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湘南鎌倉総合病院
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Department of neurology, Shonan kamakura General Hospital Daisuke Yamamoto 救急病院でのラコサミドの 考え方・使い方
THEME 1 ラコサミドの立ち位置は?
ラコサミドを知る前に =>抗てんかん薬一般の知識 まずは抗てんかん薬全般を知り、ラコサミドを理解する。
「抗菌薬」に例えて説明。 Narrowか?Broadか? 抗菌薬に例える手法は非専門医の先生方に伝わりやすいので、好んでいます。 「CBZ(カルバマゼピン)はCEZ(セファゾリン)です」。 「LEV(レベチラセタム)はMEPM(メロペネム)です」。 など、抗菌薬に例えるとイメージがわきやすいです。また、抗てんかん薬と抗菌薬の特徴において、ニュアンスが類似しているところもあります。抗てんかん薬には、守備範囲があり、抗菌薬同様spectrum (Narrowか? Broadか?)で語られます。
Narrowとは? =焦点性てんかんに有効である、 ことを意味します。 <narrow spectrumのAED> 焦点性てんかんとは、脳の特定部位から異常放電を来たし、てんかん発作に至る、てんかん分類。 焦点性てんかんを考慮する場合には、narrow spectrumの抗てんかん薬が治療薬で選ばれます。 代表的な抗てんかん薬はCBZです。 抗菌薬に例えて、CEZと説明します。
Broadとは? =焦点性てんかん・全般性てんかん 双方に有効である、こと意味します。 <broad spectrumのAED> 全般性てんかんとは、脳全体に異常放電の発火を来し、てんかん発作に至る てんかん分類です。 発作分類が、焦点性か、全般性てんかんか区別しにくい場合もあります。 この場合は、双方に有効なbroad spectrumの抗てんかん薬を選びます。 代表薬剤はLEVです。 抗菌薬に例えてMEPMと説明します。
古典的抗てんかん薬について 従来薬=>CBZとVPAが代表薬 従来薬の代表薬は、カルバマゼピンとバルプロ酸です。 カルバマゼピンは=>昔からの、焦点性てんかんの第一選択薬 です。 バルプロ酸は =>昔からの、全般性てんかんの第一選択薬 です。 これら2剤は昔から現在までも、第1選択薬の位置づけです。新規AEDの出現で、使用頻度は減っています。その理由は、薬剤相互作用(併用薬の効果を変えてしまう)や薬剤の副作用によります。よって、従来薬の処方機会は減り、新規抗てんかん薬が選択されることが多くなっています。 (第1世代)
新規抗てんかん薬について 新規=>使いやすい 近年登場した抗てんかん薬は、新規抗てんかん薬として位置付けられます。 代表薬は、レベチラセタム。抗菌薬に例えるなら、カルバペネムをイメージします。 新規抗てんかん薬の特徴は、「副作用の少なさ」と言えるでしょう。 代表薬であるレベチラセタムは、ブロードスペクトラムで、副作用が少ない、となると、非専門医にとっては使用しやすい抗てんかん薬である、と言えるでしょう。 (第2-3世代)
新規と従来薬の それぞれの特徴のまとめ 副作用 薬物相互作用 薬価 新規抗てんかん薬 少ない 気にしない 高い 従来薬 多い 気にする 安い 新規抗てんかん薬は従来薬と比較し、使用しやすい薬剤と言えます。 しかしながら、新規抗てんかん薬の唯一の弱点は、薬価といえます。 コストについては、患者さんと相談する必要はあります。 (第1世代) (第2-3世代)
ラコサミドを知る前に =>他の抗てんかん薬を知る 具体的な個々の薬剤を解説していきます。
CBZ カルバマゼピン 抗菌薬なら、CEZとして説明する。 副作用=>色々気になる。 ナロースペクトラム(焦点性用) 効果は十分である。 従来薬=プロ処方である。 ナロースペクトラムの代表選手です。効果は頼りになるものの、副作用が多々問題になります。よって、プロ処方として位置付けていいでしょう。 抗菌薬に例えて、CEZセファゾリンとして説明しています。 副作用は、眠気、ふらつき、低Na血症が問題になります。 薬物相互作用があり、多剤併用患者=すなわち高齢者 では避けられる薬剤です。
