テキスト全文
#1. 2023.01.27 Clostridioides di cile infection 堺市⽴総合医療センター 感染症内科 ⻑⾕川 耕平 ffi 1
#2. Take home message • ⼊院中の患者の下痢≠CDI • しかし検査を⾏うことは感染対策上重要なので速やかに検査を⾏う • CDIは予防できる病気である 2
#3. 院内下痢症の定義 (⼀応) • 3回以上の⾮有形便が出る or 普段より回数が多い状態が, 1⽇以上続くこ とを”下痢”という • 院内下痢症は, ⼊院3⽇⽬以降に新たに⽣じた下痢を指す • ⼊院患者のうち12-32%に起こる Clin Infect Dis. 2012;55(7):982-989. 3
#4. ⼊院患者の下痢の原因 • 緩下剤の過量投与や, その他薬剤性 (抗菌薬関連含む) • 経管栄養の投与速度や量の問題 45% • 感染症 (CDI 85%, その他15%) 30% • 原因不明 25% Am J Infect Control. 1995;23(5):295-305. 4
#5. 抗菌薬関連下痢症 • 抗菌薬投与を受けている患者の5-25%に発⽣ • 感染症は偽膜性腸炎(C. di cile)や出⾎性腸炎(K. oxytoca)による。 • ⾮感染性には、抗菌薬の直接的な影響が含まれる (ex. マクロライド etc) ffi 5
#6. 抗菌薬投与による腸内細菌叢の変化 • AMPC/CVA開始翌⽇から下痢 → 中⽌4⽇後に下痢は改善 Clin Infect Dis. 2012;55(7):982-989. 6
#7. Clostridioides di cile • 偏性嫌気性グラム陽性桿菌, 芽胞形成+ • 2016年, “Clostridium”から”Clostridioides”に名称変更された • 産⽣する毒素として, toxin A, toxin B, binary toxinの3種類がある ffi 7
#8. C. di cile infection • 偽膜性腸炎 (PMC, pseudomembranous colitis) は, ヒトでは1893年に, 動物では1943年に報告された • 抗菌薬以前の時代から偽膜性腸炎は存在していたが, 特にリンコマイシン の普及とともに増加 → clindamycin-associated colitsと呼ばれていた • 1974年の疫学調査では, CLDMで治療された患者の21%に何かしら下痢が ⽣じ, その半分がPMC。 • 院内下痢症の10-20%を占める Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 243, 2933-2947.e5 Clin Infect Dis. 2012;55(7):982-989. ffi 8
#9. Binary toxin • 1991-2003年にケベック州(カナダ)におけるCDI発症率, 重症率が上昇1) • 検出されたC. di cileを解析したところ, 84.1%がbinary toxin産⽣遺伝 ⼦を保有し, tcdCが⽋損していた2) → RT027株と判明 • tcdC⽋損によりtoxin A, toxin Bの過剰産⽣が⽣じる3) • binary toxin⾃体の病原性の全貌はまだ明らかでない 1. CMAJ. 2004;171(5):466-472. 2. N Engl J Med. 2005;353(23):2442-2449. 3. Antimicrob Agents Chemother. 2008;52(9):3180-3187. ffi 9
#10. BI/NAP1/027株 • 強毒株であるBI/NAP1/027は徐々に広がっている 10 Nat Genet. 2013;45(1):109-113.
