#4.
脂質異常症の管理に関するエビデンス Ø 10 万⼈以上を対象としたコペンハーゲン研究では、 ⾮空腹 TG と⼼筋梗塞・脳卒中リスクが関連し、 TG の値で直線的に上昇していた Figure 3. 動脈性⼼⾎管イベントの絶対リスク ⼼筋梗塞 虚⾎性脳卒中 ⼤動脈弁狭窄症 10 万 ⼈ 年 $ % & ' 絶 対 * + , European Heart Journal (2021) 42, 4791–4806 doi:10.1093/eurheartj/ehab551 ⾎漿中TG Ø 空腹時よりも⾮空腹の TG 値が⼼⾎管イベントと 関連していたため、⾮空腹時の TG 値が注⽬される JAMA 2007;298;(3):309-316. doi:10.1001/jama.298.3.309 Figure 3. HDL-C のレベル別の、TG の値と将来の⼼⾎管イベントの関連 空腹時 ⾮空腹時
#5.
残余リスクへの介⼊の必要性 Ø LDL 管理後の⾼ TG ⾎症への介⼊は Class IIa であり、残余リスクへの介⼊の必要性あり 表. 冠動脈疾患⼀次予防における脂質異常症治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラス エビデンスレベル I A IIa C IIa C ⾼ LDL コレステロール⾎症などの脂質異常症が認められた際には、包括的リスク評 価の結果推奨された管理⽬標達成を優先し、⽣活習慣改善に加えスタチン等の 脂質異常症治療薬を⽤いて⼗分に改善させる ⾼ LDL コレステロール⾎症が管理⽬標値まで改善されたのち、non-HDL コレステ ロールの⽬標値達成を考慮する LDL コレステロールが適切に改善されており、⾼ TG ⾎症あるいは⾼ TG ⾎症およ び低 HDL コレステロール⾎症が併存する場合には、⼗分に⽣活習慣を改善させた のち脂質異常症治療薬を⽤いた介⼊を考慮する https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_fujiyoshi.pdf
#6.
⾼ TG ⾎症が悪い 3 つの理由 ① 超悪⽟リポタンパク質 「レムナント」 の蓄積 Ø TG の増加により、不消化産物とされるレムナントも増加する → レムナントは⾎管壁に留まるため プラーク形成を促進 させる TG ⾃体は⾎管壁に直接留まることはない ü ⾷事摂取された中性脂肪や肝臓から合成された中性脂肪は、カイロミクロンやVLDL という“リポタンパク質”により運搬 されるが、その分解された後の残りかすは 「レムナント」と呼ばれる ü ⾼ TG によりレムナントが過剰に発⽣し、⾎中に留まり、動脈壁に蓄積、⾎管壁に⼊り込む ü レムナントはマクロファージに取り込まれやすく、その後粥状動脈硬化の元となる 「泡沫細胞」となり、 炎症や酸化ストレスを引き起こして動脈硬化を進⾏させる
#7.
⾼ TG ⾎症が悪い 3 つの理由 ② ⾎管内⽪機能の障害と炎症 Ø 内⽪機能障害からマクロファージの侵⼊が起こり、炎症⼟台が形成 される ü ⾼濃度の中性脂肪とレムナントは、⾎管内⽪細胞を傷つけ、機能低下をもたらす ü ⾎管壁炎症が引き起こされ、活性化された内⽪細胞は接着分⼦の産⽣を増やし、単球(マクロファージの前駆体) が⾎管壁に⼊り込みやする ü これらの炎症反応が、 動脈硬化の初期段階である「脂肪線条」の形成を加速
#8.