VPA バルプロ酸 抗菌薬なら三世代経口セフェムで例える。 副作用=>少ない。 ブロードスペクトラム(焦点性+全般性) 焦点性用としては、効果は不十分です。 成人で使用する場合は限定的な場面になる。 成人での使い道は限定的です。 眠気の少なさ、副作用の少なさが長所です。 よって、眠気で他剤が使えなかった症例などで、選択肢になります。 成人てんかん診療では、主として焦点性てんかんを対象とします。よって、VPAをあえて使うとすれば、使用しなければならない特別な理由がある場合のみです。
LEV レベチラセタム 抗菌薬なら、カルバペネム! 副作用は少ない。 ブロードスペクトラム(焦点性+全般性) オールマイティな使い勝手。 カルバペネム的抗てんかん薬です。 てんかんの診断が正しければ、発作分類は問わない、オールマイティな薬剤です。 副作用は、眠気と易怒性です。これは留意しておいてください。 静注薬もあり、頻用されます。 使い勝手がいい薬剤で、新規抗てんかん薬の代表薬といっていいでしょう。
LTG ラモトリギン 抗菌薬なら、カルバペネム! 副作用=>導入時皮疹に注意。 ブロードスペクトラム(焦点性+全般性) オールマイティ。効果も十分。 漸増を要し導入に時間がかかるのは弱点。 カルバペネム的抗てんかん薬です。 てんかんの診断が正しければ、発作分類は問わない、オールマイティな薬剤です。 副作用は、あまり問題になりません。 最大の弱点は、漸増に時間がかかることです。有効用量に達するまで2-3カ月要します。 また、重症薬疹リスクもあります。 薬剤導入のしにくさは、ジェネラリスト向けとは言いにくそうです。
LCM ラコサミド 抗菌薬なら、スーパーCEZ! 副作用=>少ない。 ナロースペクトラム(焦点性用) 効果は十分。 成人てんかんの主力といってよい。 新規抗てんかん薬ですが、ナロースペクトラムです。 CBZの上位互換、と説明しています。CBZの副作用がないバージョン。 抗てんかん薬で問題になりやすい、眠気もあまり目立ちません。忍容性よい。 効果も高く、使いやすい薬剤です。 まれだが、徐脈の副作用には留意。 静注薬あり。
ZNS ゾニサミド 抗菌薬なら、第二世代セフェム的? 副作用=>精神症状には悪い可能性。 ナロースペクトラム(焦点性用) 効果は十分。 従来薬であり、安価である。 従来薬ですが、第1世代(従来薬)の晩期に登場したものです。ある程度新規抗てんかん薬(第2世代)のようなニュアンスで使えます。 コストが安いので、新規抗てんかん薬が使えない場合の代替薬として重宝します。 弱点は、精神症状への悪影響は知られています。
AEDの特徴まとめ Narrow spectrum? Broad spectrum?で区別される特徴がある。 新規? 従来薬?で区別される特徴がある。 発作抑制効果で区別される特徴がある。
AEDの使い分けのポイント いずれかの抗てんかん薬を選択する場合には、考慮する条件があります。 臨床で、よく出会うポイントについて解説していきます。 抗てんかん薬の選択において、考慮されるポイント ▲薬剤相互作用を気にする場合。 ▲怒りっぽい症状が既に知られている。 ▲第1選択薬で眠気が問題になった。 ▲薬価が問題になる。
従来薬は、薬剤相互作用がある。 併存症のため多剤内服しており、薬物同士の相互作用が気になる、という場合には、新規抗てんかん薬を選択する。 よって、LEV、LTG、LCMが選択肢になる。 薬剤相互作用を気にする場合。
認知症の周辺症状、また元々のキャラクターで、怒りっぽい症状がある場合にはLEVは避ける。 易怒性を助長する可能性がある。 この場合は、新規抗てんかん薬では、LCM、LTGが選択肢になる。 従来薬では、CBZ、VPAが選択肢になる。Mood stabilizerとしての効果を持つ、CBZ、VPAは違った意図で双方選択肢になる。 怒りっぽい症状が既に知られている。
この場合には、眠気が問題になりやすい、LEV、CBZは避けることになる。 この場合には、眠気が少ない、LCM、LTG、VPAが選択肢になる。 第1選択薬で眠気が問題になった。
薬価が問題になる場合には、新規抗てんかん薬は不適切であり、CBZ、VPAが選択肢になる。 ZNSも選択肢にしてもいい。 薬価が問題になる。
使い分けにおける薬剤特徴まとめ 薬物相互作用が少ない:新規抗てんかん薬 薬物相互作用が多い :CBZ 怒りっぽくなる :LEV 気分が落ち着く :CBZ, VPA, LTG 眠気がでやすい :LEV, CBZ 眠気がでにくい :LTG, LCM, VPA 薬価が高い :新規抗てんかん薬 薬価が安い :従来薬
以上から、ラコサミドは どのような使い方になるか? AEDの特徴を踏まえた使い道は?
