総合病院(西日本)
目次
・熱性発作(熱性けいれん)とは?
①熱性発作の定義・概念
②疫学(有病率・回数)
③臨床分類(単純型?複雑型?)
④熱性発作とてんかん, 脳波検査について
⑤熱性発作の初期対応 どこまで検査する?
⑥予防方法,治療
⑦その他(解熱剤使用, 予防接種, 注意すべき薬剤)
・「けいれん」と「てんかん発作」と「てんかん」
違いを言えますか?
・注意すべき疾患・てんかん症候群
けいれん(てんかん)重積状態の対応も含めて
~2023年2月施行の医師国家試験の問題と自験例から~
スライドの解説を
Twitterの下記引用先の返信欄に随時追加しています。
よければご覧ください↓↓
https://twitter.com/osalepsy/status/1637803218054045696?s=20
熱性発作(熱性けいれん)は小児の救急外来でもっとも出くわす疾患です。
小児科医だけでなく、
初期研修医の先生方や非小児科医の先生方も
救急外来で対応しなくてはならないケースにも出くわすかもしれません。
熱性発作の診療ガイドラインがこの度改訂されました。
ガイドラインの要点、けいれん(てんかん)重積状態の際の対応、
発熱に伴う発作の際に注意しなければならない疾患や症候群の鑑別について、
2023年度の医師国家試験に出題された問題や
自験例をまじえて解説しています。
ついでと言っては何ですが、
『てんかん』と『てんかん発作』と『けいれん』の言葉の定義についても
途中で少し解説を追加しました。
お時間があればご拝見ください。
(小生が地方で講演したスライドに+αした内容を掲載しています)
スライドの解説を
Twitterの下記引用先の返信欄に随時追加しています。
よければご覧ください↓↓
https://twitter.com/osalepsy/status/1637803218054045696?s=20
熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023
小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023
テキスト全文
熱性発作 (熱性けいれん) について~対応と注意すべきてんかん症候群も含めて~ @Osalepsy Osalepsy@小児科・てんかん専門医
Osalepsy@小児科・てんかん専門医 ・アラフォー中堅医師 ・資格 小児科専門医・指導医 てんかん専門医 ・専門 小児神経 (主にてんかん等けいれん性疾患, たまに発達診療) ・2022年10月~ Twitter始めてます! 主に小児のてんかんやけいれんについて 患者さんなど一般の方や 非専門の先生,若手の先生へ 診療時のpointやコツ, 病気の説明などを発信してます。 テーマは 『日本一わかりやすい てんかんの説明と解説を目指して!』です。 よろしければご登録ください(^^)/ @Osalepsy 自己紹介 https://twitter.com/osalepsy
本スライドには自験例の提示並びに一部個人の見解が含まれます。 しかし、これらは専門家としての経験に基づく提示あることを 予めお断り申し上げます。 また最新のガイドラインには 本邦では適応外使用の薬剤も記載されていますが、 本スライドでは都合上、そのまま掲載させていただいています。 (適応外使用を推奨するものではないことも予めお断りいたします。) 薬剤の使用・適応に関しては添付文書をご参考ください。 各薬剤の情報が示されておりますが、中傷・誹謗するものではありません。 @Osalepsy
@Osalepsy 小児神経学会やガイドライン作成員会のご尽力により 2023年初頭に立て続けにガイドラインの改変があった
お品書き ・熱性発作(熱性けいれん)とは? ①熱性発作の定義・概念 ②疫学(有病率・回数) ③臨床分類(単純型?複雑型?) ④熱性発作とてんかん, 脳波検査について ⑤熱性発作の初期対応 どこまで検査する? ⑥予防方法,治療 ⑦その他(解熱剤使用, 予防接種, 注意すべき薬剤) ・「けいれん」と「てんかん発作」と「てんかん」 違いを言えますか? ・注意すべき疾患・てんかん症候群 けいれん(てんかん)重積状態の対応も含めて ~2023年2月施行の医師国家試験の問題と自験例から~ @Osalepsy
熱性発作(熱性けいれん) @Osalepsy
では早速クイズです 次のうち,熱性発作はどれだと思いますか? ①3歳の男児。既往歴や周生歴(生まれた時の状態),家族歴に異常なし。 発熱なし。入眠中に左顔面のけいれんから全身のけいれんに移行し,救急車搬送。 ②10カ月の女児。既往歴や周生歴異常なし。兄2歳に熱性発作の既往あり。 日中より高熱40℃が出現。ウトウトしていた際に全身のけいれんが30分持続し,救急車搬送。 ③生後3か月の女児。既往歴や周生歴,家族歴に異常なし。 日中より高熱40℃が出現。ウトウトしていた際に全身のけいれんが5分出現し,救急車搬送。 ④5歳の男児。3歳の頃にてんかんと診断され,抗てんかん薬を内服している。 日中より38℃が出現。入眠後に左半身優位の全身のけいれんが2-3分出現し,救急車搬送。 ⑤2歳の女児。生後5か月頃より発熱時にけいれん重積状態を繰り返している。 入浴中に全身のけいれんが出現し,救急車搬送。けいれん出現時の体温は37.8℃。 @Osalepsy
主に生後6~60か月までの乳幼児期に起こる, 通常は38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性,非けいれん性含む)で, 髄膜炎等の中枢神経感染症,代謝異常,その他明らかな発作原因がみられないもので, てんかんの既往のあるものは除外される 熱性発作(熱性けいれん)の定義 ・小児科疾患の中でもっとも多い神経疾患のひとつ ・生後6か月未満, 5-6歳以上のけいれんなどの発作, 微熱でのけいれん等は, 熱性発作ではないかもしれない ・基礎疾患(特に神経疾患)のある子の 発熱時のけいれん等や意識障害は熱性発作ではないかも ・てんかんの既往のある子の発熱時のけいれん等は 発熱により誘発されたてんかんの症状として扱う 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy ● ● ● ●
