#4.
1.Setting別の管理 外来治療の概要は? 開始タイミング Ø 血清カリウム値5.5 mEq/L以上において総死亡のリスクが大幅に上昇した という報告があるため血清カリウム値が5.5 mEq/L以上で 治療開始を検討する 入院適応 Clin J Am Soc Nephrol. 2010;5(5):762-769 Ø 緊急性が高い場合入院加療を考慮する Ø 具体的には ü 血清カリウム値が6.5 mEq/L以上 ü 心電図異常(T波増高、P波消失など) などを 認める場合は致死的不整脈で心停止の恐れがあり 緊急入院の適応となりうる 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社. 2018.
#5.
1.Setting別の管理 非緊急の場合の外来治療は? 薬物療法 主な特徴 カリウム吸着薬が主な治療となる Ø ケイキサレート®、アーガメイト®は同系統の薬剤で、薬価が安く使用しやすいが、 飲みにくく便秘を中心とした消化器症状をきたしやすい 効果発現に数時間〜数日かかるため緊急度が高い際は使用しにくい Ø ロケルマ®は新しい作用機序の薬剤(後述)で高価であるが即効性が高く 副作用もきたしにくい 非薬物療法 Ø 腎障害がある患者でなければ摂取過剰による高カリウム血症は レアケースであるため、食事調整はほぼ不要である Ø CKD患者であれば、CKDステージに応じた食事制限が必要 日本での例)CKD G3b:K 2000mg/日、CKDG4,CKDG5: K 1500mg/日
#6.
1.Setting別の管理 外来治療での注意点は? Ø レニンアンギオテンシン系阻害薬、NSAIDsなどの薬剤の使用頻度の増加や高齢化による CKD患者の増加などで高カリウム血症の遭遇頻度は上昇している Ø 専門医コンサルトの必要性 原因不明の高カリウム血症や治療抵抗性、緊急性がある場合は 腎臓専門医にコンサルトする Ø 薬剤中止について アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、 アルドステロン拮抗薬(MRA)は可能な限り中止する Ø しかし、上記薬剤は長期的には腎保護・心保護の観点からは継続が望ましい RAS阻害薬の安易な中止は生命予後を悪化させるため高カリウム血症改善後は カリウム吸着薬などを使用しながらできるだけ早めに再開を検討する
#7.
1.Setting別の管理 古典的な内服療法は? 薬剤名・商品名 ポリスチレン スルホン酸Ca 作用機序・使用法など ・カリウムイオンとカルシウム イオンを交換 副作用 ・便秘(8.3%)、嘔気(6.3%) 腸管穿孔・腸閉塞 (頻度不明)など →便秘薬の併用が多い ・ゼリー剤があり、水分制限や カリメートが使用できない例 ex)アーガメイトゼリー® で使用 カリメート® ・アーガメイト20%ゼリー25g/個 1日最大6個まで ポリエチレン スルホン酸Na ex) ケイキサレート® ・カリウムイオンとナトリウム イオンを交換 ・下痢(2.3%)、悪心(2.9%) ・Na負荷による心不全増悪 ・ケイキサレート散1包 (5g) 1日最大6包まで ・便秘を起こしにくい
#8.
1.Setting別の管理 ロケルマ®は実際どうですか? 背景 p 先述のK吸着薬は剤形や味、消化器症状からなかなか飲みにくくアドヒアランスが問題になりやすい p そこで2020年から使用できるようになったK吸着薬のジルコニウム(ロケルマ®)が多用されている K吸着薬の適応では45年ぶりの新規薬剤 p 様々なstudyでほぼ確実に、素早く、副作用も少なくカリウムを低下させることが示された HARMONIZE-Global試験、DIALIZE試験など(K正常化までの中央値2.2時間) 使い方 弱点 薬価が高い 1回10gを水で懸濁し1日3回、2日間投与(最長3日) 以降は5gを水で懸濁し1日1回投与 開始用量:1601x3=4803円/日 →これを2日間 透析患者では1回5gを水で懸濁し非透析日に1日1回経口投与 維持量: 1059.2円/日
#9.
