#4.
便秘 × 下痢 ― 腸と向き合う 在宅・プライマリケアで「まず観る」「考える」「対処する」
#5.
排便トラブルがなぜ「観るべき」か 在宅現場で最も多い「排便トラブル」。 便秘と下痢は、同じ腸で起きる“正反対の症状”。 対応の鍵は、「腸の状態を観る力」。
#6.
”腸”を俯瞰する:便秘と下痢、同じ腸・違う出口 腸トラブルの理解は3つの視点で整理できる。 動かす 滑らせる 育てる
#7.
便秘の重要性 便秘の重要性 便秘は「不快」だけでなく、生命予後にも影響。 ミネソタ州調査では、便秘群で生存率が低下。 たかが便秘、 されど便秘 👉「便秘=軽視できない疾患」 。
#8.
便秘の重要性 便秘の診断のための現状把握 「本当に便秘か?」を確認する。 チェックリスト: ✅便の性状(硬い?柔らかい?) ✅排便頻度(週3回未満?) ✅いきみ・残便感・便意の有無 毎日出てるけど、 スッキリしない...
#9.
便秘の重要性 便秘の定義 定義 本来体外に排出すべき糞便を 十分量かつ快適に排便できない状態
#10.
便秘の重要性 慢性便秘の診断基準 1.「便秘症」の診断基準 以下の6項目のうち、2項目以上を満たす(a-e、はいずれも排便の4分の1超の頻度で a. 強くいきむ必要がある ⇐どうやって出す? b. 兎糞状便または硬便(ブリストル便形状スケールでタイプ1か2)である⇐性状 c. 残便感を感じる⇐量 すっきり出ている? d. 直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある⇐すっきり出ている? e. 用手的な排便介助が必要である(摘便・会陰部圧迫など)⇐どうやって出す? f. 自発的な排便回数が週に3回未満である 2.「慢性」の診断基準 6カ月以上前から症状があり、最近3か月間は上記の基準を満たしていること
#11.
便秘の重要性 ブリストル便形状スケール ・世界標準の便性状評価スケール ・BS1〜2=便秘/BS4=理想便 ・回数より“形”で判断を
#12.
便秘の重要性 慢性便秘症はいろいろな理由でおきる 症状分類 排便回数減少型 病態分類 大腸通過遅延型 大腸通過正常型 排便困難型 機能性便排出障害 原因 内分泌疾患 神経・筋疾患 膠原病 過敏性腸症候群 薬剤性(向精神薬 抗コリン薬 オピオイドetc) 経口摂取不⾜(含 食物繊維) 硬便による排便困難 残便感 骨盤底筋協調運動障害 腹圧低下 直腸感覚低下 「日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン 、南江堂」 2017
#13.
便秘の重要性 便秘への対応 まずは原因除去:補充・生活改善 1️⃣原因となる薬剤の中止検討 2️⃣原因疾患の治療 3️⃣不足しているものの補充 ➡これでダメなら便秘薬 × 〇 〇
#14.
便秘の重要性 慢性便秘症の保存的治療(1) ・慢性便秘症診療ガイドライン2017 第5章 治療 ★:「便秘症での保険適用なし ※:2018年8月に「便秘症」での保険適用承認 「日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン P58, 2017、南江堂」
#15.
便秘の重要性 慢性便秘症の保存的治療(2) ・慢性便秘症診療ガイドライン2017 (前頁より続く) 第5章 治療 「日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン P58, 2017、南江堂」
#16.
便秘の重要性 慢性便秘症の治療薬の分類 プロバイオティクス 膨張性下剤 浸透性下剤 刺激性下剤 上皮機能変容薬 消化管運動賦活薬 漢方薬 坐剤・浣腸 どうやって使い分けるか?
#17.
便秘の重要性 便秘薬の使い分けのための評価ポイント 便の性状は? 便の量は? 便意はあるか? すっきり出ている?
#18.
便秘の重要性 便秘薬の使い分けのための評価ポイント さらに確認追加・・・ 腸管の動きは止まっている? 血流低下が起きているのか?手術歴の有無は? 腹痛を感じやすい人か?年齢、性別、人種etc 体格は?細身?がっちり?
#19.
便秘の重要性 便秘治療の戦略 腸管の蠕動を促進して便を押し出す 腸管の血流改善によって蠕動を促進 し、便が出やすくする 水分量を増やして便を滑り出させる 腸内環境の改善により良質な便を作り 動かす 温める 血流改善・大建中 刺激性・消化管運 湯など 動賦活 上皮機能変容薬 プロバイオティクス +食物繊維 やすくする 滑らせる 育てる
#20.
