四次予防 2020年3月

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小林 聡史

小林 聡史

ゆきあかり診療所

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今月は四次予防に関する論文を読んでまとめてみました。 四次予防という言葉、不勉強で初めて知りました。 プライマリケア医にとって重要な概念と感じました。 ご参考になれば幸いです。 よろしくお願いいたします。

四次予防 2020年3月

1. 四次予防ー脱医療化に向けたバランスのとれたアプローチ ゆきあかり診療所 管理者 小林聡史
2. この論文を翻訳してみました。 Norman AH, Tesser CD. Quaternary prevention: a balanced approach to demedicalisation. Br J Gen Pract. 2019 Jan;69(678):28-29.
3. 冒頭文 1982年に、「the Journal of the Royal College of General Practitioners」がIvan Illic氏の論文「プライマリケアにおける医療化」を掲載した。 Illic氏は以下のような逆説的な信念を抱いていた。「GPは脱医療化の健康的なプロセスに貢献できる、 つまり痛み・障害・不快・加齢・生と死に対する自らの姿勢を 脱医療化する機会を患者に与えることができる」「患者を医療ケアシステムから解き放つ」 本論文では、WONCAの四次予防(P4)の定義を、脱医療化に対するGPの視点を整理する単一のフレームワークとして提示する。
4. EXPLAINING QUATERNARY PREVENTION
5.
6. 脱医療化を構成する原則としての、四次予防のフレームワーク
7. この時計回りの矢印は、 四次予防(P4)が、 他の3つの予防に影響を与えることを示している
8. 疾患なし 不健康と 感じる 四次予防(Quaternary prevention) 過剰医療のハイリスク患者を同定し、患者を新しい医療的侵襲から守り、倫理的に容認できる介入を提案するために行われるアクション
9. 疾患なし 健康と 感じる 一次予防(Primary prevention) 健康問題が生じる前にその原因を回避したり除去したりするための個人や集団に対するアクション
10. 疾患あり 健康と 感じる 二次予防(Secondary prevention) 健康問題を早い段階で見つけ、治療を促し、悪化や長期的な影響を予防するための個人や集団に対するアクション
11. 脱医療化 健康と 感じる P1P2は、集団のアウトカムを扱うため、元々は伝統的な公衆衛生の分野に属していた。患者は過剰診断や過剰治療による介入によっておこりうる害に関して十分な説明を受ける必要がある。
12. 疾患あり 不健康と 感じる 三次予防(Tertiary prevention) 機能障害を最小化(例:リハビリ、DM合併症予防)することにより、健康問題による慢性的影響を減らすための個人や集団に対するアクション
13. 不健康と 感じる P3P4は、個別化された臨床ケアの領域である。 患者の苦痛を減らしたりウェルビーイングを保証するための臨床家のアートである。 脱医療化
14. 四次予防(P4)とは 過剰医療のハイリスク患者を同定し、患者を新しい医療的侵襲から守り、倫理的に容認できる介入を提案するために行われるアクション 元々は、不健康感を抱えているが明らかな疾患のない患者を想定 過度に健康に敏感な人:健康状態を心配し、多くの場合検査を要求する 医学的に説明不可能な症状(MUS)の人:病態生理学的な整合性を欠く 心理社会的要因に由来する症状であることもある *本文に明確な記載はないが、P4はP1-3のいずれの場面においても考慮すべきということを示唆しているのではと思われる。
15. 過剰な医療化overmedicalisation P1P2の集団は、過剰診断や過剰治療を被りやすい。 過剰診断や過剰治療=過剰な医療化overmedicalisation
16. 過剰診断 もし見つからなければ患者の生存期間に影響を与えなかったであろう疾患について診断すること 主な問題点:過剰治療を引き起こすこと 潜在的な原因: 疾患のスクリーニング リスク要因や疾患を定義するためのカットオフポイントの変更 金銭的インセンティブ(例:能力給制度pay-for-performance schemes)
17. 過剰治療 偽性疾患(pseudo-disease)に対して利益が見込まれない治療を行うこと 個人のWellbeingにもヘルスケアシステムにも影響を与える 不要なコストを生み、無駄にリソースを消費するため
18. FIRST DO NO HARM
