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Case Reportの実際 〜とりあえず書いてみたい人へのメッセージ

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谷崎 隆太郎

2020/11/17
(2021/11/17 更新)

谷崎 隆太郎

市立伊勢総合病院

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Case Report(症例報告)は、臨床医にのみ記載可能な、最も古くから存在する医学コミュニケーションであり、臨床医の質を測る指標の一つです。

さらに、自身の診療と向き合いメタ認知する機会を与えてくれる結果、以降の臨床能力が格段にレベルアップする秘薬(ドーピング)のようなものです。

本スライドでは、これまでCase Reportを書いたことのない初学者向けに「そもそもCase Reportとは何か?」の基本から実際の書き方までを、実例とともに解説します。

<Case Reportの原則>
・伝える内容が「明確」で、「一般化」でき、「教育的、教訓的」なもの。
・確実に診断がついているもの。
・何かしら新奇性がないとAcceptされない。

※本スライドは、2020年11月12日のAntaaオンライン配信「Case Reportの実際〜とりあえず書いてみたい人へのメッセージ」で使用したスライドです。

【このスライドの解説動画はこちら】
https://qa.antaa.jp/stream/contents/86

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Case Reportの実際 〜とりあえず書いてみたい人へのメッセージ

1. Case Report の実際とりあえず書いてみたい人へのメッセージ 2020年11月12日 市立伊勢総合病院 内科・総合診療科 谷崎隆太郎 Antaa
2. 自己紹介 伊勢志摩で生まれ育ち、 埼玉県→宮城県→岐阜県→東京都→三重県名張市を経て現在に至る。 <何をしているか?> 医療資源が潤沢でない地方に住む人々の健康を守る。 医学生、初期・後期研修医への教育、地域住民への啓発。
3. Quiz: 伊勢志摩といえば? A. ドイツ村 D. オランダ村 C. フランス村 B. スペイン村
4. Quiz: 伊勢志摩といえば? A. ドイツ村 D. オランダ村 C. フランス村 B. スペイン村
5. 志摩スペイン村
6. 症例報告 Case Report とは 患者の症状、所見、診断、治療、経過の詳細が記載されたレポートである。通常は稀な、新奇性のある事象について記載されるもの。 類似報告の Literature review が含まれることもある。 それらは、医学的、科学的、教育的な目的で共有される。 Wikipedia より https://en.wikipedia.org/wiki/Case_report
7. 症例報告 Case Report とは 臨床医にのみ記載可能な、最も古くから存在する医学コミュニケーションであり、臨床医の質を測る指標の一つ。 自身の診療と向き合い、メタ認知する機会を与えてくれる結果、以降の臨床能力が格段にレベルアップする、秘薬(ドーピング)のようなもの 谷崎が考える
8. 飯塚病院感染症科 的野多加志先生 Case Report は 臨床医の義務である
9. 世界最高峰のジャーナルに挑戦するチャンスもある!! Satoshi Kutsuna Takashi Matono
10. 原則 伝える内容が「明確」で、「一般化」でき、「教育的、教訓的」なもの。 確実に診断がついているもの。 何かしら新奇性がないと Accept されない。 ※必ずしも成功体験でなくて良い。むしろ実際には、失敗体験の方がより多くの臨床医に寄与する。
11. 医学教育における症例報告の意義。千葉医学 93:31 ~ 33,2017
12. Case Report を 書こう! Case Report Clinical Picture or 新奇性は? 新たな症状、新たな治療、 治療の有害事象・副作用、 極めて珍しい事例、など その疾患の典型・非典型を 熟知しておかないといけない めっちゃ勉強する めっちゃ勉強になる
13. Case report か Clinical picture か
14. 先行文献の検索 主に PUBMED で検索。 基本は、当該疾患の過去のすべての症例報告に目を通す。 あまりに数が膨大すぎる場合は Case Series や Systematic review がすでに存在することが多いので、まずはそれらの中での最新年度の Review 文献を読んで基本的な知識を充填する。
15. 実際のケースレポートの紹介
16. 中毒研究 24:241-242,2011 過去にハブ咬傷の報告は多いが、ヒメハブ咬傷の報告は少ない。(珍しい!) 密輸入することで、ヒメハブの本来の生息地である沖縄・奄美諸島以外での咬傷例もありうる。(教訓的!)
17. PCRで同定された日本初の Plasmodium knowlesi 輸入感染例(珍しい!) PCRでは P. vivax の primer で増幅されることがあり、本症例でも最初は P.vivax と判定されたが、DNA sequencing で P. knowlesi と同定された。 (診断へのインパクトが大きい!) IF: 2.63
18. 見た目のインパクトがある 最初は転移性脳腫瘍として消化管精査がされていた。診断・治療が遅れたため、転移と思っても、やっぱり結核の可能性は検討すべき(教育的!) Intern Med 53: 1457-1458, 2014 IF: 1.005
19. 電撃性紫斑病という稀な病態(珍しいが、すでに多数の報告はある)。 末梢血のグラム染色でも菌が見えた!(臨床的インパクト大!) 診断にも非常に有用。(教育的!) Emerg Med J 2017;34:199 IF: 2.49
20. Case Report は、自分以外の 他の誰かを救うかもしれない。 あの原因不明の胸水はなんなんだ? リウマチ性胸水でもなさそうだし。 困ったなぁ。。。 足のむくみとか、爪がどうとか言ってたけど、関係あんのかなぁ・・・うーん、わからん。
21.
