#4.
治療方針を決めるのに必要な情報(私見) 4 ・病型
・病態(NIDDM or IDDM)
・現在の治療内容
(+ 合併症の状態) 糖尿病 背景 コントロール目標 ・合併症予防
・目標とするHbA1c 治療方針 ・既往歴(肝・腎・心疾患、尿路・性器感染症など)
・生活歴(飲酒、同居者、ADL、認知症、施設、介護認定、食事内容、かかりつけ医、
体重経過、内服アドヒアランス、シックデイ対応が可能か)
・身体所見(体重、BMI、視力の低下や四肢の運動障害)
・検査結果(肝・腎機能、HbA1c。+α(尿蛋白、Cペプチド、ケトン体、GAD抗体、膵形態評価等))
・患者の希望(注射製剤の希望の確認、内服タイミングや錠剤数、経済的背景)
・患者の予後
#5.
糖尿病とは ・定義:インスリンの作用不足によって
慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群
・2型糖尿病の病態 5 インスリン作用不足 食後高血糖
空腹時血糖 ↓ ↓ ↓ 高血糖 日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2016-2017.より改変して引用 ※インスリン抵抗性:
インスリン作用阻害因子が
インスリン作用を妨げている状態 環境因子
遺伝因子
糖毒性
#6.
糖尿病のタイプ(病型) 6 1型糖尿病 2型糖尿病 その他の特定機序、疾患によるもの 妊娠糖尿病 A.自己免疫性
B.特発性 ※発症様式には急性、緩徐進行、劇症あり ・インスリン分泌能の低下
・インスリン抵抗性 上記にインスリンの相対的不足を伴うことあり A.遺伝子異常
B.その他の疾患
例:膵疾患、内分泌疾患、肝疾患
薬剤や化学物質、感染症など (内分泌疾患) (生活習慣病) ※あくまでも除外診断
#7.
糖尿病の病態 7 インスリン治療の必要性を見極めるため、IDDMかを確認することは重要。 日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2022-2023.文光堂
#8.
CPR(Cペプチド)でインスリン分泌能を評価する 8 CPR(Cペプチド) インスリン プロインスリン ※CPRは腎排泄。
腎機能低下時は血中CPR↑、尿中CPR↓になることに注意。
#9.
CPR(Cペプチド)の数値の目安 9 ・CPI(CPR index) ・インスリンの基礎分泌能 ・インスリンの追加分泌能 ・インスリンの総分泌量(推測) 空腹時の血清CPRの正常値:1.0〜2.0ng/mL グルカゴン負荷後の血清CPR(NIDDM:2.0ng/mL以上)
負荷前後のΔCPR(健常人:4.0ng/mL以上)
※腎機能低下がなければ朝食前後採血でも簡易評価可能 尿中CPRの正常値:50〜100μg/日 インスリン依存状態 空腹時の血清CPR < 0.6ng/mL ・負荷後の血清CPR < 1.0ng/mL。
(< 2.0ng/mLで依存状態に近い)
・ΔCPR < 0.5ng/mL。
(<1.0ng/mLで依存状態に近い) 尿中CPR < 20μg/日
(3日間の平均値が望ましい) CPI=空腹時CPR(ng/mL)÷ 空腹時血糖値(mg/dL)x 100
参考値:正常耐糖能者 ≒ 1.60 ± 0.57 CPI>1.2で食事・運動療法と経口薬でコントロール可能 CPI<0.8でインスリン療法が
必要になることが多い 日本糖尿病学会 編:糖尿病専門医 研修ガイドブック 第9版
#10.
糖尿病の治療目標 10 合併症の予防が基本的な目標。 近年は高齢者の体重減少によるサルコペニア、フレイルが話題。 日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2022-2023.文光堂
#11.
合併症を予防するための目標値は? 11 HbA1cを7.0%未満に管理する Ohkubo, Y et al. Diabetes research and clinical practice vol. 28,2 (1995): 103-17.
#12.
血糖コントロール目標(65歳未満) 12 日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド 2022-2023.文光堂
#13.
血糖コントロール目標(65歳以上) 13 日本糖尿病学会HP(https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=66) 治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、
高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。
ただし、加齢に伴って重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する。
#14.
高齢者のカテゴリー分類を行う 14 可能であれば、家族など身近な方に上記を用いて確認を行い、HbA1cの目標を定める。
#15.