#11. ⽇本ではRT027は稀 • • • PCR-ribotype (RT) 018 (subtype含), 014, 002はtoxin A+/B+, binary toxinOther typeの中にbinary toxinを含む (RT027はb, cで1株ずつ) RT002, 018は重症化との関連が報告されている IASR Vol. 41 p35-36: 2020年3⽉号
#12. リボタイプとトキシン産⽣性 グレード 1 2 3 4 5 RT RT001 RT002 RT012 RT014/020 RT018 RT046 RT106 RT027 RT244 RT023 RT017 RT369 RT033 RT078 RT126 RT127 ST 3 8 54 2 17 35 42 1 41 5 37 81 11 11 11 11 トキシン A+ B+ A+ B+ A+ B+ A+ B+ A+ B+ A+ B+ A+ B+ A+ B+ CDT+ A+ B+ CDT+ A+ B+ A- B+ A- B+ A- B- CDT+ A+ B+ CDT+ A+ B+ CDT+ A+ B+ CDT+ 備考 ⽇本に多い ⽇本に多い ⽇本に多い ⽇本に多い 北⽶・欧州でのアウトブレイク アジアに広く分布 ⽇本に多い 稀 欧州でのアウトブレイク株 RT078の近縁株 RT078の近縁株 fi ffi ⽇本環境感染学会Clostridioides di cile感染対策ガイド http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/ les/jsipc/CDI_guideline.pdf
#13. CDIのリスク • 年齢(>64歳) • HIV患者 • ⻑期⼊院歴 • 消化管⼿術 • 抗菌薬曝露歴 • 経管栄養 • 抗がん剤使⽤歴 • 制酸薬(特にPPI) Clin Infect Dis 2018;66(7):e1-e48 13
#14. 薬剤ごとのリスク • 制酸薬 (PPI>H2RA) • CLDM, セフェム, FQは⾼ リスク • TC, TMP-SMXは低リスク 14 CMAJ. 2008;179(8):767-772.
#15. ところで, CDIって何ですか? • C. di cileが毒素を産⽣し, 下痢などの消化器症状 を起こす疾患 → C. di cileが腸にいる=CDI, ではない ffi ffi 15
#16. 検査の解釈 • グルタミン酸脱⽔素酵素 (GDH, glutamate dehydrogenase) 陽性 → C. di cileの存在を表す (=トキシン産⽣の有無はわからない) → CDIに対する感度が⾼い • トキシン陽性 → C. di cileが検出感度以上のトキシンを産⽣していることを意味する → CDIに対する特異度が⾼い GDH陽性・トキシン陰性の場合は, 主に以下の可能性がある 1. トキシン⾮産⽣C. di cile → 病的意義なし 2. 検出感度未満のトキシン産⽣C. di cile → 病的意義あるかも 3. (toxin A/B⾮産⽣, binary toxin産⽣ → 病的意義不明) ffi ffi ffi ffi 16
#17. 診断のための主要な検査 検査の種類 感度 (%) 特異度 (%) 60-89 93-99 vs. toxigenic culture 85-95 67-99 vs. C. dii cileに対する便培養 →トキシン産⽣の有無は不明 C. di cileのToxigenic culture 95-100 96-100 NAAT (PCR, LAMP) 88-100 88-97 ~50 100 トキシンA/B (EIA) GDH (EIA) ⼤腸内視鏡 備考 48時間かかる 感度が⾼い, 短時間で判明 偽膜検出に対する感度・特異度 Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 243, 2933-2947.e5 ffi ffi Infect Control Hosp Epidemiol. 2010;31(5):431-455.から作成
#18. 臭いによるCDIの早期検出 • CDI患者の便中に特異な揮発性有機化合物が存在し1), “酸っぱい臭い”がする • NsによるCDトキシン検出の感度・特異度は55-84%, 77-83%2-3) - 経験年数の差による影響なし - 患者の事前情報は与えれていない →ヒトの嗅覚による診断には限界がある 1. Gut. 2004;53(1):58-61. 2. Age Ageing. 2002;31(6):487-488. 3. Clin Infect Dis. 2007;44(8):1142. 18
#19. イヌの診断は正確 • 2ヶ⽉トレーニングを受けたビーグル⽝ を⽤いて, GDH, TCをreference standardとしてCD検出に対する感度・ 特異度100%1) • 別の報告では, 感度86%, 特異度97%2) • イヌが陽性と判断したGDH陰性症例の 20%が3ヶ⽉以内にCDIを発症した2) 1. BMJ. 2012;345:e7396. 2. J Infect. 2014;69(5):456-461. 19
#20. フローチャート 下痢 GDH+/Toxin+ GDH+/Toxin- GDH-/Toxin- NAAT-, TC- NAAT+, TC+ CDI CDIとは⾔えない 20