便秘の重要性 北風と太陽 腸管の蠕動を促進して便を押し出す 刺激性下剤 消化管運動賦活薬 漢方薬 腸管の血流改善によって蠕動を促進し、便が出やすくする 漢方薬 (メンタ湿布・温罨法) 「慢性便秘症診療ガイドライン2017」 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」より引用
#21.
便秘の重要性 やや強めに後押し 腸管の蠕動を促進して便を押し出す 刺激性下剤 消化管運動賦活薬 漢方薬 利点:比較的速やかに効果が得られる 欠点:打たれ強くなる(長期連用に耐性が生じ得る) 蠕動痛が生じることがある 「慢性便秘症診療ガイドライン2017」 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」より引用
#22.
便秘の重要性 じわじわ、自主性に委ねる 腸管の血流改善によって蠕動を促進し、便が出やすくする 漢方薬 (メンタ湿布・温罨法) 利点:耐性が生じにくい 欠点:即効性は高くない 「慢性便秘症診療ガイドライン2017」より引用
#23.
便秘の重要性 うまく滑らせる 滑りやすい素材をまとわせる 上皮機能変容薬 膨張性下剤 浸透圧性下剤 水流を増やす 上皮機能変容薬 「慢性便秘症診療ガイドライン2017」 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」より引用
#24.
便秘の重要性 うまく滑らせる 滑りやすい素材をまとわせる 水流を増やす 上皮機能変容薬 お腹が張る 膨張性下剤 浸透圧性下剤 利点:腹圧をかけにくい人でも自然排便に繋げやすい 欠点:腸管内容積の増大によって腹満や嘔気が生じることがある 「慢性便秘症診療ガイドライン2017」 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」より引用
#25.
便秘の重要性 じっくり育てる 腸内環境を改善する プロバイオティクス +食物繊維(※過敏性腸症候群) IBSの治療に高分子重合体、食物繊維に有用である IBS患者の高分子重合体、食物繊維を投与することを推奨する 【推奨の強さ:強(合意率 日本消化器病学会編 100%)、エビデンスレベル:A】 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS) 南江堂 利点:目立った副作用が少ない 欠点:効果を実感しにくい、細菌叢によってはあわないことも 「慢性便秘症診療ガイドライン2017」 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」より引用
#26.
便秘の重要性 多様性の喪失が疾患発症につながる 多様な細菌種 限られた細菌種 豊富な代謝産物 乏しい代謝産物
#27.
便秘の重要性 食物繊維の欠乏が病原性細菌の侵入を許す 食物繊維の豊富な環境 食物繊維の欠乏した環境
#28.
便秘の重要性 腸内細菌叢の改変で過敏性腸症候群患者の便性状が改善 Mizuno S. Digestion, 2017.
#29.
便秘の重要性 便秘治療の戦略 「便秘」の正確な診断 患者に合わせた便秘の病態把握 各治療戦略の利点と欠点を踏まえた治療選択 長期的な視野と短期的な視野を踏まえた戦略
#30.
便秘の重要性 下 痢 に つ いて
#31.
便秘の重要性 症例 1年前から水様便が1日に5-6回出るようになった 夜に寝ているときに便意を感じることが多くなったため、 消化器内科外来を受診した。 77歳男性
#32.
便秘の重要性 症例 77歳男性 1年前から水様便が1日に5-6回出るようになった 夜に寝ているときに便意を感じることが多くなったため、 消化器内科外来を受診した。 ➡下痢止め(ロペミン、タンナルビン、アヘンチンキ、フェロベリン) これだけでも間違いではないが、今一つすっきりしない 基本に戻って鑑別診断
#33.
便秘の重要性 何を聞きますか? O:発症様式 該当なし P:増悪・寛解因子 Q:性質 食事・ストレスの影響 血便? R:部位・放散 該当なし S:随伴症状 悪心 T:時間経過 急性? 嘔吐 腹痛 慢性? (リスク因子:抗菌薬服用歴 発熱 体重減少 亜急性? 渡航歴 生食品摂取)
#34.
便秘の重要性 聞き取った内容 誘因となるストレスなし 毎食後に排便、就寝中にもトイレに行きたくなる 血便・粘液なし お腹が張るような痛みはあるが、排便・排ガスで改善する 発熱・体重減少なし 1年前に胃潰瘍で入院した後から下痢が始まりました。 最近、海外にはいっていません。
#35.
