#4.
【現病歴】
悪性リンパ腫で当院緩和ケア科かかりつけのADL杖歩行レベルの90代男性。
認知症の妻と2人暮らしで妻の世話をしていた。
搬送1週間前から心窩部痛を自覚、前日から全身倦怠感を自覚し、デイサービスを休んでいたが食事は普段通り摂れていた。当日に朝食を摂れず体動困難となり、訪問看護のスタッフが訪れた際、閉め切った暑い部屋で倒れているのを発見され救急搬送に至った。
【既往歴】糖尿病, 脳梗塞, 悪性リンパ腫, 心房細動, 高血圧, 脂質異常症
【生活歴】
ADL:杖歩行 デイサービス・訪問介護を利用
認知症の妻と2人暮らし 妻の介護をしている 90代 男性 主訴:意識障害・高体温 8月のある日のER…
#5.
来院後経過 ・搬送時バイタル
JCS 100, GCS E1V2M5 , 体温40.2 ℃
呼吸数 20 回/min, 血圧 120/80 mmHg, 脈拍 160 回/min, SpO2 (r/a) 97 %
・身体診察
口腔内乾燥(+) 呼吸音:左Crackles(+)
心窩部圧痛(+), 反跳痛(-), 筋性防御(-), 腹部膨満(-)
明らかな片麻痺(-), 下腿浮腫(-)
超音波検査:IVCの虚脱(+) 左室腔のKissing(+) Asynergy(-)
心電図検査:特記所見なし
→ qⅣ度熱中症としてActive Cooling開始
#6.
来院後経過 深部体温は38.7℃
Coolingに伴い意識障害もJCSⅠ-2程度まで改善
血液検査でも炎症反応高値以外は臓器障害なし
胸部Xp:左肺野にすりガラス影
単純CT:左優位の肺炎像 肺炎を先行した体動困難で
熱中症になったのかな…?
#7.
おむつに灯油臭のする黄色い液体が…
#8.
後日隣町に住む娘さんに家を確認に行ってもらったところ
ポットに灯油が入っておりコップにも注がれた形跡が… どうやら認知症の妻が間違えて入れてしまった… 診断:灯油誤飲による化学性肺臓炎 ± 熱中症 その後… 軽度の消化管粘膜障害のみで、その他の臓器障害なく経過
しかし自宅生活は困難と考えられ、ACPを進め夫婦共に同じ施設へ入所の方針
#9.
ちょっと学び
#10.
これからシーズンを迎える 熱中症について 熱中症診療ガイドライン2024年より
・最重症Ⅳ度が新設
→集学的治療の早期開始を提唱
・Ⅳ度を早期に把握するためqⅣ度(quick Ⅳ度)
・治療法(Active/Passive Cooling)の明確化 『熱中症ガイドライン2024』
『熱中症重症度の新分類、最重症群「IV度」を追加 医療現場ではどう変わった?』
#11.
Passive Cooling
冷却輸液
脱衣
室温調整
安静
水分摂取
これからシーズンを迎える 熱中症について 体温冷却・管理法についてもActive/Passive Coolingと包括的な記載へ 高温環境暴露+高体温+意識障害を認める場合
まずは熱中症としての対応が妥当 38.0℃を目標に0.15℃/分以上の冷却速度とすることが推奨
#12.
高齢者に限らず… 一般的な中毒診療 正直何を見ればいいの…? 過量服薬疑いです!
#13.
一般的な中毒診療を知る Primary Survey
全身状態の安定化(ABCDEアプローチ)
Secondary Survey
原因物質の推定と特異的治療
検査、問診方法と身体診察、 薬物ごとの対応については
↓参照ください
#14.
一般的な中毒診療を知る 中毒を見たときの問診ポイント MATTERS
Materials 何を飲んだ?
Amount どのくらい飲んだ?
Time Taken いつ飲んだ?
Emesis 嘔吐はあったか?
Reason 飲んだ理由は?
Sign and Syndrome 症状と徴候は? 病歴聴取で得られた薬剤と実際の検体結果では
不一致が少なくないことに留意する
#15.
一般的な中毒診療を知る トキシドロームとは中毒によって起こる様々なバイタルサインの異常や症状の組み合わせ トキシドロームは必ずしも一定しないため、単体で一発診断に利用するものではない
その他の情報等を含め総合的に判断することが大切 千葉拓世『当直・ER・ICUで役立つハーバード式クリニカルパール 急性中毒診療 実践ルール16』
#16.
「なにか変?」と思ったら中毒を CPA、重症不整脈(房室ブロック、QT延長)、血圧低下、意識障害、痙攣、肝・腎障害、横紋筋融解症、電解質異常、糖代謝異常、体温異常、頻脈、低/高血圧…etc これらはいずれも中毒で起こる症状 なんか変?でも明らかな原因が見つからない…
そんなときは中毒を疑う
#17.
ちょっと視野広く
#18.
高齢者は非典型が典型となる ベースラインが不明
加齢による生理学的変化
併存疾患など修飾要素が多い
認知/身体機能
等… たとえば…
心筋梗塞:胸痛なし、意識障害・呼吸困難・倦怠感だけ
感染症 :発熱なし、食欲低下・「元気がない」「いつもと違う」だけ
外傷 :軽い受傷機転でも致命的損傷(頭蓋内出血・頚髄損傷など)
脳梗塞 :めまいのみ、なんとなくおかしい 高齢者では「症状」より「変化」を、そして何がいつ崩れているかを考える
#19.
救急の現場は診断エラーが起きやすい 無理に診断をまとめないことも大切 認知バイアス アンカリング
早期閉鎖
確証バイアス
#20.
説明できない部分を明確にする 「診断名」だけでなく「説明できていないこと」を共有する 早期の
診断固定 診断の
再構築
#21.
ちょっとやりがい
#22.
救急外来は生活再設計の入り口 高齢者救急は… 医学的イベント 生活背景 救急受診は疾患単体だけでなく
生活構造が破綻した結果として現れる場合も多い
#23.
医学的イベント 生活背景 Despositionを決定するのは診断だけではない 医学的診断 生活可能性の評価 その人にとっての最適な次の一歩
#24.
患者・家族の「感情」にも目を向けよう 感情データの整理ができていないと情報データはうまく伝わらない
#25.
患者・家族の「感情」にも目を向けよう 感情に対応することで、医学的情報が伝わりやすくなるだけでなく
本当に困っていることが見えてくることがある Naming 感情に名前を付ける
Understanding 感情に理解を示す
Respect 敬意を表する
Supporting 支持を示す
Explore 考えを掘り下げて訊く 感情に対応するスキル NURSE 「心配でしたよね」、「びっくりしましたよね」
「そう感じてしまうことは当然だと思います」
「よくここまで頑張ってこられましたね」
「できる限りのことをさせてください」
「どうしてそのように思ったのですか?」 緊急性が高くない場合、診察開始の最初は感情へ対応する言葉から始めるように気を付けています
#26.
救急外来だからこそできること 医学的、社会的な様々な情報が揃いやすい
家族が問題を認識しやすい
意思決定が動きやすい 救急搬送という「生活が動く」タイミングだからこそ… ACPにつながるきっかけとなりうる 急性期を乗り越えたあとにまた先延ばしにならないよう、 “今後の生活や治療を考えるきっかけ”を残す
#27.
Take Home Message 高齢者において症候は非典型が典型となる
診断において説明できない情報を明確にする
救急受診は生活破綻のサインを見ているかもしれない
患者/家族の「感情」にもうまく対応しよう
#28.
ご清聴ありがとうございました