答え合わせ 次のうち,熱性発作はどれだと思いますか? ①3歳の男児。既往歴や周生歴(生まれた時の状態),家族歴に異常なし。 発熱なし。入眠中に左顔面のけいれんから全身のけいれんに移行し,救急車搬送。 ②10カ月の女児。既往歴や周生歴異常なし。兄2歳に熱性発作の既往あり。 日中より高熱40℃が出現。ウトウトしていた際に全身のけいれんが30分持続し,救急車搬送。 ③生後3か月の女児。既往歴や周生歴,家族歴に異常なし。 日中より高熱40℃が出現。ウトウトしていた際に全身のけいれんが5分出現し,救急車搬送。 ④5歳の男児。3歳の頃にてんかんと診断され,抗てんかん薬を内服している。 日中より38℃が出現。入眠後に左半身優位の全身のけいれんが2-3分出現し,救急車搬送。 ⑤2歳の女児。生後5か月頃より発熱時にけいれん重積状態を繰り返している。 入浴中に全身のけいれんが出現し,救急車搬送。けいれん出現時の体温は37.8℃。 ✖ 〇 ✖ 発熱に伴い誘発されたてんかんの症状 ? 生後6カ月未満であり、熱性発作でないかも… c ? 生後5カ月未満発症と38℃未満での発作、 入浴程度の刺激で誘発。熱性発作でないかも… c @Osalepsy ● ● ● ●
・有病率 日本人小児人口の約6~8%(欧米は約2%) ⇒諸外国より高い有病率,珍しい病気ではない ・男児:女児=11:9 ・1~2歳での発症が最も多い ・インフルエンザ,突発性発疹症など 高熱を罹患する感染が多い COVID-19も熱性発作の原因として多い 熱性発作の疫学 玉野市における神経疫学調査 脳研究会誌 6:365-72,1984.より引用, 追記 @Osalepsy
・熱性発作の回数 1回が65%,2回が20%と 2回までで終了するのが85%と大半 ・再発しやすい原因は? <再発予測因子> 1) 熱性発作家族歴(両親,同胞) 2) 若年発症(生後12か月未満) 3) 短時間の発熱-発作間隔(1時間以内) 4) 発作時非高体温(39℃以下) 1)-4)のいずれの因子も持たない場合,再発率約15% 1)-4)のいずれかの因子を有する場合,再発率約30% 熱性発作の再発頻度,再発予測因子 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
熱性発作(熱性けいれん)のうち,以下の3項目の一つ以上もつものを複雑型と定義 これらのいずれにも該当しないものを単純型とする 1) 焦点発作(部分発作)の要素 ・発作が体の一部分に優位に発作がみられる焦点性要素をもった運動発作 ・半身けいれんなど左右差のある発作 ・一点凝視や動作停止のみでけいれんを伴わない意識障害 2) 15分以上持続する発作 3) 同一発熱機会の(通常は24時間以内に)複数回反復する発作 単純型熱性発作と複雑型熱性発作 ・単純型熱性発作 通常5分以内 24時間に1回 左右差のない全身けいれん(強直間代発作) ・複雑型熱性発作が入院を考慮する理由 発作を繰り返す可能性があるから 発作が長い場合,脳症・脳炎との鑑別が必要 単純型 複雑型 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy 比率 単純型:複雑型= 約 3:1
・熱性発作(熱性けいれん)≠てんかんが大原則! ・だが発作症状が脳神経細胞の電気的異常興奮という共通点あり ⇒関連がないわけでもない 熱性けいれん後のてんかんの発症率 2.0-7.5%程度 一般人口におけるてんかんの発症率 0.5-1.0%に比べ高い ・熱性発作後のてんかん発症関連因子 1)熱性発作発症前の神経学的異常 2)両親・同胞におけるてんかん家族歴 3)複雑型熱性発作の既往 4)短時間の発熱-発作間隔(概ね1時間以内) 5)3歳以降の熱性発作発症 1)-3)のいずれの因子も持たない場合の発症率1.0% 1)-3)の1因子認める場合の発症率2.0%,2-3因子認める場合10% 4)を認める場合,その後のてんかん発症の危険度は概ね2倍 5)3歳以降の熱性発作発症では, てんかん発症の相対危険度はおおむね2-3倍以上 熱性発作(熱性けいれん)とてんかん 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
熱性発作:熱による誘発性の発作性疾患 てんかん:(原則)非誘発性に発作を繰り返す疾患 熱性発作≠てんかんが大原則 保護者へは 90%以上がてんかんを発症しない事の 理解の促しが重要!! @Osalepsy
熱性発作は通常生後満60ヵ月までの乳幼児の発作と定義するが, しばしばそれを超える年長児(場合によっては就学後)での有熱時に発作を経験する 定義には外れるが, 年齢以外の定義を満たす場合には熱性発作と同様の対応でよい。 満60か月以後で発作を反復した場合や無熱時発作発症した場合には 熱性けいれんプラス(febrile seizures plus:FS+)やてんかんを念頭に専門医へ紹介を考慮 年長児(就学後)の有熱時発作 ・インフルエンザやCOVID-19感染症は しばしば比較的高年齢でも有熱時に発作を認める ・比較的高年齢でも有熱時のみに症状を認める場合には 通常の熱性発作として対応でよく、 過度な検査施行を控えたり、家族へ不安を与えないように気を付ける 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
①複雑型熱性発作の患者では,脳波異常を高率に(13-45%)認めるとされる (脳波異常:非てんかん性突発波, てんかん性突発波) ②ただ, てんかん性異常波が検出したとしても てんかんを発症するかどうかはわからない,発症の予防方法もないとされる (日本人の100人中数人程度には脳波異常があると推測されている) ③てんかん性異常波があろうがなかろうが, けいれん(発作)が頻回な場合,重積状態があった場合,予防が間に合わない場合… などにジアゼパム坐剤を使用したり,抗発作薬内服するという 治療方針に変わりない(脳波より前述の再発予測因子が重要!) ⇒熱性発作の脳波検査是非は慎重に検討される必要がある。 熱性発作と脳波検査 1.単純型熱性発作を起こした小児に対して脳波検査をルーチンに行う必要はない 2.複雑型熱性発作においては脳波検査で, てんかん性(非てんかん性)放電の検出率が 高い事が報告されているが,てんかん発症の予防(における臨床的意義)は確立していない 3.有熱時発作において,急性脳症との鑑別には脳波検査が有用である 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
ガイドラインでは下記のように記載(一部改変) 1. 血液検査をルーチンに行う必要はない 2. 全身状態不良時, 重要感染症を疑う場合, 発作後の意識障害が持続する場合, 脱水を疑う所見がある場合 ⇒電解質, 血糖値, 白血球数, 血液培養等を考慮する 3. 急性脳症との鑑別を考慮する際には生化学検査や血糖値等考慮 熱性発作の初期対応-1 血液検査 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy ・私の施設では, 単純型で来院時全身状態が比較的良好でも必ず CRP値,白血球数,(場合によってケトン体,血糖値, 血液ガス)は確認している ガラス管等で簡易な検査をまず行い, 必要に応じて末梢血から採取する 理由)①時折CRP高値であり,尿路感染症, 重症感染症,川崎病等の場合もあるから ②熱性発作時には血清Naが低い時もしばしば経験する ③帰宅基準判断の一つの材料として, 家族へ説明しやすいから ・複雑型熱性発作や重積状態の場合には,点滴+生化学等含め血液検査を行う (二相性急性脳症の予測スコアがいくつかあるので参考にされたい)