1.Setting別の管理 ロケルマ®は実際どうですか? 特徴 p GI療法と比較して、経口であり使用しやすく、血糖値のフォローも不要 継続投与もしやすく、 リバウンドの懸念も少ない p ただし、速効性・確実性の面ではGI療法に分があり、GI療法に替わるものではない p 透析療法を希望されない致命的な高K血症の症例へは良い選択肢となる p 無味無臭で従来のK吸着薬と比較して飲みやすい p 水も少量で内服可 p 副作用も少ない (浮腫や低K血症、消化器症状が少し認められる) p 全消化管に効くので、即効性が高い
#10.
1.Setting別の管理 ロケルマ®は高いですか? Ø カリメート経口液® 77.8 x 3=233.4円/日(1日3包の場合) 77.8 x 6=466.8円/日(1日6包の場合) Ø アーガメイトゼリー® 75.1 x 3=225.3円/日(1日3個の場合) 75.1 x 6=450.6円/日(1日6個の場合) Ø ロケルマ® 開始用量は10gを1日3回→1601x3=4803円/日→これを2日間 維持量は5gを1日1回→1059.2円/日 かなり高価だが、入院や透析が避けられるなら 逆に医療費削減につながる
#11.
1.Setting別の管理 救急外来での管理は? Ø 血清カリウム値 6.5 mEq/Lまたは心電図異常を認める場合は緊急治療を開始する Ø グルコン酸カルシウムの静注(K値を下げるのではなく、あくまで心合併症予防の目的)、 GI療法、カリウム吸着薬の投与を行う Ø マニュアル本などにはβ刺激薬、重炭酸イオン(メイロン®)、利尿薬投与などの 記載があるが、高K血症の管理として単独で用いられることはそれほど多くない →グルコン酸カルシウム、GI療法、透析療法、カリウム吸着薬の方が優先 体液過剰症例では利尿薬も急性期マネジメントとして考慮する Ø 透析療法には諸々の準備(透析機械の準備、人員確保、中心静脈カテーテル挿入など)が 必要となるため、早めに透析の要否を判断し、該当診療科に連絡を! Ø 一旦K値が十分に下がったとしても細胞内から細胞外への移動に伴いリバウンドの恐れがあるため、 透析療法もしくはロケルマ投与を必要とするので腎臓内科に相談を
#12.
1.Setting別の管理 周術期の管理は? p これまで記載した管理と同様となるが、周術期は体液管理の難しさや、麻酔薬の使用などで 管理不良となる恐れがあるため、より一層定期的な血液検査フォローが必要である p 術前には高K血症を可能な限り是正する ・術前の透析は、高K血症の程度や全身状態に応じて判断する ・特に重度の高K血症や心電図異常がある場合は、術前透析を考慮する p 術中の高K血症に対しては、GI療法などの内科的治療を行う 重篤な不整脈がある場合は、緊急透析も考慮する p 術後は血清K値の定期的モニタリングを継続し、必要に応じて内科的治療や透析を行う 特に術後急性期は高K血症のリスクが高い p 高K血症を伴う腎不全患者の周術期管理には、麻酔科、腎臓内科、透析科など 多職種によるアプローチが重要であるため当該科に相談するのが無難
#13.
1.Setting別の管理 GI療法の組成は?(私見込) p GI療法はインスリンを使用するため低血糖をきたしうる p そのため、インスリン量の調整と投与後の血糖のモニタリングが重要となってくる p 以下は一例である(医療安全上の兼ね合いもあるので施設ごとに統一を推奨) Ø 血糖値 正常範囲内 ヒューマリン®10単位を50%ブドウ糖液 50mLに混合 Ø 血糖値 高値(>200 mg/dL) インスリン量を増やす(例:ヒューマリン®20単位を50%ブドウ糖液 50mL) Ø 低血糖や腎機能障害がある場合 インスリン量を減らす(例:ヒューマリン®5単位を50%ブドウ糖液 50mL) p いずれの場合でも血糖やK値の定期的なモニタリングは必須である (30分から数時間おきに) p 重要なのは、各患者の臨床状況に基づいてGI療法の組成を個別化し、 頻回のモニタリングを行いながら治療を調整していくこと J Taibah Univ Med Sci. 2022 Feb; 17(1): 82‒86.
#14.