#21. Toxigenic Culture EIA • 便検体からのEIA法によるトキシン検出は感度が低いため, GDH陽性検体 についてC. di cile分離培養を⾏い, 発育した菌株から毒素検出のための 検査を⾏うことが推奨されている (2-step method)1) • CCMA-EX培地で分離培養をおこなった後, McF4.0以上の菌液を作成し EIA法を施⾏ → PCRをreference standardとして, toxin A,toxin B,binary toxin陽 性株に対し感度・特異度100%2) 1. Infect Control Hosp Epidemiol. 2010;31(5):431-455. ffi 21 2. 医学検査 2015:64(6);680-685
#22. NAATを⾏う意義とは? • PCRでCDIを診断すると⼊院期間が少し短くなるが, 死亡率は改善しない1) • GDH+/Toxin-に対してPCRを⾏うと, ⾏わない場合と⽐較してCDIとして治 療される患者が増えたが, 下痢の改善や30⽇死亡率は同等2) • ⽶国でCDI再発リスクが2013年→2018年で16%低下したことについて, NAATによるCDI早期診断が増えたことが理由の⼀つに挙げられている3) →NAATを⾏う費⽤対効果の評価はないが早期診断, 早期治療による弊害 は少ないので, 実施できるならした⽅がよい 1. J Med Microbiol. 2015;64(9):1082-1086. 2. J Clin Microbiol. 2022;60(6):e0218721. 3. Open Forum Infect Dis. 2022;9(9):ofac422. DOI: 10.1093/o d/ofac422 fi 22
#23. Community-onset CDI • 2017年の⽶国10施設におけるサーベイランスデータでは, CDIの約半分が 市中発症で1), 2015-2019年のカナダのサーベイランスでは, 1/4が市中発 症だった2) • ⽇本では外来患者に対するCDI検査を⾏う機会が少ないため, 正確な発⽣ 数は不明である3) 1. N Engl J Med. 2020;382(14):1320-1330. 2. Emerg Infect Dis. 2022;28(6):10.3201/eid2806.212262. 3. IASR Vol. 41 p35-36: 2020年3⽉号 23
#24. 乳児は無症候性にCDを保菌している • 612ヶ⽉の乳児では, 保菌率が最も⾼く (41%), 14%が毒素産⽣株を保 菌している。 JAMA Pediatr. 2021;175(10):e212328. 24
#25. ⼩児のCD検査の考え⽅ • <12ヶ⽉ではCDIの検査を⾏うべきではない • 12-24ヶ⽉では, 他の要因を除外した上で検査を提出する • ≧24ヶ⽉では, リスク因⼦ (IBD, 免疫抑制状態など) があり, ⻑引く/悪化 傾向の下痢がある場合や, 関連した曝露 (医療機関や抗菌薬など) がある場 合に検査を提出する Clin Infect Dis 2018;66:e1-e48 25
#26. 治療 • 基本は抗菌薬の中⽌ • 制酸薬が不必要に使⽤されていないか確認 • 治療薬は, フィダキソマイシン, バンコマイシン, メトロニダゾール Lancet Infect Dis. 2022;S1473-3099(22)00274-2. 26
#27. 化療学会のガイドライン 治療 ⾮重症 200mg bid 10d 2. VCM+MNZ or VCM 500mg qid 再発 1. FDX or 2. VCM 500mg qid or VCM 漸減療法 再発リスク* 再々発以降 予防薬 1. MNZ 500mg tid 10-14d 2. VCM散 125mg qid 10d, またはFDX 200mg bid 10d 1. VCM散 125mg qid 10d, またはFDX 重症 再発抑制薬 ベスロトクスマブ • 免疫不全者・重症 CDI・強毒株 (RT027, (プロバイオティクス) 078, 244)・過去3回 以上の既往・その他 1. FDX 200mg bid 10d 2. VCM+MNZ or VCM 500mg qid or VCM 漸減療法 ⽇本化学療法学会雑誌 Vol. 71, 2023年1号(1⽉)p.1〜90
#28. 化療学会のガイドライン • 表. CDI再発のリスク因⼦ まとめると • ⾼齢 (≧65歳) - ⾮重症→ MNZ 1st • - 初回CDI治療における抗菌薬併⽤ or 治療後 の使⽤ 重症 • 腎不全などの併存疾患 • CDIの既往 • PPIの使⽤ • 重症CDI • 抗トキシンA抗体低値 • → VCM 1st 再発・再発リスク例→FDX 1st ⾮重症かつ右表の項⽬を有さなければ, MNZが1stとなる ⽇本化学療法学会雑誌 Vol. 71, 2023年1号(1⽉)p.1〜90
#29. IDSAの初回治療薬の推奨 臨床的特徴 initial CDI 推奨と代替薬 コメント 推奨:FDX 200mg bid 10d ⼊⼿可能であれば 代替:VCM散 125mg qid 10d 許容できる代替薬 上記が使⽤できない⾮重症CDIでの代替薬: ⾮重症の定義:WBC fulminant CDI MNZ 500mg tid 10-14d ≦15000, Cre ≦1.5の療法 を満たす VCM散 500mg qid イレウスがあれば, 経直腸的投与を⾏う 特にイレウスがあれば, VCM散にMNZ 500mg iv q8hを併⽤ fulminant CDIの定義:低 ⾎圧, またはショック, イレ ウス, 巨⼤結腸症 29 Clin Infect Dis. 2021;73(5):e1029-e1044.