ガイドラインでは下記のように記載(一部改変) 髄液検査 1. 髄液検査をルーチンに行う必要はない 2. 遷延性発作, 髄膜刺激症状, 30分以上の意識障害, 大泉門膨隆等 細菌性髄膜炎含めた中枢神経感染症を疑う所見を認める場合に積極的に行う 頭部検査(頭部CT/MRI検査) 1. ルーチンに頭部画像検査を行う必要はない 2. 発作後麻痺を認める場合, 焦点発作(部分発作)や遷延性発作の場合等には考慮 3. 発症前より発達の遅れを認める場合にも考慮とされている 熱性発作の初期対応-2 髄液検査, 頭部画像検査 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy ・私見 ヒブワクチン, 肺炎球菌ワクチンの普及で細菌性髄膜炎に出くわす機会は 減っているので, あまり髄液検査を行う事は少なくなったが, 6カ月以下での有熱時に発作を認めた場合には, 熱性発作の定義に外れるので 積極的に考慮してもよいと考える 明らかな左右差を認める発作や急性脳症の鑑別が重要な遷延性発作の場合には 頭部CT検査や頭部MRI検査が有用となり得る
・脳障がいの発生や生命危機の点,医療機関の体制, 家族の不安・心配の程度を考慮し予防開始するのが望ましい ①遷延性発作(重積状態)は脳障がいを来たす可能性があるので 繰り返してはいけないので1回目で予防開始する。 ②単純型熱性発作を反復しても認知・学習能力に影響はないとされる。 熱性発作の治療・予防-1 発熱時のジアゼパム坐剤(ダイアップ®)投与について 1.熱性発作の再発予防の有効性は高いが,副反応が存在しルーチン使用する必要はない 2.以下の適応基準1)または2)を満たす場合に使用する 1)遷延性発作(持続時間15分以上) 2)次のⅰ~ⅵのうち2つ以上を満たした熱性発作が2回以上反復した場合 ⅰ.焦点発作(部分発作)または24時間以内に反復する ⅱ.熱性発作出現前より存在する神経学的異常,発達遅滞 ⅲ.熱性発作またはてんかんの家族歴 ⅳ.初回発作が生後12か月未満 ⅴ.発熱後1時間未満での発作 ⅵ.38℃未満での発作 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
1. 熱性発作(有熱時発作)が 最も多いとされる 発熱より24時間以内に予防できるように 2回投与が有効とされている 2. 発熱が持続することで 発作を起こしやすいなど, 医師より特別な指示があった場合には ②回目より16時間後(①回目より24時間)に ③回目を投与するという オプションもあるが,あまり推奨されない 熱性発作の治療・予防-2 発熱時のジアゼパム坐剤(ダイアップ®)投与方法,期間,使用上注意事項 1.37.5℃を目安として,1回0.4-0.5mg/kg(最大10mg)を挿肛(①回目)し, 発熱が持続していれば8時間後に同量を追加(②回目)する 2.鎮静・ふらつきなどの副反応に留意 これらの既往がある場合は少量投与にするなど配慮を行い注意観察 特に使用による鎮静の為,脳炎・脳症の鑑別が困難になる場合もあり注意 3.最終発作から1-2年,もしくは4-5歳までの投与がよいとされる 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
熱性発作の治療・予防-3 発作予防における抗発作薬(ASM)内服について 1.原則推奨されない 2.ジアゼパム(ダイアップ®)坐剤による予防をはかったにもかかわらず 長時間(15分以上)の発作を認める場合や予防を行っても繰り返し発作が見られた場合 ジアゼパム坐剤の使用が間に合わず繰り返し発作がみられる場合に 抗発作薬の継続的内服を考慮 3.処方薬(必ず副作用等については説明を!) バルプロ酸(デパケン®,セレニカ®,バレリン®):20 ~30mg/kg/日分2(演者はこちら使用) フェノバルビタール(フェノバール®):3~5mg/kg/日 …等 ・私の熱性発作(有熱時発作)に対する抗発作薬内服開始の基準 遷延性発作や重積状態を起こした事がある等ジアゼパム坐剤での予防が望ましい患者で ①ジアゼパム坐剤が間に合わない (発熱より概ね1時間以内の発作や,発作があって発熱に気づくパターン) ②比較的低体温での発熱でのけいれん (ジアゼパム坐剤を使用するタイミングを逃してしまい,発作が起きてしまう) ③ジアゼパム坐剤使用したが予防できない(ジアゼパム坐剤効果不十分) ④ジアゼパム坐剤の副作用が強く,使えない ⑤ (小学校以降など)高年齢での有熱時発作(ジアゼパム坐剤が現実的でない) 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
・熱性発作後に解熱剤使っていいですか? 再発予防に解熱剤は有効ですか? ▶演者の回答・指導◀ ・解熱剤は発作予防の薬ではないですので、 再発予防効果はありません。 ・解熱剤使用後の再発熱で発作を起こしやすくなるという事はない とされています。 ・解熱剤は発熱の原因を治しているわけではないので 発熱があるからといって、必ずしも使用する事はありませんが、 子どもさんがしんどそうだったりした場合には 使用していただいて構いません。 ・熱性発作後に解熱剤使っていいですか? 再発予防に解熱剤は有効ですか? その他(ご家族からよくある質問①) 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
▶演者の回答・指導◀ ・現行の予防接種はすべて接種してかまいません ・予防接種の副反応による発作が誘発のリスクより、 予防接種で予防可能だった感染症に感染する事のほうが 発作誘発のリスクが高いと考えられています ・発熱率が高いとされているワクチンは、 麻疹(風疹)ワクチン、肺炎球菌ワクチン、 Hibワクチン、四種混合ワクチン、日本脳炎ワクチンとされてます ・昔は熱性発作から2-3か月間隔をあければ接種可とされてましたが、 接種当日の体調に留意すれば期間に関わらず速やかに接種可です ・熱性発作既往がありますが、予防接種可能ですか? その他(ご家族からよくある質問②) 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
