テキスト全文
MPA顕微鏡的多発血管炎の概要と対象者
#1. 症例から学ぼう! MPA 顕微鏡的多発⾎管炎 ゆっこ@リウマチ専⾨医
#2. 導⼊ ⽬次 スライドの対象者 導入 MPAとは 症例提示 主な現症 血液検査所見 症例 その他の検査所見 画像検査所見 臨床経過 MPAの基礎知識 まとめ 本症例のポイント Take home message 症例 解説
#3. 導⼊ このスライドの対象者 医学生 研修医・専攻医 指導医 レポート作成の参考に 基本的な疾患の勉強に レポート・スライド 作成の参考に レポート・スライド 指導の参考に 仮想症例を通じて一緒に勉強していきましょう! 内科専門医の先生からの補足コメントもあるので, 内科専門医試験対策にも◎ 症例 解説
顕微鏡的多発血管炎の病態と症例
#4. 導⼊ 症例 解説 顕微鏡的多発血管炎(MPA)について 顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA) ● 顕微鏡で観察できる太さの細小動・静脈や毛細血管など小型血管に炎症を起こし、 出血や血栓を形成することで血流障害や壊死、そして、臓器機能に不具合を生じる 全身性の自己免疫疾患である. ● 病気の原因は不明である. しかし、好中球の細胞質に含まれる酵素タンパク質であ るミエロペルオキダ ーゼ(MPO)に対する自己抗体(MPO-ANCA)が高率に検出さ れることから、他の膠原病と同様に自己免疫異常が背景に存在すると考えられてお り、この抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)が小 型血管の炎症に関わることが分かってきた. ● 好発年齢は55~74歳、発症時平均年齢71歳で、女性にやや多い. ● 原因 原因はいまだに不明である. 日本リウマチ学会HP. MPA. 難病情報センターHP. MPAの概要、診断基準等
#5. 導⼊ 症例 解説 症例:49歳 女性 確定診断名(主な病名および副病名) 1. 顕微鏡的多発血管炎 2. 急速進行性糸球体腎炎 3. 間質性肺炎 \内科専門医が補足/内科専門医試験こぼれ話 ● ● ● 顕微鏡的多発血管炎(MPA)では、 腎・肺症状が特徴的である. 鼻腔・副鼻腔など上気道の症状の合併があれば多発血管炎性肉芽腫症(GPA)を 考慮する. 先行する気管支喘息・アレルギー性鼻炎・好酸球性副鼻腔炎があれば好酸球性 多発血管炎性肉芽腫症(EPGA)を考慮する. 【主訴】 血尿・蛋白尿 【現病歴】 入院2年前の健康診断では血尿・蛋白尿の指摘はなかった. 入院6ヶ月前に全身倦怠感および下腿浮腫が出現し増悪傾向であったため入院1ヶ月前に前医を受 診した.その際Cre 0.86 mg/dLと軽度の腎機能障害と尿定性で尿蛋白3+・尿潜血3+を指摘されたた め精査目的で当科外来受診となった. 外来でMPO-ANCA陽性でCTで間質性肺炎の指摘もあったため、ANCA関連血管炎疑いとして腎生 検と治療目的に当科入院となった. 【既往歴】 アトピー性皮膚炎、副鼻腔炎 【家族歴】 特記すべき事項なし 【生活・社会歴】 特記すべき事項なし
入院時の現症と血液検査所見
#6. 導⼊ 主な⼊院時現症 身体所見 意識 E4V5M6 体温 36.7 ℃ 血圧・脈拍 SpO2・呼吸数 眼瞼・結膜 口腔内 頚部 胸部 四肢 108/69 mmHg, 73/分 (整) SpO2 98 %(自発呼吸, room air), 呼吸数 20/分 眼瞼結膜に貧血を認めない、眼球結膜に黄疸を認めない 口腔内異常なし 頚部リンパ節触知せず 心音: 心雑音を認めない 呼吸音: 整. cracklesやwheezesを認めない 上下肢に皮疹や浮腫を認めない. 運動障害や感覚障害を認めない. 症例 解説
#7. 導⼊ 症例 解説 ⾎液検査成績 生化学 血算・凝固 WBC: 8600 /μL TP: 7.2 g/dL CK: 69 U/L RBC: 431万 /μL Alb: 3.5 g/dL IgG: 1488 IU/L Hb: 11.8 g/dL AST: 14 IU/L IgA: 370 IU/L Ht: 36.9 % ALT: 12 IU/L IgM: 87 IU/L MCV: 85 fl γ-GTP: 14 IU/L FT4: 1.00 ng/dL Plt: 39.7万 /μL LDH: 214 IU/L TSH: 1.61 μIU/mL PT‐INR: 1.08 T-Bil: 0.3 mg/dL APTT: 28.7 sec BUN 15.1 mg/dL C3: 135 mg/dL Cr: 1.07 mg/dL C4: 35 mg/dL Na: 141 mEq/L K: 4.0 mEq/L Cl: 103 mEq/L CRP: 2.78 mg/dL
