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大動脈エコー

投稿者プロフィール
田邉綾

医療法人社団清和会笠岡第一病院

266,397

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概要

Aortaに特化した救急超音波のスライドです。どんな症例に、どのように当てて、どう解釈するのか、そして、臨床にどのように応用するかを簡潔にまとめました。いざというときに正確に評価できるよう、スライドの内容をふまえ、日頃から超音波検査の技量を磨きましょう。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

大動脈エコーの重要性と症例紹介

#1.

大動脈エコーEmergency Ultrasound Studies 倉敷中央病院 救急科 田邉 綾/舩冨 裕之

#2.

Introduction 大動脈瘤切迫破裂, 大動脈解離は救急外来において頻度は低いものの, ショック, 急性腹症患者では常に鑑別となる. 緊急度, 重症度ともに高く, 診断から治療までの迅速な診療プロセスが良好な転帰につながる. エコーは簡便かつ短時間で検査可能であり, 非常に有用なデバイスである. いざというときに正確な評価ができるよう, 本スライドの内容を踏まえ, 日頃から技量を磨こう.

#3.

症例 72歳 男性 【主訴】突然発症の胸背部痛 【現病歴】来院当日, 突然の胸背部痛で目を覚まし, 人生最大の疼痛のため救急外来を受診した。 【既往】感染性心内膜炎に対して大動脈弁置換術施行後 真菌性大動脈瘤 心房粗動 【生活歴】ADL自立

症例の詳細と診断過程

#4.

症例 72歳 男性 【来院時現症】 Vital sign:GCS E4V5M6 HR 67 bpm BP 209/116 mmHg RR 18 回/min SpO2 100% BT 36.4℃ 橈骨動脈は左右差なく両側とも触知良好 血圧左右差無し 【検査所見】 心電図:洞調律 ST-T変化なし 心エコー:心嚢液なし 心収縮良好 大動脈弁逆流や上行大動脈基部拡大なし

#5.

症例 72歳 男性 大動脈エコー:腹部大動脈内に拍動に伴って動くflapを認める

#6.

症例 72歳 男性 【経過】 速やかに造影CTを撮影し, Stanford B型急性大動脈解離の診断となる. 降圧, 鎮痛のうえ保存的加療の方針となる. 腹部大動脈瘤/解離を疑えば速やかにエコー →迅速な診断と治療介入につながる

大動脈エコーの適応と評価項目

#7.

Aorta Emergency Ultrasound Studies 適応の見極めと評価項目 正確な描出 適正な解釈 臨床への応用 Jang TB et al. J Ultrasound Med 2012; 31: 515-521

#8.

Aorta Emergency Ultrasound Studies 適応の見極めと評価項目 正確な描出 適正な解釈 臨床への応用 Jang TB et al. J Ultrasound Med 2012; 31: 515-521

#9.

1. 適応の見極めと評価項目 腹部大動脈瘤と大動脈解離 を疑う時 ⇨急性腹症を含む全ての腹痛・背部痛患者 原因不明の低血圧・失神・心停止患者 Ann of Emerg Med. 2016 Jul;68(1):11-48

#10.

1. 適応の見極めと評価項目 腹部大動脈瘤 大動脈径の測定 3cm以下は正常、腸骨動脈は1.5cm以下 (advanced) AAA破裂所見の有無 大動脈解離 Flapの有無 Ann of Emerg Med. 2016 Jul;68(1):11-48

大動脈エコーの正確な描出方法

#11.

Aorta Emergency Ultrasound Studies 適応の見極めと評価項目 正確な描出 適正な解釈 臨床への応用 Jang TB et al. J Ultrasound Med 2012; 31: 515-521

#12.

2. 正確な描出 コンベックスプローべを用いて仰臥位で観察 心窩部の腹部正中横走査で椎体を同定 椎体ーacoustic shadowを伴う半円形の高エコー域 椎体前面の脈管構造を探す 大動脈は, 椎体前面患者の左側に位置し, 拍動する 救急・プライマリケアで必要なポイントオブケア超音波

#13.

2. 正確な描出 心窩部から左右腸骨動脈分岐部までスキャン 腹腔動脈, 上腸間膜動脈, 腎動脈を描出 (十分な範囲でスキャン出来ているか確認のため) 短軸・長軸の両方を描出 Ma & Mateer's Emergency Ultrasound

#14.

2. 正確な描出 Limitationー肥満と腸管ガス プローべによる腹部の圧迫 *圧迫のしすぎに注意 (圧迫による破裂の報告はなし) Coronary view 側臥位、右前腋窩線上で肝臓をwindowにする Ma & Mateer's Emergency Ultrasound

腹部大動脈瘤の解釈と診断基準

#15.

Aorta Emergency Ultrasound Studies 適応の見極めと評価項目 正確な描出 適正な解釈 臨床への応用 Jang TB et al. J Ultrasound Med 2012; 31: 515-521

#16.

3. 適正な解釈(腹部大動脈瘤) 径が30mm以上であれば腹部大動脈瘤と定義 外膜から外膜までの径を測定 前面から後面 可能であれば側面から側面も 矢状断面でも径を測定 Annals of Emergency Medicine. 2016 July;68(1):11-12

#17.