▶演者の回答・指導◀ ・多くの薬剤は発熱の際に安全に使用が可能ですが、 一部の薬剤は熱性発作の既往がある際に注意が必要です。 ・抗ヒスタミン薬の中で鎮静作用が強い薬剤、 テオフィリン等のキサンチン製剤は、 熱性発作の持続時間を長くする、(誘発されやすくなる)可能性 があり注意が必要です。 ・抗ヒスタミン薬の使用が必要な場合に関しては、できるだけ 鎮静作用の少ない薬剤を選択した方が安全かもしれません。 けいれんやてんかんがあった際には使えない場合や、 使用可能年齢の制限があるものもあります。 使用にあたってはかかりつけ医の先生と相談してください。 ・熱性発作の際に、注意する薬剤はありますか? その他(ご家族からよくある質問③) 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy
ここで少し休憩(というかご質問) 熱性発作≠てんかんは 先ほど述べた通り それでは、 熱性発作で認める主症状は 「てんかん発作」である。 〇か×か? @Osalepsy
14.6%(18人) 69.1%(85人) 16.3%(20人) 123人に聞いた回答結果(自験例) @Osalepsy Twitterで質問してみました
正解は ◯ @Osalepsy
てんかん てんかん発作 けいれん 言葉の定義の違いを述べられますか?? @Osalepsy
種々の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり, 大脳神経細胞(ニューロン)の過剰放電(興奮)から由来する 反復性の発作(てんかん発作)を唯一の症状あるいは主徴とし, これに種々の臨床症状および検査所見を伴う状態 てんかん病態の必要条件としては (1)24時間以上あけて,少なくとも2回の非誘発性(または反射性)発作が起こる状態 (2)1回の非誘発性(または反射性)発作,今後10年間に60%以上の再発率が予見される (3)明確なてんかん症候群と診断される場合 てんかんの定義 ・慢性の病態(脳疾患) ・発作は(通常)反復性 ⇒1回だけの発作では原則,てんかん と診断しない! ・発作は大脳神経細胞の過剰放電によるもの ⇒けいれんだけではない! Fischer RS ,et al: Epilepsia 46(4):470-472,2005 Fischer RS ,et al: Epilepsia 55(4):475-482,2014 より引用 @Osalepsy
てんかん=てんかん発作?? 咳, 嘔吐/下痢 は病名でしょうか? 病名ではなく 症状 です。 では 咳 をきたす病気(病名)は? 咽頭炎, 気管支炎, 肺炎, 喘息・・・ 嘔吐/下痢 をきたす病名は? 胃腸炎, 腸重積, 虫垂炎,腸閉塞, 潰瘍性大腸炎, ・・・ @Osalepsy
@Osalepsy てんかん発作 てんかん発作とは, 大脳の神経細胞が過剰(放電)興奮するために起こる症状 発作は突然に起こり, 普通とは異なる身体症状や意識, 運動および感覚の変化が起こる 興奮系シグナル (アクセル) 抑制系シグナル (ブレーキ) 興奮が強くなり, 抑制を上回った場合 抑制が弱まり, 興奮が上回った場合 過剰興奮 てんかん発作 電気的な火事 低血糖 電解質異常, 代謝異常 脳出血,脳梗塞 発熱, 脳炎, 髄膜炎 てんかん etc… てんかん発作は 様々な原因で起こる てんかん発作→てんかんと決めつけてはいけない! 原因 てんかん発作は 大脳神経神経細胞の 抑制系シグナルと 興奮性シグナルのバランスが崩れ,過剰興奮した際に 起こる症状
てんかん発作のイメージ 正常時 過剰興奮 ①右手を動かせと 信号が出る ②信号が神経を伝わり 右手に到達 ③右手が動く ①右手を動かす部位 に過剰な電気信号 ②過剰な電気信号が 右手に到達 ③右手が過剰に(不秩序に)動く =右上肢のけいれん てんかん発作時 大脳の 右手の運動担当部位 @Osalepsy
てんかん≠てんかん発作 てんかん とは てんかん発作(症状)を繰り返す病気(病名)の一つ @Osalepsy
咳 という症状には 湿性咳嗽, 乾性咳嗽, 犬吠様咳嗽… と様々な種類があります。 下痢 という症状には 水様便, 泥状便, 粘血便, 白色下痢便… と様々な種類があります。 てんかん発作 という症状も同じです。 様々な種類があります。 てんかん発作=けいれん?? @Osalepsy
てんかん発作=けいれん?? けいれん は てんかん発作 の1つだが てんかん発作 は, けいれん だけではない! 注釈 けいれんは 発作性かつ不随意におこる持続性~断続性の筋収縮と定義されます。 今スライドでは大脳神経細胞の興奮症状による筋収縮に限定してお話してます 強直間代発作(=けいれん発作),ミオクロニー発作, 欠神発作(=小発作), 点頭発作(てんかん性spasms) 焦点起始意識保持発作,焦点起始意識減損発作 感覚発作(幻視,幻聴…), etc… @Osalepsy
熱性発作(病名)で認める症状は 熱という原因(油)で 大脳神経細胞が異常興奮(火事)して起きる けいれんや非けいれん性の発作症状, つまり てんかん発作 である。 ただし演者は, 臨床現場ではややこしく,混乱を招くので 熱性発作の症状=てんかん発作の話はしない 熱性発作の主症状=てんかん発作 @Osalepsy
注意すべき疾患 @Osalepsy
第117回医師国家試験問題-1 @Osalepsy
既往歴 熱性発作なし,その他特記事項なし 周生歴 正期産, 仮死なし 発達歴 発症までの異常指摘なし 家族歴 母方従兄弟に熱性発作既往あり 現病歴 201X年1月25日 昼より高熱40℃が出現 22:34 ウトウトしている際に強直間代発作が出現。左右差なし。 22:45 救急隊接触時には発作が持続。 小児二次救急担当の他病院へ搬送中だったが, 22:50 SpO2:80%(酸素マスク10L/分投与), 四肢に著明なcyanosisあり 状態の悪化が考えられた為, ホットラインで当院へ搬送依頼。 23:03 当院到着。強直間代発作が持続。当院救急科が対応。 pH:6.937, pCO2:90.8mmHg, Glu276mg/dl 23:12 ジアゼパム計3mg(0.4mg/kg)投与し発作頓挫(発作持続時間約40分) 気管内挿管, 人工呼吸管理開始され待機当番だった小生にコンサルトあり。 自験症例1 1歳代女児 @Osalepsy
入院翌日も鎮静,人工呼吸管理を継続 発症18時間程度で(ポータブル)脳波検査施行 経過 びまん性高振幅徐波 @Osalepsy
入院翌日(2病日)も鎮静,人工呼吸管理を継続 発症18時間程度で(ポータブル)脳波検査施行 →びまん性高振幅徐波を認めた 鎮静下であるが,急性脳症が否定できず 両親に同意を得て,ステロイドパルス療法・免疫グロブリン療法開始 入院3日目に抜管,鎮静終了 痛み刺激に対し嫌がる反応はするが,常に閉眼・睡眠している状態が持続 入院5日目(5病日) 数十秒~2分程度の左半身の間代発作, 開眼し眼球左側偏位し動作が停止する発作が群発するようになった 入院6日目(6病日)に脳波検査再検および頭部MRI検査施行 経過 @Osalepsy
