#4.
導⼊ 症例 甲状腺機能低下症について バセドウ病 ● バセドウ病とは甲状腺刺激ホルモン 甲状腺中毒症 ● (TSH) 受容体抗体(TRAb)が TSH 受 容体を刺激して甲状腺ホルモンの産生 甲状腺中毒症とは過剰な甲状腺ホルモンに よって代謝と活動性が亢進した状態である. ● 甲状腺ホルモン産生と分泌が亢進する甲状 腺 と分泌を増加させ、びまん性中毒性甲 機能亢進症と甲状腺ホルモン産生亢進を伴わ 状腺腫をきたす自己免疫疾患である. ない甲状腺ホルモン過剰状態(甲状腺ホルモン 過剰摂取や甲状腺濾胞の炎症性破壊により甲 状 腺ホルモンが漏出する破壊性甲状腺炎)を 併せて甲状腺中毒症という 南谷 幹史. 特集 小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス 代謝・内分泌 27.バセドウ病 . 小児科.2020. vol.61. No.5. 解説
#5.
導⼊ 症例 解説 症例:26歳 女性 確定診断名(主な病名および副病名) 1. バセドウ病 【主訴】 動悸、体重減少、眼球突出 【現病歴】 5カ月前頃より、階段を昇降時に動悸を感じていた. その頃から焦燥感、排便排尿回数の増 加、月経不順(月経量の減少)を認め、体重は5ヶ月で2Kg減少した. 食欲亢進し、夜中も間食 していた. 1か月前に、母親に眼球突出及び体重減少を指摘され、近医受診. 頻脈、眼球突出、FT3、 FT4、の上昇を認め、甲状腺機能亢進症疑いにて1週間前に当科紹介受診となった. TSHの 低値、FT4の上昇が認められ、甲状腺機能亢進症の診断にてアテノロール25mg/日を開始し 頻脈は改善したが、全身倦怠感が強く〇月X日、当院当科精査・加療目的にて入院となった. 【既往歴】 10歳:虫垂炎 【家族歴】 特記事項なし 【生活社会歴】 飲酒歴あり、喫煙歴あり(20歳から5本/日)、 アレルギーなし 内服歴なし、海草の過剰摂取歴なし
#6.
導⼊ 症例 主な⼊院時現症 身体所見 意識 清明 体温 37.0℃ 血圧・脈拍 SpO2・呼吸数 眼瞼・瞳孔 頚部 胸部・腹部 その他 120/65 mmHg、72/分 (整) SpO2 98 %(room air)、呼吸数 20/分 眼瞼結膜に貧血はなし、眼球結膜に黄疸はなし、眼球突出・Graefe徴候を認める. 頚部リンパ節触知せず. 甲状腺はやや腫大. 軟らかく圧痛なし 心音: 心雑音を認めない 呼吸音: 整. cracklesやwheezesを認めない 腹部は平坦, 軟. 腫瘤触知せず. 下腿に浮腫なし. 神経学的所見に異常なし. 手指に振戦なし. 解説
#7.
導⼊ 症例 解説 ⾎液検査成績 生化学 血算・凝固 WBC: 4900 /μL TP: 7.0 g/dL TSH: 0.003 μIU/mL 好中球: 26.9 % Alb: 4.0 g/dL FT3: 18.44 ng/dL リンパ球: 58.2 % AST: 25 IU/L FT4: 3.2 ng/dL 単球: 9.3 % ALT: 30 IU/L 抗TPO抗体: 1.0 U/mL 好酸球: 1.5 % LDH: 129 IU/L 0.3< U/mL 好塩基球: 0.4 % T-Bil: 0.9 mg/dL 抗サイログロ ブリン抗体: 12 mg/dL TRAb 52.3 % ACTH: 28.9 pg/mL コルチゾール 3.6 μg/dL RBC: 464万 /μL BUN Hb: 12.6 g/dL Cr: 0.3 mg/dL Ht: 37.7 % Na: 139 mEq/L Plt: 23.0万 /μL K: 4.1 mEq/L Cl: 106 mEq/L CRPl: 0.02 mg/dL
#8.