19. 過剰医療化の例:P1 P1(一次予防)で議論のあるものとして、10年で心血管死亡リスクが10%の患者に対するスタチン投与が挙げられる(*おそらく、心血管イベントリスクの間違い) この場合のスタチン投与は、過剰診断効果(overdiagnosis effect)を増やし、個人の利益は最低限である。
20. 参考:Dynamedより 10年の心血管イベントリスクが10%の患者にスタチンを投与すると5年間の心血管イベントの予防のNNTは80 Statins for Primary and Secondary Prevention of Cardiovascular Disease
21. 過剰医療化の例:P2 P2(二次予防)においては、エビデンスに基づかないスクリーニングが過剰医療化の例として挙げられる。 甲状腺、前立腺、卵巣癌→エビデンスなし 乳癌→再度検討が必要 カナダや米国の20年間の乳癌スクリーニングにおいて、過剰診断は大体30%。死亡率改善はないか、あっても最小限。心疾患や肺癌の死亡率上昇の可能性が示唆されている(それぞれ27%、78%)
22. 参考:USPSTFより 60-69歳の女性10000人をスクリーニングすると、乳癌死亡が21人(11-32人)減る。 Final Recommendation Statement: Breast Cancer: Screening. U.S. Preventive Services Task Force. May 2019.
23. 参考:USPSTFより 続き 60-69歳の女性10000人をスクリーニングすると、偽陽性が808人出て、そのうち165人が不要な生検を受ける。偽陰性は12人出る。 Final Recommendation Statement: Breast Cancer: Screening. U.S. Preventive Services Task Force. May 2019.
24. 過剰医療化の例:P3 P3(三次予防)において、糖尿病を例に挙げる。 A1cが低いほど良い(the lower the better)という考えは、ポリファーマシー、QOLの悪化、死亡率の上昇によって、利益よりも害が増える可能性がある。 過剰医療を回避するために、臨床的な介入と予防的介入を区別することが重要である
25. 無危害第一 予防において、健康な人や無症状の人を扱う場合にも、無危害の生命倫理原則が広まるべきである。 無危害第一(First Do No Harm)がGPの臨床指針であるべきである。 P4は、予防的介入の際に、患者の自己充足や、患者への警告、患者を安心させることに対して態度をシフトすること(an attitudinal shift of self-containment, caution, and reassurance of patients’ integrity )を暗示している。 P4を実行するには、現在の生物医学的な知識に対する批判的評価が必要で、GPがより自立し、先を見越し、プロトコルに盲目的には従わないようにすることを求めている。
26. CONCLUSION
27. P4(四次予防)はよくつくられた概念で、主に3つのポイントがある。 過剰医療化のリスク(risk of overmedicalisation) 患者の保護(patients’ protection) 倫理的な代替手段(ethical alternatives) この定義は、利益/損害比 harm/benefit ratioの観点からP4を再定義する最近の流れよりも、より包括的である。
28. P4は、臨床の場で何が脱医療化可能で、何を脱医療化すべきかを仕分けすることで、GPが脱医療化において不可欠な仕事を実現する手助けをするための、プラットホームを提供する。 その実現のためには、Illich氏が逆説的に想像したように、P4がプライマリケアの場で世界的に広まるためにサポートと更なる研究が必要である。 本文には書いてないが、冒頭文にあるように、医療者が脱医療化を進めるという意味で「逆説的」と書いているのだと思われる。
29. 感想・まとめ
30. まとめ 四次予防とは、過剰医療のハイリスク患者を同定し、患者を新しい医療的侵襲から守り、倫理的に容認できる介入を提案するためのアクションである。 一次予防~三次予防は、いずれも過剰医療のリスクをはらんでおり、プライマリケア医は常に注意する必要がある。
31. 感想 たった2ページの論文だったので比較的取り組みやすかった。 「四次予防」という言葉を初めて聞いた。 「疾患はないが不健康な人」はプライマリケアでは本当にCommonだと思う。 「患者さんが医療と適切な距離を保てるようサポートする」ことを自分の医者としての目標の一つにしていたので、この論文で後押しされた気持ちになった。 そのためには、常に医学的知識を批判的に吟味し続けなければいけないと改めて思った。