テキスト全文
PICC手技の準備と確認項目
#1. ULTRASOUND-GUIDED · IN -P LA N E How to PICC 末梢挿入型中心静脈カテーテル ― 準備・手順・合併症 手技は準備で半分決まる。全ての手順には理由がある。 Yuta Tsunemi
#2. CO N TE NT S 本日の流れ 01 準備 READY ― 穿刺前に確認する5項目 02 物品 3つのセットに分けて、使用目的から覚える 03 血管選択 尺側皮静脈が第一選択である理由 04 手順 消毒から固定・記録までの16ステップ 05 留置位置と合併症 Zoneの考え方と、起きた瞬間の初動 02
#3. PR EP AR A TI ON 準備 ― READY で覚える 手技は準備で半分決まる。穿刺針を持つ前に、5項目を声に出して確認する。 R Restroom 自分も患者もトイレを済ませる。清潔になってから離れない E Environment 十分なスペースを確保し、ベッド上にシーツを準備する A Arrhythmia 手技中はモニターを見られない。音ありでモニターを装着する D Decide Access Route 適切な静脈を選択。動脈・神経の位置と血栓の有無も確認する Y You got Consent / Order? 同意書・タイムアウト・胸部X線オーダーを最終確認する 03
必要物品と血管選択の理由
#4. EQ UIPMENT 必要な物品 ― 3つのセットで考える 丸暗記ではなく、何に使うかで覚える。並べる順=使う順。 01 02 03 局所麻酔セット 清潔操作セット カテーテル・固定セット 痛みを取る 感染を防ぐ 入れて、留める 1%キシロカイン または プロカイン JMS滅菌シーツ(1000×1200) PICCキット 18G針(吸引用) 滅菌ガウン(自分のサイズ) ヘパリン生食(緑) 2–3本(ロック) 27G針(麻酔用) 滅菌手袋(自分のサイズ) 生食シリンジ 2–3本(逆血/フラッシュ) 滅菌ガーゼ 数枚 縫合セット CHG付オプサイト(ドレッシング材) 04
#5. A CCES S ROUTE 穿刺血管を選ぼう FIRST CHO ICE CA UT IO N 尺側皮静脈 橈側皮静脈 動脈や太い神経が近くを走行しないため、 合併症のリスクが最も低い 腋窩静脈との合流角が鈍角のため、 ガイドワイヤーが通りにくい 穿刺前にエコーで動脈・神経・血栓を必ず確認 上腕静脈の穿刺は神経損傷のリスクが高い 05
#6. A CCES S ANA TOMY なぜ尺側皮静脈が第一選択なのか 太さではなく「連続性」と「安全性のバランス」で選ぶ。 01 上腕の静脈走行 介在静脈を介さず深部へ“連続” 尺側皮静脈は交通枝を経由せず、そのまま深部静脈系(上腕静 脈)へ移行する。この一方向の連続性が、ガイドワイヤーとカ テーテルのスムーズな進行を生む。 02 橈側皮静脈が第一選択になりにくい理由 橈側は径が細く、交通枝を介して深部へつながることがある。 穿刺できてもワイヤーが屈曲部で進まず、中枢へ届かないこと がある。 03 上腕静脈を直接刺さない理由 上腕静脈は上腕動脈・正中神経と常に近接し、動脈誤穿刺や神 経損傷のリスクが高い。表在を走る尺側皮静脈のほうが安全。 表在の尺側皮静脈が、介在静脈を介さず深部静脈へそのまま移行する様子 06
PICC手順の詳細と記録方法
#7. PRO CEDURE I 手順① 消毒から穿刺・ダイレーターまで 全ての手技には理由がある。何のための一手かを言えるようにする。 1 オラネジンで広範囲に消毒(3分カウント) 5 エコーガイド下に穿刺 2 清潔布を敷き、器具を受け取り使用順に並べる 6 ガイドワイヤーを10–20cm、無抵抗で進める → エコーで位置を確認 3 エコーを清潔化する 7 さらに30cm進め、介助者が鎖骨下・内頚を確認 4 駆血 → 再スキャン、タイムアウト、局所麻酔 8 ダイレーター挿入。抵抗あれば無理せず皮膚切開 07
#8. PRO CEDURE II 手順② カテーテル挿入から記録まで 9 カテ本体を挿入。反対側にワイヤ先端が出るか確認 13 生食またはヘパリンで内腔をフラッシュ 10 ワイヤを抜去し、キャップで蓋をする 14 仮固定 → 胸部X線で先端確認 → 本固定 11 長さを測定(目安 右35cm / 左40cm) 15 CHGテガダームで被覆(ゼリーで刺入部を覆う) 12 測定長まで留置する 16 テンプレート記載(術者ID・合併症)を必ず確認 X線で先端を確認するまでは「仮」固定。記録が終わるまで手技は終わらない。 08
留置位置のマスターと合併症対策
#9. TIP POS ITION 留置位置をマスターしよう 静脈解剖とゾーン 胸部X線での見え方 Zone B 両側無名静脈の合流部+SVC上部 ― 基本の留置先 先端は気管分岐部を目安に合わせる Zone A SVC下部〜RA上部 ― 良好とする報告もある 血管壁に当てない。当たれば引き抜いて向きを調整 押し込んで調整するのはNG ― 透析カテとは違う ゾーン分類 : British Journal of Anaesthesia 96(3) 335–40, 2006 / 右図は模式図 09
#10. CO MPL I C ATI ONS 合併症 ― 起きた瞬間の初動 覚えるのは原因ではなく、最初の一手。迷ったら進めずに止める。 合併症 起こる場面 初動 神経損傷 特に上腕静脈を穿刺した際 すぐに針を抜く 不整脈 ワイヤーが心室内を刺激した際 すぐにワイヤーを引く 空気塞栓 ワイヤーを引き抜く際 すぐに蓋をつけるか、指で塞ぐ ワイヤー遺残 ワイヤーを掴まず操作した際 手技を中止し、即 心臓血管外科コール 動脈穿刺 誤って動脈を穿刺した際 穿刺のみなら圧迫/ダイレート以降は抜かずにコール 10
PICCの4原則と重要ポイント
#11. TAKE HOME PICC 4原則 01 02 準備が半分 物品は目的で覚える READYの5項目を、穿刺の前に必ず確認する 麻酔・清潔・カテーテルの3セットに分けて考える 03 04 尺側皮静脈が第一選択 合併症は初動が命 動脈と神経から遠く、ワイヤーも通りやすい 抜く・引く・塞ぐ・コール を即答できるようにする