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低血糖 完全対応マニュアル ~研修医1日目から使える!当直で絶対迷わない処方・対応・退院指導~

投稿者プロフィール
三浦正樹 糖尿病専門医・指導医

医療法人鉄蕉会亀田総合病院

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投稿した先生からのメッセージ

亀田総合病院 糖尿病内分泌内科の三浦正樹です。

低血糖は研修医が当直で最も多く遭遇するコールの一つですが、「50%ブドウ糖を1本入れて終わり」になっていないでしょうか?投与後の再評価、SU薬性低血糖の72時間モニタリング、無自覚低血糖患者へのCGM導入など、実は奥が深いテーマです。

本マニュアルは「研修医1日目からそのまま当直で使える」ことを目標に、平易な日本語で書きました。日本のガイドラインや現場の標準を否定するのではなく、海外の選択肢も提示する形でまとめています。

すべての引用にDOIを併記し、PubMed/CrossRef APIで実在検証していますので、気になる文献はリンクから直接アクセスできます。

ご質問・改善点はXのアカウント @DrMiura_Obesity までお気軽にどうぞ。糖尿病内分泌内科への見学・専門研修もお待ちしています。

概要

低血糖は当直で最も多いコールの一つで、対応を誤ると死亡リスクが2倍に跳ね上がります。本スライドでは研修医1日目から当直現場で使えるように、ブドウ糖の選び方からSU薬性遷延性低血糖への対応、グルカゴン製剤の使い分け、特殊集団・退院指導まで42枚で完全網羅しました。引用は全件DOIで統一表記し、PubMed・CrossRef APIで実在検証済みです。

【目次】

・低血糖の定義とガイドライン比較(ADA 2026/JDS/JBDS-IP/Endocrine)

・初期対応アルゴリズム(15-15ルール・意識障害時の対応)

・ブドウ糖製剤の使い分け(50% / 10% / 20%)

・グルカゴン製剤4種類とバクスミーの優位性

・SU薬性遷延性低血糖(入院基準・モニタリング・参考所見)

・特殊集団(透析・肝障害・ICU・高齢者・終末期)

・無自覚低血糖(IAH)とCGM介入RCT

・退院指導(シックデイ・運転制限・家族へのバクスミー教育)

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テキスト全文

低血糖完全対応マニュアルの概要と重要性

#1.

当直No.1コール 研修医1日目から使える 低血糖 完全対応マニュアル ブドウ糖・グルカゴン・SU薬遷延・退院指導 42スライド・無料 糖尿病専門医が解説

#2.

低血糖 完全対応マニュアル ~研修医1日目からわかる! 当直で絶対迷わない処方・対応マニュアル~ このスライドでわかること ① ブドウ糖の正しい使い方(投与後の再評価がプロの仕事) ② グルカゴンの選び方(鼻スプレー vs 注射) ③ SU薬の遷延性低血糖・特殊集団・退院指導まで網羅 三浦正樹 亀田総合病院 糖尿病内分泌内科 X: @DrMiura_Obesity

#3.

このスライドでわかること【保存推奨】 ① ブドウ糖の使い方 50/10/20%の使いどころ 投与後の再評価が決め手 ② グルカゴンの選び方 GlucaGen vs バクスミー 家族が打てる製剤を処方 ③ SU薬の遷延性低血糖 72時間モニター必要 ブドウ糖持続点滴で維持 ④ 特殊集団の対応 ⑤ 退院指導と運転制限 透析・肝・ICU・高齢 目標と注意点を整理 シックデイ・運転 家族へのバクスミー教育 2 / 42

低血糖の危険性と重症化リスク

#4.

なぜ低血糖は怖いのか — 当直No.1コール 急性合併症 慢性影響 社会的影響 意識消失・痙攣 心血管イベント 転倒・外傷 認知機能低下 QOL低下 低血糖恐怖症 運転事故のリスク 労働災害 家族の負担 「ただの低血糖」は存在しない — 全身に影響する緊急事態 ADA Standards 2026 Section 6 / NICE-SUGAR (doi.org/10.1056/NEJMoa1204942) 3 / 42

#5.

