#4.
頸部の解剖 両側の胸鎖乳突筋・下顎⾻体部下縁を3辺とする 「頸部前⽅三⾓」に主要器官が集中している
#5.
頸部刺創/切創 広頸筋は⼤胸筋と三⾓筋を被覆する深筋膜から 起始して下顎体部に停⽌する この広頸筋を貫く損傷を「頸部穿通性損傷」と呼ぶ 損傷に対するアプローチの相違から 頸部を3つのZone(Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ)に分ける
#6.
頸部の解剖 Zone Ⅲ Zone Ⅲ Zone Ⅱ Zone Ⅱ Zone I Zone I Zone I ︓鎖⾻/胸⾻から輪状軟⾻まで Zone II ︓輪状軟⾻から下顎⾓まで Zone III ︓下顎⾓から頭蓋⾻底まで
#7.
各Zoneにある重要臓器 Zone I ︓椎⾻動脈、総頸動脈、肺、気管 胸管、脊髄、主要な頸髄神経幹 Zone II ︓頸静脈、椎⾻動脈、頸動脈、気管 ⾷道、脊髄、喉頭 Zone III ︓咽頭、頸静脈、椎⾻動脈 内頸動脈遠位部
#8.
頸部の解剖 • Zone分けしても深いところで 別Zoneにまたがることがあるので注意 • ZoneⅡは出⾎源の⽬視が可能 ZoneⅠ/Ⅲは ⾎管損傷を評価するために⾎管造影が必要 その他の評価も⽬視では困難
#9.
ヤバい頸部損傷とは︖ ・ 救急外来で問題になるのは「気道閉塞」と「出⾎」 ・ 指標の⼀つは「Hard sign」 Hard signを認める場合90%に重⼤な損傷がある Emerg Med Clin North Am. 2018 Feb;36(1):181-202. ・ Hard signを認めたら CTは撮影せずに, すぐに⼿術室で外科的⽌⾎︕ ・ Hard signを認める時に初療室で⾏うことは 「気道確保」と「圧迫⽌⾎」のみ︕
#10.
Hard sign ・ 気道緊急︓甲状軟⾻や輪状軟⾻の変形/露出 ⼤量喀⾎, 創部からの気泡 ・ 進⾏性の広範囲⽪下気腫 ・ 拍動性の⾎腫, thrill ・ ショックを伴う外出⾎ https://basicmedicalkey.com/exploration/ ・ 閉塞性ショックの所⾒︓頸静脈怒張, 気管偏位など
#11.
Hard signを認めたら ・ 気道がメインなら「⽿⿐咽喉科」か「呼吸器外科」 ⾎管損傷がメインなら「⼼臓⾎管外科」にコンサルト ・ ABCを安定化させてオペ室へGo! ① A/B︓気道確保の注意点は︖ ② C︓救急医に出来る⽌⾎法は︖
#12.
A/B: 気道確保の注意点は︖ ・気管・気管⽀損傷は頸部刺創の最⼤20%に出現 Emerg Med Clin North Am. 1998 Feb;16(1):85-105. ・⽪下気腫を伴う頸部外傷は 喉頭・気管断裂の可能性あり ・不⽤意な気管挿管でチューブが断裂部から逸脱 →気道を完全閉塞する危険性がある︕ ・⾮開放性気管損傷 気管⽀ファイバーによる損傷部位・形態の確認 ファイバーを気管損傷部位の末梢まで挿⼊ それをガイドに挿管チューブを進める Ann Thorac Surg. 1979;28:384-391
#13.
A/B: 気道確保の注意点は︖ ・筋弛緩の使⽤により気道の完全閉塞を起こしうるので ファイバースコープ使⽤下の意識下挿管をすべき ・ZoneⅡ/Ⅲなら, 緊急的に頸部前⾯を切開して 輪状甲状靭帯切開を選択することや 断裂部からの気管挿管を選択することもある CJEM. 2015 Jan;17(1):89-93.
#14.
A/B: 気道確保の注意点は︖ ・ZoneⅠの気管損傷では迷⼊しているかが分からない 気管⽀ファイバー使⽤に加え ワンサイズ径の⼩さいチューブを使⽤することを検討 ・バッグバルブマスク換気は⽪下気腫を増悪させ 気管偏位を悪化させる可能性があるため 最⼩限に留める必要がある
#15.
C: 救急医に出来る⽌⾎法は︖ ・まずは⽤⼿的な圧迫⽌⾎︕ ・尿道バルーンを⽤いた圧迫⽌⾎もある ・戦場では⽤⼿よりもバルーンの⽅が死亡率低下 ⼀定の圧⼒を持続的にかけることができるためか︖ 基本は静脈の⽌⾎⽤だが動脈の⽌⾎もできる J Trauma Acute Care Surg. 2013 Aug;75(2):220-4.