3. 適正な解釈(腹部大動脈瘤) 腹部大動脈瘤 腎動脈以下に生じる事が多い(90%以上) 上腸間膜動脈分岐後は注意深く観察 総腸骨動脈も可能な範囲で観察する 形態ー紡錘状がcommon(嚢状は小さくても破裂riskあり) Ma & Mateer's Emergency Ultrasound 救急・プライマリケアで必要なポイントオブケア超音波

#18.

3. 適正な解釈(Advanced) 腹部大動脈瘤破裂所見の有無 壁在血栓の途絶 浮遊血栓 大動脈壁の途絶 大動脈周囲の低エコー域 後腹膜血腫 Rev Med Liege. 2018 May;73(5-6):296-299.

腹部大動脈瘤破裂所見と解離の評価

#19.

腹部大動脈瘤破裂所見 Rev Med Liege. 2018 May;73(5-6):296-299. 浮遊血栓 大動脈周囲の低エコー域 後腹膜血腫 壁在血栓の途絶 救急超音波テキスト-point of careとしての実践的活用法

#20.

Pitfall Cylinder tangent effect 大動脈径を過小評価してしまう 対策:短軸と長軸両方を評価する 大動脈周囲リンパ節を瘤と誤認する 対策:ドプラで血流を確認 Ma & Mateer's Emergency Ultrasound

#21.

壁在血栓は未破裂動脈瘤でも見られる →血栓は破裂や解離を示唆するものではない Pitfall Ma & Mateer's Emergency Ultrasound

#22.

3. 適正な解釈(大動脈解離) Flapの有無 ドプラ上の解離所見 合併症の評価 心タンポナーデ 大動脈弁逆流 主要血管の解離の進行や血流 救急超音波テキスト-point of careとしての実践的活用法

臨床への応用と診断精度の向上

#23.

3. 適正な解釈(大動脈解離) 胸部大動脈解離 心窩部のアプローチでは評価困難 傍胸骨左縁長軸像:大動脈拡大, 大動脈内flap, 心嚢液貯留 大動脈拡大:大動脈基部径≧ 4cm 正常では右室:大動脈:左房=1:1:1 上位肋間アプローチ, 胸骨上アプローチも追加 解離の評価には造影CTが必要→エコーでの評価に固執しない 救急・プライマリケアで必要なポイントオブケア超音波

#24.

Aorta Emergency Ultrasound Studies 適応の見極めと評価項目 正確な描出 適正な解釈 臨床への応用 Jang TB et al. J Ultrasound Med 2012; 31: 515-521

#25.

4. 臨床への応用(腹部大動脈瘤) 腹部大動脈瘤 80%は破裂まで診断されていない 非特異的症状のため診断が遅れる 誤診率は30-60% 急性腹症患者では常に念頭におく必要がある Acad Emerg Med. 2013 Feb;20(2):128-38.

#26.

4. 臨床への応用(腹部大動脈瘤) 腹部大動脈瘤破裂所見 (壁在血栓の途絶/浮遊血栓/大動脈壁の途絶/ 大動脈周囲の 低エコー域/後腹膜血腫) 径が小さくても破裂しないとは限らない → 症状の持続する腹部大動脈瘤患者は 速やかな追加精査が必要 これらは感度が低い(感度 14-72% 特異度 100%) 5cmを超えるAAAがあれば他の原因が証明されるまで破裂として扱う。 Rev Med Liege. 2018 May;73(5-6):296-299.

大動脈解離の診断と治療方針

#27.

4. 臨床への応用(腹部大動脈瘤) 未破裂腹部大動脈瘤の対応 3.0-5.4cmの大動脈瘤 →3-12ヶ月ごとのフォロー >0.5cm/半年の瘤拡大あるいは≧5.5cm →心臓血管外科へ紹介 J Vasc Surg. 2003;37(5):1106-17 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2020年度版)

#28.

4. 臨床への応用(腹部大動脈瘤) POCUSは診断精度が高い 腹部大動脈瘤(>3cm)に対する身体所見 感度 68% 特異度 75% POCUSで診断に関するsystematic review 感度 97.5-100% 特異度 94.1-100% LR(+) 10.8-∞ LR(-) 0.00-0.25 POCUSで診断速度が速く、予後が改善 POCUSあり:診断 5.4分 手術 12分 死亡率 40% POCUSなし:診断 83分 手術 90分 死亡率 72% Acad Emerg Med. 1998; 5:417

#29.

4. 臨床への応用(大動脈解離) 急性A型大動脈解離 Intern Emerg Med. 2014;9(6):665-70. 直接所見 内膜フラップあり 壁内血腫あり(大動脈壁>5mm) 間接所見 上行大動脈基部拡大(≧4cm) 心嚢液貯留 大動脈弁逆流 いずれかの直接or間接所見あり⇒感度 88% 直接所見あり⇒特異度 94%

#30.

4. 臨床への応用(大動脈解離) 大動脈解離 エコーでの診断精度 感度・特異度ともに60-90% エコーはあくまでも診断, 合併症検索の 補助ツール →詳細な評価は造影CTで Intern Emerg Med. 2014;9(6):665-70.

Take Home Message: エコーの重要性

#31.

Take Home Message 腹痛患者では常に腹部大動脈瘤, 大動脈解離を念頭におき, エコーによる大動脈の評価を考慮する エコーは腹部大動脈瘤の診断精度が非常に高い エコーは大動脈解離の診断, 合併症検索の一助となるが, 評価を固執しすぎるべきではない

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