重症低血糖の本当の怖さ — 死亡リスク2倍 NICE-SUGAR 2012 Krinsley 2020 — もっと衝撃的 重症低血糖を起こした患者は 起こさなかった患者の 死亡リスク 約2.1倍 (aHR 2.10、95%CI 1.59-2.77) 「いつもより低い」が一番危険 HbA1cが高い人を急に下げると 死亡リスクが跳ね上がる → 「相対的低血糖」と呼ぶ 血糖値そのものより「いつもとの差」が問題になる NICE-SUGAR 2012 (doi.org/10.1056/NEJMoa1204942) / Krinsley 2020 CCM (doi.org/10.1097/CCM.0000000000004599) 4 / 42

#6.

低血糖の3段階(Level 1/2/3)— まず数字を覚えよう Level 1 70 mg/dL未満 注意サイン 症状: 動悸・ 冷汗・空腹感 → すぐ対応する Level 2 54 mg/dL未満 危険水準 中枢神経症状 (集中困難等) → 本格治療が必要 Level 3 数値関係なし 他人の介助が 必要な状態 意識障害・痙攣 → 重症低血糖 覚える数字は「70」「54」「介助」の3つだけ ADA Standards 2026 Section 6 (doi.org/10.2337/dc26-S006) / 国際低血糖研究グループ 5 / 42

低血糖のガイドラインと治療フロー

#7.

4つのガイドラインを比較 — 世界共通は「70」 アメリカ(ADA 2026) Level 1: <70 / Le vel 2: <54 mg/dL 内分泌学会(Endocrine) Level 1: <70 / Le vel 2: <54 mg/dL 日本(JDS 2024) イギリス(JBDS-IP) Level 1: ≤70 / Le vel 2: <54 mg/dL 治療閾値: <72 mg/dL「4.0は床」 70 mg/dL前後が世界共通の警戒ライン ADA 2026, Endocrine Society 2023 (doi.org/10.1210/clinem/dgac596), JDS 2024, JBDS-IP 2023 6 / 42

#8.

全体フロー(マスターアルゴリズム)— この1枚で全体把握 ステップ別の判断フロー Step 1: 血糖測定 → 意識を確認する Step 2A: 意識あり・口から飲める → ブドウ糖15g(ジュース150mL等)を経口 → 15分後に血糖再測定 Step 2B: 意識なし・飲めない → 静脈路あり: ブドウ糖の点滴(50% / 10% / 20%) → 静脈路なし: グルカゴン注射 or バクスミー鼻スプレー Step 3: 投与後10-15分で再検 → 必要なら反復 Step 4: 3回繰り返してもダメ → 内分泌科にコール 「血糖測定→意識評価→投与→再検」の4ステップ 7 / 42

#9.

意識ある人の対応 ―「15-15ルール」 15-15ルール(世界共通) 何をあげるか? 1. 2. 3. 4. ○ ブドウ糖タブレット 4-5錠 ○ ジュース(オレンジ・コーラ) 150-200mL ○ ハチミツ 大さじ1 × チョコレート(脂肪で吸収が遅い) 速効性炭水化物 15gを摂取 15分後に血糖を再測定 まだ70未満ならもう一度繰り返し 落ち着いたら補食(複合糖質)で安定化 15g摂取 → 15分後再検 → 必要なら反復 ADA Standards 2026 / Endocrine Society 2023 / JBDS-IP 2023 8 / 42

意識障害時のブドウ糖投与法と再評価

#10.

用量の考え方 ― 日本と海外で違う 日本糖尿病学会(JDS) 欧米(ADA / Endocrine / JBDS-IP) 推奨: 5-10g 症状改善ベースの用量設定 → 効果不十分なら追加投与 → 5-10g追加 推奨: 15-20g PK/PD研究ベースの用量設定 → 1回でしっかり投与 → 15分後に評価 両方とも臨床的に有効。患者・反応性に応じて調整する JDS 糖尿病診療ガイドライン2024 / ADA Standards 2026 9 / 42

#11.