導⼊ 症例 その他の検査 所見 尿検査 胸部・腹部Xp 心電図 甲状腺エコー 甲状腺ヨードシンチグ ラフィ(123I) 特記すべき所見なし 胸部: 両側肋横隔膜角 鋭, 心胸郭比 43.0%, 肺野 清 腹部: レントゲン写真:異常所見なし. HR 66bpm, 整, 異常所見なし 甲状腺は全体的に腫大している. 狭部 2mm, 右葉横径 20mm, 右葉縦径 19mm, 左葉横径 22mm, 左葉縦径 20mm 内部エコーは不均一でエコーレベルは低下している. 形態凸凹あり不整. 前頚筋との境界不明瞭. 結節性病変無し. 腺内血管拡張(+). 甲状腺ヨード摂取率 93.58%(正常 10~40%) 解説
#9.
導⼊ 症例 解説 治療経過 甲状腺機能亢進症 ● 前医にて甲状腺機能亢進症を疑われ、精査・加療目的にて入院となり、血液検査よりTSH0.003μU/ml と低値、FT3 18.44pg/ml、FT4 3.20ng/dlと甲状腺ホルモン高値、TRAb陽性を認めた. また、頻脈、体 重減少、眼球突出を認めており、甲状腺エコーでは甲状腺の腫大を指摘された。ヨードシンチグラムで は、Uptake93.58%と高値を認め、日本甲状腺学会の2021年に発表したバセドウ病の診断ガイドライ ンより病バセドウと診断された. ● バセドウ病の薬物治療としては、『バセドウ病治療ガイドライン2019(日本甲状腺学会)』では妊娠初期 や授乳中の患者を除いて、治療効果、副作用、コンプライアンスなどの面からチアマゾールが第一選択 として推奨されている. ● チアマゾ-ル初期投与量としては、本症例のようなFT4値が5ng/dl以下の患者には15mg/日から開始 することが推奨されている. (J Clin Endocrinol Metab 2007; 92: 2157-2162)
#10.
導⼊ 症例 解説 治療経過 ● 本症例では、予想される効果と副作用、禁煙の必要性に関して十分説明を行い、同意を得た上で入院 2(X+1)日目よりチアマゾール15mg/日を開始した。好中球減少、皮疹、肝機能障害、筋肉痛、関節 痛、発熱等の明らかな副作用を認めることなく経過し、入院10(X+9)日目に退院、チアマゾール内服を 継続し今後外来で治療継続とした. ● 入院前に認めた頻脈は、アテノロール25mg/日内服にて脈拍70~80/分で経過し、自覚症状は消失. 全 身倦怠感の軽減を認めた. 眼球突出所見に関しては、入院中改善を認めず、外来にて経過観察とした. 退院時処方 ● チアマゾール 15mg/日 ● アテノロール 25mg/日
#11.
導⼊ 甲状腺機能亢進症の診断ガイドライン バセドウ病 症例 解説 \内科専門医が補足/内科専門医試験こぼれ話 TRAbとTSAbは異なる原理で抗体価を測定している。TRAbは測定時間が60分以内と短く制度も高いので頻用され る。しかし、TRAbはブロッキング型TSBAbでも高値になる点が注意が必要である 基準: 1. バセドウ病 a の1つ以上に加えて、 b の4つを有するもの 2. 確からしいバセドウ病 a の1つ以上に加えて、 b の1、2、3を有するもの 3. バセドウ病の疑い a の1つ以上に加えて、 b の1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3ヶ月以上続くもの a. 臨床所見:1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見 2.びまん性甲状腺腫大 3.眼球突出または特有の眼症状 b. 検査所見:1.遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値 2.TSH低値(0.1μU/ml以下) 3.抗TSH受容体抗体(TRAb)陽性、または甲状腺刺激抗体( TSAb)陽性 4.典型例では放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性 【付記】 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. コレステロール低値、アルカリホスファターゼ高値を示すことが多い . 遊離T4正常で遊離T3のみが高値の場合が稀にある . 眼症状があり TRAbまたはTSAb陽性であるが、遊離 T4およびTSHが基準範囲内の例は euthyroid Graves' diseaseまたはeuthyroid ophthalmopathyといわれる. 高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする . 小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さ等を認める . 遊離T3(pg/ml)/遊離T4(ng/dl) 比の高値は無痛性甲状腺炎の除外に参考となる . 甲状腺血流増加・尿中ヨウ素の低下が無痛性甲状腺炎との鑑別に有用である . 甲状腺疾患診断ガイドライン2021 (2022年6月2日 改定)
#12.