#8. 導⼊ 症例 その他の検査成績 免疫学的検査 尿所見 抗好中球細胞質抗体 (MPO-ANCA): 450 抗好中球細胞質抗体 (PR3-ANCA): (−) 尿沈渣: 変形赤血球 抗糸球体基底膜抗体: (−) 随時尿蛋白定量: 1.30 U/mL 尿蛋白: 2+ 尿潜血: 2+ \内科専門医が補足/内科専門医試験こぼれ話 ● MPAはMPO-ANCA陽性が多い. ● GPAはPR3-ANCA陽性が多いとされているが、日本含む東アジアでは MPO-ANCA陽性が約半数と言われている. ● EGPAもMPO-ANCA 陽性になることがあるが、全体の30〜50%ほどである. g/gCre 解説
画像検査所見と治療経過
#9. 導⼊ 画像検査所⾒ 画像所見 心電図 ● 正常範囲内. 胸腹部CT ● 両肺底部に牽引性の気管支拡張像や網状影を認める. 症例 解説
#10. 導⼊ 症例 解説 治療経過 1 #1. 顕微鏡的多発血管炎 ● MPO-ANCA陽性であること、上気道症状を認めないことから、ANCA関連血管炎の中でも特に顕微鏡的多発血 管炎を疑い入院当日に腎生検を行った. ● 結果判明前からステロ イドパルス療法とその後のステロイ(プレドニゾロン50mg)を開始した.同時にリツキシマ ブ(RTX)375mg/m2を週1回・計4回投与を開始した. ● リツキシマブ投与にあたって、Infusion reactionの予防として抗ヒスタミン薬・解熱鎮痛薬の前投与を行い、リツ キシマブ投与中も症状の出現に注意した. ● 腎生検の結果は肉芽腫を伴わないpauci-immune型の半月体形成性糸球体腎炎であり、顕微鏡的多発血管炎 に矛盾がない所見と考え上記の治療を継続した. ● 同時にニューモシスチス肺炎の予防内服のST合剤や骨粗鬆症予防などステロイドの副作用に対する対応も 行った. ● 治療により腎機能や肺野の陰影などは著変なかったが、CRPは低下傾向にあったため治療効果を認めていると 考え、ステロイドを緩徐に減量し、十分に減量できたところで退院とした. 退院時処方 ・プレドニゾロン 30mg/日 ・ランソプラゾール 15mg/日 ・トリメトプリム 20mg/日 ・アレンドロン酸 35mg 週1回 ・スルファメトキサゾール 100mg/日
MPAの診断基準と主要症候
#11. 導⼊ 顕微鏡的多発血管炎とは 症例 解説
#12. 導⼊ 症例 解説 MPA診断基準 厚生労働省 (1998) (1)主要症候 ①急速進行性糸球体腎炎 (RPGN) ②肺出血又は間質性肺炎 ③腎・肺以外の臓器症状:紫斑、皮下出血、消化管出血、多発性単神経炎など (2)主要組織所見 細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死、血管周囲の炎症性細胞浸潤 (3)主要検査所見 ①MPO-ANCA 陽性 ②CRP 陽性 ③蛋白尿・血尿、BUN、血清クレアチニン値の上昇 ④胸部 X 線所見:浸潤陰影(肺胞出血)、間質性肺炎 (4)診断のカテゴリー ①Definite (a)主要症候の2項目以上を満たし、組織所見が陽性の例 (b)主要症候の①及び②を含め2項目以上を満たし、MPO-ANCA が陽性の例 ②Probable (a)主要症候の3項目を満たす例 (b)主要症候の1項目と MPO-ANCA 陽性の例 【参考事項】 (1)主要症候の出現する1~2週間前に先行感染(多くは上気道感染)を認める例が多い. (2)主要症候①、②は約半数例で同時に、その他の例ではいずれか一方が先行する. (3)多くの例で MPO-ANCA の力価は疾患活動性と平行して変動する. (4)治療を早期に中止すると、再発する例がある. (5)除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査所見から鑑別できる. (5) 鑑別診断 ①結節性多発動脈炎 ②多発血管炎性肉芽腫症 (旧称:ウェゲナー肉芽腫症) ③好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎/ チャーグ・ストラウス症候群) ④川崎動脈炎 ⑤膠原病 (全身性エリテマトーデス(SLE)、 関節リウマチ(RA)など) ⑥IgA 血管炎 (旧称:紫斑病血管炎) \内科専門医が補足/内科専門医試験こぼれ話 主にpauci-immune型の壊死性半月体形成性糸球 体腎炎によるRPGNの臨床像を呈することがある 難病情報センターHP. SLEの概要、診断基準等参照. 2023.8.9確認
EMEA分類アルゴリズムとANCA関連血管炎の分類