米国糖尿病学会での血糖コントロール目標 15 Diabetes Care 2025;48(Suppl. 1):S128–S145 個別性が強調されている。
予後を考慮し、対象によっては
高血糖緊急症にならないなどの
を目標にする場合もある。
#16.
本日の流れ 1.糖尿病の基本知識
2.糖尿病の薬物療法 16
#17.
薬物療法 インスリン治療
インスリン以外の血糖降下薬
・ビグアナイド薬(メトホルミン®️)
・イメグリミン(ツイミーグ®️)
・SGLT2阻害薬
・インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)
※今回は合併症にエビデンスのある薬剤と新規薬剤に絞ります。
17
#18.
インスリン療法の適応 18 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2022-2023, 文光堂, 70-71, 2022を参照 インスリン療法の絶対的適応(生存のために必要) インスリン療法の相対的適応(血糖コントロールのために必要)
#19.
インスリンの働き ①脂肪分解の抑制
②糖産生の抑制
(グリコーゲンの分解抑制、糖新生抑制)
③骨格筋でのブドウ糖取込み 19 インスリン作用が不足した場合 ケトン体産生↑ 空腹時血糖↑ 食後血糖↑
#20.
血中インスリン濃度とその効果 20 神戸大学糖尿病・内分泌内科 坂口一彦先生 スライドより引用 抑制 促進 抑制 産生
#21.
インスリン製剤の種類 21
#22.
超速効型インスリン 22 ・製剤の特徴 ストローク(せり出し)が伸びない。
トルクスプリングが内蔵されており、少ない親指の力で薬液を注入できる。
関節リウマチや握力の弱い高齢者等でも注射しやすい一面がある。 フレックスタッチ
#23.
持効型インスリン 23 ・製剤の特徴 グラルギンの約24時間に対し、トレシーバは>42時間と長い。 作用時間 ※後者では、医療保険で訪問看護が週3日間しか使用できないような、
インスリンの相対的適応である場合に、使用を検討することもできる…? トレシーバは前頁で記載した内容と同様の理由で、
関節リウマチや握力の弱い高齢者等でも注射しやすい一面がある。 フレックスタッチ
#24.
アウィクリ®️について 週1インスリン製剤 24 適応例 ・心理的・身体的な理由で注射回数を減らしたい場合
・患者自身で施注困難。しかし、介護者が週1回であれば打つことが可能な場合。 特徴 ・従来の基礎インスリン製剤からアウィクリへ切り替える場合、従来製剤の投与単位を約7倍にする。
・効き目は緩徐であり、初回投与時のみ約1.5倍の量を投与(低血糖高リスク者は1.0-1.4倍の量)する。 注意事項 ・従来の持効型インスリンと比較し、統計的な有意差はないものの低血糖のリスクがやや高い。
・新薬であり、2025.12.1までは1回の外来受診で14日分までしか処方できない。
#25.
25 症例1
#26.
症例1 26 症例:61歳男性。170cm 80kg BMI 27.6。
現病歴:1ヶ月前より口渇・多尿あり。倦怠感なし。
食思不振なし。清涼飲料水の多飲あり。当クリニック受診。
既往歴:高血圧症
内服薬:アムロジピン 5mg
生活歴:ADL自立。自営業。アルコール多飲なし。眼科受診歴なし。
血液検査:eGFR 78、Glu 240mg/dL、CPR 4.8ng/mL、HbA1c 9.0%。
pH 7.4、AG 12.0、抗GAD抗体<5.0。尿ケトン体−、尿蛋白1+。
#27.
症例1 27 Q. まずどの治療を開始しますか?(1つ解答) ①DPP-4阻害薬を開始する ④GLP-1受容体作動薬の飲み薬を開始する ⑤内服薬の希望だが、必要なのでインスリン治療を開始する ⑥何も治療は開始せず、糖尿病内科専門医へ紹介する ②メトホルミンを開始する ③SGLT2阻害薬を開始する ・可能なら注射はしたくない。
・薬の値段は気にしない。
・昼と夕はバタバタしていて、
薬を飲めないかもしれない。
#28.