前提としては、【成人てんかん=>焦点性てんかん】を想起する。 よって、概ね、成人てんかん用AEDとして了解可能。 一方でTeenagerを含む若年者のてんかんでは、【全般性てんかん】の可能性があることも、了解が必要である。(この場合ではLCMは不適な可能性があり、Broad spectrumのLEVが使いやすい。) 器質的病変:脳腫瘍、頭部外傷後、脳卒中後、認知症を来す変性疾患 など が指摘できるなら、焦点性てんかんを考慮すればよく、LCMはよき適応であろう。 ラコサミド 焦点性てんかん用の新規抗てんかん薬の意義 =>成人てんかんのAEDとして使いやすい。
LCMの特徴を列挙すると、 忍容性が高い 有効性が高い 焦点性と考えられるなら使いやすい=より高齢発症であればよき適応。 となると、高齢者てんかんにマッチした、AEDとして評価してよいだろう。 高齢者てんかんでは、薬物相互作用の少ない、忍容性の高い薬剤を選択したい。 ラコサミド 焦点性てんかん用の新規抗てんかん薬の意義 =>高齢者てんかんのAEDとして使いやすい。
高齢発症てんかんと類似した理由となる。 高齢発症てんかんの原因で最も多いのは脳卒中である。原因の30-40%を占める。 (※脳卒中後の症候性てんかんの発症率は2-4%である。) 脳卒中後であれば、明らかに焦点性として了解しやすい。 脳卒中後てんかんとして評価されるなら、高齢者である背景も加味され(薬物相互作用や忍容性が考慮され)、LCMを選択する妥当性がある。 ラコサミド 焦点性てんかん用の新規抗てんかん薬の意義 =>脳卒中後てんかんのAEDとして使いやすい。
まとめ ラコサミドはどんな薬で どんなニュアンスで選択するか? ここまでのサマリー。
焦点性てんかんとして評価可能なら、選択しやすい薬剤である。 器質的病変が指摘可能なてんかん、高齢者てんかんで選択する。 例)高齢者、脳卒中後、脳腫瘍、外傷後などの症候性てんかん。 ラコサミドとは① 焦点性てんかん用AEDである。
忍容性の高さから、高齢者用AEDとして選択しやすい薬剤である。 また、脳卒中の合併率の高さもこれを選ぶ理由になる。 ラコサミドとは② 高齢者てんかん用AEDである。
焦点性てんかんとして、理解しやすいのでよき適応である。 脳卒中を発症しうる高齢者である、という背景も考慮。 ラコサミドとは③ 脳卒中後てんかん用AEDである。
焦点性てんかんとして評価できるなら、発作抑制後の 【静注療法=>入院後の内服療法】への、シームレスな治療移行が 可能である。 ラコサミドとは④ 救急=>急性期用AEDである。
THEME 2 ラコサミドの実際の使い勝手
当院でのストラテジーの紹介 実際の使い勝手についてのプレゼンテーション。
Lacosamido, efficacy and medication strategy of epilepsy ラコサミドを中心とした 救急病院での 入院てんかん治療戦略
本スライドで使用する略語
本スライドで使用する略語
Introduction ラコサミド(ビムパット®)は忍容性も良好であり、 実際に発作抑制において有効である。 このプレゼンテーションのテーマは二つ。 ①実際にラコサミドがどれくらい有効で、どんな問題が あるのか? ②急性期病院の入院診療における、ラコサミドを含めた AEDの投薬ストラテジーについての一つのアイデアの 提供をする。
ラコサミド(ビムパット®)の 位置づけ ガイドライン・エキスパートオピニオン での推奨度について
ラコサミドの焦点性てんかんについて ガイドラインでの推奨 現時点(2021/09)において、ガイドラインでの推奨レベルは高くはない。 NICE 2020: 焦点性てんかんにおけるラコサミドの推奨は、第一選択薬、第二選択薬 でもなし。 てんかん診療ガイドライン2018: ラコサミドは焦点性てんかんで、第二選択薬に位置づけられている。 米国のエキスパートオピニオンでは、ラコサミドは焦点性てんかんで、 「Usually appropriate(通常は適切)」に位置付けられている。 Epilepsy & Behavior (2017;69:186-222): →データの蓄積が乏しく、今後の第一選択薬として使用が検討される薬剤である。
ラコサミドの 弱点は? 副作用について
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ラコサミドを中心とした 入院診療での投薬戦略 抗てんかん薬の選択について、一つのストラテジー
