テキスト全文
疾患診断の基本的な考え方
#2. よくある疾患をきちんと診断するには 1.その疾患の典型的な経過を覚えておく
2.その疾患に似た重篤な疾患を除外できる
3.本当にその疾患でよいかを常に疑う ちゃんと全体像を覚えておくことが大事なんだね。
BPPV(良性発作性頭位めまい症)の症状と診断
#3. よくある疾患その③:BPPV(良性発作性頭位めまい症) BPPVは耳石が半規管に迷入し、頭位変換でめまいを起こす疾患
#4. 1.その疾患の典型的な経過を覚えておく
2.その疾患に似た重篤な疾患を除外できる
3.本当にその疾患でよいかを常に疑う
#5. 頭位変換で 誘発される 短時間のめまい 眼振所見あり ■後半規管型:
遅発性回旋性眼振
(Dix-Hallpike法)
■水平半規管型:
方向交代性水平眼振
(SupineRollTest) 聴覚症状なし BPPVの症状 聴覚症状を伴わず、頭位変換で誘発される短時間のめまいが特徴。
後半規管型が最も高頻度であり、診断にはDix-Hallpike法が有用。
#6. BPPVの診断の手順:この3大ポイントをおさえよう! ポイント①
短時間 ポイント③
身体テストで眼振を実際に確認 ①短時間 ②頭位変換が誘因 ③身体テストで眼振確認 まずは、発作時間が数秒~1分ほどで自然軽快していることを確認する。 ポイント②
頭位変換が誘因 寝返り、起き上がり、上や下を向くなどの頭部の急な姿勢変化がめまいの誘因であることを聴取する。 最後にDix-Hallpike法やSupine Roll Testを行って実際に眼振を確認する。
BPPVの発作時間と問診の重要性
#7. ポイント①
短時間 まずは、発作時間が数秒~1分ほどで自然軽快していることを確認する。
#8. 急性発症のめまいは持続時間で分類する 秒単位
BPPV, 起立性低血圧 分~時間単位
メニエール病 日単位(24時間以上)
AVS:Acute Vestibular Syndrome
→前庭神経炎,中枢性病変 秒単位の発作がBPPVの特徴!
#9. なぜ、持続時間の確認が難しいの? BPPVは本来、「秒単位」の発作になる。
しかし、患者さんは短時間のめまい発作を繰り返していること(=断続的なめまい)や、発作の間の気分不良を“ずっとめまいが続いている”と表現することがある。
「断続性めまい」か「真の持続性めまい」かを問診や身体所見から区別することが重要! 詳細な病歴と眼振所見を確認しよう。
#10. ずっとめまいが続いていて
しんどいんです。(BPPV or AVS?) めまいはずっと同じ強さで続いていますか(AVS)?それとも、強いめまいのあとに少し楽になる時間がありますか(BPPV)? 強いめまいが一瞬あって、その後は少し楽です。でもまた起こります。 その強いめまいは、どんなときに起こりますか?寝返りを打ったときや頭を動かしたときですか? はい、頭を動かすとグルッと回ります。 BPPV vs AVS(発作・間欠期の有無を確認する問診) (今は眼振は出ていないな…。
身体テストで確認してみよう。)
BPPVと起立性低血圧の鑑別方法
#11. ポイント②
頭位変換が誘因 寝返り、起き上がり、上や下を向くなどの頭部の急な姿勢変化がめまいの誘因であることを聴取する。
#12. BPPVか起立性低血圧か? 頭位が変化した際の秒単位のめまいの鑑別として、BPPVと起立性低血圧が問題になる。
立ち上がった直後のみ発作が起きるのが
起立性低血圧。BPPVは寝返りなど仰臥位での頭位変換でも発作が起こることが鑑別点。 どのような体位変換でめまいが起こるか?
病歴の映像化(具体化)を丁寧に行おう!