#30. IDSAの再燃時の治療薬推奨 臨床的特徴 First CDI recurrence 推奨と代替薬 コメント 推奨:FDX 200mg bid 10d or bid 5d, q48h 20d 代替:VCM漸減量法 125mg 1⽇4回 10-14⽇間, 1⽇2回 7⽇ 間, 1⽇1回 7⽇間, 2-3⽇おき内服 2-8週間 代替:VCM 125mg qid 10d 初回治療にMNZを使⽤した場合、VCM標準 コースを検討する 追加治療:ベズロトクスマブ 10mg/kg 1回投与 (抗菌薬治療中) FDXとの併⽤はdataが限られる。慢性⼼不 全患者では注意。 Second or subsequent FDX 200mg bid 10d or bid 5d, q48h 20d CDI recurrence VCM漸減量法 VCM 125mg qid 10d, 以降rifaximin 400mg tid 20d FMT 3回⽬の再発以降 追加治療:ベズロトクスマブ 10mg/kg 1回投与 (抗菌薬治療中) 30 Clin Infect Dis. 2021;73(5):e1029-e1044.
#31. ESCIDの推奨もIDSAとほぼ同じ 初回CDI 標準治療 (SoC) 1. FDX 200mg bid 10d 2. VCM散 125mg qid 10d 再発⾼リスク* 1. FDX 200mg bid 10d 2. SoC+Bezlotoxumab 標準治療不可 MNZ po 500mg tid 10d 初回再発 1. SoC+Bezlotoxumab 2. FDX 200mg bid 10d 2回⽬の再発 1. FMT 2. SoC+Bezlotoxumab VCM散 漸減療法 (125mg qid 2w→125mg bid 1w→125mg qd 1w→125mg q48h 1w→125mg q72h 1w) 重症例 VCM散 or FDX 経⼝投与不可:注腸 or 経⼗⼆指腸tube投与 ± iv MNZ or iv TGC 重症複雑性, 重症再燃例 VCM散 or FDX, ⼿術によるアプローチ 再燃例にはTGC iv + FMTを考慮 *FDX 200mg bid on day1-5→200mg q48h on day7-25も検討 リスクは>65-70歳が重要で, その他, 医療機関関連, 3ヶ⽉以内の⼊院歴, CDIの既往, 抗菌薬継続例, PPI使⽤例 31 Clin Microbiol Infect. 2021;27 Suppl 2:S1-S21.
#32. 治療薬の作⽤機序 メトロニダゾール バンコマイシン フィダキソマイシン 作⽤部位 DNA 細胞壁 mRNA 腸管吸収 ⾼ 低 低 便中濃度 低 ⾼ ⾼ 便中での作⽤減弱 ⼤ ⼩ ⼩ 腸内細菌叢への影響 ⼤ ⼤ ⼩ 便中CD排出減少 遅 早 早 環境へのCD定着 多 少 少 芽胞への効果 不明 無 有 芽胞形成阻害 無 無 有 32 Int J Infect Dis. 2022;124:118-123.
#33. FDX, VCM vs. MNZ • 軽症〜中等症CDIでもMNZよりVCMの⽅が治療反応性が良い可能性がある @⽶国1) • RT027に対するMNZは疾患重症度によらず再燃が増える@イタリア2) • VCMはMNZと⽐較しCDI再燃が約20%少ない@⽇本3) • FDXとVCMは, MNZと⽐較し, C. di cileの排出と病院環境の汚染を減少 させる3) 1. 2. 3. 4. ffi 33 Infect Dis Clin Pract 2016;24: 210–216 Clin Microbiol Infect. 2019;25(4):474-480. J Infect Chemother. 2019;25(8):615-620. Clin Infect Dis. 2022;74(4):648-656.
