テキスト全文
身体拘束の基本と中核症状の理解
#1. 身体拘束について医師が知っておきたいこと 2025年12月12日
市立伊勢総合病院 総合診療教育研究センター
内科・総合診療科 谷崎隆太郎
feat. 認知症看護認定看護師 宮本桂子 Dementia Support Team
#2. 中核症状 中核症状 行動心理症状
(BPSD) 穏やかな
認知症 ケアが大変な
認知症 心理社会的対応 薬物療法
#3. せん妄 delirium のリスク <素因>
認知機能障害の存在
多疾患併存
ポリファーマシー
視覚障害、聴覚障害
ADL低下
アルコール多飲/低栄養
貧血 Ann Intern Med 2020; 173: ITC49-ITC64 <誘因>
重症病態(敗血症, 脳血管障害など)
人工物留置(尿道カテーテルなど)
外科手術、麻酔
新たな向精神病薬の使用
痛み
環境変化
脱水、電解質異常
尿閉、便秘
身体拘束の法的リスクと影響
#5. 身体拘束は原則違法行為 よほどの妥当な理由がなければ、違法行為にあたる。患者の尊厳や自律性の侵害。本人・家族の精神的負担の増加。 刑法 220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。 拘束を受けた本人の関節拘縮、筋力低下、褥瘡発生リスク増加、QOL低下。 死亡率増加、院内感染の増加、転倒リスクの上昇、入院期間の延長。 日看管会誌 2021; 25: 129-138.
#6. 安全な治療・
ケアの遂行 患者の尊厳・自律性の侵害
患者・家族の精神的苦痛
拘束によるその他の害* *死亡率増加、院内感染の増加、
転倒リスクの上昇、入院期間の延長など 身体拘束の是非
身体拘束のやむを得ない状況の検討
#8. 「やむを得ない状況」は本当にやむを得ない??① 「身体拘束って、基本的人権の侵害だからしてはいけないよね??」 「患者の生命と安全を守るため」?? 「人員不足のため」?? 「緊急やむを
得ない状況」?? 身体拘束をしても
仕方ない??? とはいえ、ジレンマに悩み苦しみながら
身体拘束を行っている現状も、、、
#9. 「やむを得ない状況」は本当にやむを得ない??② 「やむを得ないもんね?
やむを得ないよ!!」
(自分を納得させる) 身体拘束に対する
抵抗感を次第に低下させる 「家族に説明し
同意を得ているから
身体拘束していいよね? 家族に説明し同意を得ることで身体拘束を許容している
#10. 「やむを得ない状況」は本当にやむを得ない??③ 「でも、母さんのことを考えると、辛いな。心が痛むな。自分ならされたくないな」 「身体拘束以外に方法がないって説明されたし、仕方ないですよね?みてもらっていますし」 家族は、身体拘束以外に方法がないと説明された結果、仕方なく同意しているかもしれないが、身体拘束をされた患者を見た家族が精神的苦痛を感じることがある。
身体拘束を行う際の三原則の確認
#11. 「やむを得ない状況」で医療職として何をすべきか もちろん、原則は身体拘束しないことだが・・・
身体拘束を行う場合に遵守すべき三原則の確認→ ① 切迫性、② 非代替性、③ 一時性
他の対応を試みたうえで、安全を確保するため取りうる代替方法が
ないことをチームで確認し、その上で必要最小限度に限る。
※身体拘束が「緊急やむを得ない場合」に該当する3要件 「やむを得ない状況」について、安易に身体拘束をするのではなく、それに代わる方法は
ないか充分に検討を!
#12. 例)オムツを触ってしまうので、介護服(身体拘束)を使う 例)創部があり、触ってしまうと感染リスクがあるので、介護服を使う <三原則が遵守されているか?>
① 切迫性, ② 非代替性, ③ 一時性 ※画像はChatGPTにて作成
身体拘束ゼロを目指すためのアプローチ
#13. 身体拘束ゼロのために 〜身体拘束をせずに他の方法で改善できないか考える〜
#14. 身体拘束ゼロのために 身体拘束をするに至った行動の原因を探り、除去する。 5つの基本ケアを徹底する。 起きる 食べる 排泄 清潔 活動 その人の生活歴に合った刺激を
提供する。
例)音楽、工芸、園芸、ゲーム、
体操、家事、ペット、テレビなど 痛み 薬剤 炎症 痒み 管 etc…
#15. 身体拘束ゼロのために 〜身体拘束をしたのなら、いつ解除できるのか多職種で検討する〜
身体拘束の最小化と多職種の役割
#16. 「身体拘束は不要だと思う。でも、自分の勤務時間帯に何かあったら困る」だから、一歩踏み出せない 自分の判断で身体拘束を
解除して、患者がチューブ類を抜いてしまった責任を問われた。
どうしよう(T_T)」
#17. 身体拘束の最小化は DST とか一部の医師・看護師とかに任せておけばいい案件か??
#18. 多職種カンファレンスの実施により
身体拘束率↓
身体拘束解除の重要性とメリット
身体拘束率の低下と病院の収益向上
#21. 日病総診誌 2020: 16: 339-345. DSTの介入により身体抑制の割合は減少 ※ケアの必要度は
変わっていない
#22. 病院の収益↑ 身体拘束率↓ 直近1年間の月平均
医業収入 130万円 全国平均 12%(2021年)
→当院 6.55%
#23. 他者を拘束 (ロック) する行為の種類 フィジカルロック:物理的な身体拘束
ドラッグロック:不適切な薬物投与
スピーチロック:言葉による行動制限
身体拘束の種類とその影響のまとめ
#24. スピーチロックも身体拘束の一つと見なされる そこにいて、
じっとしてて 動かないで だめ!やめて! 何度も
言わないで 後で来ますから 待って また
ですか どうして
そんなこと
するの! 同じことばかり言って 座っていて、立たないで! 静かにして、
喋らなくていい 触らないで 手を出さないで 無言で介助 あだ名で呼ぶ 〇〇ちゃんと呼ぶ
#25. まとめ 身体拘束は死亡率、院内感染、転倒リスクの増加や入院期間の延長などと関連しており、ゼロ にするメリットは大きい。 身体拘束ゼロへの方法は、5つの基本ケア を遂行すること。 身体拘束を始めたとしたら、常に日々解除できないか、多職種で検討する必要がある。