症例1 28 ① DPP-4阻害薬を開始する ④ GLP-1受容体作動薬の飲み薬を開始する ⑤内服薬の希望だが、必要なのでインスリン治療を開始する ⑥何も治療は開始せず、糖尿病内科専門医へ紹介する ②メトホルミンを開始する ③ SGLT2阻害薬を開始する 解説 ・目標HbA1c 7.0%未満
・血糖を下げる+合併症予防 → ②,③,④(メトホルミンは増量後、アドヒアランスが悪いかも)
・尿蛋白+、肥満 → ③、④が腎保護作用、減量には適する。
・もしも、ケトン体陽性 and/or CPI 1.0前後未満なら → インスリンを持効型だけでも開始した方がよい。
・糖尿病内科への紹介 → 全然OK。 ※個人的には③から始めます。その次の外来で④を相談します。②はその後。
#29.
薬物療法 インスリン治療
インスリン以外の血糖降下薬
・ビグアナイド薬(メトホルミン®️)
・イメグリミン(ツイミーグ®️)
・SGLT2阻害薬
・インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)
※今回は合併症にエビデンスのある薬剤と新規薬剤に絞ります。
29
#30.
薬物療法 インスリン治療
インスリン以外の血糖降下薬
・ビグアナイド薬(メトホルミン®️)
・イメグリミン(ツイミーグ®️)
・SGLT2阻害薬
・インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)
※今回は合併症にエビデンスのある薬剤と新規薬剤に絞ります。
30
#31.
ビグアナイド薬 31 250mg、500mgの製剤あり。
DPP-4阻害薬との合剤等も複数ある。 特徴 ・主な作用は筋肉での糖利用亢進。肝臓の糖新生抑制作用。その他にも様々ある。
・副作用には下痢、便秘、嘔気など消化器症状や稀な乳酸アシドーシスあり。
・単独での低血糖リスクは少ない。
・体重は増加しにくい。
・薬価が非常に安価。
・腎機能による容量調整が必要。 250mg 10.4円/錠 500mg 10.4円/錠(2025.4時点)
#32.
一次予防として肥満2型DM患者の死亡率を低下させる 32 Metformin Sulfonylurea/Insulin UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group. (1998). Lancet (London, England), 352(9131), 854–865.
#33.
メトホルミンの血糖効果作用(用量依存性) 33 Garber, A. et al: Am J Med. 1997;103(6):491-497.
#34.
メトホルミンの注意事項 34 心肺機能に高度の障害 上記患者や乳酸アシドーシスの既往がある者では使用を注意する 脱水・嘔吐・下痢 75歳以上では慎重投与(禁忌ではない) アルコール常用者 肝機能障害(重度では禁忌)
#35.
薬物療法 インスリン治療
インスリン以外の血糖降下薬
・ビグアナイド薬(メトホルミン®️)
・イメグリミン(ツイミーグ®️)
・SGLT2阻害薬
・インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)
※今回は合併症にエビデンスのある薬剤と新規薬剤に絞ります。
35
#36.
イメグリミン(ツイミーグ®️)について 36 ミトコンドリア機能改善薬:インスリン分泌能とインスリン抵抗性の改善。 糖代謝の改善 インスリン分泌の促進 糖新生抑制 脂肪肝の改善 糖の取込み促進 膵臓のβ細胞機能の回復 ① 細胞内のエネルギー代謝に関わる補酵素「NAD+」を増加させる② ミトコンドリアに作用し、細胞内での活性酸素の発生を抑制する 膵作用 膵外作用
#37.
ツイミーグ®️は乳酸アシドーシスにならない? 37 乳酸アシドーシスの起こらないメトホルミン…として開発されたらしい。 メトホルミン ツイミーグ 内膜 基質(マトリックス)側 膜管腔側 mGPDH 複合体Ⅰ 複合体Ⅲ ↓
↓ 乳酸 ピルビン酸 ATP産生 ↓ (糖新生) Glu産生 膵作用
(β細胞の機能回復)
#38.
イメグリミン(ツイミーグ®️)の治療効果 38 1.単剤でのHbA1c の変化(24週時) 2.他の経口血糖降下薬と併用時のHbA1c の変化(52週時) ・治療によるHbA1cの変化は1.0%未満。
・GLP-1受容体作動薬との併用では効果が乏しい?可能性がある。 住友ファーマ TIMES 1試験、TIMES 2試験参照
#39.
イメグリミン(ツイミーグ®️)について 39 副作用 用法・容量 注意事項 ・1回 1000mg 1日 2回 朝夕食後に服用。腎機能に応じて減量あり。
15 ≦ eGFR < 45 では 1回 500mg 1日 2回
10 ≦ eGFR < 15 では 1回 500mg 1日 1回 500mg錠を4錠/日で使用!