1.Setting別の管理 重炭酸ナトリウム(メイロン®)は有効? p CKD患者は腎機能の低下に伴い高K血症と代謝性アシドーシスが併発しやすい p そのため、多くの高K血症患者で代謝性アシドーシスを合併している p 重炭酸ナトリウム(メイロン®)は代謝性アシドーシスを是正し、細胞内へのカリウムシフトを 促進し、高K血症の改善が期待できる p しかし、高K血症における代謝性アシドーシスの改善が生命予後の改善につながるという 明確なエビデンスは乏しい p また、体液貯留を増悪させる可能性もあるため注意が必要 重炭酸ナトリウム (メイロン®) に関しては投与しても良いが、生 命予後改善に大きく寄与しないこと、副作用の懸念もあり 急性の高K血症において必ずしも必要な薬剤ではない
#15.
2.透析療法の必要性 透析療法は必要? p 心電図変化を伴う場合や、薬物療法に反応しない重症高カリウム血症では血液透析の適応となる p 特に腎機能が高度に低下している患者では、今後の維持透析も考慮し透析治療が 優先的な選択肢になりうる p グルコン酸カルシウム、GI療法などの治療を行いつつ、速やかに透析を行えるよう準備を進める (透析室への連絡、中心静脈カテーテルの挿入や透析機械の準備など) p 準備に多少の時間がかかるため、透析療法が必要と考えられる症例を診た際は早めに連絡を!! p 透析後のリバウンドに注意 4時間の透析終了時K 3.6-5.7mmol/Lに低下したが6時間後には細胞内から細胞外へのシフトで 5.0mmol/Lに再上昇したという文献もある Agar BU, 2015 Jan;19(1):23-32. →そのためK吸着薬の併用や翌日も連日で透析を行うことを考慮する 翌朝には血清K値のフォローは必須!!
#16.
2.透析療法の必要性 CRRTとIHDどっちがいい? p 重篤な呼吸不全を伴うなど高K血症以外の全身状態が不良な症例では集中治療管理も考慮する その場合、持続的腎代替療法(CRRT)も考慮する CRRT(持続的腎代替療法) IHD(間歇的血液透析;いわゆる通常の透析) 適応 - 血行動態が不安定な患者 - 高度の溢水状態の患者 - 血行動態が安定している患者 - 溢水の程度が軽度〜中等度の患者 メリット - 血行動態への影響が少ない - 持続的に溶質除去・溢水管理が可能 - 短時間で効率的な溶質除去が可能 - 看護師の管理の手間が少ない デメリット - 抗凝固薬の使用による出血リスク - 長時間の施行による感染リスク、 管理の手間、コストが懸念点 - 血行動態が不安定な場合に不向き - 短時間での大量の溶質・水分除去による 合併症リスク カリウム除去 - 持続的で緩徐なカリウム除去が可能 →一方で時間がかかる - 短時間で効率的なカリウム除去が可能 →一方で血清カリウム値の急激な低下に 注意が必要
#17.
高K血症の生命予後と目標値は? p 血清カリウム値が高いほど、全死亡リスクが上昇する。 ü 血清カリウム値が1 mEq/L上昇するごとに、全死亡リスクが約10%増加する (HR 1.10, 95%CI 1.09-1.11) ü 血清カリウム値が6.5 mEq/L以上になると、致死率が有意に上昇する (HR 3.31, 95%CI 2.52-4.34) ü 心不全患者では、血清カリウム値が5.0 mEq/L以上で全死亡リスクが有意に上昇する (HR 1.25, 95%CI 1.16-1.35) ü CKD患者では、血清カリウム値が5.5 mEq/L以上で全死亡リスクが有意に上昇する(HR 1.45, 95%CI 1.29-1.63) 血清カリウム値が6.5 mEq/L以上になると致死率が有意に上昇し、 心不全、慢性腎臓病、糖尿病などの基礎疾患を有する患者では より低いカリウム値 (5.0-5.5 mEq/L)でも死亡リスクが有意に上昇することに留意 p 高K血症におけるK値の目標値は特に定まっていないが、正常範囲を目指すことが多い p 低K血症も生命予後を悪化させる要因になるため定期的にK値をフォローしつつK吸着薬などの過剰 Eur Heart J. 2017;38(2):104-112., 投与に注意する Am J Nephrol. 2017;46(3):213-221.