#34. FDX vs VCM 年/国 2011 US, Canada 2012 US, Canada, Europe 2018 Japan デザイン ⼆重盲検RCT ⼆重盲検RCT ⼆重盲検RCT n (⼈) 596 509 215 治癒率(%) FDX vs VCM 4週間再燃率(%) FDX vs VCM 備考 ⽂献 88.2 vs 85.8 15.4 vs 25.3 (95%CI -16.6~-2.9) NAP1/BI/027 38.1% 1 NAP1/BI/027 33.2% 2 RT 018, 002/159, 014/020/076/220 3 87.7 vs 86.8 67.3 vs 65.7 12.7 vs 26.9 (95%CI -21.4~-6.8) 19.5 vs 25.3 (95%CI -16.7~7.0) 治癒率は同等だが, FDXの⽅が再燃が少ない ただし, ⽇本ではVCMでも⼗分かもしれない 34 1. N Engl J Med. 2011;364(5):422-431. 2. Lancet Infect Dis. 2012;12(4):281-289. 3. J Infect Chemother. 2018;24(9):744-752.
#35. 費⽤対効果 薬価⼀覧1) /錠(瓶) (円) /10⽇間 (円) メトロニダゾール内服(250mg) 36.2 2,172 メトロニダゾール点滴(500mg) 1,258 37,740 バンコマイシン散0.5g 909.6 9,096 フィダキソマイシン200mg 4,012.8 80,256 ベズロトクスマブ625mg 335,839 10mg/kg単回 • 軽症〜中等症のCDIは経⼝VCMが費⽤対効果が最も⾼いと報告されているが2), 重症および初回 再発CDIではFDXがVCMより費⽤対効果が⾼い可能性がある3) • • MNZで治癒する可能性が90%以上あれば, MNZが最も費⽤対効果が⾼い4) 再燃を減らすことが⾼い費⽤対効果を得るために重要5) 35 1. 2. 3. 4. 5. KEGG MEDICUS https://www.kegg.jp/kegg/medicus/ Am J Health Syst Pharm. 2018;75(15):1110-1121. J Antimicrob Chemother. 2014;69(11):2901-2912. Clin Microbiol Infect. 2014;20(12):1343-1351. Clin Microbiol Infect. 2022;S1198-743X(22)00643-7.
#36. 実際何を使うのか? • MNZ内服は薬価が安く初回治療成功率は他薬剤とさほど差はないが, ⽇本でも再燃リス クが上昇する可能性がある (結果的に費⽤対効果が低い可能性もある)。 - 脳症は中央値15⽇ (1-90⽇), 累積で中央値 93.4g (0.24-1095g)1), 末梢神経障害は 累積>42g2)と中〜⻑期使⽤で問題になることが多い (100%ではない)。 • VCMはMNZと⽐較し再燃が少なく, 環境汚染を減らす。ほぼ腸管吸収されないので副作 ⽤もほとんどない。漸減パルス療法では動物モデルでVRE定着への抵抗性が低下する可 能性が指摘されているが3), 通常投与期間で定着が増えるかは未決着4-5) • FDXはVCMと⽐較しても再燃が少なく症例によっては第⼀選択だが, ⽇本で⾏われたRCT ではVCMと再燃について有意差なし → 筆者はVCMでの治療開始がほとんどで, 腸管を使⽤できない場合はMNZ点滴を⾏う 1. 2. 3. 4. 5. J Clin Diagn Res. 2016;10(6):OE01-OE9. Int J Antimicrob Agents. 2018;51(3):319-325. Antimicrob Agents Chemother. 2018;62(5):e02237-17. Pharmaceuticals (Basel). 2021;14(11):1066. Clin Infect Dis. 2020;71(3):645-651.