発作時脳波検査(6病日) 左半身の焦点運動起始発作(間代発作) @Osalepsy 右中心側頭部周辺に棘波成分含む連続的な活動
発作時脳波検査(6病日) 焦点起始意識減損発作(旧分類:複雑部分発作) @Osalepsy 右中心側頭部周辺に不規則なθ活動が連続する
頭部MRI検査(自験例,家族の許可を得て掲載) 脳浮腫および DWIで両側皮質下白質の高信号(Bright Tree Appearnce) T2FLAIR DWI @Osalepsy
診断 けいれん重積型(二相性)急性脳症 @Osalepsy
・1990年代後半より認識され始めた新しい症候群 ・急性脳症の症候群で最も高頻度(34.0%) ・興奮性アミノ酸による興奮毒性が病態と考えられている ▶診断基準◀(厚生労働科学研究・急性脳症研究班,2010を元に演者追記) 【臨床像】 ①発熱24時間以内にけいれん(多くはけいれん重積,early seizure)で発症 ②意識障害はいったん改善傾向 ③4~6病日にけいれんの再発(late seizure) (多くは焦点発作群発),意識障害増悪 ④原因病原体として インフルエンザウイルス, HHV-6,7が高い ⑤生命予後は他の急性脳症に比し 悪くはないが 神経学的後遺症を残す事が多い (軽度~重度まで様々) 【画像所見】 ⑥1,2病日に施行されたMRI検査は正常 ⑦3~9病日に拡散強調画像で皮質下白質高信号 T2強調画像,FLAIRではU fiberに沿った高信号 (Bright Tree Appearanceと呼ばれる) けいれん重積型(二相性)急性脳症 髙梨潤一. けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)の病態・診断・治療. 小児科 2021; 62: 939-948.より引用 平成 30 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)良質なエビデンスに基づく 急性脳症の診療に向けた体制整備研究班. 研究代表者;水口雅. 急性脳症の全国実態調査(第二回)より引用・改変 @Osalepsy
第117回医師国家試験問題-2 @Osalepsy
けいれん(てんかん)重積状態の対応 @Osalepsy
➤従来の定義 てんかん(けいれん)重積状態 : 30分以上持続する(けいれん)発作, あるいは複数回の発作が断続的に起こり, 各発作間にも意識障害を認める状態 てんかん(発作)群発状態 : 短期間に発作が反復し, 各発作間には意識回復があるものの 更に発作が反復する可能性がある状態 ILAE.Epilepsia 1993;34:592-596. Guideline for Epidemiologic Studies on Epilepsyより引用・改変 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 てんかん(けいれん)重積状態,群発状態の定義 @Osalepsy
➤最新(2015年)の定義 てんかん重積状態は 発作停止機構または開始機構の機能不全により もたらされた異常な発作遷延状態(time point t1以降)である 発作の型と持続時間に依存して 神経細胞死,損傷および神経回路網の 異常を含む長期的な後遺症をきたす(time point t2以降) Trinka, et al.Epilepsia 2015;56:1515-1523. A definition and classification of status epilepticus-Report of the ILAE Task Force on Classification of Statis Epilepticus 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 time point t1(t1時間):発作状態の遷延とみなす時間 (自然停止が難しくなる時間=治療開始) time point t2(t2時間):脳に長期的な後遺症を残しうる時間 てんかん(けいれん)重積状態,群発状態の定義 @Osalepsy
1 早期てんかん重積状態(early status epilepticus) 発作持続時間が5-10分経過した時点 初期治療(第一選択薬)を開始するタイミング 病院外発生の場合⇒病院前治療開始 病院内発生⇒第一選択薬治療開始 2 確定したてんかん重積状態(established status epilepticus) 発作持続時間が10-30分経過した時点 第二選択薬の治療に進む(考慮する)タイミング ただし日本では病院外発生の場合, 医療機関に搬送されるまでの 所要時間が20-40分程度かかり, この時点で第一選択薬治療開始が現状) 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 てんかん重積状態(SE)の分類 @Osalepsy
3 難治性てんかん重積状態(refractory status epilepticus) 発作持続時間30-60分経過した時点 第三選択薬の治療に進むタイミング 一般的に「一つ以上の第一選択薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)と 一つ以上の第二選択薬を投与しても, 臨床的または電気的発作が持続する状態」と定義 4 超難治性てんかん重積状態(super-refractory status epilepticus) 第三~四選択薬治療に抵抗性の状態 一般的に 「昏睡療法開始後24時間以上持続する, または繰り返すてんかん重積状態で, 薬剤の減量,中止に伴って発作が再発する状態も含む」と定義 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 てんかん重積状態(SE)の分類 @Osalepsy
A.けいれん性てんかん重積状態 強直間代発作重積状態 B.非けいれん性てんかん重積状態 焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)重積状態 全般起始非運動発作(欠神発作)重積状態 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 早期SE 5-10分 確定したSE 10-30分 難治性SE 30-60分以上 超難治性SE 24時間以上 5分 30分 10分 60分 10-15分 不明 t1時間: 治療開始のタイミング t2時間: 神経学的後遺症を残しうる時間 てんかん重積状態(SE)の分類 @Osalepsy t2時間に入る前に 発作を止めたい!!
