テキスト全文
CGMとAGPの基本概念とデバイスの違い
#1. CGM・AGP読影 完全トリセツ 研修医が当直前に見るべき1本 このスライドでわかること 1. CGMデータの読み方(4ステップ)
2. 当直で血糖異常に出会ったときの判断フロー
3. 専門医にコンサルトすべきタイミング 三浦正樹
亀田総合病院 糖尿病内分泌内科 1 / 35
#2. CGMとは? — 「点」から「線」へ ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) たとえ話 HbA1cは「平均点」。CGMは全テストの「通知表」。 CGMで初めて「食後の山」「夜間の谷」が見える 出典: Danne T, et al. Diabetes Care 2017;40:1631-1640 2 / 35
#3. CGMの測定点数はデバイスで違う 項目 Libre 2(isCGM) Dexcom G7(rtCGM) 測定間隔 1分ごと(BT自動送信) 5分ごと AGPデータ間隔 15分ごと(96点/日) 5分ごと(288点/日) アラート アプリで随時通知
(Readerはスキャンのみ) リアルタイム通知 データ表示 スマホアプリで自動表示 自動でスマホ表示 どちらのデバイスでも、AGPレポートの読み方は同じです 出典: Abbott FreeStyle Libre 2 / Dexcom G7 添付文書 3 / 35
日本におけるCGMデバイスの保険収載情報
#4. 日本で保険収載されている
CGMデバイス(2026年版) isCGM(間歇スキャン式) FreeStyle Libre 2(Abbott)
BT自動送信(1分毎)
※保険はisCGMだが実質rtCGM rtCGM(リアルタイム) Dexcom G7: リアルタイム+アラート
Guardian 4: CSII連携が主用途 保険算定 isCGM: C150-7(1,250点/月)/ rtCGM: C152-2
対象: インスリン自己注射1日1回以上の外来患者 出典: 令和6年度診療報酬点数表 / 各社添付文書 4 / 35
#5. AGPレポート =
14日間の血糖を「1日」に重ねた地図 ① Snapshot TIR・TBR・TAR・GMI・CVなどの数値一覧 ② AGPグラフ 中央値+帯(25‑75%ile)で「典型的な1日」が一目でわかる ③ Daily View 1日ずつの血糖推移。原因探しに使う AGPレポートは3つのパートで構成されている 出典: Danne T, et al. Diabetes Care 2017;40:1631-1640 5 / 35
#6. TIR・TBR・TAR —
この3つだけ覚えてください ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) TIR(70〜180) 目標: >70% TBR(<70) 目標: <4% TAR(>180) 目標: <25% 国際コンセンサスの目標値をまず覚える 出典: Battelino T, et al. Diabetes Care 2019;42:1593-1603 6 / 35
AGPレポートの構成と低血糖の重要性
#7. Part 2:
AGP 4ステップ読影法 これがこのスライドの核心です 7 / 35
#8. 鉄則 最も大切な原則 低血糖を先に探し、
高血糖の山を削り、谷を埋める なぜこの順番? 高血糖を先に治そうとすると、インスリン増量で低血糖が悪化する。
必ず「低血糖→高血糖」の順。これを4ステップに分解したのが読影法。 出典: Battelino T, et al. Diabetes Care 2019;42:1593-1603 8 / 35
#9. Step 1: まずTBRを見る —
低血糖は命に関わる チェックポイント TBR <70 mg/dL が4%未満か?