意識ない人 ― 点滴ルートがある場合 日本で広く使われる方法 海外ガイドラインの第一選択 50%ブドウ糖 20mLを緩徐に静注 → 含有量10g → 速効性が魅力 効果不十分なら追加投与で対応 10%ブドウ糖 200mLを15分点滴 20%ブドウ糖 100mLを15分点滴 → いずれも含有量20g JBDS-IP 2023推奨 いずれも有効。患者・血管確保状況で使い分け JBDS-IP 2023 / Moore 2005 RCT (doi.org/10.1136/emj.2004.020693) 10 / 42

#12.

意識ない人 ― 点滴ルートがない場合 GlucaGenノボ注射 1mg 投与法: 筋肉注射 or 皮下注射 効果発現: 12-13分 再構成必要(粉と水を混ぜる) 保険適用 ○ バクスミー点鼻粉末 3mg 投与法: 鼻にスプレー1回 呼吸不要・吸気不要 効果発現: 16分 保険適用 ○ (2020年承認) 投与後は必ずブドウ糖の経口補給を(再低血糖の予防) Rickels 2016 (doi.org/10.2337/dc15-1498) / Yale 2017 (doi.org/10.1089/dia.2016.0460) 11 / 42

50%ブドウ糖の特性と安全な使用法

#13.

投与後の再評価 ― 10-15分後に必ず血糖再測定 血糖 100 mg/dL以 上 血糖 70-100 mg/dL 血糖 70 mg/dL未満 維持期へ 経口可能なら 食事 or 補食 経口不可なら持続点滴 補食して30分後再測定 完全には安全圏ではない 気を抜かない 同じ治療を反復 (最大3サイクル) 3回ダメなら内分泌コール 「投与して終わり」は危険 — 必ず再検と次の判断を 12 / 42

#14.

50%ブドウ糖20mLを使いこなす ― 「再評価」が決め手 魅力 — なぜ広く使われるか 覚えておきたいポイント 1本に含まれるブドウ糖10g 効果発現が速い(数分以内) 病棟で常備しやすい 速効性が当直現場と相性◎ 海外推奨用量は20g → 1本(10g)で終わらず再評価 → 必要なら追加投与 → SU性は持続点滴で維持 「1本入れた後の再評価」が一番大事 JBDS-IP 2023 / Moore 2005 RCT (doi.org/10.1136/emj.2004.020693) 13 / 42

#15.

50%ブドウ糖の特性 ― 知って安全に使う 高濃度製剤として理解しておきたいこと 浸透圧 2,525 mOsm/L = 血液の8倍の濃さ → 血管外漏出時には組織損傷リスクがある 対策(基本) 1. 太い静脈で投与する 2. 投与前後でflush(生食で洗い流し)を確認 3. 漏出兆候(腫脹・疼痛)があれば即座に中止 Hurtubise 2021 SR (doi.org/10.1017/S1049023X21001047) のデータ → 50%群: 310例中13例(4.2%)に局所有害事象 → 10%群: 1057例中0例 特性を理解した上で安全に使うのがプロの仕事 Hurtubise 2021 Systematic Review (doi.org/10.1017/S1049023X21001047) 14 / 42

持続点滴の選び方と患者プロファイル

#16.

選択肢としての10% / 20%ブドウ糖 こんな時は10% / 20%ブドウ糖が便利 ・末梢ルートしか取れない患者 ・血管が脆弱な高齢者・透析患者 ・持続的な維持が必要(食事困難・SU性低血糖) 用量の対応表 ・10%ブドウ糖 200mL = 20g (血液の2倍の濃さ) ・20%ブドウ糖 100mL = 20g (血液の3倍の濃さ) ・50%ブドウ糖 20mL = 10g (血液の8倍の濃さ) 「使い分け」を覚えておくと選択肢が広がる 15 / 42

#17.