導⼊ 症例 解説 甲状腺機能低下症の診断ガイドライン 亜急性甲状腺炎 基準: 1. 亜急性甲状腺炎 : a および b の全て を有するもの 2. 亜急性甲状腺炎の疑い: a と、 b の1および2 を有するもの a. 臨床所見: 有痛性甲状腺腫 b. 検査所見: 1. CRPまたは赤沈高値 2.遊離T4高値、TSH低値(0.1μU/ml以下) 3.甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域 【除外規定】 橋本病の急性増悪、嚢胞への出血、急性化膿性甲状腺炎、未分化癌 【付記】 1. 回復期に甲状腺機能低下症になる例も多く、少数例は永続的低下になる. 2. 上気道感染症状の前駆症状をしばしば伴い、高熱をみることも稀でない. 3. 甲状腺の疼痛はしばしば反対側にも移動する. 4. 抗甲状腺自己抗体は高感度法で測定すると未治療時から陽性になることもある. 5. 細胞診で多核巨細胞を認めるが、腫瘍細胞や橋本病に特異的な所見を認めない. 6. 急性期は放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率の低下を認める. 甲状腺疾患診断ガイドライン2021 (2022年6月2日 改定)
#13.
導⼊ 症例 解説 甲状腺クリーゼの診断基準(第2版):日本甲状腺学会・日本内分泌学会 定義 甲状腺クリーゼ(Thyrotoxic storm or crisis)とは,甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲 状腺基礎疾患が存在し,これに何らかの強いストレスが加わった時に,甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の 代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果,生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をいう. 必須項目 甲状腺中毒症の存在(遊離T3および遊離T4の少なくともいずれか一方が高値) 症状(注1) 1. 2. 3. 4. 5. 確実例 疑い例 中枢神経症状 (注2) 発熱(38℃以上) 頻脈(130回/分以上)(注3) 心不全症状 (注4) 消化器症状 (注5) 必須項目および以下を満たす(注6) a. 中枢神経症状+他の症状項目 1つ以上 b. 中枢神経症状以外の症状項目 3つ以上 a. b. 必須項目+中枢神経症状以外の症状項目2つ 必須項目を確認できないが、甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫の存在があって、確実例条件の aまた はbをみたす場合(注6) 日本甲状腺学会・日本内分泌学会. 甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017.
#14.
導⼊ 症例 解説 甲状腺クリーゼの診断基準(第2版):日本甲状腺学会・日本内分泌学会 注1 明らかに他の原因があって発熱(肺炎、悪性高熱症など)、意識障害(精神疾患や脳血管障害など)、心不全(急性心筋 梗塞など)や肝障害(ウイルス性肝炎や急性肝不全など)を呈する場合は除く. しかし、このような疾患の中にはクリーゼ の誘因となるため、クリーゼに よる症状か単なる併発症か鑑別が困難な場合は誘因により発症したクリーゼ症状とする . このようにクリーゼでは誘因を伴うことが多い. 甲状腺疾患に直接関連した誘因として、甲状腺剤の服用不規則や中断、 甲状腺手術、甲状腺アイソトープ治療、過度の甲状腺触診や細胞診、甲状腺ホルモン剤の大量服用などがある. また、 甲状腺に直接関連しない誘因 として、感染症、甲状腺以外の臓器手術、外傷、妊娠・分娩、副腎皮質機能不全、糖尿病 ケ トアシドーシス、ヨード造影剤投与、脳血管障害、肺血栓塞栓症、虚血性心疾患、抜歯、強い情動ストレスや激しい運 動などがある. 注2 不穏、せん妄、精神異常、傾眠、けいれん、昏睡. Japan Coma Scale(JCS)1以上 または Glasgow Coma Scale(GCS) 14以下. 注3 心房細動などの不整脈では心拍数で評価する. 注4 肺水腫,肺野の50%以上の湿性ラ音,心原性ショックなど重度な症状. New York Heart Association(NYHA)分類4度 または Killip分類 Ⅲ度以上. 注5 嘔気・嘔吐,下痢,黄疸(血中総ビリルビン>3 mg/dl) 注6 高齢者は、高熱、多動などの典型的クリーゼ症状を呈さない場合があり(apathetic thyroid storm)、診断の際は注意す る. 日本甲状腺学会・日本内分泌学会. 甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017.