TBR <54 mg/dL が1%未満か? 赤信号 TBR >10% → インスリン減量を最優先で検討
※著者の臨床基準(GL上の閾値定義なし) なぜ低血糖が先? 低血糖は数分で意識消失・痙攣を起こす。高血糖は数日〜数週の問題。
AGPグラフでは下部(赤い領域)に注目。 出典: Battelino T, et al. Diabetes Care 2019;42:1593-1603 9 / 35
#10. よくあるパターン — 夜間低血糖 ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) よくある原因 眠前の持効型が多すぎる
夕食後の超速効型が効きすぎ 対処法(研修医でも可) 持効型を2単位(10〜20%)減量
眠前に補食(牛乳1杯等) 夜間低血糖は自覚なく繰り返される — CGMがなければ発見困難 著者の臨床経験に基づく 10 / 35
血糖パターンの分析とよくある問題
#11. Step 2: 中央値(太い線)=
典型的な1日の流れ ① 食後の山 朝昼夕どれが一番高い?→治療ターゲット ② 空腹時(早朝) 起床時の血糖が高い?→暁現象や持効型不足 ③ 全体の高さ 中央値が180超?→基礎インスリン不足 中央値の3つの注目ポイントで治療介入先がわかる 出典: Danne T, et al. Diabetes Care 2017;40:1631-1640 11 / 35
#12. よくあるパターン — 食後高血糖 ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) 朝食後だけ高い場合 原因: 糖質過多(菓子パン等)
対処: 朝食内容の変更を提案 全食後に山がある場合 原因: 超速効型インスリン不足
対処: 各食前2単位追加(専門医と相談) 食後1〜2時間後のピーク位置(朝/昼/夕)で原因が絞れる 著者の臨床経験に基づく 12 / 35
#13. Step 3: 帯が広い =
日によるばらつきが大きい ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) IQR(25‑75%ile) 狭い→安定した管理 / 広い→ばらつき大 10‑90%ile(薄い帯) 極端に広い→Daily Viewで原因確認 出典: Danne T, et al. Diabetes Care 2017;40:1631-1640 13 / 35
#14. よくあるパターン —
週末だけIQRが爆発 平日 規則正しい食事・運動→血糖安定 週末 外食・飲酒・食事時間ずれ→血糖乱高下 研修医にできること 「平日はうまくいっていますね。週末だけ少し乱れていますが、何か生活パターンが違いますか?」と聞くだけでOK。 著者の臨床経験に基づく 14 / 35
症例を通じた4ステップ読影法の実践
#15. Step 4: アクションは
必ずこの順番で ① TBR対策(最優先) 低血糖があるなら
まずインスリン減量 ② 空腹時高血糖 持効型インスリン or
メトホルミンの調整 ③ 食後高血糖 超速効型追加 or
食事指導 ④ 日差変動 生活習慣の安定化
インスリン種類変更 ①を飛ばして③から始めると低血糖が悪化する。「谷→山」の順! 出典: Battelino T, et al. Diabetes Care 2019;42:1593-1603 15 / 35
#16. 4ステップ読影法 —
フローチャート完全版 ★保存推奨 Step 1: TBR を確認 TBR >4% → 減量/生活指導 TBR <4% → Step 2へ Step 2: 中央値パターンを確認 Step 3: 帯の幅(IQR)を確認 Step 4: アクション決定(優先順位順) 保存しておくと便利! 著者作成(Battelino 2019 / Danne 2017に基づく) 16 / 35
#17. 症例1: HbA1c 7.8% —
4ステップで読んでみよう ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) 背景+アクション 70代男性。2型DM。BOT。
→超速効型2〜4単位追加+栄養指導 4ステップ読影 Step1: TBR 2%→OK
Step2: 昼食後250超→問題
Step3-4: IQR広→昼食後対策優先 4ステップで10秒で「昼食後」が問題とわかる ※教育用架空症例 17 / 35
#18. 症例2: HbA1c 7.2% —
TBRから見る習慣 ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) 背景+アクション 30代女性。1型DM。CSII。
→基礎レート0.1〜0.2減+運動日設定 4ステップ読影 Step1: TBR 6%→4%超え!