10%と50%、効果はほぼ同等 ― エビデンス Moore & Woollard 2005 RCT Verma 2024 RCT (新エビデンス) 救急隊現場、n=51 10%ブドウ糖 vs 50%ブドウ糖 回復時間: 同等(約8分) 治療後血糖: 10%群がマイルド (6.2 vs 9.4 mmol/L、p=0.003) 救急室、10/25/50%を比較 回復時間に有意差なし → どの濃度でも効果は得られる 状況に応じて選べばよい どの濃度でも血糖回復は得られる ― 状況で選ぶ Moore 2005 (doi.org/10.1136/emj.2004.020693) / Verma 2024 (doi.org/10.1016/j.ajem.2024.05.029) 16 / 42

#18.

低血糖が落ち着いた後の持続点滴 ― 選び方 患者プロファイル別の推奨 普通の成人・絶食中: 10%ブドウ糖 100 mL/h 心不全・腎不全(水分制限あり): 20%ブドウ糖 50 mL/h SU薬性低血糖(再発予防): 10%ブドウ糖 50-100 mL/h × 24-72時間 ICU・血糖変動が大きい: 5%ブドウ糖 100 mL/h(CGM併用) 重要ポイント → SU性低血糖は必ず持続点滴で維持(理由は後述) → 食事再開できるまでは止めない SU性は最低24時間、最大72時間持続点滴 17 / 42

グルカゴン製剤の種類と処方ルール

#19.

グルカゴン製剤4種類 ― 「血糖を上げるホルモン」を補充 GlucaGenノボ注射 バクスミー点鼻粉末 1 mg 筋注/皮下注 12-13分で効果 再構成必要 / 国内承認○ 3 mg 鼻スプレー1回 16分で効果(吸気不要) 国内承認○ (2020年) Zegalogue (海外のみ) Gvoke HypoPen (海外) 0.6 mg 自動注射器 10分で効果(最速) Ready-to-use / 国内未承認 1 mg 注射(液体) 13.8分で効果 Ready-to-use / 国内未承認 国内で使えるのはGlucaGenとバクスミーの2種類 doi.org/10.2337/dc20-2995 (Pieber) / doi.org/10.1089/dia.2016.0460 (Yale) / doi.org/10.1136/bmjdrc2021-002137 (Christiansen) 18 / 42

#20.

バクスミー革命 ― 介護者投与成功率94% Yale 2017 RCT なぜここまで違うのか 成功率の比較 従来注射: 1. 粉と水を混ぜる(再構成) 2. 針を出す 3. 打つ → 慌てると失敗する バクスミー(鼻スプレー): 94% ★ 従来の注射型グルカゴン: 13% バクスミー: 1. 蓋を開けて鼻に押すだけ 「家族が打てる」=「命が救える」 Yale 2017 NEJM (doi.org/10.1089/dia.2016.0460) 19 / 42

#21.

グルカゴンの処方ルール ― ADA 2026推奨 ADA 2026 Rec 6.13 処方を検討する場面 「インスリン使用全例にグルカゴンを 処方し、家族・介護者に投与方法を 訓練する」 (Grade E) ・1型糖尿病すべて ・SU薬使用の高齢者 ・無自覚低血糖の既往あり ・反復重症低血糖 保険:在宅自己注射 指導管理料に併算可 効かない場面: 重症肝障害(肝臓のグリコーゲンが空) ADA Standards 2026 Rec 6.13 (doi.org/10.2337/dc26-S006) 20 / 42

SU薬の特性と低血糖リスクの管理

#22.

SU薬って何? なぜ低血糖が長引く? SU薬 = 膵臓を刺激してインスリンを出させる飲み薬 代表的な薬: ・グリベンクラミド(オイグルコン・ダオニール)— リスク最高 ・グリメピリド(アマリール)— リスク高 ・グリクラジド(グリミクロン)— リスク中 薬の特性比較(下表) ・グリベンクラミド: 4-10h / 活性代謝物あり(強) / 腎排泄50% / 最高 ・グリメピリド: 5-8h / 活性代謝物あり / 腎排泄60% / 高 ・グリクラジド: 6-15h / 活性代謝物なし / 腎排泄<20% / 中 腎機能が悪い人ほど薬が体に溜まり、24-48時間も低血糖が続く Jönsson 1998 (doi.org/10.1007/s002280050403) 21 / 42

#23.