錠数が多い。 ・悪心、下痢、嘔吐
・低血糖(SU薬、グリニド薬との併用注意) ・構造は類似しているが、メトホルミンとの併用は可能。
ただし、併用により消化器症状の副作用出現が増える。 500mg 薬価:34.1円/錠(2024.12時点)
#40.
40 症例2
#41.
41 症例2 症例:79歳女性。158cm 52kg BMI 21。
現病歴:3日前より発熱、食事摂取困難。腎盂腎炎で入院。
既往歴:2型糖尿病、腎盂腎炎、認知症あり(DASC-8でカテゴリーⅡに相当)
内服薬:ジャディアンス 10mg、メトホルミン 500mg。(入院直前まで内服あり)
生活歴:基本的ADL自立。認知症のない同年代の夫と同居。食事は十分とれる。
血液検査:eGFR 45、Glu 190mg/dL、HbA1c 7.3%、pH 7.4、AG 11.3
入院後は経口血糖降下薬を中止、インスリン頻回注射を使用。
感染症は軽快した。
#42.
42 症例2 Q. 退院時、薬剤変更について何か提案しますか?(複数解答あり) ①もとの内服薬を継続でよい。 ④インスリン注射(持効型だけでも)継続を提案する。 ⑤GLP-1受容体作動薬(週1製剤)トルリシティ®️を提案する。 ⑥DPP-4阻害薬や他薬剤の導入を提案する。 ②内服薬は一部中止を提案する。 ③内服薬は2剤とも中止を提案する。 自分ではインスリンの注射は難しい。
夫も難しいことはできない。
お薬の管理は一緒にしてくれる。
#43.
43 症例2 ①もとの内服薬を継続でよい。 ④インスリン注射(持効型だけでも継続)を提案する。 ⑤GLP-1受容体作動薬(週1製剤)トルリシティ®️を提案する。 ⑥DPP-4阻害薬や他薬剤の導入を提案する。 ②内服薬は一部中止を提案する。 ③内服薬は2剤とも中止を提案する。 ・目標HbA1c 7.0%
・尿路感染症の繰り返し → SGLT2阻害薬 中止がよい
・シックデイ対応困難 → SGLT2阻害薬、メトホルミン 中止が望ましいかも
・シックデイ対応が不要 → ツイミーグ+DPP-4阻害薬 1つの手
・BMI 21。やや痩せている。 → トルリシティ 注射薬の拒否がなく、誰かが打てるなら1つの手 解説
#44.
薬物療法 インスリン治療
インスリン以外の血糖降下薬
・ビグアナイド薬(メトホルミン®️)
・イメグリミン(ツイミーグ®️)
・SGLT2阻害薬
・インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)
※今回は合併症にエビデンスのある薬剤と新規薬剤に絞ります。
44
#45.
SGLT2阻害薬 種類と適応 45 ダパグリフロジン(フォシーガ®️ ) ・適応:1型、2型DM、慢性心不全、CKD
・薬価:5mg 169.9円、 10mg 250.7円(2024.12時点) エンパグリフロジン(ジャディアンス®️ ) ・適応:2型DM、慢性心不全、CKD
・薬価:10mg 188.9円、 25mg 322.6円(2024.12時点) カナグリフロジン(カナグル®️ ) イプラグリフロジン(スーグラ®️ ) トホグリフロジン(デベルザ®️ ) ルセオグリフロジン(ルセフィ®️ ) ・適応:1型、2型DM
・薬価:25mg 113.9円、 50mg 170.4円
(2024.12時点) ・適応:2型DM(+CKD)
・薬価:100mg 158.5円
(2024.12時点) ・適応:2型DM
・薬価:20mg 164.1円
(2024.12時点) ・適応:2型DM
・薬価:2.5mg 149円、5mg 220.8円
(2024.12時点)
#46.
SGLT2阻害薬の特徴 ・血糖効果作用については膵臓のインスリン分泌を介さない。
・血糖依存性に血糖効果作用あり:低血糖リスクは低い。
・1型糖尿病でも一部が保険適応あり(フォシーガ®️、スーグラ®️)。
・体重減少作用あり。
・血圧低下作用あり。
・心血管病、心不全抑制、腎症進行抑制の効果あり。 46
#47.