●けいれん(てんかん)重積状態に求められる薬剤の特性 1. けいれん(てんかん発作)を ・できるだけ速く(即効性) ・完全に (強力+有効性) ・安全に (安全性) 止めることができるかが重要! 2. 発作抑制状態を長く維持(持続性)できる 3. 投与が容易(利便性) ここ数年でてんかん重積状態への適応薬の拡大や新薬が出されている けいれん(てんかん)重積状態の治療 @Osalepsy
小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 早期SE 5-10分 確定したSE 10-30分 難治性SE 30-60分以上 超難治性SE 24時間以上 病院前治療 ミダゾラム口腔用液 7ヶ月~1歳未満 : 2.5mg 1歳~5歳未満 : 5mg 5歳~10歳未満 : 7.5mg 10歳~18歳未満 : 10mg ジアゼパム坐剤 0.4~0.5mg/kg 抱水クロラール 坐剤/注腸液 30~50mg/kg or or 病院前 治療なし 静脈 ルート 確保 ミダゾラム口腔用液 7ヶ月~1歳未満 : 2.5mg 1歳~5歳未満 : 5mg 5歳~10歳未満 : 7.5mg 10歳~18歳未満 : 10mg ミダゾラム筋肉内投与 0.2~0.5mg/kg ミダゾラム鼻腔内投与 0.2mg/kg ミダゾラム頬粘膜投与 0.2~0.5mg/kg ジアゼパム注射液 直腸内投与 0.3~0.5mg/kg or or Yes No 静脈ルート確保 第一選択薬 ミダゾラムIV 0.15mg/kg (0.1~0.3mg/kgの追加可) (総量0.6mg/kg超えない) ロラゼパムIV 0.05mg/kg(最大4mgまで) (0.05mg/kgの追加可) (総量0.1mg/kgを超えない) or ジアゼパムIV 0.3~0.5mg/kg(最大10mg) or 第二選択薬 ホスフェニトインIV 22.5mg/kg フェニトインIV 15~20mg/kg フェノバルビタールIV 15~20mg/kg or レベチラセタムIV 20~60mg/kg or 第三選択薬 チオペンタールIV 3~5(-7)mg/kg チオペンタールCIV 2~5(-15)mg/kg/時 チアミラールIV 4~5mg/kg チアミラールCIV 2~5(-10)mg/kg/時 or ミダゾラムCIV 0.05~0.4mg/kg/時 or 第四選択薬 ケタミン 吸入麻酔 抗てんかん薬 ステロイド 免疫療法 てんかん外科治療 ケトン食療法 脳低温療法 バイタルサイン評価 発作型評価 救急車要請検討 バイタルサイン評価 呼吸循環安定化,発作型評価 静脈ルート確保,酸素投与 血糖測定(必要ならブドウ糖投与) 呼吸循環モニタリング 脳
2020年12月に日本で発売開始。 病院前治療または静脈路確保困難時に使用。 保護者又はそれに代わる適切な者が医療機関外でも投与可能に 重積状態への早期対応,早期抑制が期待される 使用量 頬粘膜投与 修正在胎 52週~ 1歳未満 2.5mg 1歳 ~ 5歳未満 5mg 5歳 ~10歳未満 7.5mg 10歳~18歳未満 10mg 注意点 呼吸抑制(4.0%)あるので 医療機関外で投与された場合には原則救急車要請考慮 ミダゾラム口腔溶液(ブコラム®) @Osalepsy
ミダフレッサ®(1A:10mg/10ml), ドルミカム®(1A:10mg/2ml) 当院小児科での第一選択薬としている 使用量 0.15(0.1-0.3)mg/kg/回 1mg/分かけてゆっくり静注(ミダフレッサ®) ※血管確保困難時 鼻腔/口腔,筋肉注射(ドルミカム®) (※適応外使用であるのに注意する) 利点 即効性あり 血管痛なし 効果持続時間は30-50/分だが,持続投与が可能 注意点 呼吸抑制認めるが,ジアゼパムよりは弱いとされる ミダゾラム静脈注射薬(ミダフレッサ®,ドルミカム®) @Osalepsy
セルシン®,ホリゾン®(1A:10mg/2ml) 大多数の病院での第一選択薬 使用量 0.1(0.3-0.5)mg/kg/回 ゆっくり静注 原液で投与 利点 即効性あり,高い発作抑制効果 注意点 急速静注で呼吸抑制 鎮静作用(眠気, ふらつき, 易刺激性) 血管刺激性あり⇒漏れると壊死 希釈すると結晶析出⇒希釈しないで使用 ジアゼパム静脈注射薬(セルシン®,ホリゾン ®) @Osalepsy