SU薬性低血糖の入院基準 家に帰せる人(全部○) 入院が必須(1つでも該当) ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × グリクラジドだけ使用 腎機能 eGFR ≥ 60 75歳未満 8時間モニターで再発なし ご飯が食べられる 家族の見守りあり グリベンクラミド・グリメピリド eGFR < 60 75歳以上 or 認知症あり 自殺企図・薬の飲みすぎ 反復低血糖 家族支援なし 迷ったら入院 — SU性は遷延する前提で動く 22 / 42

#24.

参考所見:オクトレオチドという海外の選択肢 【重要】日本では適応外使用 オクトレオチド(サンドスタチン)の国内保険適応 → 消化管ホルモン産生腫瘍・先端巨大症・消化管閉塞・ 上部消化管出血・膵液瘻 など → SU薬性低血糖は適応外(海外の経験的使用) 海外で報告されている使い方(参考) ・SC 50 μgを6-8時間ごと、24-48時間継続 ・体重<50kg・高齢者: 25 μgに減量 ・機序: インスリン分泌を抑制(ソマトスタチン類似体) 国内で使う場合の注意 → 適応外のため施設ごとの判断・倫理的検討が必要 → 治療の柱は「ブドウ糖持続点滴 + 厳格モニタリング」 国内では適応外。基本はブドウ糖持続点滴+72時間モニター 23 / 42

低血糖のモニタリングと入院基準

#25.

参考所見:海外で報告されているエビデンス Fasano 2008 RCT McLaughlin 2000 Boyle 1993 標準療法 vs +オクトレオチド 再発率 60% → 25% (海外データ) 救急室での比較試験 標準: 9人中6人再発 オクトレオチド: 9人中0人 健常者でクロスオーバー ブドウ糖必要量を50%減 (海外データ) 2025年SRでも有効性は支持。ただし国内は依然適応外 Ryan SR 2025 (doi.org/10.1007/s13181-024-01054-5) / Fasano 2008 (doi.org/10.1016/j.annemergmed.2007.06.493) / McLaughlin 2000 (doi.org/10.1067/mem.2000.108183) 24 / 42

#26.

遷延しやすい人の特徴 ― 危険トリオに注意 リスク因子と影響度 ・腎機能 eGFR < 30 → リスク 5倍 (HR 4.96) ・75歳以上 → リスク 2-3倍 ・ST合剤併用 → リスク 3.78倍 (薬の分解を邪魔する) ・ワルファリン併用 → リスク 1.5-2倍 ・フルコナゾール・フィブラート → CYP2C9阻害でSU蓄積 ・低栄養・絶食 → 体が血糖を作れない 覚え方 → 「高齢 + 腎不全 + 多剤併用」=危険トリオ → この組み合わせを見たら遷延を覚悟する 「高齢 + 腎不全 + 多剤併用」は危険トリオ van Dalem 2016 (doi.org/10.1136/bmj.i3625) 25 / 42

#27.

モニタリング期間 ― 「何時間見ればいい?」 低リスク 8-12時間 中リスク 24時間 グリクラジド使用 eGFR ≥ 60 75歳未満 グリメピリド使用 eGFR 45-59 高リスク 48時間 最高リスク 72時間+ グリベンクラミド or eGFR 30-44 or 75歳以上 グリベンクラミド +eGFR<30 or 透析 重症肝障害 「夜中に来て、朝になっても帰せない」は普通のこと 26 / 42

透析患者のインスリン調整と経口薬の扱い

#28.