#18.
マネジメントのフローチャート *緊急性や患者背景、医療施設の方針によって順番は前後しうる
#19.
3.検査の注意点 検査の注意点は? p 偽性高カリウム血症(溶血や白血球増多、血小板増多など)ということもあるため 注意する p 特に溶血は日常的に起こりうるため、高K血症を認めた際は注意すべきである LDHの上昇など他に溶血を疑う所見を認めていれば注意する p 採血の際に拳を握ったり、不適切に大きい針を用いたり、シリンジ吸引力が強かったり すると溶血は容易に起こりうる p 検体を不適切に長時間放置すると溶血を起こしうるため検体の取り扱いにも注意する p 腎機能正常例など高K血症を起こす可能性が低いと考えられる症例では 再測定、ヘパリン加採血、静脈血液ガスなどを確認する Pediatr Nephrol. 2011 Mar;26(3):377-84.
#20.
3.検査の注意点 腎機能正常患者では? p 腎機能が正常な場合、通常カリウムの摂取増加だけでは高K血症は起こらない p そのため前述した偽性高カリウム血症の可能性を考慮する必要がある p 薬剤性の高カリウム血症の可能性も考慮すべきである 具体的にはACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、非ステロイド性抗炎症薬、 ST合剤、β遮断薬、ヘパリンなどがカリウム値に影響を与える可能性がある p 他の疾患として原発性アルドステロン症や副腎不全、尿細管性アシドーシスも原因として あり得るためMgを含めた他の電解質やレニン・アルドステロン、コルチゾールなど 各種副腎ホルモンのチェックも考慮する p ごくごくまれに、家族性高カリウム血症もあるがまずは上記を除外することが優先である
#21.
医療経済的観点は? Ø 重症高カリウム血症は集中治療を要するため医療コストがかかる。 • 早期発見・早期治療により重症化を防ぐことが医療経済的にも重要である • ロケルマ®は高価だが、入院を避けることができれば逆に医療費を抑えることができる Ø 高カリウム血症による入院は平均在院日数が長く、医療コストが高額になる傾向がある ・高カリウム血症による入院は平均$24,178、正常カリウム血症での入院は平均$13,189 Ø 高カリウム血症の重症度が高いほど、入院期間が長期化し、医療コストが増大する ・K>6.0 mmol/Lの患者は K 5.5-6.0 mmol/Lの患者と比較して、在院日数が4.7日長く、医療コストが$4,116高かった Ø ロケルマの使用により高カリウム血症による入院を53%減少させ、 年間$4,217の医療コスト削減が可能と試算されている 先述の通り高K血症のマネジメントが 医療費削減につながる J Manag Care Spec Pharm 2017 Apr;23(4-a Suppl):S2-S9.
#22.
4.維持透析患者では 維持透析患者では? p 維持透析患者は週3回の透析を行うため、重篤な高K血症の発症頻度はそれほど高くない p しかし、特に中2日(火木土患者→火曜、月水金患者→月曜)ではある程度の高Kは 認められ 1年間の延べ血清K値測定のうち20.5%が6mEq/L以上であったという報告もある p 自尿の有無や食事内容等による個人差も多く、定期的なK値のチェックが重要である p 具体的には無尿で、食事制限の遵守率が低い患者で透析間の体重増加が大きいことと 併せて認められやすい p また、便秘も一因となりうるため排便管理も一層重要となる p 低K血症を呈する患者も多く、透析中の心房細動などの不整脈の発症のリスク要因 となるためカリウム補正を行うことも考慮する Nihon Toseki Igakkai Zasshi 27 (1994): 47-51.
#23.
5. Take Home Message Take Home Message Ø 高カリウム血症は致死率の高い電解質異常であり、早期診断・早期治療による 適切な管理が重要である Ø 緊急性やsetting (救急か外来か病棟か)によってマネジメントは変化しうる Ø 病態に応じて薬物療法、非薬物療法、透析療法を使い分ける Ø 偽性高値や検査値の施設間差に注意し、的確な診断・治療を心がける