#15.
導⼊ 症例 甲状腺中毒症の鑑別 甲状腺機能亢進症 ● ● ● ● ● ● ● ● ● バセドウ病 中毒性甲状腺腺腫 中毒性多結節性甲状腺腫 TSH 産生腫瘍 先天性甲状腺機能亢進症 (TSH 受容体または G 蛋白の機能獲得型変異) 絨毛がん 卵巣甲状腺腫 ヨウ素過剰 薬剤性甲状腺中毒症 ○ アミオダロン誘発性甲状腺中毒症Ⅰ型 ○ インターフェロン誘発性甲状腺炎 ○ ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体 破壊性甲状腺炎 ● ● ● ● ● 無痛性甲状腺炎 亜急性甲状腺炎 急性化膿性甲状腺炎 放射線性甲状腺炎 薬剤性甲状腺中毒症 ○ アミオダロン誘発性甲状腺中毒症Ⅱ型 ○ インターフェロン誘発性甲状腺炎 ○ ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体 ○ 分子標的治療薬 南谷 幹史. 特集 小児診療ガイドラインのダイジェスト解説&プログレス 代謝・内分泌 27.バセドウ病 . 小児科.2020. vol.61. No.5. 解説
#16.
導⼊ 症例 解説 症状 甲状腺機能低下症 自覚症状 甲状腺機能亢進症 他覚症状 自覚症状 他覚症状 ● だるい ● 甲状腺腫 ● 汗が多い ● 甲状腺腫 ● 眠い ● 貧血 ● 疲れやすい ● 頻脈 ● 寒さに敏感 ● 徐脈 ● 動悸がする ● 皮膚の変化 ● 肌が荒れる ● 顔貌の変化(腫れぼったい) ● 手が震える ● 振戦 ● むみっぽい ● 皮膚温低下 ● 首が腫れた ● 心房細動 ● 毛髪が抜けやすい ● 頭髪の変化(薄くなる) ● 暑さに弱い ● 便秘 ● 眉毛外側の脱毛 ● やせた ● 前頸部圧迫感 ● アキレス腱反射の遅延 ● 食欲が異常にある ● いらいらする 日本臨床検査医学会ガイドライン作成委員会. 臨床検査のガイドラインJSLM2005/2006.甲状腺機能亢進症・機能低下症、
#17.
導⼊ 症例 解説 甲状腺機能検査 機能亢進 FT4↑または→、FT3↑、TSH↓ 抗TSHレセプター抗体 (TRAb、TSAb) 陽性 バセドウ病 陰性 無痛性甲状腺炎 亜急性甲状腺炎 甲状腺ホルモン過剰摂取 機能性結節 その他 機能低下 FT4↓、FT3↓または→、TSH↑ 抗Tg抗体 抗TPO抗体 陽性 びまん性甲状腺腫 陰性 慢性甲状腺炎 (橋本病) 機能正常 FT4→、FT3→、TSH→ 単純性甲状腺腫 (慢性甲状腺炎は否 定できない) その他の原因疾患 結節性甲状腺腫 甲状腺エコー 穿刺吸引細胞診 腺腫 癌 日本臨床検査医学会ガイドライン作成委員会. 臨床検査のガイドラインJSLM2005/2006.甲状腺機能亢進症・機能低下症、
#18.