#13. 導⼊ 症例 解説 EMEA分類アルゴリズム(Wattsのアルゴリズム)① まず、エントリー基準を満たすことが前提で、代用マーカーの有無を考慮しながら分類アルゴリズムに従って分類していく . 原発性全身性血管炎のエントリー基準 ● ● ● 血管炎類似病態鑑別のため、少なくとも 3 か月以上観察 診断時16歳以上 臨床症状は診断時だけでなく、診断までの経過中に一度でも出現があればよい 次の A)B)C)を全て満たす場合には、 EMEA 分類アルゴリズム( Watts のアルゴリズム)で血管炎の分類を行う A 徴候がANCA関連血管炎や結節性多発動脈炎に特徴的でなければならない(血管炎の組織学的証明がない場合)、あるいは矛盾しない(血管炎 の組織学的証明がある場合) . B 以下のうち一つを満たす . 1. 組織学的に証明された血管炎または肉芽腫形成 (壊死性糸球体腎炎を含む) 2. PR3-ANCA または MPO-ANCA 陽性 (ELISA 法がなければ間接免疫蛍光法でもよい) 3. 血管炎および肉芽腫症が示唆される以下のいずれかの所見がある ① 神経生理学的検査による多発性単神経炎 ④ 腎・皮膚生検組織には IgA の沈着がなく、抗 GBM 抗体は陰性(※) ② 血管造影あるいは MRI 血管画像による PAN 所見 ⑤ 好酸球増多(> 10% または 1.5×109 / L) ③ 胸・頸部 MRI / CT による眼窩後部や気管病変 C 徴候を説明する他の疾患でないこと . 特に以下の疾患が除外されること . ① 悪性腫瘍 ② 感染症(B 型・C 型肝炎、HIV、結核、亜急性心内膜炎) ③ 薬剤性(ヒドララジン、プロピルチオウラシル、アロプリノール等) ④ 二次性血管炎( RA、SLE、シェーグレン、結合組織病) ⑤ ベーチェット病、高安病、巨細胞性動脈炎、川崎病、クリオグリブリン血症、 IgA 血管炎、抗 GBM 抗体病 ⑥ 血管炎類似病態(コレステロール塞栓、カルシフィラキシス、劇症型抗リン脂質抗体症候群、心房粘液腫) ⑦ サルコイドーシスと他の非血管炎性肉芽腫性疾患 Watts R et al. Development and validation of a consensus methodology for the classific
#14. 導⼊ 症例 解説 EMEA分類アルゴリズム(Wattsのアルゴリズム)② エントリー基準を満たす No ACRまたはLanhamのEGPA分類基準を満たす Yes EGPA No 以下のいずれかを満たす ● ACRのGPA分類基準 ● CHCCのGPAの組織所見 ● CHCCのMPAの組織所見を満たしかつGPAの代用マーカーが陽性 ● 組織所見がない場合、GPAの代用マーカーが陽性でかつPR3-ANCAまたはMPA-ANCAが陽性 Yes GPA No 以下のいずれかを満たす ● 小血管炎の臨床的特徴を満たし、小血管炎の組織所見があり、GPAの代用マーカーが陰性 ● 組織所見がなく、GPAの代用マーカーもない場合、腎血管炎の代用マーカーが陽性でかつPR3-ANCA またはMPA-ANCAが陽性 Yes MPA No CHCCのcPANに一致する組織所見、あるいはPANに典型的な血管造影所見がある Yes PAN No 未分類血管炎 ※ ACR:American College of Rheumatology、EGPA:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、CHCC:Chapel Hillコンセンサスカンファレンス、GPA:多発血管炎性肉芽腫症、MPA:顕微鏡的多発血管炎、 cPAN:古典的 結節性多発動脈炎 Watts R et al. Development and validation of a consensus methodology for the classification of the ANCA-associated vasculitides and polyarteritis nodosa for epidemiological studies. Ann Rheum Dis 66:222-227 2007
#15. 導⼊ 症例 解説 EULAR/ACR ANCA関連血管炎分類基準 (2022) 小~中型血管炎の診断がなされた上でGPA、MPA、EGPAを分類するときに点数計算の適応を行うが、血管炎類似疾 患は除外する. 点 MPA(6項目、計5点以上でMPAと分類) 点 鼻:血性鼻汁、潰瘍、痂皮、鼻閉、鼻中 隔欠損/穿孔 +3 臨 床 鼻:血性鼻汁、潰瘍、痂皮、鼻閉、 鼻中隔欠損/穿孔 -3 軟骨:耳・鼻軟骨の炎症、嗄声やストラ イダー、気管支内病変、鞍鼻 +2 pANCA or MPO-ANCA陽性 +6 胸部画像:繊維化あるいは間質性肺炎 +3 聴力:伝音性、感音声難聴 +1 生検: Pauci-immune型糸球体腎炎 +3 cANCA or PR3-ANCA陽性 +5 胸部画像:肺の結節、腫瘤、空洞 +2 生検:肉芽種、血管外肉芽種性炎症、 巨細胞 +2 画像:鼻/副鼻腔の炎症・浸潤影・液体貯 留、乳突炎 +1 Pauci-immune型糸球体腎炎 +1 pANCA or MPO-ANCA陽性 