心不全患者の心血管死+心不全増悪イベントを抑制(DMの有無に関わらず ) 47 DAPA-HF試験(2019年) EMPEROR-Reduce試験(2020年) フォシーガ®️ ジャディアンス®️ DELIVER試験(2022年) EMPEROR-Preserved試験(2021年) McMurray JJV, et al. N Engl J Med. 2019;381(21):1995-2008. Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2022;387(12):1089-1097. HFrEF HFpEF Packer M, et al. N Engl J Med. 2020;383(15):1413-1424. HFrEF Anker SD, et al. N Engl J Med. 2021;385(16):1451-1461. HFpEF
#48.
CKD患者の腎イベントを抑制(DMの有無に関わらず ) 48 DAPA-CKD試験(2020年) Heerspink HJL, et al. N Engl J Med. 2020;383(15):1436-1446. EMPA-KIDNEY試験(2023年) フォシーガ®️ ジャディアンス®️ The EMPA-KIDNEY Collaborative Group, Herrington WG, et al. N Engl J Med. 2023;388(2):117-127.
#49.
SGLT2阻害薬の注意事項 49 ・高齢者(サルコペニア、フレイル、認知症等)では脱水に注意が必要。
・正常血糖ケトアシドーシス (←ケトンを産生しやすい)
・術前3日前より休薬が推奨されている。
・尿路感染症、性器感染症
・食欲増加?
・皮膚症状
#50.
正常血糖ケトアシドーシスとは 50 定義:血糖250(または200)mg/dL以下のDKA。
(DKAの診断基準:血糖>250mg/dL、ケトーシス、pH≦7.3、HCO3- ≦18mEq/L) 注意:血糖値ではケトアシドーシスになっていることに気付けない。
→消化器症状、身体所見より疑い血液ガスでAGを確認しケトンを採血 or 尿で確認する! ※1型DMや2型DMだけでなく、元々糖尿病が既往にない患者でも定義を満たしうることに注意。
#51.
正常血糖ケトアシドーシスの対応 51 日本のガイドラインの記載 STICH プロトコール Stop the SGLT inhibitor(SGLT2阻害薬中止)
Inject bolus insulin(炭水化物摂取に加え、普段の1.5倍量のインスリンを皮下注射する)
Consume 30g carbohydrates(30-60gの炭水化物を摂取)
Hydrate (200-500mLの水分摂取) ※2.〜4.を数時間ごとに繰り返す Garg SK, et al. Doabetes Technol Ther. 2018: 20: 571-575 (※「治療介入により血糖値が下がってきた状態のDKA」として対応しているイメージ) SGLT2阻害薬中止
0.05(0.02〜0.1)U/kg/hrでインスリン持続静注開始
5%(必要なら10%)ブドウ糖液持続静注開始
評価の上で外液投与やK補正を行う。 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン 2024. 447-448
#52.
52 症例3
#53.
症例3 53 症例:75歳男性。160cm 45kg BMI 17.5。
1週間前より食思不振。2日前から発熱、1度嘔吐あり、COVID-19軽症で入院。
入院当日朝も内服薬は飲まれている。
既往歴:2型糖尿病(1ヶ月前のHbA1c 8.3%)、脳梗塞後(片麻痺)、認知症。
内服薬:メトホルミン 1500mg、フォシーガ 5mg、マンジャロ 5mg。
生活歴:要介護2。車椅子移動。妻(68歳で協力的、認知症なし)の介護あり。
血液検査:eGFR 71、HbA1c 9.7%。Glu 287mg/dL。
入院後は経口血糖降下薬とマンジャロは中止。
インスリン頻回注射を開始。
#54.
症例3 54 Q. 入院後、追加で行いたいことを選んでください。(複数解答あり) ①ケトーシスや乳酸高値の状態にあるかを検査する。 ④ ①~③に問題がなければ、退院時は入院前の内服薬に戻すことを目標とする。 ②抗GAD抗体を検査する。 ③インスリン分泌能を評価する
(CPIやグルカゴン負荷試験を評価)。
#55.