LCMから始める投薬ストラテジー
LCMから始める投薬ストラテジー
LCMで治療をはじめる理由(私見) 成人てんかん診療で、救急病院で入院対応をしなければならない シチュエーションでは、高齢者が対象の場合が多い。 発作分類の対象は、ほぼ焦点性てんかんである。 また、高齢者における投薬では、忍容性(眠気、精神症状)が重視される。 新規抗てんかん薬の中で、 焦点性てんかんでの有効性が高く、 眠気の副作用が少ない、 精神症状に影響が少ない、 以上の特徴をもつラコサミドで治療開始することは、理に適っている。
LCMから始める投薬ストラテジー
LCMで副作用を認めた場合の変更先 このストラテジーにおいて使用する薬剤を少なくして判断を簡易にするために、LCMからの変更先はLEVとZNSとした。LEVとZNSの選択理由は以下のごとく。 いずれも、副作用の面で問題になりにくい薬剤である。 薬剤の特徴として、治療スペクトラムが広く、副作用が少ない、という理由で、 変更先の薬剤としてLEV/ZNSを選択している。
LCMから始める投薬ストラテジー
転院症例となり、LCMが継続できない場合の変更先 発作後ADLが下がってしまい、元の生活の場所に退院できない場合もある。薬剤コストの理由で、もしくは転院先採用薬剤の問題で転院となった場合にLCM継続ができない場合もありうる。これは実臨床においては重要なテーマである。自宅や施設退院が困難で転院になった場合の変更先を用意しておく。 ここではLCMの変更先として、ZNSを提案する。ZNSの特徴は以下のごとく。 コストの面で、安価であり、継続可能性が高い。 採用されている可能性の高い薬剤である。 比較的、有効性・忍容性も期待しやすい。 有効用量として、200-300mg/dayを示しておく。
LCMから始める投薬ストラテジー
先行AEDがある場合、LCM単剤への変更を目指す。 発作があって入院した場合、先行AEDの継続ではうまくいかない可能性が高い。先行AEDの用量増量も選択肢ではある。ただし、焦点性てんかんを想定するなら、先行AEDにこだわらず、焦点性てんかんでの有効性の高いLCMに変更していく妥当性はある。 そして、「AED単剤」でのコントロールを目指すなら、LCM導入でLCM単剤でのコントロールを目標にするのは一つの考え方だろう。 LCM導入後、LCMが維持量に達したら、先行AEDを緩徐に減量、中止を目指す。
実際にどれくらい 戦略がfitしたか 救急病院での介入経験
後方視的検討 入院82症例について 2018/9-2020/9までの脳神経内科・総合内科入院症例で、 新規にLCMを開始したてんかん発作82症例についての検討。 おおむね、先述のストラテジーに沿って対応している。
患者プロフィール 年齢平均値 :74.7±14.6 歳 合計症例数 :82 未治療例 :66 既治療例 :16
結果 重大な副作用は5例で、全例LCM投与中止に至った。 内訳は、高度徐脈 2例、肝障害 2例、傾眠傾向 1例であった。 LCMを新規に導入し、退院後も継続した症例は58/82例だった。 LCMを新規に導入し、入院中に中止した症例は24/82例だった。 LCM中止の内訳は、重大な副作用 5例、転院での変更 9例、 急性症候性発作 6例、その他 4例だった。
LCMから始める投薬ストラテジー
LCMから始める投薬ストラテジー 66 61 5 16 16 82例すべてで、発作抑制は良好であった。 副作用で中止した5例以外は、LCMでの治療は有効であると評価した。 82
ラコサミドは未治療てんかん症例の治療介入で、92.4%(61例/66例)の症例で有効であった。 ラコサミドは既治療てんかん症例の治療介入で、100%(16例/16例)の症例で有効であった。 SUMMARY: ラコサミドは、発作抑制について有効である。 1
副作用の発現率は6.0%(5例/82例)であった。 重大な副作用として、高度徐脈が2症例認められた。 この副作用には留意が必要である。 SUMMARY: ラコサミドの重大な副作用としては、 高度徐脈を認める場合がある。 2 *使用にあたっては最新の添付文書をご参照ください
LCMから始める投薬ストラテジー 66 61 9 LCMは有効であったが、他剤AEDに転院によって変更を要する症例は9例であった。変更先AEDの内訳はZNS6名、CBZ2名、VPA1名。
LCMで発作コントロールがついたのち、ZNSへの変更対応とした。 転院症例では、事前に転院先でのLCM継続可能かどうかについての確認が 必要である。 SUMMARY: ラコサミドは、転院症例では変更の必要もある。 3