ー1 GPA(10項目、計5点以上でGPAと分類) 臨 床 検 査 血中好酸球≧1000/ul 検 査 cANCA or PR3-ANCA陽性 -1 血中好酸球≧1000/ul -4 EGPA(7項目、計6点以上でEGPAと分類) 臨 床 検 査 点 閉塞性気道病変 +3 鼻茸 +3 多発性単神経炎 +1 血中好酸球≧1000/ul +5 生検:血管外の好酸球主体の炎症 +2 cANCA or PR3-ANCA陽性 -3 血尿 ー1 ー4 Robson JC et al. 2022 American College of Rheumatology/European Alliance of Associations for Rheumatology Classification Criteria for Granulomatosis With Polyangiitis. Ann Rheum Dis 81(3):315-320. 2022. Suppiah R et al. 2022 American College of Rheumatology/European
治療方針と寛解導入・維持療法
#16. 導⼊ 症例 解説 治療①寛解導入療法 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023より 最重症の腎障害 (Cr≧5.7 mg/dL) MPAの診断 →臓器障害や病態の評価 副作用リスクが高いと 考えられる場合, など CY, RTXともに 使用できないとき CY or RTX + GC or アバコパン ★重症臓器病変(-) and 腎障害が軽微→GC+MTX ★重症臓器病変(+) or 腎障害軽微でない→GC+MMF 副作用リスクが高いと考えられる場合, 限局型で重症臓器病変がない場合など GC単独 GC+POCY*+血漿交換 (*IVCYが用いられる場合もある) 実線:ガイドライン中に推奨・提案した治療 たはその代替え療法 点線:それ以外の治療 ま GC+血漿交換 CY:シクロフォスファミド IVCY=静注シクロフォスファミドパルス POCY=経口シクロフォスファミド RTX:リツキシマブ GC:グルココルチコイド MMF:ミコフェノール酸モフェチル★ MTX:メトトレキサート★ ★は保険適応外 ・基本的にはステロイド+免疫抑制剤(RTX含む)での治療を行う ANCA関連血管炎診療ガイドライン 2023より一部改変 ・CYは毒性の観点からIVCY(静注)がPOCY(経口)よりも優先される 減量レジメンの例 ・ステロイドは減量レジメンが提案されている ・(体重50〜70Kgの場合) PSL60mg/dayで開始し、15週で5mg/dayまで減量する ・0.5mg/kg/dayで開始し、21週でOffする 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患事業. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023
#17. 導⼊ 症例 解説 治療②寛解維持療法 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023より GC単独で寛解導入治療を行った場合, 限局型で重症臓器病変がない場合など 寛解達成後 AZAの方が適切と 判断される場合 実線:ガイドライン中に推奨・提案した治療 たはその代替え療法 点線:それ以外の治療 AZA開始前にNUDT15遺伝子多型検査を行い適応を判断する GC+RTX GC単独 GC+AZA ※RTX, AZA以外にMTX, MMFが選択肢となりうる ま RTX:リツキシマブ GC:グルココルチコイド AZA:アザチオプリン MMF;ミコフェノール酸モフェチル★ MTX:メトトレキサート★ ★は保険適応外 ANCA関連血管炎診療ガイドライン 2023より一部改変 ・再燃を防ぐこと、治療薬(特にGC)による有害事象を起こさないことのいずれも重要! →どうやって再発させずにステロイドを減らしていくかがポイント ・RTXは定期投与、あるいは末梢血B細胞数やANCAの値に応じた投与のいずれも提案されている ・NUDT15遺伝子多型はAZAの重篤な副作用(高度白血球減少、全脱毛)と関連する →AZA使用にあたっては事前に検査が必要(2019年に保険承認) ・RTXもAZAも短期よりも長期間の投与が提案されているものの、その期間は明言されていない 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患事業. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023 一般社団法人日本リウマチ学会 リウマチ性疾患に対するアザチオプリン使用に関する通知 . 平成31年2月22日.
