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#1.
ー 歯科の車窓から🚂 外傷と口腔内 歯が折れた・欠けた・抜けたとき 作成者:Dr. KOTATSU 監修:Kamome@DDS, PhD #2.
歯のケガで来院したときに 歯科医師はまず状況を聴取、脳や骨、全身状態に関しては 医師への早急な相談の優先・必要性を保護者に伝える。 外見(Battle's sign・Black eye)、挙動などもチェックし、 失神や嘔吐がある場合は脳機能の影響を疑う。 初診であれば、既往歴、局所麻酔経験、アレルギー、 出血性素因などを動揺している保護者から聞く 必要がある。 #3.
初期対応 ■脱落した歯には誤嚥の危険がある。 ■興奮している子どもは血圧が上がっているので落ち着かせることも止血に役立つ。 (タオルに包むなどして安心させる) ■口腔内の血液を飲むと吐き気が起きることがあるので吐き出させる。 (動揺を避けるため子どもに見せない方がよい) ■口唇や顔面など審美性が必要なケースでは早めに形成外科に依頼。 ■患児(および家族)の治療への協力度を判断することは、治療内容に影響する。 (抜けた歯を取り除くか、整復・固定するか) ■保護者に意義を話し、経時的な記録や写真を残しておく。 #4.
■完全脱落した(抜けた)歯を再植するため には歯根膜が重要。(乾燥させない) 抜けた歯の保存のしかたが大事 ■抜けてからどのくらいまで再植可能かの 歯が抜けていたら… 限界は不明とされる。 再植できる可能性があるので歯科受診を! ■汚染がなければ自分で戻し、歯科医院を受診 することもよいとされる1)。 しかし、誤嚥に注意が必要 #5. 抜けた歯の保存には 水道水は避ける HBSSは試薬なので 使用には同意が必要 HBSS細胞培地(Hank's Balanced Salt Solution) 24時間以上 1) 牛乳 12時間 ラップで包む 1時間 脱落した幼若永久歯の再植は推奨 生理食塩水 1時間 (生食は30分で歯根膜細胞が破壊され、長時間の保存には適していないとされる) 唾液 (体液に比べて低張なので応急対策、誤嚥に注意) 保存液 ティースキーパー「ネオ」 (廉価) https://www.neo-dental.com/prdfs/etp/ts/tsfrm.htm 学校などに買って おくとよい 参考文献 1) 2) ) #6.
■歯周組織の損傷 ・震盪 ・亜脱臼/脱臼 ■歯の挺出・陥入 (元の位置から出たり、潜り込むこと) 歯の外傷でおこること ■破折 ■脱落 ■歯槽骨骨折 #7.
乳歯の外傷 ■乳歯が受けた外傷は永久歯に影響を及ぼすことがある。 → 後継永久歯の色の異常・形成不全・歯冠や歯根の形成異常・弯曲・萌出遅延3)。 ■原則的に乳歯が脱落した場合、永久歯への影響を避けて再植しないが例外もある1)。 ■早期に脱落した場合、保隙をして顎の成長、永久歯のスペースを保つ必要がある。 → 可撤保隙装置 (小児義歯)など。 #8.
歯の破折 ■破折が歯頸側1/3、動揺が大きい根中央1/3 乳歯は原則抜歯2)とされている。 永久歯の破折では可及的保存、矯正牽引も検討する。 ■破折が根尖側1/3では歯髄の生死の判定 歯髄壊死の兆候があれば歯内療法(兆候がなければ観察)。 永久歯で、歯槽骨縁下の歯根破折は治癒する可能性が 報告されている1)。 乳歯の破折では、対応が遅れると永久歯に影響する。 #9.
歯の外傷の治療 抗生剤投与、洗浄 整復:徒手などで元の場所に戻すこと 固定:通常、10〜14日4) 再植:子どもの永久歯は再植が推奨される1) 修復:割れた部分をレジンなどで治すこと 矯正牽引:めり込んだ歯の位置を直すため等の矯正治療 歯内療法:特に子どもの永久歯ではまだ開いている根尖を閉鎖させる治療がある 保隙:失われた歯のスペースを保つ *固定の仕方の例 ・レジン固定 ・ワイヤーレジンスプリント ・被覆型スプリント #10.
予後の観察が必要 ■レントゲンで経過を観察していく必要がある。(保護者に説明と同意) ■変色(→歯髄に病変がある場合とない場合がある) ■後になり、歯髄の処置(歯内療法)が必要になることがある。 (適切な歯髄処置で、根未完成歯の根尖が閉鎖) ■歯根外部吸収/内部吸収がおきることがある。 ■特に乳歯の外傷では、永久歯の交換までの経過観察が必要。 外部吸収 内部吸収 #11.
Take Home Message ■ケガで歯が抜けた時は、歯を牛乳・保存液に漬けるかラップに包んで歯科受診 ■歯の外傷の種類:歯周組織の損傷(脱臼/亜脱臼)・梃出/陥入・破折・脱落など ■歯の外傷の治療:整復・固定・再植・歯内療法・予後の観察など #12. References 1) 宮新美智世. 歯の外傷で小児が来院したら. クインテッセンス出版, 2020. 2) 木村光孝. 乳歯列における外傷歯の診断と治療. クインテッセンス出版, 2013. 3) Andersen, J. O., Sundström, B., & Ravn, J. J. (1971). The effect of traumatic injuries to primary teeth on their permanent successors: I. A clinical and histologic study of 117 injured permanent teeth. European Journal of Oral Sciences, 79(3), 219-283. 4) 歯の外傷ガイドライン (日本外傷歯学会), 2012. http://www.ja-dt.org/file/guideline.pdf (参照 2021-12-27).