#4.
⽬次 • クローン病(Crohnʼs disease: CD)をざっと復習 • 潰瘍性大腸炎(Ulceratie colitis: UC)との考え方の違い • 疑うきっかけと診断 • 治療の考え方・目標 • 治療の流れ • 治療薬の”””ざっくり”””まとめ
#5.
※注意喚起※ IBD診療の専門施設で研修する筆者が, 初学者の方に向けて, クローン病診療をとにかく分かりやすさを優先して作成した スライドであり, 一部独断と偏見が含まれる箇所もございます のでご了承ください. エビデンスに基づいた正確で詳細な知識をお求めの方は, 各種ガイドラインや教科書をご覧ください.
#6.
CDの概要〜1枚でざっと復習〜 • 原因不明であるが, 免疫異常などの関与が考えられている • 病態の本質は, 腸管の全層性の炎症である • 「若い!」若年で発症し, 10代〜20代が好発年齢である • 重症部位は回盲部にあるが「⼩腸型」「⼩腸⼤腸型」「⼤腸型」 の3つに分類される • 「⼝からお尻まで!」⼝腔から肛⾨まで消化管のあらゆる部位に 症状が起こりえる • 「完治は難しい!」再燃・寛解を繰り返しながら進⾏し, 社会⽣活 が損なわれることも多い
#7.
「UCとCDがこんがらがります・・・」 • 安⼼してください, 筆者もその⼀⼈でした・・・ • 原則として次のような理解ができれば, ⾊々なキーワードが 解決できるようになります. • UCは「⼤腸粘膜で浅く, ベターっと」 炎症が起こる • CDは「ところどころで, 深く, ボコっと」 炎症が起こる
#8.
CD「⾊んなところで, 深く, ボコっと」 UC「⼤腸粘膜で浅く, ベターっと」 区域性, ⾮連続性, 全層性 びまん性, 連続性, 表層性 粘膜全層の炎症 粘膜層と粘膜下層の炎症 穿孔, 瘻孔, 狭窄 →進⾏に伴って腸が変形する (⼩腸が主の場合は) お尻から遠いので症状に気付きにくい ⾎性下痢が必発 (お尻に近い⼤腸の炎症だから!) →進⾏しても腸は変形しない お尻に近いので症状が出やすい 病変が⾶び⾶びに存在する=skip lesion 直腸から連続性に病変がある 痔瘻がある 痔瘻はない
#9.
疑うきっかけと診断 • 最も多い症状は, 腹痛>下痢>発熱 ※⾎便は必須ではない(⾎便はお尻に近い腸管の炎症で多い) • 若年者の肛⾨のトラブル • 若年者の不明熱 • 下腿前⾯の結節性紅斑 「→これらを⾒たらGoogleか教科書で診断基準を検索!」
#10.
令和5年度 改訂版 潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf
#11.
CD治療の考え⽅と⽬標 • CDの炎症は, じわじわと進⾏して, 気づいた時には狭窄・瘻孔・穿孔 などの合併症を来していることがある →症状ベースではなく, 病変が治癒することを⽬指す ※UCは腸の炎症と症状が連動することが多い • 適切な治療を⾏わなければ慢性的に炎症が進⾏する • 腸管切除回避などの⻑期予後改善と相関する粘膜治癒を, 発症早期 から達成する
#12.
治療の流れ • UCと同じく, 寛解導⼊→寛解維持が基本 • ⼿術, 栄養療法, 薬物治療がメイン • まず⼿術適応がないかを確認! • 絶対的⼿術適応 ①穿孔, ⼤量出⾎, 内科治療で改善しない腸閉塞, 膿瘍 ②癌 • 相対的⼿術適応 内科治療で改善が困難, またはQOLの低下を伴う病変 狭窄, 瘻孔など
#13.
栄養療法って効果あるの? • あります. • 腸閉塞を防ぐだけでなく, 再燃率を下げる効果もある. • 成分栄養剤(エレンタール)や消化態栄養剤などを⽤いて経 腸栄養を⾏います. • エレンタールを飲むだけでCDに対する治療効果があるため, 筆者の施設でもCDの治療がやや安定しない患者には 「フルエレンタール(1⽇に必要なカロリーを全てエレンター ルで補う)」や「ハーフエレンタール(上記の半分)」を処⽅ することが多いです.
#14.
薬物治療のざっくりとした理解 • ⽣物学的製剤と5ASA・ステロイド・チオプリン系がメイン →使⽤薬剤はUCと近いが, 使い分けや有効性が若⼲異なる • 痔瘻感染や膿瘍を合併している場合は, 抗菌薬を併⽤
#15.
CDにおける5-ASA製剤の使い⽅ • 保険適応はペンタサ(メサラジン製剤)とサラゾピリンのみ • 軽症から中等症に使⽤する • メサラジン製剤は物理的に炎症粘膜に付着して直接作⽤する ため, ⾮連続性で深い潰瘍を作るCDに対しての有効性は (びまん性炎症のUCと⽐べると)低い • サラゾピリンは⼤腸型CDには有効. しかし, 1/3程度の患者に 副作⽤が出る(嘔気・頭痛・⽪疹・肝障害など)
#16.