ロラピタ®(1A:2mg/1ml) 海外では多くの施設で病院内の第一選択薬 使用量 生後3カ月以上の小児に 0.05mg/kg/回(最大4mgまで) 追加で0.05mg/kg投与可(総量0.1mg/kgを超えない) 利点 即効性あり ジアゼパムやミダゾラムより 効果持続時間が長いとされる(が, エビデンスは乏しい) 注意点 呼吸抑制あるが, ジアゼパムより発生頻度は少ないとされる ロラゼパム静脈注射薬(ロラピタ®) @Osalepsy
ノーベルバール®(1V:250mg) 使用量 けいれん(てんかん)重積状態 15-20mg/kg/回 新生児発作 20mg/kg/回 維持 2.5-5mg/kg/日 1日1-2回 利点 呼吸抑制起こりにくい 新生児にも使用可能 半減期が数日と長い 注意点 効果発現が遅い(脳内最高血中濃度15分以上) 催眠効果あり,意識レベルの評価が困難になる場合も 静注用フェノバルビタール(ノーベルバール®) @Osalepsy
ホストイン®(1V:750mg/10ml) 使用量 初回 22.5mg/kg/回 (投与速度;3mg/kg/分 or 150mg/分を超えない) 維持 5-7.5mg/kg/日 1日1-2回 (投与速度;1mg/kg/分 or 75mg/分を超えない) 利点 意識レベルに影響しない ⇒脳炎・脳症等の意識障がいの際に評価がしやすい 効果持続時間10時間程度と長い 静脈炎のリスク少ない(フェニトインとの違い) 注意点 2歳未満に適応なし 血圧低下,不整脈に注意 (使用時は心電図モニター必要!!) ホスフェニトイン(ホストイン®) @Osalepsy
イーケプラ®(1V:500mg/5ml) 成人には【てんかん重積状態】で適応あり。 ※小児のてんかん重積状態には適応外使用である事に留意。 使用量 20~60mg/kg/日 (用法・用量については各マニュアル参照) 利点 他薬剤に相互作用が(ほとんど)ない 細やかな血中濃度測定が必要ではない事が多い (適応外であるが)新生児期~乳児にも使用されている 注意点 4歳未満に適応なし 傾眠,興奮,情緒不安定などが出る可能性ある レベチラセタム(イーケプラ®) @Osalepsy
チオペンタール(ラボナール®) チアミラール(イソゾール®) ※難治性てんかん重積状態に使用を考慮 適応外使用である事に留意,使用量は各マニュアル参照。 利点 (超)強力な抗けいれん作用(即効性,確実性高い) 脳保護作用 持続投与も可能 注意点 呼吸抑制,血圧低下,腸蠕動低下 ⇒人工呼吸管理,血圧管理下での使用(集中治療管理) 強アルカリ性⇒静脈炎に注意 脳波モニタリングが必要 静注用バルビツレート @Osalepsy
緊急時にすぐ使えるように 各病院毎にマニュアル作成(溶解方法なども含めて) ラミネート加工等して,救急外来や病棟に置いておこう! 到着時 けいれん あり なし 気道確保,酸素投与 バイタルサインチェック 帰宅 血管確保(検査) ブコラム®(口腔溶液) 修正在胎52週~1歳未満 2.5mg 1歳~5歳未満 5mg 5歳~10歳未満 7.5mg 10歳~18歳未満 10mg けいれん 不可 観察 (検査) けいれんなし 意識清明 けいれん再出現 意識不清明 続く 持続または消失後再発 消失 観察 (血管確保),検査 血管確保 できていなければ 骨髄針または 中心静脈で輸液確保 ミダフレッサ® 0.15mlgkg(0.15ml/kg)静注 最大0.5mg/kgまで追加静注可 続き 持続または消失後再発 消失 観察 または ミダゾラム維持療法 0.15mg/kg/時~0.5mg/kg/時 24時間持続静注 ノーベルバール® 20mg/kg ホストイン® 22.5mg/kg 持続または再発 消失 維持療法 ホスフェニトイン 5~7.5mg/kg/日 消失 持続または再発 維持療法 フェノバルビタール 内服薬or静注 2.5~5mg/kg/日 1日1or2回投与 脳波持続モニタリング 全身麻酔 ラボナール® 3-5mg/kg静注 ⇒以降持続静注 当院のけいれん(てんかん)重積状態プロトコール @Osalepsy
@Osalepsy 第117回医師国家試験問題-2 1歳未満(生後8か月まで)で 重積発作を繰り返している? ⇓ ある症候群の鑑別が重要!!