#16.
尿道バルーンによる⽌⾎ ①16Fr or 18Frのバルーンを傷⼝から挿⼊ ②出⾎が⽌まるまでバルーンを膨らませる (10-15ml 蒸留⽔を⼊れる) ③カテーテルをクランプ (ルート内から出⾎しないように) ④創部を縫合する Ann R Coll Surg Engl. 2018 Jan;100(1):6-11.
#17.
尿道バルーンによる⽌⾎ ・バルーン1つで⽌⾎が得られない場合 慎重に2つ⽬追加 ・応⽤編︓ ZoneⅠでも傷⼝から挿⼊後 牽引すれば鎖⾻下静脈の⽌⾎ができる J Trauma Acute Care Surg. 2013 Aug;75(2):220-4.
#18.
C: 救急医に出来る⽌⾎法は︖ ・外傷CPAなど その場で出⾎源を特定したい場⾯では Local Wound Exploration(LWE)が有⽤ 本来hard signがある時は⼿術室直⾏だが ⾃分でやるしかない時どうやってやる︖︖
#19.
Local Wound Explorationの⼿順 胸鎖乳突筋前縁に⽪膚切開を⼊れる
#20.
Local Wound Explorationの⼿順 胸鎖乳突筋が露出
#21.
Local Wound Explorationの⼿順 胸鎖乳突筋を牽引し, ⾎管鞘を開く
#22.
Local Wound Explorationの⼿順 顔⾯静脈を結紮, 切離する
#23.
Local Wound Explorationの⼿順 内頸静脈を牽引すると, 総頸動脈が露出
#24.
Local Wound Explorationのポイント ・内頸静脈は修復できればするが 修復困難 or ショック状態なら躊躇せず結紮する ・出⾎が致死的な場合は総頸動脈結紮もやむなし ・外頸動脈は結紮しても良い J Cardiovasc Surg (Torino). 2000 Jun;41(3):423-31. ・頸動脈前⾯には「迷⾛神経」 内頸動脈近位部前⾯には「⾆下神経」が⾛⾏ 損傷しないよう注意して処置を⾏う
#25.
⽌⾎するのはもちろん⼤事だが… ・頸部刺創の死亡率は5% ・制御不能な出⾎による死亡が20% 残る約80%が脳梗塞による死亡!! Emerg Med Clin North Am. 2018 Feb;36(1):181-202. やはり迅速な⾎⾏再建を意識した マネージメントが⼤事︕
#26.
頸部刺創のマネージメント 頸部刺創 (広頸筋の損傷) hard sign or 循環不全 No 気道確保 圧迫⽌⾎ Yes CT angiography Negative 外科的修復 Positive ⾎管造影 気管⽀鏡 ⾷道内視鏡 Positive 経過観察 (⾷道造影検討) Ann R Coll Surg Engl. 2018 Jan;100(1):6-11.
#27.
頸部刺創のマネージメント ・頸部⾷道損傷は無症候性であることが多い Clin Otolaryngol. 2012 Feb;37(1):44-52. ・縦隔炎を合併すると死亡率が⾼まる J Trauma. 2001 Feb;50(2):289-96. ・造影CTで⾷道損傷の感度は53% Thorac Surg Clin. 2007 Feb;17(1):63-72. ・CTで所⾒がなくても「⾷道造影」を検討 ⾷道内視鏡は感度ほぼ100%なので代⽤可 World J Surg. 2015 Jun;39(6):1363-72. 1A︓⾷道の線状裂創 J Pediatr Surg Case Rep. 2018 Aug;35:21-25.
#28.
頸部刺創のマネージメント hard signに加え soft signも有⽤ 「soft sign」 少量の喀⾎, 中咽頭の⾎液, 呼吸困難, 嚥下障害, 発声障害, 拡⼤傾向のない⾎腫, 胸腔ドレーンのエアリーク, ⽪下気腫, ⾎管雑⾳ 上記を認めたら 創部縫合だけでなく, CTなどの精査を検討
#29.
⼊院後のマネージメント ・挿管チューブの留置は修復部の炎症の原因 穿通性外傷による気管損傷は平均2⽇ 鈍的外傷は平均5⽇で抜管する Ann Thorac Surg 1998; 65: 182-86 ・頸動脈損傷修復術後は 出⾎がなければ抗凝固療法を開始する 術直後はヘパリン, 数⽇後から抗⾎⼩板薬2剤 ⽇外傷会誌 2019; 33: 45-49
#30.
Take Home Message • 頸部の解剖は3つのZoneに分けて考える • Hard signを認めたら、気道確保と⽌⾎︕ • 頸部からの出⾎はとにかく圧迫⽌⾎︕ • 脳梗塞を起こさぬ様、迅速に⾎⾏再建へ