導⼊ 症例 解説 バセドウ病の治療 抗甲状腺薬 ● 抗甲状腺薬による薬物療法、放射性ヨード内用療法(アイソトープ療法)および手術がある. ● 抗甲状腺薬による薬物療法は、外来で治療可能であり、まず抗甲状腺薬で治療を開始し、治療抵抗性や副作 用で継続できない場合などに手術やアイソトープ療法を行うことが一般的である. ● 抗甲状腺薬は、チオナミド系のチアマゾールとプロピルチオウラシルの2種類の薬剤がある. ● 『バセドウ病治療ガイドライン 2019』では、チアマゾールの方がプロピルチオウラシルに比べ、より早く甲状腺 ホルモンを正常化できる、副作用が少ない、半減期が長いため1日1~2回投与でも有効で服薬アドヒアランス がよいといった理由からチアマゾールが 第一選択薬として推奨されている. ● ただし, 妊娠初期(器官形成期の妊娠4週0日〜15週6日)の患者への投与に関しては、チアマゾー ルによる 催奇形性に関する報告があるため、プロピルチオウラシルが推奨されている. ● 抗甲状腺薬は、すでに合成され甲状腺ろ胞細胞内に蓄えられている甲状腺ホルモン分泌を抑制する作用は ない。よって、甲状腺機能の抑制効果に即効性はなく、甲状腺ホルモンが正常値になるまで1〜3ヵ月程度要 する点に注意が必要である. 西村 知恭. 【お薬立ちBOOK2022 解剖生理・病態生理から薬学管理へ】病態生理を踏まえた薬物治療・薬学管理へ バセドウ病 薬理と薬学管理上の注意点. 薬局, 2022, Vol.73, No.4.
#19.
導⼊ 症例 解説 バセドウ病の治療 抗甲状腺薬 ● 抗甲状腺薬の副作用には、比較的頻度は高いが軽症のものと、頻度は低いがただちに内服を中止し、適切な 対応を取る必要がある重症のものに大別される. ○ 軽度(1〜6%):皮疹,軽度肝機能障害, 筋肉痛,関節痛 など ○ 重度(〜0.5%):無顆粒球症,重度肝機 能障害,多発関節炎,ANCA 関連血管炎, インスリン自己免疫症候群,HTLV-1 関 連ぶどう膜炎 など ● 最も注意すべき副作用が無顆粒球症である.発現頻度は 0.1〜0.5% と低いが、多数の死亡例が報告されて いる. ● 服薬指導の際は、発熱や咽頭痛、全身倦怠感などの症状出現時はすぐに受診するよう説明する. ● 無顆粒球症は、ほとんどの例で投与開始後2〜3ヵ月以内に発症するため、その期間は2週間ごとに白血球分 画を含めた血液検査を実施し、それ以後も定期的なチェックを行うことが必要である. ● 特に好中球数が1,000/mm3未満の場合は、ただちに抗甲状腺薬を中止し、無機ヨード薬に切り替え、原則と し て入院し、広域スペクトラムをもつ抗菌薬を投与する. 西村 知恭. 【お薬立ちBOOK2022 解剖生理・病態生理から薬学管理へ】病態生理を踏まえた薬物治療・薬学管理へ バセドウ病 薬理と薬学管理上の注意点. 薬局, 2022, Vol.73, No.4.
#20.
導⼊ 症例 解説 バセドウ病の治療 無機ヨード薬 ● 無機ヨード薬は、大量に摂取すると甲状腺機能が速やかに抑制される.そのため、以下のような場合にバセド ウ病治療として無機ヨード薬が用いられる. ○ ○ ○ ○ ○ ● バセドウ病術前処置 甲状腺クリーゼに対する治療 アイソトープ治療後の甲状腺機能コントロール 副作用のため抗甲状腺薬が使用できない場合 手術またはアイソトープ治療までの甲状腺機能コントロール 胎盤関門を通過し、胎児の甲状腺腫および 甲状腺機能異常を起こすことがあるので、妊婦または妊娠の可 能性のある患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に投与し、原則として反復投与を 避ける. ● 母乳中への移行が認められ、乳児に皮疹や甲状腺機能抑制を起こすことがあるため、本剤投与中および投 与後、一定期間は授乳を避ける. 西村 知恭. 【お薬立ちBOOK2022 解剖生理・病態生理から薬学管理へ】病態生理を踏まえた薬物治療・薬学管理へ バセドウ病 薬理と薬学管理上の注意点. 薬局, 2022, Vol.73, No.4.
#21.