Step2: 夕方16-18時に低下
Step3-4: TBR対策が最優先 HbA1c 7.2%でもTBR 6%は「隠れた低血糖」 ※教育用架空症例 18 / 35
妊婦のCGMと当直での実践フロー
#19. 症例3: 妊婦のCGM —
目標値が違う 妊婦のTIR目標 TIR: 63〜140 mg/dL ≥70%
TBR <63: <4% / TAR >140: <25%
※CONCEPTT試験 / ※63-120も議論あり この症例の読影 朝食後だけTAR突出→パン食が原因
対策: ご飯+野菜先食べ→ピーク平坦化 妊婦こそCGMの恩恵が最大。通常より厳しい目標が必要 出典: Feig DS, et al. Lancet 2017;390:2347-2359 (CONCEPTT) / ※教育用架空症例 19 / 35
#20. CGM あるある落とし穴 5選 研修医がハマりやすいポイント ① CGMの値だけで治療判断
→ 必ず指先穿刺で確認してから対応
② センサー装着直後の値を信じる
→ 最初の24時間はずれやすい
③ TBRを見ずにTARだけ見る
→ 低血糖は高血糖より危険
④ 患者の生活を聞かずに
データだけ見る
→ AGPの「なぜ」は生活の中にある
⑤ アラートが鳴っても慌てない
→ まず指先穿刺で確認 著者の臨床経験に基づく 20 / 35
#21. コメディカルの視点 —
チームで使うCGM 看護師の声 「夜間の低血糖アラートで
早期対応できた」
「患者さんに波形を見せると
食事指導が入りやすい」
「センサーの貼り替えは
患者指導が重要」 栄養士・薬剤師の声 「食後の山が見えると
栄養指導が具体的になる」
「インスリンの効き方が
可視化できて説明しやすい」
「退院指導でAGPを使うと
患者の理解が深まる」 CGMは医師だけのツールではない。チーム医療の共通言語になる 著者の臨床経験に基づく 21 / 35
#22. Part 3: 当直で使える!実践フロー CGMアラートが鳴ったら、
このスライドを開いてください 22 / 35
CGMアラートへの対応と入院中のポイント
#23. 当直中にCGMに出会う場面は3つ 場面① 入院患者のCGMアラートが鳴った
看護師から「血糖のアラームが
鳴っています」と連絡 場面② CGM装着患者が救急に来た
腕にセンサーを貼った患者の
血糖をどう評価する? 場面③ CGMの値が血糖測定器と違う
CGMは間質液、指先は血液。
ずれて当然 この後のスライドで、全場面に対応できるフローを解説します 著者の臨床経験に基づく 23 / 35
#24. CGMアラートが鳴ったら —
当直対応フロー ★保存推奨 低血糖(<70 mg/dL) 1. 意識レベル確認
2. 経口可→ブドウ糖10〜20g
3. 経口不可→50%Glu 20〜40mL静注
4. 15分後に指先穿刺で再測定
5. 繰り返す→持続点滴+コンサルト 高血糖(>250 mg/dL) 1. 血液ケトン体チェック
2. ケトン陽性→DKA疑い→即コンサルト
3. ケトン陰性→インスリン指示簿で補正
4. 原因: 感染/ステロイド/食事過多/打忘れ ※Libre 2: アプリ使用時はリアルタイム通知あり
(Reader/BT切断時はスキャンのみ)。Dexcom G7: リアルタイム通知 出典: ADA Standards of Care 2026;49(Suppl.1):S150-165 24 / 35
#25. CGMと指先穿刺の値が違う —
それは正常です ずれる理由 CGMは間質液中グルコースを測定
血糖に対して約10〜15分の遅延あり 特にずれやすい場面 低血糖からの回復直後
食後の急上昇中
センサー装着後24時間以内 MARD(平均絶対相対差) Libre 2: 約9.2% / Dexcom G7: 約8.2%(腕装着)
→ 血糖200のとき±16〜18のずれは許容範囲 鉄則: 臨床判断に迷ったら指先穿刺で確認 出典: Abbott / Dexcom 添付文書(MARD値) 25 / 35
#26. 入院中のCGM —
場面別に見るポイント 術前 TBR確認。低血糖あるなら
術前にインスリン減量 術後 TAR確認。ストレス高血糖
ICU 140-180 / 非ICU 100-180 ステロイド使用中 午後〜夕方に高血糖が典型
昼/夕食前にインスリン補正 経管栄養 本来は血糖が平坦なはず
