH ↓ HCO₃⁻ ↓ PaCO₂ ↓ AG ↓ Winter式 ↓ 乳酸・血中ケトン ↓ 腎機能・薬剤・感染・臨床背景 ↓ 病態の統合 ↓ 初期対応と再評価 最終メッセージ 血液ガスは 「正常値を見る検査」ではない。 「危険な病態を拾い、 次の行動につなげる検査」
#76.
74 臨床現場は試験ではない 正しい暗記より、正しい判断が重要である。 ・臨床現場は試験ではない ・Winter式やAG計算を暗記することが目的ではない ・メモ帳、計算機、アプリを使ってもよい ・当科でも血液ガスや電解質異常を迅速に評価するためのツールを活用している ・皆さんもぜひ自分なりの工夫を作り、明日からの診療に活かしてほしい 臨床現場は試験ではない。 暗記することより、
危険な病態を見逃さないことが重要である。 数字を読むのではなく、
病態を読み、
次の行動につなげる。 血液ガス 病態把握 初期対応 再評価 明日から、自分なりの工夫を診療に活かしてください。
#77.
#78.
REFERENCES 75 主な参考文献・ガイドライン 実臨床では施設プロトコル・最新ガイドラインを確認する 1. Umpierrez GE, et al. Hyperglycemic Crises in Adults With Diabetes: A Consensus Report. Diabetes Care. 2024;47:1257–1275. doi:10.2337/dci24-0032
2. Singer M, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016;315:801–810.
3. Evans L, et al. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Intensive Care Med. 2021;47:1181–1247.
4. Kraut JA, Madias NE. Serum anion gap: its uses and limitations in clinical medicine. Clin J Am Soc Nephrol. 2007;2:162–174.
5. Adrogué HJ, Madias NE. Management of life-threatening acid-base disorders. N Engl J Med. 1998;338:26–34, 107–111. ※教育用症例。治療は患者背景と施設手順に従って判断してください。