導⼊ 症例 解説 バセドウ病の治療 131 ● I 内用療法(アイソトープ療法) 放射性ヨウ素(131 I)は甲状腺に取り込まれ、甲状腺にとどまり放射線の作用によって甲状腺細胞の数を減ら す. その結果、甲状腺ホルモンの産生や分泌が減る. ● アイソトープ治療は放射性ヨウ素を使用するため、実施施設は限られる. ● 抗甲状腺薬で重症副作用が出た場合は根治療法(アイソトープ療法や手術療法)が絶対的な適応である.ま た、抗甲状腺薬投与後1.5~2年で休薬の見通しが立たない場合、80g以上の甲状腺重量があるとき、2回以 上再燃を繰り返している場合などは、根治療法への変更を検討する. ● アイソトープ療法は、5歳未満は禁忌、6~18歳は他の治療法が困難な時には容認される. ● 成人バセドウ病患者のアイソトープ療法後は、男性では 4~6カ月、女性では 6カ月過ぎてからの挙児計画が 薦められる. ● アイソトープ療法を避けるべき基準は、妊娠(あるいは 6 カ月以内の妊娠予定)・授乳中、小児、活動性の甲 状腺眼症、甲状腺悪性腫瘍合併、200 g 以上の甲状腺重量などがあるときである. 西原永潤. 増刊号 早わかり診療ガイドライン100—エッセンス&リアルワールド 内分泌・代謝 63 Basedow病—バセドウ病治療ガイドライン2019 . medicina.vol.57. No.4.2020.
#22.
導⼊ 症例 解説 バセドウ病の治療 手術 ● 手術には、甲状腺亜全摘と甲状腺全摘の方法があるが、再燃を完全に回避できる点で甲状腺全摘術が推奨 されている. ● 術後は、永続性の副甲状腺機能低下により甲状腺ホルモンの補充が必須となる。また、瘢痕、副甲状腺機能 低下、反回神経麻痺の合併症などがある. ● バセドウ病の手術適応として,以下が挙げら れている. ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 6ケ月以内の妊娠希望 気管の圧迫による症状の存 在や 80 g 以上の甲状腺腫 放射性ヨードの 甲状腺への摂取低値 甲状腺悪性腫瘍の併存 4cm以上の機能のないまたは低い結節の併存 手術を必要とする副甲状腺機能亢進症の存在 極めて高いTRAb活性 中等度~高度のバセドウ病眼症の存在 西村 知恭. 【お薬立ちBOOK2022 解剖生理・病態生理から薬学管理へ】病態生理を踏まえた薬物治療・薬学管理へ バセドウ病 薬理と薬学管理上の注意点. 薬局, 2022, Vol.73, No.4.
#23.
導⼊ 症例 解説 本症例のポイント • 動悸、体重減少、眼球突出で発症したバセドウ病の症例である. • 治療法としては、薬物療法、アイソトープ治療、手術が挙げられる. • 若年女性に対して治療を行う上では注意が必要であり、授乳中など患者の状態によっては使用できる薬物が限ら れている. また、妊婦に対してアイソトープ治療を行うと催奇形性の危険を有するため禁忌となる.(Teratology 2001; 64: 262-266) • 薬物療法が適応されない症例としては、以下の症例が挙げられる. ○ 甲状腺癌合併症例 ○ 副作用のため抗甲状腺薬が内服できずかつアイソトープ治療を望まない症例 ○ 甲状腺腫が比較的大きく抗甲状腺薬では寛解が望めない症例 ○ 早期に寛解を望む患者であり、 これらに対しては手術療法が適応される。(日本医科大学医学会雑誌 2007; 3: 39-43)
#24.
導⼊ 症例 解説 本症例のポイント • 手術療法は速効性が期待できる反面、反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症などの術後合併症を生じる可能性を 有しており、慎重に選択する必要がある。(J Surg Res 2000; 90: 161-165) • 本症例は26歳の女性であり、今後妊娠する可能性が十分高いと考えられるため、以上のような危険性を十分に説 明し、同意を得た。 • 患者の社会的背景を考慮し全人的に捉えた上で、最良の治療法を選択し、治療方針に対する十分なインフォーム ドコンセントを得ることが不可欠である。
#25.
導⼊ 症例 Take Home Message 抗甲状腺薬による薬物療法は、外来で治療可能であり、まず抗甲状腺薬で治療を開始し、治療抵抗性 や副作用で継続できない場合などに手術やアイソトープ療法を行うことが一般的である. 抗甲状腺薬で最も注意すべき副作用が無顆粒球症である. 妊娠初期(器官形成期の妊娠4週0日〜15週6日)の患者への投与に関しては、チアマゾールに よる催奇形性に関する報告があるため、プロピルチオウラシルが推奨されている 解説