4万人に1人発症する難治性てんかんの1種 ・乳児期(1歳未満,主に生後6か月前後) に 発熱で頻回に誘発される全身性または片側性の強直間代発作,間代発作で発症。 しばしば重積状態となり,最初は熱性けいれん重積状態として対応されることが多い 入浴程度の低温の温熱刺激で発作の誘発も多くみられる。 光感受性発作(光で発作が誘発される)事が多い。 ・薬物にしばしば抵抗性 ・発症前の発達は正常であるが,重積状態を繰り返したことを反映し 1歳を過ぎると,発達遅滞や運動失調が出現し,ほぼ全例で知的発達障がいを来す。 ・次第に ミオクロニー発作(ビクっとする),非定型欠神発作(意識混濁する発作),焦点発作が合併 ・ドラベ症候群の患者は突然死の報告も多い てんかん重積状態に引き続き,脳炎・脳症を来す割合が高く ドラベ症候群に脳症が併発すると通常より非常に予後が悪い 乳児重症ミオクロニーてんかん (ドラベ症候群) @Osalepsy
発作間欠期脳波(自験例, 覚醒時) ※患者家族の同意を得て掲載 @Osalepsy
発作時脳波(自験例, 光刺激時) ※患者家族の同意を得て掲載 注意:本症例では家族の希望があり,光刺激をルート確保・医師の監視下で 施行しましたが, ドラベ症候群と診断している場合や疑わしい場合には 脳波検査中の光刺激は原則禁忌として対応しましょう。 @Osalepsy
ドラベ症候群のスクリーニングテスト 岡山大学小児神経科 大守伊織先生らによる @Osalepsy
第117回医師国家試験問題-3 @Osalepsy
(海馬硬化を伴う)内側側頭葉てんかん 発症年齢:ほとんどが20歳以前(4~16歳頃) 焦点てんかんの原因として最多 典型例では Initial precipitating injury(IPI),具体的には 熱性発作重積状態, 外傷, 低酸素性脳症, 中枢神経感染症 等の既往を乳幼児期にもつことが多く, IPI後,数年間の潜伏期間を経て焦点起始意識減損発作が初発 多くの症例で 自律神経性前兆(上腹部上行性不快感)や精神性前兆(恐怖感, Déjà Vuなど)を認め →一点凝視・動作停止, 自動症(口モゴモゴや手の身振り),体側上肢ジストニー肢位 etc… 薬物治療で発作が一旦寛解することもあるが,再発すると難治に経過しやすい 多くの症例でMRI検査で一側性(時に両側性)の海馬硬化を認める 外科的治療施行で発作消失率80%を見込める @Osalepsy
既往歴 1歳時 細菌性髄膜炎(聴力消失),6歳時 有熱時発作重積状態 周生歴 正期産, 仮死なし 発達歴 発症までの異常指摘なし 家族歴 家族歴に特記事項なし 現病歴 6歳時に有熱時にてんかん重積状態。 以後バルプロ酸,カルバマゼピンで管理。 10歳頃より焦点起始意識減損発作が 1日数回出現。 29歳時にバルプロ酸中止し, ラモトリギンを追加 以降も発作頻度変化なし 頭部MRI検査再検で左海馬の縮小,硬化あり 外科的治療も念頭に入れるも本人が拒否。 35歳時カルバマゼピンを中止し, ラコサミド内服に変更。 その後焦点起始意識減損発作は年に1-2回に減少 自験症例2 30歳代男性 @Osalepsy 左海馬の萎縮
結 語 ・熱性発作(熱性けいれん)は小児においてCommon Diseaseであり、 医療従事者は正しい病気の知識や対応を行う必要がある ・患者さんおよびご家族へは適切な対応、指導を行う →ガイドラインを一読しておくことを推奨 ・けいれん(てんかん)重積状態は、 速く・安全に・有効的な対応をすることが要求される →新しい薬の知識取得、各施設での重積状態時のマニュアル作成等検討を ・熱性発作≠てんかんが大原則ではあるが、 一部の症例には注意すべき疾患やてんかん症候群がある。 @Osalepsy
0 件のコメント
パニック発作
#救急外来 #精神科
37
32,681
最終更新:2021年1月6日
急性期医療で緩和ケアを実践する光景
#救急外来 #救急×緩和ケア
43
15,895
最終更新:2020年8月18日
刺された?咬まれた? 救急外来の動物外傷 この動物さえ おさえておけば大丈夫
#外傷 #初期研修医向け #救急外来 #救急 #研修医 #救急科 #初期研修医 #毒ヘビ #海洋生物 #マムシ #ヤマカガシ #エイ #クラゲ #創部処置 #オーグメンチン #サワシリン #破傷風 #破傷風トキソイド #オコゼ #カサゴ #動物咬傷
342
36,184
最終更新:2021年12月29日
Primary survey 気道(A)の異常【解剖・気道確保を中心に】
#救急外来 #ER #救急 #ABCDEアプローチ #みんなの救命救急科
192
80,972
最終更新:2022年10月30日
研修医が救急外来で迷子になる症候はこれだ〜問診で救急迷子からの卒業〜
#意識障害 #救急外来 #医学生 #研修医 #てんかん #問診 #救急科 #失神 #初期研修医 #一過性意識消失
533
82,114
最終更新:2022年4月7日
【デキレジ】頭痛×ER - 二次性頭痛のみかた -
#初期研修医向け #救急外来 #ER #CT #神経内科 #研修医 #MRI #脳神経内科 #頭痛
299
43,521
最終更新:2023年1月13日
<東京北総診>外来マニュアルではカバーできない初診外来の流儀
#総合診療 #家庭医療 #外来 #東京北総診 #ロールキャベツ系総診 #東京北医療センター #初診外来
4
444
最終更新:2023年5月29日
便秘の漢方薬ー何を選んだら正解?ー
#桃核承気湯 #麻子仁丸 #潤腸湯 #防風通聖散 #桂枝加芍薬大黄湯 #便秘薬 #大黄甘草湯
8
576
最終更新:2023年5月29日
ドクターヘリによる迅速な医療介入により救命し得た 硫化水素中毒の1例
#亜硝酸ナトリウム #ドクターヘリ #症例共有 #ノックダウン現象 #硫化水素中毒 #嗅覚神経麻痺
22
6,740
最終更新:2023年5月18日
地味に困る!皮膚そう痒症
#皮膚そう痒症 #シラミ #そう痒 #疥癬 #皮膚異常 #ナルフラフィン塩酸塩 #鎮痒性外用薬 #ブレオマイシン
75
8,226
最終更新:2023年5月15日
<東京北総診:医療業界の気になる言葉>
#総合診療 #プレゼン #東京北プレゼン部 #東京北総診 #ロールキャベツ系総診 #東京北医療センター #言葉遣い
33
10,722
最終更新:2023年4月26日
患者中心のケアって?~患者中心の医療技法から考える
#医療技法 #Illness #ケア #医療面接 #傾聴 #Disease #Health #全人的医療 #健康観
16
3,544
最終更新:2023年4月20日
内科(390)
消化器内科(58)
循環器内科(77)
呼吸器内科(79)
血液内科(34)
糖尿病内分泌代謝内科(51)
腎臓内科(32)
アレ膠リウマチ内科(31)
脳神経内科(98)
総合診療科(161)
救急科(353)
外科(35)
消化器外科(2)
呼吸器外科(3)
乳腺外科(0)
整形外科(84)
脳神経外科(16)
泌尿器科(21)
形成外科(21)
皮膚科(27)
眼科(19)
耳鼻咽喉科(13)
歯科口腔外科(9)
リハビリテーション科(10)
心臓血管外科(5)
小児科(50)
産婦人科(47)
精神科(62)
放射線科(53)
麻酔科(13)
緩和ケア科(23)
感染症科(206)
産業医(8)
初期研修医(373)
医学生(16)
その他(310)