#37. メトロニダゾール点滴のポジション • 経⼝MNZのbioavailabilityは≧90%なので, 点滴が内服より⼤きく勝るこ とはないと思われるが, ⽐較研究はない • 軽症CDIに対するMNZ点滴は転機を改善せず1), 重症CDIに対する経⼝ VCMとMNZ点滴の併⽤は, VCM単剤と⽐較し死亡率・再燃を改善しな かった2) • ただし, イレウス, 中毒性巨⼤結腸症では内服薬の腸管移⾏が悪くなるた め, MNZ点滴の使⽤が望ましい 1. Antimicrob Agents Chemother. 2012;56(4):1974-1978. 2. Clin Infect Dis. 2020;71(9):2414-2420. 37
#38. 予防 • 不必要な抗菌薬の使⽤を控える • 不要な制酸薬を中⽌する • 無症候性キャリアを⾒つけることが⼆次感染予防に有効かは結論がない1) - 数理モデル上は, 無症候性キャリアの隔離で10-25%程度CDI発症率が 下がる可能性あり2-3) • 薬剤的介⼊ • 糞便移植 (FMT, fecal microbiota transplantation) 38 1. Clin Infect Dis. 2018;66(7):e1-e48. 2. Infect Control Hosp Epidemiol. 2014;35(8):1043-1050. 3. PLoS One. 2016;11(6):e0156577.
#39. CDIは再燃しやすい 年齢 抗菌薬 PPI • 12-64%で1回以上の再燃を経験する • 年齢, 診断後の抗菌薬使⽤, PPIが再燃の リスクである • strain typeは再燃リスクとは関連なし - NAP1/BI/027は死亡率上昇とは関連 PLoS One. 2014;9(6):e98400. 39
#40. 抗菌薬使⽤量とCDI 40 • 抗菌薬使⽤が減るとCDI も減る • CDIを減らすためにいは, 抗菌薬適正使⽤が重要 Infect Control Hosp Epidemiol. 2022;43(8):1067-1069.
#41. 制酸薬はCDI再燃リスク • 制酸薬内服中の患者は, 再発性CDIを発症する可能性が 64%⾼い (OR 1.64, 95%CI 1.13-2.38) • PPIの使⽤は, 再発性CDIのリスクを84%上昇させる (OR 1.84, 95%CI 1.18-2.85) Clin Infect Dis. 2021;73(1):e62-e68. 41
#42. ベズロトクスマブ, ジーンプラバ® • トキシンBに対するモノクローナル抗体 • 再発したCDIに対して標準治療+単回点滴を⾏うことで, 約11%再燃が減る N Engl J Med. 2017;376(4):305-317. 42
#43. FMT, fecal microbiota transplantation • CDI患者では腸内細菌叢の多様性が失われていることから, 健康ドナーか らのFMTは再発性CDI患者に有⽤である1) • 初回または2回⽬のCDIに対するVCM散+便移植は, 8週間後の再燃のない 改善率が有意に⾼い (90% vs 33%)2) Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16020. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2022;S2468-1253(22)00276-X. 43
#45. 経⼝微⽣物叢治療 (SER-109) • 健康なドナー由来のFirmicutes⾨ に属する菌の芽胞混合物 • 治療後の投与により, CDI再発リ スクが減少する - 8週⽬:68%↓1) 12週⽬:60%↓2) 24週⽬:54%↓2) 1. N Engl J Med. 2022;386(3):220-229. 2. JAMA. 2022;328(20):2062-2064.
#46. 感染対策 • ⼊院患者, あるいは抗菌薬使⽤に関連した下痢の患者に対して迅速に検査を提出する • 隔離:検査を提出した時点から隔離, 個室+トイレは共有しない, 個室が少なければ便失 禁のある患者を優先的に個室隔離 • 医療従事者は接触感染予防策を講じる ⼿袋とガウンを着⽤ ケア後の⼿指衛⽣は, 流⽔+⽯鹸 (∵芽胞にはアルコール無効) 環境清掃には, 次亜塩素酸を使⽤ 患者に使⽤される医療器具は専⽤化 or ディスポーザブルとする 下痢が改善してから最低48時間までは⾏う (IDSA) 治療中は隔離することも推奨されている (CDC) fi 46 ffi - Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16020. Clin Infect Dis 2018;66:e1-e48 Infect Control Hosp Epidemiol 2014; 35:628–45. ⽇本環境感染学会Clostridioides di cile感染対策ガイド http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/ les/jsipc/CDI_guideline.pdf
#47. Take home message • ⼊院中の患者の下痢≠CDI • しかし検査を⾏うことは感染対策上重要なので速やかに検査を⾏う • 予防できる病気である 47