症例3 55 解説 ①ケトーシスや乳酸高値の状態にあるかを検査する。 ④ ①~③に問題がなければ、退院時は入院前の内服薬に戻すことを目標とする。 ②抗GAD抗体を検査する。 ③インスリン分泌能を評価する(CPIやグルカゴン負荷試験を評価)。 ・原因不明の食思不振、嘔吐に加え、SGLT2阻害薬の内服あり。 → ケトーシスの有無を確認。 ・直近の採血でのHbA1cの経時的な増悪。 → 1型糖尿病も鑑別に入れる。分泌能も評価。 ・BMI 17.5、シックデイ対応困難。→ メトホルミン、SGLT2阻害薬、マンジャロは可能なら再開したくない。 ・シックデイでもメトホルミンの内服あり→ 乳酸アシドーシスの有無を確認。
#56.
症例3 対応例 56 ・よくわからない食思不振? ・SGLT2阻害薬内服あり ・嘔吐の原因? β-ヒドロキシ酪酸 3.7 mmol/L
(血液ガスでHCO3- 25.9 mmol/L) ・糖入り輸液+HuRの混注 (ケトン体消失 、食事安定まで継続) ・インスリン頻回注射開始(最終的に 超速効型 朝14-昼14-夕14単位、持効型 14単位 使用) グルカゴン負荷試験:負荷前 血糖 157mg/dL、血中CPR 0.65ng/mL 。
負荷後 血中CPR 1.04ng/mL。ΔCPR < 0.5ng/mL。 IDDM相当の内因性インスリン分泌能と判断! 抗GAD抗体<5.0。
朝食前 血糖 192mg/dL、血中CPR 0.73ng/mL。CPI 0.4。
#57.
57 症例3 対応例 インスリン治療が必要で、糖尿病の飲み薬は中止していくんですね。
体調不良の時に薬をやめたりなどの判断は少し自信がないですが、
1日1回だけでなんとかなるのであれば、夫のインスリンは私が打ちます! その後、持効型インスリンのみに変更とした。
本症例はDASC-8でカテゴリーⅢに相当し、HbA1c 8.5%未満をまずは目標とし、
予後を考慮すると、高血糖緊急症にならない程度の管理でも許容はされるかもしれない。
妻氏にインスリン手技の獲得を目的に面会時に練習いただき、最終的に自宅退院となった。 経過 (退院時:グラルギン 10単位。血糖推移は 朝100-昼200-夕200-眠前300mg/dL程度で推移。) 妻氏
#58.
薬物療法 インスリン治療
インスリン以外の血糖降下薬
・ビグアナイド薬(メトホルミン®️)
・イメグリミン(ツイミーグ®️)
・SGLT2阻害薬
・インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)
※今回は合併症にエビデンスのある薬剤と新規薬剤に絞ります。
58
#59.
インクレチン関連薬 ・DPP-4阻害薬
・GLP-1受容体作動薬
・GIP/GLP-1受容体作動薬 59
#60.
インクレチン関連薬 ・DPP-4阻害薬
・GLP-1受容体作動薬
・GIP/GLP-1受容体作動薬 60
#61.
インクレチンとは 61 インスリン分泌 GIP GLP-1 DPP-4 小腸 膵臓 増強 インクレチン:経口摂取に伴い小腸より分泌されるホルモン ・GLP-1;Glucagon-like peptide-1 ・GIP;Glucose-dependent insulinotropic polypeptide <商品名> グラクティブ®️、トラゼンタ®️ ビクトーザ®️、トルリシティ®️
オゼンピック®️、リベルサス®️ マンジャロ®️ インクレチンの分解を阻害 インクレチン受容体を直接刺激
#62.
生理的濃度と薬理学的濃度における作用の違い 62 インスリン↑
グルカゴン↓
作用:血糖値↓ DPP-4阻害薬 GLP-1受容体作動薬 GIP/GLP-1受容体作動薬 生理的GLP-1濃度 胃内容排出↓ 食欲↓
作用:体重減少 血糖降下作用 血糖降下作用
+
体重減少作用 血中のGLP-1濃度 Trends Mol Med. 2008;14(4):161-168.より改変 薬理学的GLP-1濃度
#63.
DPP-4阻害薬について 63 一般名:シタグリプチン
グラクティブ®️ 50mg 113.8円/錠
ジャヌビア®️ 50mg 111.5円/錠
(2024.7時点) 一般名:リナグリプチン
トラゼンタ®️ 5mg 122円/錠
(2025.3時点)
※腎機能での調整記載なし 一般名:リナグリプチン
ネシーナ®️ 25mg 162.4円/錠
(2024.11時点) 週1製剤もあり
#64.