LCMから始める投薬ストラテジー 6 16 16 先行AEDがある既治療例は16名で、そのうち、6名は 入院中にLCM単剤に変更可能であった。
6/16症例で入院中にLCM単剤へ切り替えが行われた。 先行AEDはLEV 8例、CBZ 2例、VPA 6例であった。 SUMMARY: 先行AEDがある症例について。 4
Summary 高齢者患者が多い、救急病院での入院てんかん診療における、ラコサミドを中心とした投薬ストラテジーについて紹介した。 このようなセッティングにおいて、ラコサミドの有効性・忍容性は十分であった。 ラコサミドで治療開始した場合で、他のAEDに変更する必要がある。重大な有害事象の場合、転院対応となる場合等である。
ただし、結局は発作を止めてからの 問題ではある。 この点を整理すると、より明確な使い方が見えてくる。
てんかん重積状態への使用は適応ではない。 LCMはてんかん重積状態への使用適応はなし。 この点においては、ERでのLEV選択の優位性がある。 LEVは2nd line therapyとしての使用が可能である。
LCM:てんかん重積状態から発作抑制後の使用となる。 発作抑制し、落ち着いた状態での使用検討となる。 LCM静注を開始し、入院対応を開始する。 意識障害改善後に内服変更し、その後退院後も継続としていく。 ERからのシームレスな治療介入と、 てんかん重積状態治療後の段階においての、 その後の発作抑制効果+忍容性の高さ、がLCMの特徴と言えるだろう。
LEVとLCMの違いをまとめる てんかん発作分類についての違い 全般性てんかん+焦点性てんかん 幅広く推奨される LEV 焦点性てんかんのみ 推奨される LCM 併存症がある場合の違い LEV:幅広い併存症において、最も推奨されるAED。 脳腫瘍、全身癌、脂質異常症、急性期脳梗塞、薬剤多剤使用者、 肝疾患、心疾患、HIVなど。 ただし、精神疾患の併存症は除く。(うつ、不安症、精神病) LCM:幅広い併存症での推奨あるAED。 そして、精神疾患の併存でも推奨されている。 Epilepsy Behav. 2021.doi: 10.1016/j.yebeh.2020.107540.
ケーススタディで 知識の定着 最後にここまでの復習を兼ねて、知識のおさらいをしよう。
CASE
70代男性 脳梗塞既往あり、軽度認知機能障害背景 全身性けいれん発作が持続し、救急搬送された。ERでも発作持続あり。
70代男性 脳梗塞既往あり、軽度認知機能障害背景 1st line therapy =>ジアゼパム 5mg IV X2 で発作抑制あり。 2nd line therapy =>発作抑制はされているが、ホスフェニトインは 追加投与しておくこととした。以後発作抑制あり。
CASE てんかん重積状態で来院。 ERで発作抑制あり。 採血・MRI施行し特記事項なし。 陳旧性の梗塞病変の指摘のみ。 初回発作だが、AED導入とした。 意識障害の遷延あり、内服不可。 脳卒中後てんかん
方針 LCM50mg+NS100ml静注*2/day その後意識障害は改善し、静注から内服に変更。 一週間後に維持量の200mg/dayに増量し、退院。 忍容性は問題なし。 発作抑制も可能であった。 脳卒中後てんかん
AED選択の根拠 脳卒中後てんかんであり、焦点性てんかんとして評価可能である。 高齢発症であり、他剤併用薬もあり。新規AEDを選択する。 意識障害あり、静注薬で開始したい。 LCMを入院直後から静注療法で開始し、内服療法へ移行。シームレスに退院まで移行可能であった。 脳卒中後てんかん
THEME 3 このプレゼンテーションのまとめ
ラコサミドとは、 SUPER セファゾリンである。 SUMMARY #1 1
ラコサミドとは、 焦点性てんかんのエースである。 SUMMARY #2 2
SUMMARY #3 3 ラコサミドは、 高齢者てんかん・脳卒中後てんかんが ターゲットで、プライマリーな対象者を イメージした薬剤選択となる。
SUMMARY #4 4 ラコサミドを用いた、 ERから入院後への連続した治療介入がイメージできるとよい。
まずはある程度イメージを作っていただき、その後の使い勝手を体感することで、薬剤への馴染みがでてくると思います。本プレゼンテーションは一つの見方の提案です。絶対的な答えではありませんが、一つのラコサミドの解釈方法としてご理解いただければと思います。 TAKE-HOME MESSAGE!