透析患者のインスリン調整 ― 低血糖になりやすい なぜ低血糖になりやすいか 腎臓がインスリンを 分解できない → インスリンが体に残る → 効果が長引く 用量調整のルール eGFR < 30 → インスリン25-30%減 透析開始時に追加で25%減 基礎インスリンの選択: グラルギン → デグルデクへ (より低血糖が少ない) 透析開始のタイミングで必ずインスリン減量 Blaine 2022 SR (doi.org/10.1002/phar.2659) / KDIGO 2022 (doi.org/10.1016/j.kint.2022.06.008) 27 / 42

#29.

透析患者の経口薬の扱い ― 安全な薬を選ぶ 透析(eGFR < 30)患者で使える薬 × 禁忌: メトホルミン(eGFR<30)、グリベンクラミド、グリメピリド △ 慎重に使う: グリクラジド(活性代謝物なしで比較的安全) SGLT2阻害薬(原則中止、ダパグリフロジンは<25まで使用可) ○ 安全に使える: DPP-4阻害薬(リナグリプチンは用量調整不要) GLP-1受容体作動薬(リラグルチド・セマグルチド) 覚え方:インスリン中心、必要ならDPP-4i併用 KDIGO 2022 / Klein 2025 Diabetes Care (doi.org/10.2337/dci24-0081) 28 / 42

#30.

重症肝障害の落とし穴 ― グルカゴンが効かない なぜ低血糖が遷延するか 肝臓は血糖の貯蔵庫 ・糖を作る能力(糖新生) ・糖を貯める(グリコーゲン) → 重症肝障害ではどちらも 弱い・空っぽ 対応のポイント × グルカゴンは効かない (肝臓の糖の貯金が空) ○ 10%ブドウ糖の持続点滴 ○ 必要なら20%ブドウ糖 血糖目標: 100-180 mg/dL (厳しすぎは禁物) 重症肝障害ではグルカゴン無効 → ブドウ糖点滴で対応 29 / 42

高齢者の血糖管理とCGMの活用

#31.

ICU・敗血症の低血糖 ― 「攻め」より「守り」 NICE-SUGAR 2009の教訓 Krinsley 2020 — 新しい視点 ICUで厳しく管理(81-108) vs 緩く管理(<180) 「いつもと比べて低い」が 一番危険 → HbA1cが高い人を 急に下げてはいけない → 相対的低血糖が 死亡最強リスク 厳しく管理した群: → 重症低血糖が13倍増えた → 死亡率も悪化 ICU血糖目標は140-180 mg/dL(SCCM 2024、ADA 2026) NICE-SUGAR 2009 (doi.org/10.1056/NEJMoa0810625) / Krinsley 2020 (doi.org/10.1097/CCM.0000000000004599) / SCCM 2024 (doi.org/10.1097/CCM.0000000000006174) 30 / 42

#32.

高齢者の血糖目標 ― カテゴリー別個別化 カテゴリー I 健康・自立 カテゴリー II 軽度認知低下・フレイ ル カテゴリー III 重度認知低下・要介 護 HbA1c <7.0% 下限6.5% 通常の血糖管理 HbA1c 7.5% (SU/インスリ ン使用時) 下限7.0% HbA1c 8.0-8.5% 下限7.5% 低血糖回避を最優先 「年齢×状態」で目標を変える — 一律7%以下は古い 高齢者糖尿病診療ガイドライン2023 (JDS / 日本老年医学会) 31 / 42

#33.

高齢者にCGM、終末期の管理 高齢者CGM — WISDM試験 終末期糖尿病 — Diabetes UK 60歳以上の1型糖尿病(n=203) 26週介入 Stage A(活動的) Stage B(弱り) Stage C(最終週) Stage D(数日前) → 段階的に管理を緩和 → HbA1c目標は撤廃 低血糖時間: 73分/日 → 39分 重症低血糖: 1件 vs 10件 → CGM群が圧倒的に少ない 終末期は「もう厳しく管理しない」と決める勇気 WISDM 2020 (doi.org/10.1001/jama.2020.6928) / Diabetes UK End of Life 2021 32 / 42

退院指導の重要ポイントと家族教育

#34.

