#4.
この図をこうみる Anion Gapの開大なし 高Cl血症 RTAの本質は尿中へのH+の排泄低下 尿中NH4+↑ 尿中NH4+↓ 低K血症 尿pH<5.5 高K血症 4型RTA 下痢 腎臓からの 嘔吐 HCO3- 喪失↓ HCO3-の喪失 尿pH>5.5 1型RTA 1型はH+が排泄できない 尿pHは色々 4型はアルドステロン↓の 影響でK,H+が排泄↓ 2型RTA 2型はHCO3-が再吸収できない 4
#5.
前提知識 ✔ 揮発性の酸➡CO2のこと、体温くらいで気体の酸(体内ではほとんどが 二酸化炭素と思えば良い) ✔ 不揮発性の酸➡たくさん種類あるがH+と下記がメイン 主にタンパク質由来のものが代謝されて酸となる 硫黄含有のアミノ酸➡硫酸 リン酸含有アミノ酸➡リン酸 野菜果物の硝酸➡硝酸 ✔ 体内ではCO2が15000mEq/日産生に対し、 不揮発性の酸は1-2mEq/kg/日産生 ➡炭酸が二桁も多い事が重要(重炭酸緩衝系がメインたる理由) 5
#6.
アシドーシス2種類(呼吸性、代謝性) ✓ 呼吸性アシドーシス CO2が蓄積➡ 腎でHCO3-の再吸収↑ (呼吸性アシドーシスの代償)して対応、数日かかる(H+の排泄を増やす わけではない➡Q&A参照) ✓ 代謝性アシドーシス 不揮発性の蓄積➡肺でCO2↓(過換気)で対応(代謝性アシドーシスの呼吸性代償) ✓ 腎不全のように代償できない場合には、代謝性アシドーシス+呼吸性ア シドーシスなんて事はある。 6
#7.
実は代謝アシドーシス2種類(AGで判断) ✓ eGFR低下に伴う不揮発性の酸の蓄積 こちらはアニオンギャップが上昇する ✓ H+の排泄障害 こちらはアニオンギャップが上昇しない ✓ もちろん、上記が合併する(その場合はAG↑で良くわからない) 7
#8.
不揮発性の酸の貯留➡AG↑ ✓ アニオン(Anion)=陰性の電荷、カチオン(Cation)=陽性の電荷 上記は体内では同数あるのが前提 ここがAnion Gap=Na-(HCO3-+Cl-) HCO3- 臨床上測り易い項目から推定するもの Na Cl- 測定され ない 陽イオン 測定され ない 院イオン 教科書的には AG=12±2とあるが、 最近ではClの測定精度があがり AG=6前後になる事が多い(施設でどうなっているか確認) 8
#9.
アニオンギャップ↑の疾患 ✓ 慢性期ならばCKDがメインだが 重症ならば ✓ ケトアシドーシス ✓ 乳酸アシドーシス(敗血症、ショック) ✓ 一部の中毒(サリチル酸、メタノール、エタノール、エチレングリコールなど) などは注意が必要➡一度はきちんとAG測る Cl↑でアシドーシスはおおむね判るが、AGが開いているか?は確認しないと厳密には判らない。 簡便にはベースエクセスでも良いが、、、呼吸性が判らないので、私はAGが好み。 ※ベースエクセス(Base Excess:BEとはpCO2:40mmHgのもとで、pHを7.40まで戻すのに要する酸の量 9
#10.
RTAはH+の排泄障害! 腎臓からの酸(H+)の排泄 ✓ NH4+(最大200mEq/日)➡RTAで低下(珍しい) ✓ 不揮発性の酸(最大30mEq/日)➡CKDで低下(圧倒的多数) ✓ 尿の酸性化(これはきわめて小さく,pH 4.5としても、0.004mEq/L)➡臨床上は無視 となっている。 腎臓の酸分泌能: (NH4+ +不揮発性の酸の分泌)ー(HCO3-の再吸収量) 尿がアンモニア臭がするのは、NH3+H+⇄NH4+で酸を排泄しているため! (加えて、尿素が細菌に分解されてNH3が発生する) GFR↓の不揮発性の酸の蓄積とは病態が異なる 10
#11.
酸排泄の理解を助けるスライド 現代社会の尿は原則pH=5.0-6.0が多い(代謝された酸の排泄のため) ✓ NH4+での排泄(最大200−300mEq/日) ➡尿がアルカリ性にもかかわらず、血液はアシドーシス?という事がかなり変(そもそも尿が pH>6というのは、菜食主義や重曹(=NaHCO3)の内服、アルカリイオン水?と思うことが重 要)そもそも検尿してもpHは余り気にされていない(でしょ?) ✓ 不揮発性の酸(最大30mEq/日) ➡CKDになると酸の排泄が低下していく(酸が排泄しきれないイメージ) この場合は、尿は酸性かつ血液はアシドーシス(さらにAGが開大する)こちらが圧倒的多数! 11
#12.