22. 周りになんでも知ってるスーパースターがいなくても、あきらめない姿勢が大事。 あきらめなければ、いつか診断がつくかもしれない 診断がつかなくて困ったとき
23. そんなことが数ヶ月続いたある日、なんとなくパラパラと開いた内科学会雑誌のとあるページにこんな記載が。
24. ブシラミンによる Yellow nail syndrome. (まれな疾患だが、報告は多数ある) ブシラミン中止により爪の所見が改善した推移を画像で示した報告はない。(わずかな新奇性) J Gen Fam Med. 2017; 18: 479-480
25. IF: 1.34 腹壁痛は、「ルーチンの診察で圧痛あり+カーネット徴候陽性」で rule in していく。 通常の腹部診察では圧痛を訴えず、カーネット徴候のみ陽性だった ACNES の一例。(まれな身体所見、教訓的) BMC Res Notes. 2017; 10: 503
26. 2期梅毒といえば皮疹が有名だが、壊疽様の口唇炎の報告はない(新たな症状) IF: 7.7 CMAJ 2019 191 (50) E1382. 原因不明の皮疹では、やっぱり2期梅毒は鑑別に入れよう(教育的!)
27. 伝える内容が「明確」で、「一般化」でき、「教育的、教訓的」なもの。 確実に診断がついているもの。 何かしら新奇性がないと Accept されない。 ※必ずしも成功体験でなくて良い。むしろ実際には、失敗体験の方がより多くの臨床医に寄与する。 ここまでのおさらい 再掲
28. BMJ Case Report の Guidelines より There is more to learn from common cases that present in an unusual way, present a diagnostic, ethical or management challenge or where there are pitfalls to learn from, than from rare or exotic cases that most of us are unlikely ever to have to manage. 滅多に遭遇しないような稀な疾患よりも、非典型的な症状の出現の仕方や、診断的、倫理的、または管理上 challenging なケース、そこから学べき Pitfall があるようなケースから学ぶことが多い。 ジャーナル側の好みも重要
29. 実際の書き方
30. まずは word format 調整 「word, template, case report」で検索すると見本がゲットできる。 行間は 2.0、余白は上下左右 25.4mm など、その他にもジャーナルの規定を確認する必要がある(文字数や行数の指定など) 。
31. とにかく、書いてみる 過去の Case Report や CARE checklist を参考に書いてみる ※でも、コピペはダメです。剽窃 plagiarism という犯罪行為(著作権侵害)にあたります。 https://www.care-statement.org/checklist
32. CARE checklist
33. 症例報告には型がある <構成> Introduction → Case presentation → Discussion Introduction これまで分かっていたこと 今回初めて分かったこと Case 重要なことはすべて書く 重要でないことはすべて書かない Discussion 今回の報告内容の短いまとめ 考察(過去との比較)、具体的な新奇性 一般化可能性、教訓など
34. <冒頭>  A/An(年齢)-year-old(国籍)(man/woman) with(既往) presented to(場所) with(原因). 型の例(Case)
35. 型の例(Case) <EMJ> A 36-year-old woman with Down’s syndrome and spleen hypoplasia presented with a fever of 40 degree celsuis lasting for 12 h. <Malar J> A previously healthy 35-year-old Japanese man presented to the travel clinic in National Center for Global Health and Medicine (NCGM), Tokyo with a two-day history of daily fever, mild headache, and mild arthralgia. <J Gen Fam Med> A 74-year-old Japanese woman with chronic sinusitis and rheumatoid arthritis (RA), for which she has been on bucillamine (300 mg daily) and prednisolone (2.5 mg daily) for 12 years, presented with unilateral pleural effusion that appeared 2 years ago. Case の冒頭はいつも大体同じフレーズ
36. Quiz: ジャーナルに投稿する際に必要なファイルの数は、Case Report 本文の Word ファイルを含めていくつくらい? 1個 2個 3個 4個以上
37. Quiz: ジャーナルに投稿する際に必要なファイルの数は、Case Report 本文の Word ファイルを含めていくつくらい? 1個 2個 3個 4個以上
38. Figure と Table の注意点 ジャーナルによって、何個まで掲載できるかが決まっている。 Figure :ファイルの拡張子(JPEG, TIFFなど)や解像度(1200 dpi/ppi 以上など)はジャーナルごとに確認。通常、Figure はWord ファイル内に挿入しない。 Table:基本的に Word で作成した表を Word 内に挿入する。 患者が同定できる Figure は当然、書面の同意書が必須。 患者同意書のフォーマットは通常、ジャーナルからダウンロードできます。
39. その他の記載すべき事項 Title Page(著者、所属、連絡先など) References Conflict of Interest Funding (Financial support) Consent Acknowledgement Author Contributions