無自覚低血糖(IAH)の評価 ― 警告症状が消える状態 Goldスコア(簡単・1問) 「低血糖の始まりに気づきますか?」 1-7点で答える → 4点以上でIAH 外来即時で評価可能 感度は劣るが簡便 Clarkeスコア(詳細・8問) 8項目アンケート → 4点以上でIAH 日本PR-IAH研究で 重症低血糖予測: Clarkeが優位(aHR 8.27) 3週間厳格に低血糖を避けると意識が戻る(Cranston 1994) Gold 1994 (doi.org/10.2337/diacare.17.7.697) / Clarke 1995 (doi.org/10.2337/diacare.18.4.517) 33 / 42

#35.

CGMで重症低血糖が72%減 ― IAHには絶対導入 HypoDE HypoCOMPaSS 1型DM IAH対象 重症低血糖 72%減 (IRR 0.28) 2x2要因RCT 8.9件→0.4件/患者年 重症低血糖ほぼ消失 DIAMOND 1型DM MDI使用 低血糖時間 80分→43分/日 日本の保険:isCGM(リブレ2)月3割負担で約4,000円 HypoDE 2018 (doi.org/10.1016/S0140-6736(18)30297-6) / HypoCOMPaSS 2014 (doi.org/10.2337/dc140030) / DIAMOND 2017 (doi.org/10.1001/jama.2016.19975) 34 / 42

#36.

退院指導(1) シックデイ・アルコール・運動 患者教育の3本柱 シックデイ(=体調不良の日のルール) ・1型: 基礎インスリン継続、ボーラス調整、ケトン測定 ・2型: SU薬・グリニド減量、メトホルミン・SGLT2i休薬 ・食事不可>24h → 入院検討 アルコール — 寝る前の飲酒で翌朝低血糖4倍 ・機序: 肝臓が血糖を作れなくなる ・対策: 空腹時飲酒禁止、就寝前血糖<120なら補食 運動 — 12時間後の遅延型低血糖に注意 ・運動前ボーラス: 50-75%減、運動した日は寝る前補食 退院前にこの3本柱を必ず説明する Turner 2001 (doi.org/10.2337/diacare.24.11.1888) / Riddell 2017 (doi.org/10.1016/S2213-8587(17)300141) 35 / 42

退院時の処方調整と運転指導

#37.

退院指導(2) 退院処方の調整 インスリン調整 入院中に低血糖あり → 基礎を10-20%減量 (ADA Rec 16.13) 食事インスリン: 食事内容変化で10-25%減 T1D変動大ならCGM導入 SU薬の中止アルゴリズム eGFR<30 → 全SU即中止 eGFR 30-44 → グリベンクラミド・ グリメピリド中止 → グリクラジドへ 75歳以上・低血糖既往 → DPP-4i / GLP-1RAへ変更 反復低血糖 → SU即時中止 段階的減量例 — グリメピリド: 2mg→1mg(2週)→0.5mg→中止 ADA Standards 2026 Rec 16.13 (doi.org/10.2337/dc26-S016) 36 / 42

#38.

退院指導(3) 運転制限・家族へのバクスミー教育 運転制限(道路交通法) 第33条の2の3: 重症低血糖の既往は → 申告義務あり 第90条: 虚偽申告は罰則対象 推奨: 運転前血糖 ≥ 100 mg/dL 長距離は2時間ごと測定 バクスミー投与5ステップ (家族・職場・教師に教える) 1. 2. 3. 4. 5. 蓋を開ける(自動準備) 患者を仰向けに 鼻の穴にチップを挿入 プランジャーを最後まで押す 119番通報→意識戻ったら経口糖 運転指導と家族教育で再発予防の輪が完成する 道路交通法施行令第33条の2の3 / JDS 自動車運転に関する提言2024 37 / 42

#39.