#18. 導⼊ 症例 解説 治療 Up to date ①RTXの位置付け ・寛解導入療法; 従来はGC+RTXはGC+CYの代替療法の位置付けであったが、 今回は両者はいずれも同等に提案(弱い推奨)されている ・寛解維持療法; 以前の標準療法はGC+AZAであり、RTXは代替治療法の一つとされていた 今回はGC+RTXがGC+AZAよりも優先されている ②アバコパンの登場 ・最近ANCA関連血管炎の治療薬として開発された補体C5a受容体阻害薬 →高用量のGCに代わる治療効果が示されている ・今後、GCの節減を実現する、あるいはGCを代替するための薬剤になるかもしれない リウマチ専門医からのポイント 寛解導入でも寛解維持でも原則何かしらの薬剤を併用すること寛解導入療法でGC減量レジメンが提案されていること、新薬アバコパンの登場… 今後のMPAの治療で重要なのは「どのようにしてステロイドの毒性を最小限にしながら寛解導入・維持をするか」ということでしょう. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患事業. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023
本症例のポイントと治療選択
#19. 導⼊ 症例 解説 本症例のポイント • 顕微鏡的多発血管炎による急速進行性糸球体腎炎に対してステロイドとRTXで加療した一例であった. • ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017の診断基準では主要症候・組織所見・検査所見からDefiniteと Probableに分けられる.急速進行性糸球体腎炎ガイドラインにおいて血清Cre、年齢、肺病変、CRPから重症 度が分けられている. • 本症例では腎生検でDefiniteとなり、重症度としてはスコア3点で臨床的重症度GradeⅡとなったため上記ガイド ラインに従ってステロイドパルス療法と経口ステロイド0.8mg/kg/日で加療開始とした. • 寛解導入治療に関して上記ガイドライン作成時点ではステロイド+RTXよりもステロイド+シクロホスファミドが 推奨されている. リウマチ専門医からのポイント 2023年のガイドライン改訂で、シクロフォスファミドとリツキシマブは寛 解導入療法において同等の位置付けとなりました.
#20. 導⼊ 症例 解説 本症例のポイント • 海外の2つのランダム化比較試験であるRAVE試験(John, N Engl J Med 2010; 363:221-232) とRITUXVAS 試験(Rachel, N Engl J Med 2010; 363:211-220)においてはRTXの有効性と安全性が報告されている. • 今回、シクロホスファミドの毒性なども考慮してRTXを選択した. • ただし、海外の試験では多発血管炎性肉芽腫症患者、PR3-ANCA患者が多く、患者背景が異なる可能性があ る. 日本人のMPA患者におけるRTXの有効性、シクロホスファミドとどちらを選択するのが良いかについてはさ らなる症例の蓄積が必要だろう. • また、上記RCTではRTXは週1回375mg/m2を4回投与のレジメンで行っており本症例でも踏襲した.
治療の副作用とTake Home Message
#21. 導⼊ 症例 解説 本症例のポイント • RTXの主な副作用としてはInfusion reaction、 B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎、皮膚粘膜症状、汎血球減少、各 種感染症、進行性多巣性白質脳症、間質性肺炎などが挙げられる(リツキサン注適正使用ガイド 日本臨床腎移植 学会). • 特にInfusion reactionの予防のために各回点滴静注開始30分前に抗ヒスタミン剤及び解熱鎮痛剤等の前投与を行 うよう推奨されている.本症例でも前投薬の上でRTXを使用し特に副作用なく治療効果もみられていた. • 免疫抑制状態にあるためニューモシスチス肺炎などの予防のためST合剤の内服を処方し、手洗いうがい、人混み を避ける など感染症予防に気をつけるように指導し退院とした.
#22. 導⼊ 症例 Take Home Message 顕微鏡的多発血管炎は小型血管をおかす壊死性血管炎であり、肺や腎臓を中心に全身に多彩な症状をきたす . 寛解導入療法として、ステロイドに静注シクロフォスファミドあるいはリツキシマブの併用が推奨されている . 寛解導入後は、再発の抑制とともに治療薬(特にGC)による有害事象を起こさないことが重要である. 解説