40. Title Page に必要な情報 ジャーナルの規定によるが、「著者」「それぞれの著者所属」「連絡先」「Corresponding author の情報」は必須。 その他、keyword や short abstract など必要なことも。 ※ Corresponding author:Revision など実際にジャーナルとやり取りする人。筆頭著者か 2nd Author が兼ねることが多い。
41. References 「著者」「論文タイトル」「年」「号数」「ページ数」を記載する。 著者数が多い場合、筆頭著者のみ、全員記載、6人まで記載、などジャーナルによって様々。 Tanizaki R. CMAJ 2019; 191: E1382. Tanizaki R and Takasaki J. Intern Med 2014; 53: 1457-1458. Tanizaki R, Ujiie M, Kato Y, Iwagami M, Hashimoto A, Kutsuna S, et al. Malar J 2013; 12: 128. 通常、バンクーバー方式で記載する。 →本文中で引用した順に文献番号を振っていく
42. その他の記載すべき事項 < Conflict of Interest > なければ、”None declared” などと記載する。 < Consent > “The authors have obtained patient consent” でOK. 具体的に患者さんからの同意書をアップロードする必要があることが多い。 < Funding (Financial support) >(なければ、記載しなくてもOK.) e.g.) This work was partly supported by a research grant from Mie University. 
43. < Acknowledgement > 著者には含めないけど謝辞を述べたい人宛てに具体的に誰に何を感謝しているかを記載。ないなら、記載しなくても良い。 < Authors’ Contributions > 著者らが具体的にこの論文にどのように貢献したかを記載。イニシャルで記載することが多い。 e.g.) The authors thank Muneyoshi Kimura and Hideki Araoka (experts of infectious diseases at the Department of Infectious Diseases, Toranomon Hospital, Tokyo, Japan) for their academic input regarding the management of the patient. e.g.) RT was responsible for the patient and wrote the paper. YT wrote and supervised the paper. Both authors read and approved the final manuscript.
44. Case Report を 書こう! Case Report Clinical Picture 先行文献の検索 没 新奇性の種類を吟味 新奇性なし 新奇性あり or 患者さんの同意 投稿先を選定 いよいよ執筆開始! できた!投稿!(の前に) 共著者のチェック依頼 英文校正
45. 英文校正 「1 word = 4円」など、校正会社によって料金は異なる 自分で校正したり、英語ネイティブの知り合いの研究者にお願いしている人もいます
46. おおよその費用 英文校正代:Word数やプランにもよるが、Clinical picture で3000〜5000円くらい、Case Report で 1〜2万円くらい。 論文掲載代 (Charges, fee):無料〜40万円くらい。 (参考:Oxford Journal のジャーナルと掲載料の一覧)https://academic.oup.com/journals/pages/open_access/charges
47. 実際の提出物のまとめ ① 本文の Word ファイル:通常、Table は Word 内に挿入し、Figure は別ファイルで提出するが、Figure Legends (Figure の解説文)は Word 内に記載する。 ② カバーレター ③ Figure ファイル ④ 同意書 ⑤ その他(ジャーナルごとに確認)
48. 実際の投稿画面(例)NEJM
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54. 過去に submit した原稿たちの結末 Reject! Reject!! Reject!!! Reject!!!!
55. 今回 submit した原稿の 進捗状況を確認できる
56. With the Editor → Review に回るか、Reject か、どっちだ?? Under Review → キタ!
57. 投稿後の流れ 投稿! Editor submit Reject Major Revision Minor Revision Accept Under Review Decision
58. 投稿後に大切なこと そのまま Accept はほぼない。Reject でもめげない。 Reviewer に高圧的なコメントでディスられてもめげない。 複数回 Reject されてもめげない。 Revision になったら、全精力を注いで迅速に対応する。Revision は必ず Reviewer の意図に沿って Revise する。 (※たまに Reviewer も勘違いすることがあるので、その場合は丁寧に自分の意見を述べてOK)
59. Reject メールの例 unfortunately, regret, although などの文字が見えたら、 Rejectがよぎります・・・
60. まとめ Case report は臨床医の臨床能力をアップさせるとっておきのツール! 珍しい疾患をただ報告するのではなく、教育的・教訓的な Take home message が重要。 1回書いてみると、意外に書けるようになっていくので、とにかくまずは書いてみましょう!