尿細管性アシドーシスの本質 ✓ 尿細管からの酸の排泄障害(1型、4型) ✓ 重炭酸が再吸収されない(2型) ✓ 3型は永久欠番(1型の重症型と言われている) → 小児科では成長障害を生じるために重要。成人では二次性の RTA が多い ✓ AG が開大しないアシドーシスである! 12
#13.
1型RTAの本質 ✔ 尿細管からの 酸 の 排泄 障害 ✔ 1型:集合管での H+ の排泄障害 → なので遠位尿細管アシドーシスと呼ばれる ✔ H+ の排泄障害を反映して、尿の pH>5.5 → NH4+ を負荷しても尿中の pH が下がらない(診断に使う) ✔ 血液 AG は開大しない(一度は確認) • 尿AG = 尿Na + 尿K - 尿Cl(= 80 - 尿NH4+) • H+はNH4+の形で排泄されるために、尿中NH4+が 減ると尿 AG が正の値になる • 下痢や嘔吐などの腎外のアルカリ喪失だとNH4+が 増加して尿中AG が負の値となる → ただし uNa < 20mEq/L やアルカリ尿など 使えない場合が多い(Q&Aも参照) ✔ マニア的には、尿 AG>0 となる(知らなくても困らない) ✔ 臨床的に、両側腎実質石灰化でシェーグレン症候群などを想定するキッカケになる → 低K血症(後述Q&A)を伴うことが多い 13
#14.
4型RTAの本質 ✔ 尿細管からの 酸 の 排泄 障害 ✔ 4型:集合管での H+、K 排泄障害(アルドステロンが効かないことで生じる) → こちらも遠位尿細管アシドーシスと呼ばれる。高K血症を伴うことが多い アルドステロンが出ない、又は効かない場合。ただしチャネルの異常などは難治性かつ激レア ✔ 臨床的には RAA 系を使っていれば起こりうる ✔ むしろアルドステロンの過剰分泌(原発性アルドステロン症)が逆の病態なので、 高血圧で低K、アルカローシスを気にした方が良い 14
#15.
2型RTAの本質 ✔ 尿細管からの 重炭酸 の 再吸収 障害 → 近位尿細管アシドーシスと呼ばれる ✔ 成人では二次性が多い(ファンコニ症候群などが多い) → 抗がん剤など薬剤性も多い ✔ 尿の pH は低い(<5.5)事が多いが実際は色々 酸の排泄は障害されないため ✔ 臨床的には HCO3ー が低下 → Cl が上がるが、AG は開大しない → なので一度は動脈ガス分析をする ✔ 低K血症を伴うことが多い → ややこしいが、HCO3ー の排泄増加 → Naの遠位尿細管への到達増 → Na再吸収 → K排泄 「風が吹けば桶屋が儲かる」のような話が腎生理にはたくさんある。 15
#16.
HCO3-の再吸収は重要(pHの恒常性) ✔ 実はメインの腎臓の働きの1つ ✔ 腎臓の働き=酸の排泄+HCO3-の再吸収 ただし、ここは余り障害されない(人間の基本的な働きの1つ) ⚫ だから2型は近位尿細管性アシドーシスと呼ば れる ⚫ 80%が近位で再吸収 ✔ 身体の中のHCO3- の挙動 おもに(80%)近位尿細管(Proximal Tubulus:PT)で ・HCO3-をろ過し、再吸収 必要な分しか再吸収しないので、HCO3- 負荷で余分なHCO3- を排泄し尿pH↑となる ・HCO3-を産生し、再吸収 ここをブロックするのがアセタゾラミド されている、CO2が溜まる/はける、とここを動かして代償する。 16
#17.
Q&A:RTAがわかって役に立つの? A. ほとんど役に立ちません ✔ 高 Cl 血症を見たときに、鑑別ができるくらい ✔ コツコツ続けると、珍しい病気分類などに気づける シェーグレン症候群、原発性胆汁硬化症を伴う間質性腎炎(IgMPC-TIN:Tubulointerstitial Nephritis with IgM-Positive Plasma Cells.) J Am Soc Nephrol. 2017;28:3688-3698 ✔ きちんとした内科の素養として1回整理した方がよい(個人的な意見) 17
#18.
Q&A:代謝性アシドーシスとRTAは合併しない? A. 多分日常的にしています ✔ RTA は AG が開大しないことが特徴なので、AG が開大するものが合併した場合、 認識できなくなります ✔ 特に GFR が 30 を切ってくるような場合は認識が難しいです ✔ 「腎機能正常なのに高 Cl 血症がある、尿がアルカリ?」などがポイントになります 18
#19.
Q&A:薬剤性でRTAを合併したらやめるべき? A. 悩ましいです ✔ 例えば、以下のような薬でRTAを起こすことが知られていますが、 「RTAを起こしたくらいでやめるような薬を使うのはそもそもなぜか?」と思っています ✓ リチウム ✓ ST 合剤 ✓ アムホテシリン B ✓ カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンやタクロリムス) ✔ ファンコニ症候群を起こす薬剤も山程ありますので、 普段から「どのくらいの必要度か?」は考えておいた方が良いと思っています 19
#20.