#13. 立ち上がると、めまいがして動けないんです。(BPPV or 起立性低血圧?) めまいは立ち上がったときだけですか(起立性低血圧)?それとも、寝返りを打ったり、頭を動かしたときにも起こりますか(BPPV)? 立ち上がったときにめまいがするだけで、寝返りでは何ともありません。 そのめまいは、視界が暗くなるような感じですか?それともグルグル回る感じですか? 視界が暗くなる感じです。
数秒で治まります。 BPPV vs 起立性低血圧(立ち上がり動作に注目した問診) (起立性低血圧かも。Schellong testで血圧低下を確認してみよう。)
#14. ポイント③
身体テストで眼振を実際に確認 最後にDix-Hallpike法やSupine Roll Testを行って実際に眼振を確認する。
AVS(急性前庭症候群)の診断手法
#15. 身体テスト(Dix-Hallpike法とSupine Roll Test)
※浮遊耳石症の場合 Dix-Hallpike法 (後半規管型BPPV)頭を45°に回旋しながら素早く仰臥位へ倒すと、 数秒の潜時後に回旋性の眼振が出現して、1分以内に減衰・消失。眼振と同時にめまいの自覚も起こる。 前半規管型は非常に稀だよ。
#16. 1.その疾患の典型的な経過を覚えておく
2.その疾患に似た重篤な疾患を除外できる
3.本当にその疾患でよいかを常に疑う
#17. Acute Vestibular Syndrome(AVS)
突発的に発症し、24時間以上持続する強い回転性めまいを特徴とする症候群。末梢性は前庭神経炎が主な原因、中枢性は脳幹や小脳の梗塞・出血などが原因。 特に中枢性を
見逃さない!
#18. HINTS Plus:持続性の回転性めまい(AVS)の中枢性と末梢性を鑑別する手法
•HIT陽性,一方向性水平眼振,斜偏倚なし → 末梢性AVS(前庭神経炎)疑い
•HIT陰性,注視誘発性or垂直性眼振,斜偏倚あり,新規難聴あり→中枢性AVS(脳幹・小脳梗塞)疑い 1. Head Impulse Test(HIT)
陽性(補足サッケードあり): 末梢性AVSを示唆。
陰性(検者から視線が動かない): 中枢性AVS疑い。
検者を注視 顔を回旋 HIT陽性(末梢性)
2.Nystagmus(眼振の評価)
末梢性障害:一方向性水平眼振 中枢性障害:垂直性眼振 /注視誘発眼振
3. Test of Skew(斜偏倚)
交互遮蔽試験で眼位の異常を評価。
垂直斜偏倚あり: 中枢性障害を示唆。
4. Plus(新規難聴の評価)
新規片側性難聴: AICA領域梗塞の可能性あり。 HINTS Plusは持続性の回転性めまい(AVS)が対象。
一過性・断続性めまい(BPPV、前失神など)は適応外。
中枢性めまいのMRI診断と症例
#19. 中枢性めまいでは、発症早期や特定の部位においてMRIで病変が不明瞭なことがあり、
拡散強調画像(DWI)を2方向から撮像することで診断精度が向上する場合がある。
※提示画像は複視とめまいでER受診され、上方向の垂直方向性眼振を認めた症例のMRI 中枢性めまいの脳神経症状
#20. ふわふわがひどくて歩けません。 眼振はないし、指鼻指試験や踵膝試験、
回内回外試験も問題ありませんね。
顔のしびれや、喋りにくい、飲み込みにくい、聞こえが悪いなどの症状はありますか? 言葉も普通に話せますし、
耳も聞こえます。 四肢の協調運動障害や脳神経症状もないので、脳の病気は考えにくいでしょう。耳からくるめまいの可能性が高いので、今日は様子を見ましょう。 う~ん、でもやっぱり歩けないんですよね…。 神経学的所見に乏しくても歩けないめまいは帰さない! PICA梗塞
メニエール病と起立性低血圧の特徴
#21. メニエール病 救急外来では、既往があり他院で診断がついているケースが多い。
#22. 起立性低血圧 ふわっとして、気が遠くなる~。
#23. まとめ 秒単位
BPPV, 起立性低血圧 分~時間単位
メニエール病 日単位(24時間以上)
AVS:Acute Vestibular Syndrome
→前庭神経炎,中枢性病変 秒単位の発作がBPPVの特徴!
✶病歴を映像化➡身体テスト
頭位変換: BPPV
立位変換: 起立性低血圧
難聴を伴う反復性めまい
がポイント! HINTS Plusと脳神経症状で中枢性を見逃さない!!
診断エラーを防ぐためのアプローチ
#24. 1.その疾患の典型的な経過を覚えておく
2.その疾患に似た重篤な疾患を除外できる
3.本当にその疾患でよいかを常に疑う
#26.
簡単に読めて、網羅的な鑑別診断の考え方をマスターできる診断学の入門書です。
ロジックツリーを使用して分析的に考える 意見の共有とフィードバック 参考:
当院の診断推論カンファレンスの流れ マインドフルネス 呼吸と身体感覚に意識を集中。10分やるだけでもスッキリ。
丹田呼吸や54321法と組み合わせるのもオススメです。 診断エラーを防ぐためには?