便秘の重要性 聞き取った内容(もっと詳しく) 1年前に胃潰瘍穿孔で入院して禁食・抗菌薬投与のみで治療しました。 毎日ビールを1本飲みます。 タバコは50本/日吸っていましたが、45歳から禁煙しています。 家族歴はありません。 整腸剤(ミヤBM)と胃薬(H2拮抗薬)を飲んでいます。
#36.
便秘の重要性 身体所見 身長 178.6cm、体重 血圧 128/70、脈拍 意識状態 JCS-0 61.9kg 80、体温 見当識 36.1℃ 異常なし 腹部:腸蠕動音正常、平坦、圧痛なし、肝叩打痛なし 両側下腿浮腫なし
#37.
便秘の重要性 鑑別は?
#38.
便秘の重要性 下痢とは? 糞便の硬度が減少し、液状あるいは半流動性の糞便が排泄されること をいう。排便回数の増加のみでは下痢とは言わない。慢性下痢とは、 通常3週間以上(乳幼児では4週間以上)下痢が続く状態を指す。 (医学書院 医学大事典) 排便3回/日以上、便水分量増加、1日便重量200g以上の状態 (今日の治療指針 2015)
#39.
便秘の重要性 慢性下痢の診断アルゴリズム Medicina 49:203-206, 2012,
#40.
便秘の重要性 検査所見 【血算】 WBC SEG LYMPH MONO EOSINO Baso 6700 57.6 33.8 6.0 1.9 0.7 /μl % % % % RBC Hb HCT MCV PLT 532万 15.8 47.5 89 19.5万 /μl g/dl % fI /μl 【生化学】 TP ALB T-Bil LDH AST ALT ALP γ-GTP AMY P-Amy CK UN Cr Na K Cl CRP 7.5 4.5 1.7 159 12 11 227 19 52 17 55 9.5 0.54 139.4 4.2 101 0.04 g/dl g/d mg/dl u/l u/l u/l u/l u/l u/l u/l u/l mg/dl mg/dl mEq/l mEq/l mEq/l mg/dl TSH fT4 igG igA igM ガストリン 便ズダン 1.6 0.60 1347 444 21 219 (ー) 【感染症】 HBsAb HBcAb HCV-Ab 便培養 陰性 陰性 陰性 Normal Flora ng/dL IU/ml mg/dl mg/dl mg/dl pg/ml
#41.
便秘の重要性 経過のまとめ 1年前から続く水様便で粘液便は伴わない 体重減少・食欲不振・発熱・浮腫なし 採血所見に特異的な所見を認めない 脂肪便なし 入院・禁食で著明に改善
#42.
便秘の重要性 鑑別は?
#43.
便秘の重要性 慢性下痢の診断アルゴリズム 絶食による下痢症状の変化 不安 止まる 浸透圧性下痢 炎症所見 分泌性下痢 炎症性下痢 軽快 便中脂肪染色 脂肪性下痢 消化管運動性下痢 タンパク質漏出性胃腸症
#44.
便秘の重要性 本例のまとめ 病歴を改めて聴取しなおすと、1年前の入院加療後に、下痢が持続す るため近医を受診 脱水予防としてスポーツドリンク摂取を進められて、1.5-2L/日 程度摂 取するようになっていた。
#45.
便秘の重要性 本例のまとめ スポーツドリンクの多飲による浸透圧性下痢 発症契機としては入院中の抗菌薬投与による薬剤関連性下痢が疑われ る
#46.
在宅医療から学ぶ総合診療スキル 在宅医療の専門性は、疾患ではなく「人」を診る 複合疾患・生活背景を読む力にある 臓器ごとの治療を超えて、「人の生き方」を支える。 在宅医療は、総合診療に限らず医療者に必須の専門分野です。
#47.
本コンテンツは、やまと診療所(東京・板橋区)が運営する 在 宅 医 教 育 プ ロ グ ラム A H C の 講 義 よ り 抜 粋 してお 届 け し ま す Q A 医師がAHC(Academy of Home Care)で学べる内容は? 在宅医療のいろはから実践、運営スキルが身に付きます。 【得られるスキルの例】 ♢在宅におけるプライマリケアの基礎から実践 ♢施設間・職種間連携の実際とチーム運用 ♢今後の社会に必要な新しい仕組みや価値の作り方