テキスト全文
アナフィラキシーとRRSの概要
#2. 院内迅速対応システムRRS(Rapid Response System)
目的:重症化や急変を未然に防ぐ 対象:入院患者
「RRS起動基準」に当てはまる 初期対応 院内急変コール 窒息・CPAなど
直ちに救命処置が必要なとき
CPAコール
#3. CONTENTS 症例
観察項目:RRS起動基準
鑑別診断
対処方法
検査
フローチャート
主治医への連絡
解散
症例紹介とバイタルサイン
#4. 1.症例 65歳男性
路上で躓き転倒、頭部打撲し外傷性SAHの診断で経過観察入院
夜間頻尿・下腹部痛が新規出現し、尿検査から膀胱炎と診断
セファレキシン2g/day内服開始の方針となっていた
病棟Ns「血圧が低い」とのことで、RRT看護師がcallされた
RRT看護師が接触後、RRT医師(外科系当直医)へcallあり
RRT Ns「ショックです!」
#5. 1.症例 A M P L E アレルギー
Allergy 薬剤歴
Medication 既往歴
Past Medical History 摂食歴
Last Meal 現病歴
Event 薬剤・食べ物で指摘なし カロナール、ビソプロロール、リクシアナ 虫垂炎術後、高血圧、心房細動 最終食事18時 UTIとしてセファレキシン内服開始のあとに
「なんかのどが変」という発言があった
そのあと嘔吐し、血圧低下した
#6. 1.症例 【バイタルサイン】
HR 140/min BP 70/40(50)mmHg SpO2 95% (10Lリザーバー)
RR 30/min BT 36.9度 意識GCS11:E2V4M5 【身体所見】
全身に膨疹が広がっている
WheezeⅢ度聴取する アナフィラキシーショックとして
0.5mgのアドレナリンを大腿前外側に筋注
RRS起動基準と鑑別診断
#7. 呼吸 2.観察項目RRS起動基準 RRS起動基準(一例)
5分以上SpO2 90%以下(酸素なし)
5L/min以上の増量が目標SpO2の維持に必要
呼吸数8回/minまたは24回/min以上(15秒カウントで2回以下または6回以上)
収縮期血圧90mmHg未満
心拍数40回/min以下または130回/min以上
新たな意識レベルの変化
何かおかしい 循環 意識 その他
#8. 呼吸 2.観察項目RRS起動基準 RRS起動基準(今回の症例)
5分以上SpO2 90%以下(酸素なし)
5L/min以上の増量が目標SpO2の維持に必要
呼吸数8回/minまたは24回/min以上(15秒カウントで2回以下または6回以上)
収縮期血圧90mmHg未満
心拍数40回/min以下または130回/min以上
新たな意識レベルの変化
何かおかしい 循環 意識 その他
#9. 3.鑑別診断 皮膚症状:膨疹(多くは掻痒感+) アレルギー性蕁麻疹
#10. 3.鑑別診断 皮膚症状:膨疹(多くは掻痒感+) 皮膚症状+その他の症状 アナフィラキシー 気道症状:
呼吸困難、喘鳴など 循環症状:
血圧低下、失神など 消化器症状:
腹痛、嘔吐など
アナフィラキシーの鑑別診断
#11. 3.鑑別診断 アナフィラキシー 皮膚症状がなくても 血圧低下 これも
#12. 3.鑑別診断 皮膚症状だけ
皮膚症状+その他の粘膜症状(A・B・C)
皮膚症状はないが血圧低下+気管支攣縮 or 喉頭症状 アナフィラキシー アレルギー性蕁麻疹 +循環動態不安定
(酸素需給バランスの障害) アナフィラキシーショック そんなにやばくない やばい 本当にやばい
#13. 3.鑑別診断 特に皮膚症状のないときが困る アナフィラキシーの鑑別はやまほど その他…
失神、解離性障害、血管性浮腫、消化管アニサキス、食中毒、
ACS、PE、急性心不全、中毒(ヒスタミン・セロトニン・チラミン)
好塩基球性白血病、カルチノイド症候群、甲状腺疾患
など
アナフィラキシーの対処方法
#18. 4.対処方法 治療選択肢 1st choice:アドレナリン(エピネフリン)筋注
大腿外側・真ん中(外側広筋)へ(ブルー針23Gを用いる)
※服の上からなら黒針22Gを用いる
10分で最大血中濃度、40分で半減
反応をみて5-15分毎に繰り返し投与する 心停止・それに近い状態では静脈投与も可能だが、
不整脈等の有害事象のリスクになるので筋注が第一
#20. 4.対処方法 特にアドレナリン筋注の
適応基準はない
※「絶対的禁忌はない」
投与の参考:
Grade 3(重症)
重篤なアナフィラキシーの既往
症状進行が激烈なGrade 2
気管支拡張薬吸入で改善しない呼吸器症状
#21. 4.対処方法 アドレナリン持続投与:複数回の筋注、補液で改善しないショック
0.1μg/kg/分を、血圧があがるまで増量(最大:0.2μg/kg/分) H1抗ヒスタミン薬:救命効果はないが皮膚・粘膜症状を改善
ポララミン(クロルフェニラミン):5mg/1ml 1A
セチリジン:10mg/回 経口or静注 SABA吸入:β2刺激で気道症状の改善
サルブタモール:吸入製剤1回2吸入 ステロイド投与:二相性反応の予防・緩和、作用までに数時間
ソル・メドロール(mPSL, コハク酸型):1-2mg/kg/day
ハイドロコートン(HC, リン酸型):100mg/2ml 1A H2抗ヒスタミン薬:H1抗ヒスタミンと合わせると蕁麻疹を更に軽減
ガスター(ファモチジン):10mg 1V グルカゴン投与:β遮断薬使用中などでアドレナリンが効果乏しいとき有用
1-5mg/dose(1mg 1V 1ml注射用水で溶解)を5分で投与、5-10分ごと 補液:distributive shockとなる、前負荷↓→心停止のリスク
ショック、不応性なら5-10ml/kgを5-10分で投与 治療選択肢 ガイドライン上の第二選択薬 よく行う
プラクティス 困ったときの
次の手段
#22. 4.対処方法 Ns「先生、検査何出しますか?」 Dr
「(アナフィラキシー単独なら
不要だけどほかの原因検索も
するし)検査一般で」
アナフィラキシーにおける検査
#23. 5.検査 アナフィラキシーでは
血液検査は不要 ただし
ショックや他疾患鑑別を要する
場合はRRSセット展開を
#24. 6.フローチャート アドレナリン0.5mg 大腿外側 IM その他 3つの対応 ICU入室の判断 治療のための
関連科コンサルト 家族への病状説明
CODE確認 ±
主治医への連絡と対応
#25. 7.主治医への連絡 Rapid RTの活動範囲
患者情報収集
トリアージ
診察・検査
初期治療
現状評価
治療方針確認および調整(コーディネート)
将来重症化した際の対応
CODE(Full or DNAR or DNIなど)の確認
ICU入室の必要性を判断
関連科オンコール医師介入
他職種・医療チーム介入
病状によっては家族対応
※注意※
Rapid RTが継続して診療を行うものではない 日中 速やかに主治医へ
情報共有する
#26. 7.主治医への連絡 Rapid RTの活動範囲
患者情報収集
トリアージ
診察・検査
初期治療
現状評価
治療方針確認および調整(コーディネート)
将来重症化した際の対応
CODE(Full or DNAR or DNIなど)の確認
ICU入室の必要性を判断
関連科オンコール医師介入
他職種・医療チーム介入
病状によっては家族対応
夜間 ここに関して主治医(or オンコール当番医)対応が必要であれば相談
必須ではない
#27. 8.解散 上記3つの対応が完了すれば解散
アナフィラキシーの流れと重要事項
#28. +α.流れ 実際の流れ:はじめの症例で RRT医師接触時、全身紅潮・膨疹+呼吸症状+循環症状あり、ショック
誘引として初めて使用したセファレキシン内服があり、
アナフィラキシーショックとしてアドレナリン0.5mg大腿外側筋注
5分後、全身紅潮はやや引いたが、ショック遷延しており
アドレナリン0.5mg大腿外側に2回目の筋注
ビソプロロール(β遮断薬)内服による難治性アナフィラキシーとして
グルカゴン1mgを2回目の筋注に連続して投与、補液全開投与(1000ml)
血圧上昇、酸素化、意識レベル改善傾向にあり、全身掻痒感の訴えあり
ガスター・ポララミンを生食100mlへ混注投与し30分で投与
二相性反応の懸念(ショック)あり、ソル・メドロール40mgを投与
・ICU入室 要相談(連続モニタリングできていれば不要)
・関連科コンサルト なし
・家族への病状説明 増悪傾向ならば連絡
#29. Take Home Message 「皮膚症状」がなくてもアナフィラキシーはある
認識したらアドレナリンを大腿外側真ん中に筋注大人なら0.5mg(0.01mg/kg)必要なら5-15分毎に投与
アナフィラキシーの原因検索を怠らない:RRSセット展開
二相性反応にご注意を
「ICUかどうか」「治療介入」「病状説明とCODE」確認