今日のまとめ ― Take Home Messages 5つだけ覚える 1. ブドウ糖は「投与後の再評価」が一番大事 → 50% 20mL(10g)の後も必ず血糖再検 2. バクスミーで家族の負担激減 → 鼻スプレー1回で命が救える 3. SU薬性低血糖はブドウ糖持続点滴 + 72時間モニター → 朝には帰せない前提で動く 4. ICUの「相対的低血糖」は死亡最強リスク → HbA1cが高い人を急に下げない 5. 退院時は薬調整・運転指導・家族教育で再発予防完了 保存して当直中に開いてください — みなさんの臨床に役立ちますように 38 / 42

参考文献と今後の学びのためのリソース

#40.

参考文献① ガイドライン+ICU/ブドウ糖 ADA Standards 2026 Section 6 doi.org/10.2337/dc26-S006 ADA Standards 2025 Section 16 doi.org/10.2337/dc25-S016 ADA Standards 2026 Section 16 doi.org/10.2337/dc26-S016 NICE-SUGAR 2012 死亡 doi.org/10.1056/NEJMoa1204942 KDIGO 2022 Diabetes CKD doi.org/10.1016/j.kint.2022.06.008 NICE-SUGAR 2009 doi.org/10.1056/NEJMoa0810625 Endocrine Society 2023 Hypoglycemia doi.org/10.1210/clinem/dgac596 Hurtubise 2021 SR doi.org/10.1017/S1049023X21001047 SCCM 2024 Glycemic Control doi.org/10.1097/CCM.0000000000006174 Verma 2024 ブドウ糖RCT doi.org/10.1016/j.ajem.2024.05.029 39 / 42

#41.

参考文献② グルカゴン+SU薬+IAH Rickels 2016 バクスミー Phase3 doi.org/10.2337/dc15-1498 Boyle 1993 オクトレオチド doi.org/10.1210/jcem.76.3.8445035 Yale 2017 バクスミー介護者 doi.org/10.1089/dia.2016.0460 Ryan SR 2025 オクトレオチド doi.org/10.1007/s13181-024-01054-5 Moore 2005 ブドウ糖10%vs50% doi.org/10.1136/emj.2004.020693 Jönsson 1998 グリベンクラミドPK doi.org/10.1007/s002280050403 Fasano 2008 オクトレオチドRCT doi.org/10.1016/j.annemergmed.2007.06.493 van Dalem 2016 SU性低血糖 doi.org/10.1136/bmj.i3625 McLaughlin 2000 オクトレオチド doi.org/10.1067/mem.2000.108183 HypoCOMPaSS 2014 doi.org/10.2337/dc14-0030 40 / 42

#42.

参考文献③ CGM+特殊集団+古典 DIAMOND 2017 CGM T1D MDI doi.org/10.1001/jama.2016.19975 Krinsley 2020 相対的低血糖 doi.org/10.1097/CCM.0000000000004599 HypoDE 2018 IAH RCT doi.org/10.1016/S0140-6736(18)30297-6 Blaine 2022 透析SR doi.org/10.1002/phar.2659 WISDM 2020 高齢者CGM doi.org/10.1001/jama.2020.6928 Klein 2025 透析糖尿病 doi.org/10.2337/dci24-0081 Clarke 1995 IAHスコア doi.org/10.2337/diacare.18.4.517 Turner 2001 アルコール doi.org/10.2337/diacare.24.11.1888 Gold 1994 IAHスコア doi.org/10.2337/diacare.17.7.697 Riddell 2017 運動コンセンサス doi.org/10.1016/S2213-8587(17)30014-1 全引用 DOIで統一表記。PubMed/CrossRef API で実在検証済み (30件) 41 / 42

#43.

亀田総合病院 糖尿病内分泌内科 専門研修・見学を希望の方へ 糖尿病・内分泌・肥満症を総合的に学べる環境 見学申込: https://recruit.kameda.com/topics/briefing/detail_107.html X: @DrMiura_Obesity (質問もお気軽に) このスライドについて 内容の誤りや改善点はコメント・Xでお知らせください 2026年4月版。ガイドライン改訂時に随時アップデート 全引用にDOIを併記、PubMed/CrossRef APIで実在検証済み 作成: 三浦正樹 亀田総合病院 糖尿病内分泌内科 部長 X: @DrMiura_Obesity 42 / 42

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