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燃え尽き症候群の定義と影響
#1. 総合診療医のcommon disease 燃え尽き症候群
#2. 燃え尽き症候群 長時間人を援助する過程で 心的エネルギーが過度に要求された結果 極度の心身の疲労と感情の枯渇を主とする症候群 レジデントノート.2003;5:86 パソコンのCPUのメモリがいっぱいになっていたり タスクによる負担がかかりすぎていて パフォーマンスが落ちている状態 医学のあゆみ.2019;269:244
#3. みんな経験あるはず アメリカでは医師の54.3%が燃え尽きを経験 Mayo Clin Proc.2018;93:1571 アメリカでは救急科,泌尿器科,リハビリ科 に継ぐ4番目に家庭医療科(プライマリ・ケア医) 家庭医療科では63% Mayo Clin Proc.2015;90:1600 日本の指導医の17.2%が燃え尽きを経験 治療.2019;101:522
燃え尽き症候群の症状とメカニズム
#4. 燃え尽き症候群の3症状 情緒的消耗感 メインの症状.仕事を通じて情緒的に消耗してしまう 脱人格化 患者に対して非人間的な対応をしてしまう これでさらなる消耗を抑えようという自己防衛 個人的達成感の低下 時間,努力に見合う成果や報酬,承認がないと 感じてしまう.要するにやりがいを感じられない
#5. 燃え尽きのメカニズム 個人要因 SOC 低下 ストレッサーへの 環境要因 ストレッサー 抵抗力低下 共感疲労 燃え尽き
#6. 燃え尽きのメカニズム 環境要因 ストレッサー 過重負担(量,質,時間を要求) 仕事の自律性のなさ 役割の曖昧さ(どこまでやったらいいの?申し送れる?) 燃え尽きに対する上司の無知 ネガティブ・フィードバック 支援不足(発表したいが孤立無援.診療もカバーなし) 人間関係(患者,同僚)
燃え尽きのメカニズムと要因
#7. 燃え尽きのメカニズム 個人要因 自分のゆとりやマインドセット 年齢 経験年数 性格(几帳面,自尊心,責任感) 家族,人間関係,経済の問題 レジリエンス 医師特有のメンタルモデル (バリバリやるのが美徳,期待に応えなければならない)
#8. 燃え尽きのメカニズム 共感疲労 己を削って共感をする 患者・家族に共感的なケアをすることで 自分自身が感情的に消耗すること 「ケアするコスト」とも表現され,共感を使い果たし 枯渇した感覚が燃え尽き症候群に至る一因になる 支援者として優れた医師ほど共感疲労が生じやすい 治療.2019;101:518
#9. 燃え尽きのメカニズム SOC低下 健康生成論でのストレッサーに対抗する その人の強みが首 尾 一 貫 感 覚 Sense of Coherense 処理可能感 状況に対して「なんとかなる」という感覚 過重労働により,なんとかならない 把握可能感 状況に対して理解でき,予測できるという感覚 知識,経験がなく,さらに自分の裁量もないと,全体像がわからない 有意味感 状況の意義や,対処のやりがいを感じられる 支援や,振り返りの機会がないと,ついつい後ろ向きになっていく
燃え尽きを疑うポイントと対応策
#10. 燃え尽きのメカニズム 個人要因 SOC 低下 ストレッサーへの 環境要因 ストレッサー 仕事に関連する様々な ストレスが押し寄せる もともとの性格・考え方に加え, ストレス対処法やその人の生活 背景がのしかかる 燃え尽き 抵抗力低下 共感疲労 ストレスへの抵抗力が 落ちてしまい,対処で きなくなる 診療での感情的なケアをすると 自分が消耗してしまう 消耗し尽くす 情緒的消耗感 脱人格化 個人的達成感の低下
#11. 燃え尽きを疑うポイント 治療.2019;101:567 遅刻・早退 事務作業ができていない カンファの準備ができていない 帰る時間が遅い 患者からのクレーム イライラしている 「あの先生,大丈夫ですか?」とコメディカルに言われる 不眠,食欲低下,体調不良などを訴える
#12. 燃え尽きへの対応 ソフトの アップデート トラブル シューティング
ワークエンゲージメントとSOC向上
#14. 燃え尽きの対応:ソフトのアップデート ワークエンゲージメント SOC向上は エンゲージメントにつながる Maurice B. Mittelmark. The Handbook of Salutogenesis. Springer. 2017 エンゲージメント SOC↑
#15. 燃え尽きの対応:ソフトのアップデート SOCを上げ,ワークエンゲージメントへ SOC向上も燃え尽き減少への影響があり,それを目指す Advances in Positive Organizational Psychology.2013;1:83 処理可能感 「なんとかなる」という感覚 タスクの適正化.細かい成功体験を積み重ねてもらう 把握可能感 理解でき,予測できるという感覚 学習度合いに応じた情報提供で頭の中に地図を作ってもらう 見えない地雷がないように,診療のスタンスなどを一貫するようにする 有意味感 意義や,対処のやりがいを感じられる 成長を実感できる,やや背伸びするくらいの挑戦課題を提供.そこへの支援を惜しまない 定期的に振り返り,成長の評価・承認とモチベーションコントロールをする
個人と組織での燃え尽き対応
#16. 燃え尽きの対応:トラブルシューティング 個人, 組織での対応 ストレッサー,個人要因をサポートする 個人,組織の対応は燃え尽きを減らす その度合は組織の対応の方が大きい JAMA Intern Med. 2017;177:195
#17. 個人, 組織での対応 ストレッサー,個人要因をサポートする 個人 コミュニケーションスキル 組織 休養,運動 タスクを減らす 不調に気づく周囲の心がけ 上司・同僚の教育 SOC・エンゲージメントを上げる ストレスコーピング メンタルヘルス相談室につなげる レジリエンスを高める マインドフルネス 人への相談 感情を吐露 気分転換 リフレーミング