山があれば投与速度見直し 出典: ADA Standards of Care 2026;49(Suppl.1):S150-165 26 / 35
糖尿病内科へのコンサルトと保険算定
#27. SS(スライディングスケール)は
「後手」の治療 ※模式図(実際のAGPレポートとは異なります) SS = 後手 「今の血糖」にしか反応しない
乱高下が起きやすい CGMベース = 先手 パターンで「明日の処方」を変える
先手で血糖管理が安定 出典: ADA Standards of Care 2026;49(Suppl.1):S150-165 27 / 35
#28. こんなときは迷わず
糖尿病内科にコンサルト すぐコンサルト TBR >10%(重症低血糖リスク)
※GL上の明確な閾値定義はなし
DKAが疑われるとき
原因不明の血糖変動 なるべく早めにコンサルト 1型DMのポンプ設定変更
妊娠糖尿病のインスリン調整
退院後のCGM処方の相談 迷ったらコンサルト。早すぎるコンサルトはない。 著者の臨床基準(GL上の明確な閾値定義なし) 28 / 35
#29. 研修医が「CGM使ってみませんか?」
と提案できる場面 CGMが特に有用な患者 インスリン使用中で低血糖が心配な患者
HbA1c目標未達で原因不明の患者
妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠
無自覚性低血糖の患者 提案の仕方(例) 「血糖の変動を詳しく見るセンサーがあるのですが、
糖尿病の先生に相談してみましょうか?」 出典: ADA Standards of Care 2026;49(Suppl.1):S150-165 29 / 35
#30. 保険算定 —
研修医も知っておくべき最低限 isCGM(Libre 2) C150-7 間歇スキャン式 1,250点/月 rtCGM(Dexcom G7等) C152-2 持続血糖測定器加算 研修医が注意すべきこと 対象: インスリン自己注射1日1回以上の外来患者
CGMを使っている患者の管理料算定を確認 出典: 令和6年度診療報酬点数表 30 / 35
今日の学びと次のステップの提案
#31. Part 4: Take Home & Next Step 今日覚えることは3つだけ 31 / 35
#32. もう一度 — 4ステップ読影法 Step 1 低血糖を探す(Safety First)
TBR <70 4%未満? <54 1%未満? Step 2 中央値パターンを読む
食後の山はどこ?空腹時は? Step 3 帯の幅を見る
IQR広い=日によるばらつき大 Step 4 アクションを決める
①TBR→②空腹時→③食後→④日差変動 低血糖を先に探し、高血糖の山を削り、谷を埋める 出典: Battelino 2019 / Danne 2017 に基づく著者作成 32 / 35
#33. 明日からできる3つのこと ① AGPレポートを1枚読んでみる 4ステップで読影。慣れれば10秒で読めます。 ② S16とS24をスマホに保存 フローチャートとアラート対応フロー→当直で使えます。 ③ 迷ったら糖尿病内科にコンサルト 「CGMのデータを見てほしい」と言えばOKです。 著者作成 33 / 35
#34. もっと学びたい先生へ 亀田総合病院 糖尿病内分泌内科 CGM 300例以上の使用経験
研修医がファーストオーサーで論文を書ける環境
見学申込: recruit.kameda.com シリーズ次回予告 第2弾「周術期血糖管理」近日公開予定
X: @DrMiura_Obesity — 質問・フィードバックはDMへ 34 / 35
参考文献と今後の学びの機会
#35. 参考文献 1. Battelino T, et al. Diabetes Care.
2019;42:1593-1603.
2. ADA Standards of Care 2026.
Diabetes Care 2026;49(Suppl.1):S150-165.
3. Nathanson D, et al.
Diabetologia. 2025;68(1):41-51.
4. Danne T, et al. Diabetes Care.
2017;40:1631-1640.
5. Feig DS, et al. Lancet.
2017;390(10110):2347-2359. 35 / 35