DPP-4阻害薬の特徴 64 ・小腸から分泌されるインクレチン(GLP-1、GIP)
の分解酵素であるDPP-4の働きを阻害する
・低血糖リスクは低い(血糖依存性)
・体重は増えにくい
・副作用が少なく、高齢者には導入しやすい
・合併症予防へのエビデンスは乏しい
#65.
DPP-4阻害薬には心血管イベントの予防効果はない 65 N Engl J Med. 2013;369(14):1327-1335. N Engl J Med. 2013;369(14):1317-1326.
#66.
DPP-4阻害薬の使用上の注意 66 ・肝、腎障害には基本的には減量もしくは中止が必要な薬剤もある。
・DPP-4阻害薬とSU薬の併用では、重篤な低血糖を起こす症例報告あり。
両者併用時はSU薬は最小容量まで減量することが望ましい。
・因果関係を否定できない腸閉塞、間質性肺炎、水疱性類天疱瘡の報告あり。
・大規模試験において急性膵炎、膵癌発症リスクを増大させないとされているが、
メタ解析では急性膵炎発症との関連が示唆されている。
#67.
インクレチン関連薬 ・DPP-4阻害薬
・GLP-1受容体作動薬
・GIP/GLP-1受容体作動薬 67
#68.
GLP-1受容体作動薬について 68 (GLP-1受容体を刺激。
ヒトのGLP-1より
効果が時間が長い。
DPP-4の影響受けにくい) 前提知識:GLP-1は体内でDPP-4に即分解され、半減期は1~2分。本来、効果は短時間で失われる。 <短時間作用型> <長時間作用型> 1日1回 週1回 週1回 週1回 1日1回
#69.
GLP-1受容体作動薬の種類 69 内服製剤 セマグルチド(リベルサス®️)
#70.
血糖効果作用と体重減少効果 70 GLP-1受容体作動薬の方がDPP-4阻害薬より、血糖降下作用、体重減少効果が強い ビクトーザ ®️ v.s. DPP-4阻害薬 Lancet (London, England), 375(9724), 1447–1456.
#71.
GLP-1受容体作動薬の心血管リスク抑制、腎保護作用
71 The New England journal of medicine, 375(4), 311–322. LEADER試験:ビクトーザ ®️ v.s. プラセボ 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中 The New England journal of medicine vol. 377,9 (2017): 839-848. 腎アウトカム(顕性Alb尿の新規発症、血清Cre倍増、
末期腎不全、腎疾患による死亡) 心血管リスク抑制効果あり、腎保護作用あり
#72.
オゼンピック®️はビクトーザ®️より効果は強い
72 SUSTEIN 10試験:オゼンピック 1.0mg v.s. ビクトーザ 1.2mg Diabetes & metabolism vol. 46,2 (2020): 100-109. 血糖降下作用、体重減少効果はオゼンピック 1.0mg > ビクトーザ 1.2mg
#73.
トルリシティ®️は体重減少効果が乏しい 73 製剤:0.75mgの容量のみ、アテオス(使用しやすい使い切りキット)。 Lancet (London, England). 2019 07 13;394(10193);131-138. 体重減少作用は少ないが、心血管リスク抑制効果、腎保護作用はあり。
サルコペニアを認める高齢者には比較的使用しやすいか。 Diabetes Obesity and Metabolism, 17(10): 974-983, 2015 日本人を対象:トルリシティ®️ v.s. ビクトーザ®️ v.s. プラセボ
#74.
経口GLP-1受容体作動薬(リベルサス®️) 74 Science translational medicine vol. 10,467 (2018): eaar7047. ・GLP-1の1種であるセマグルチドは
小腸ではなく胃で吸収される。 ・ペプチドはペプシノーゲンで分解されるが、
SNACを配合することで酵素分解を防ぎ
(局所的にpHを上昇させる)、
吸収が一時的に促進される。 ※SNAC;サルカプロザートナトリウム バイオアベイラビリティ
約 1.0 %
#75.
リベルサス®️の服用方法 75 1日1回 空腹の状態で1錠を120mL以下の水で服用する。
服用後、少なくとも30分以上の飲食を禁止する。
#76.
リベルサス®️の特徴 ・GLP-1受容体作動薬唯一の内服製剤(3mg、7mg、14mg)であり、
注射薬でないことから導入のハードルは低い。1ヶ月以上あけて容量を増やす。
正しい内服が可能であれば、注射薬にも効果は匹敵する。
・内服方法を遵守する必要がある。
バイオアベイラビリティが低く、個人差が大きい。
副作用には嘔気、腹部膨満感、便秘、下痢がある。 76
#77.