Q&A:なんでI型RTAで低カリウム A. 一部の病態が解明されています ✔ 下記の様に捉えています ✓ H+-ATPaseに異常 ✓ α介在細胞がメインだと考えられているが ✓ β介在細胞・主細胞にも影響 ✓ Naの排泄が増え尿の排泄が増える ✓ BKチャネルからK排泄 ✔ 興味がある人は、Am J Physiol 1992;262:449-53.J Clin Invest. 2013 ;123(10):4219-31、 Nature Reviews Nephrology 2023;19:384–400 をどうぞ(超難しいです) 20
#21.
Q&A:AG↓ってありますか? A.低アルブミンを知っておけば十分➡AG+2.5×(4-albumin) HCO3- Na Cl- 測定され ない 陽イオン 測定され ない 院イオン ・マニアに有名なのがブロム中毒(ナロンエース) ・重曹の大量投与 ・極端な高Ca血症 ・極端な免疫グロブリン↑ ・リチウム中毒 ・マグネシウム中毒 などがあり得るが、そもそも通常臨床やっていたら気付くので いずれも必要ない 私だったら検査室に「キャリブレーション大丈夫?」と聞く Cleveland Clinic Journal of Medicine October 2023, 90 (10) 619-623 21
#22.
Q&A:CKDでAG↑となるのはいつから? A. 概ねG3以降です 高K血症 アシドーシス 高P血症 CKD G1 ー 10% ー CKD G2 5% 6% 5% CKD G3 20% 16% 10% という発想は必要です CKD G4 30% 39% 20% (この表ではAG↑かは検討されていません) CKD G5 40% 56% 50% ✔ G3以前でアシドーシスは稀です➡ とくにG3a以前(eGFR>45) でアシドーシスを見たらRTAかも? ✔ 実際には尿中クエン酸排泄量などを見るとG3から 酸排泄量は低下し始めます N Engl J Med. 1999; 341: 709-17 N Engl J Med. 2004; 351: 543-51 Intern Med 2008;47:1315-23 Kidney International 2011;79:1370–1378 Kidney Blood Press Res 2020;45:863-872 22
#23.
Q&A:どうやってアシドーシスに気づけますか? A. Cl↑で疑います ✔ アシドーシスがあるとHCO3-でまず対応 HCO3- 最大の緩衝系だからHCO3-↓は代償を使い果たしているという事 ✔ HCO3-が下がってくるとCl-↑ Na Cl- ✔ 臨床的にはCl>110mEq/Lは変?と感じる。 Naにもよる 23
#24.
Q&A:尿AGって何ですか?その01 A. uAG=Na+KーCl(知らなくても困らない) A:uAG>0 A:uAG<0 ✔ Na+K-Cl<0が正常に酸排泄(A) ✔ Na+K-Cl>0ならばNH4 Na+ ClK+ NH4+ +で酸排泄できていない(B) Na+ Cl- と解釈することになっている ✔ ただし、食事によってNa、K、Clの値が変化するの K+ uAG が問題(Na、Kが低いときは陰性になるが、当然酸 は排泄している) uAG 他の 陰イオン ➡では直接測ったら?と誰もが思う 24
#25.
Q&A:尿AGって何ですか?その02 A. 尿AGと尿NH3はほとんど無関係と判ってしまった! ✔ AJKD 2022;80:667−676 ➡流れは直接尿中NH3の測定へ、実際に測れば、下記程度 血中アンモニア:50μg/dl 尿中アンモニア:10−60mEq/日(上記論文より) ただし、単位が全然異なる、測定方法の問題もある (そもそも日内変動もありそうだし、gCre補正で代用できるか?という問題がある) 4℃で蓄尿して、血中の測定レンジの40倍希釈で測定という話はある (Kidney360 2022;3(5):926-932) 実臨床でできるか?という問題はのこる (マニア的には尿中アンモニア排泄量やクエン酸排泄量が死亡率やCKDの進行に関係があるという話もある) 25
#26.
Q&A:Clの測定精度ってなんですか? A. 余り気にしなくて良い ✔ 99.9%イオン選択電極で行っていますが、これだとBrの影響を受ける (ヨウ素などでも測定誤差がでることがある) ✔ 興味がある方はこちらの論文をどうぞ 鶴巻ら 厚生連医誌 2022;第31巻1号:62〜64 26
#27.
Q&A:臨床症状は本当にないの? A. いろいろありますが、、、 ✔ 小児は成長障害 ✔ 成人あらば高Cl血症、低カリウム血症、腎結石 上記を見たら気付いてほしい ✔ 感音性難聴 ✔ エナメル質形成障害 ✔ 楕円赤血球症 ✔ くる病、骨軟化症 などの合併は報告がある 何れにせよ、検尿にもっと興味を持ってもらうことの方が重要。まず検尿! 27
#28.
最後に RTAを判るより、日常臨床において ✔ 試験紙で尿タンパク(−)の糖尿病患者に尿中アルブミンを測定 ✔ ガイドラインに沿った治療目標と薬剤選択 をした方が遙かに多数の患者のためになります。 上記ができずにRTAが判っていても、、、と思う。 28