CDにおけるステロイドの使い⽅① • CDに使⽤するステロイドには, プレドニゾロン(静注・内服) とブデソニド(内服)がある. • プレドニゾロンは重めの中等症〜重症に使⽤する • 寛解導⼊⽬的に使⽤する(終了時期を意識する) • プレドニゾロン40mg/⽇程度(重症例では40〜 60mg/⽇) ※潰瘍性⼤腸炎への使⽤⽅法と似ている
#17.
CDにおけるステロイドの使い⽅② • ブデソニド(ゼンタコート)は回腸から右側結腸に限局した 軽症〜中等症に使⽤する • ※回腸から上⾏結腸でステロイド成分が放出されるように 設計された薬剤のため, 同部位での効果が期待できる • ステロイド製剤だが副作⽤が少ない(ないわけではない) • ステロイド依存性だがプレドニゾロン⻑期使⽤による副作⽤ が懸念される場合や, 局所的な炎症・潰瘍をコントロールした い場合によく⽤いられる
#18.
CDにおけるチオプリン製剤の使い⽅ • アザチオプリン, 6-MP(ロイケリン)など • 寛解維持⽬的に使⽤する • 初回のステロイド導⼊時から併⽤を⾏う 理由:ステロイドは⻑期使⽤を前提としていないため, ⻑期の 寛解維持にはチオプリン系が主役となる. しかし, 効果発現まで 3ヶ⽉程度かかるため, 初めから併⽤しておくことが重要 • 副作⽤は⾎球減少, 脱⽑, 嘔気, 腹痛, 膵炎など多様である • 抗TNFα抗体製剤との併⽤による⼆次無効予防の効果もある
#19.
チオプリン製剤〜NUDT15遺伝⼦多型〜 • チオプリン系の開始後早期に発現する重度の急性⽩⾎球減少と 全脱⽑がNUDT15遺伝⼦多型と関連する • 2019年より同遺伝⼦多型の検査が保険適応となった • Cys/Cys(リスクホモ)は⽇本⼈の1%程度だが, 上記の副作⽤ が必発のため投与はしない. Arg/Arg(野⽣型, 約80%)は通常 通り投与しても安全だが, Arg/Cys(リスクヘテロ, 約15%)は 減量して投与を検討する.
#20.
CDにおける⽣物学的製剤の使い⽅ ⼀般名 商品名 投与⽅法 特徴・使⽤のコツ インフリキシマブ レミケード 静注(8週毎) ★「強い, 早い!」 →再重症例の第⼀選択薬 アダリムマブ ヒュミラ ⽪下注射(2週毎) 有効率が低いが, ⽐較的安全 ベドリズマブ エンタイビオ 静注(8週毎) 効きが遅いが, ⽐較的安全 抗TNFα抗体 抗インテグリン抗体 抗IL-12/23抗体 ウステキヌマブ ステラーラ 有効性が⾼くないが, 安全で利便性が良い ⽪下注(8-12週毎) →⽐較的軽症で仕事や学校が忙しい患者に 使いやすい 抗IL-23抗体 リサンキズマブ スキリージ ⽪下注(12週毎) 2022年に保険承認 JAK阻害剤 ウパダシチニブ リンヴォック 経⼝ 早く効くが, 副作⽤が多い
#21.
CDにおけるインフリキシマブの使い⽅ • CD治療の「ボス」 • 最も有効性が⾼い • 状態の悪い重症例には, 最も頻繁に使⽤される • 投与時反応, 感染症, ⼆次無効に注意する • ⼆次無効:抗薬物抗体産⽣により, 抗TNFα抗体の効果が減弱す ること. チオプリン製剤の併⽤が有効である(少量でも効果があ る)
#22.
CDにおけるアダリムマブの使い⽅ • CD治療の「オールラウンダー」 • 有効性, 安全性のバランスがよく, ⾃⼰注射ができる⼈にとって は利便性も⾼いため使⽤頻度が⾼い • 抗TNFα抗体なので⼆次無効が起こり得る(チオプリン製剤の 併⽤が有効)
#23.
CDにおける⽣物学的製剤の使い⽅ • CD治療の「先発投⼿」 • ウステキヌマブ(抗IL-12/23抗体), ベドリズマブ(抗インテ グリン抗体)は抗TNFα抗体よりも効果が落ちるが, ⽐較的安 全性が⾼いため, 軽症例だが⽣物学的製剤の使⽤が検討される 場合の初⼿として試しやすい. • 抗TNFα抗体よりも有効性が⾼い症例が稀に存在するが, それ を事前に予測するバイオマーカーなどはわかっていない.
#24.
Tips! クローン病の基本のキ üいつ疑うのか? üクローン病治療の考え⽅ 〜静かに進む病状を察知する〜 ü薬剤が多くて難しいので, これだけ覚えてください!