GLP-1受容体作動薬の比較 77 Diabetes research and clinical practice vol. 177 (2021): 108904. → オゼンピック®️ 1.0mg → ビクトーザ®️ 1.8mg → トルリシティ®️ 1.5mg → リベルサス®️ 14mg 血糖・体重減少作用
#78.
チルゼパチド(マンジャロ®️)の効果 78 N Engl J Med. 2021;385(6):503-515. SURPASS-2:マンジャロ®️ v.s. オゼンピック®️ マンジャロ 5.0mgはオゼンピック 1.0mgより血糖効果作用、体重減少作用を上回る。
#79.
79 症例4
#80.
症例4 80 症例:75歳男性、腎盂腎炎で入院。右腎瘻あり。164cm 55kg BMI 20.4。
既往歴:2型+抗癌剤治療による糖尿病、右腎癌治療後。CKD。
内服薬:経口血糖降下薬の内服なし。
生活歴:基本的なADLは自立。協力的な妻・娘と同居(娘は日中仕事)。
要支援1。食事量:少ない。認知症はなく、DASC-8でカテゴリーⅠ。
血液検査:eGFR 21、CPR 8.27ng/mL、Glu 167mg/dL、抗GAD抗体<5.0、HbA1c 9.8% 。
経過:感染症は治療により軽快した。自宅退院を予定。
インスリン超速効型 4-2-2単位(食後打ち)、持効型 3単位で血糖推移良好。
#81.
症例4 81 Q. 退院後の治療として何を提案しますか?(複数解答あり) ①DPP-4阻害薬を開始する ④GLP-1受容体作動薬(トルリシティ®️)を開始する ⑤やむを得ず現在のインスリン頻回注射を継続する。 ⑥やむを得ずインスリン持効型を継続する。 ②メトホルミンを開始する ③SGLT2阻害薬を開始する
#82.
症例4 82 解説 ① DPP-4阻害薬を開始する ④ GLP-1受容体作動薬(トルリシティ®️)を開始する ⑤やむを得ず現在のインスリン頻回注射を継続する。 ⑥やむを得ずインスリン持効型を継続する。 ②メトホルミンを開始する ③ SGLT2阻害薬を開始する ・目標HbA1c 7.0%(インスリンを使用するなら8.0%未満)
・腎機能低下 → メトホルミン使用禁忌。
・腎瘻、腎盂腎炎発症 → SGLT2阻害薬は使いにくい。
・食事少なめ、BMI 20.4 → GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬は使いにくい。
・家族同居 → 1日1回の持効型インスリンであれば比較的安全に使用可能。体重減少作用もない。
※DPP-4阻害薬(トラゼンタ®️)は血糖を少し下げる作用を期待しての使用は可能と思われる。 ※経験症例では「インスリン持効型 3単位 + トラゼンタ 5mg、朝食前のみSMBG評価」 を選択した。
(トルリシティ®️でもよかったかもしれない。)
#83.
治療方針を決めるのに必要な情報(私見) 83 ・病型
・病態(NIDDM or IDDM)
・現在の治療内容
(+ 合併症の状態) 糖尿病 背景 ・既往歴(肝・腎・心疾患、尿路・性器感染症など)
・生活歴(飲酒、同居者、ADL、認知症、施設、介護認定、食事内容、かかりつけ医、
体重経過、内服アドヒアランス、シックデイ対応が可能か)
・身体所見(体重、BMI、視力の低下や四肢の運動障害)
・検査結果(肝・腎機能、HbA1c。+α(尿蛋白、Cペプチド、ケトン体、GAD抗体、膵形態評価等))
・患者の希望(注射製剤の希望の確認、内服タイミングや錠剤数、経済的背景)
・患者の予後 コントロール目標 ・合併症予防
・目標とするHbA1c 治療方針
#84.
Take home message ・糖尿病の治療内容を個別に決定するために、
患者情報、検査結果を十分に収集する。
・適切なタイミングでインスリン分泌能を評価し、
必要であればインスリン注射を導入する。
・インスリン以外の血糖降下薬はメトホルミン、SGLT2阻害薬、
GLP-1受容体作動薬の3剤の導入についてまず検討する。
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