⾼ TG ⾎症が悪い 3 つの理由 ③ 悪⽟ LDL の⼩型化・超悪⽟化 Ø ⼩型化 LDL が⾎管壁へ侵⼊し、⾎管炎症 を引き起こす ü 中性脂肪が増加し、LDL/HDL との間で中性脂肪とコレステロールが交換され、結果として LDL は中性脂肪を多く含ん だ、より⼩型で⾼⽐重な「超悪⽟LDL(Small dense LDL)」に変化する ü この状態は、抗酸化物質も少なく、より酸化を受けやすい ü 動脈壁に付着しやすくなり、動脈硬化を強⼒に促進する ü LDL が⼩型化して⾎管壁への侵⼊を容易にさせ、結果的に⾎管炎症からプラーク形成、破綻などを招く
#9.
⾼ TG ⾎症、リポ蛋⽩のサイズと動脈硬化作⽤ Ø リポ蛋⽩のサイズにより、動脈効果への作⽤が異なる ⾼ TG ⾎症の結果 カイロミクロン増加 分⼦量が⼤きいと、⾎管内⽪機能障害 をきたし、⼩さい分⼦を⼊れやすくする リポ蛋⽩の密度と粒⼦サイズ 作⽤の強さ + 低 カイロミクロン VLDL 増加 + レムナント増加 ++ Small dense LDL 増加 ++ HDL-C 低下 ++ 密 度 ⾼ VLDL HDL ⼩ LDL サイズ ⼤ 分⼦が⼩さいと⾎管壁内へ侵⼊し、 動脈硬化炎症へと繋がる https://miyake-naika.com/01sindan/chuseisibou.html#gsc.tab=0 を参考に作成
#10.
⾼ TG ⾎症への介⼊試験① REDUCE-IT 試験 =⼼⾎管リスク低減を⽬的としたペマフィブラートによる TG 低下 TG ⾼値の患者において、⼼⾎管死亡などの虚⾎性 ! " # $ % & ' ( 患 者 % 割 合 ︵ イベントのリスクは、スタチンを使⽤していても、 イコサペント酸エチル 2 g を 1 ⽇ 2 回投与した例のほうが、 プラセボ投与例よりも有意に低かった N Engl J Med 2019;380:11-22. プラセボ イコサペント酸エチル % ︶ ランダム化後の年数 プラセボ イコサペント酸エチル
#11.
⾼ TG ⾎症への介⼊試験 ② PROMINENT 試験 = ⾼ TG ⾎症に対するイコサペント酸エチルによる⼼⾎管リスクの低減 ⼼ ⾎ 管 ! " # $ % 累 積 割 合 ︵ 2 型糖尿病と軽度〜中等度の⾼ TG ⾎症を有し、 HDL・LDL コレステロールが低い患者のうち、ペマフィブラート 群では、TG、VLDL コレステロール、レムナントコレステロール、 プラセボ % アポリポ蛋⽩ C-III が低下したが、プラセボの投与を受けた ペマフィブラート ︶ 患者と⽐較して、⼼⾎管イベントの発⽣率は低くなかった N Engl J Med 2022;387:1923-1934 追跡年数 ペマフィブラート プラセボ ペマフィブラートも TG は低下させるものの、現在のところは⼼⾎管アウトカムを重視するならば、 LDL-C に対するスタチン投与や TG に対する EPA 製剤投与を中⼼に、⽣活習慣や他の肥満、 炎症などの管理が優先
#12.
肥満症と TG 残余リスク Ø 肥満症と脂質異常症では、特に ⾼ TG ⾎症 と 低 HDL-C ⾎症 が肥満と関連する ü 脂肪組織増⼤で、遊離脂肪酸(FFA)が増加、肝 TG 上昇 → 結果としてレムナントが上昇する ü インスリン抵抗性増⼤も修飾し、肝臓での過剰 VLDL 産⽣、リポ蛋⽩リパーゼ活性低下、TG rich リポ蛋⽩増⼤など ü TG 蓄積によってコレステリルエステル転送タンパク(CETP)による HDL とのコレステロールエステル/TGの交換が誘発され、 HDL-C 濃度低下 ü 肝性リパーゼ(HL)が LDL から TG とリン脂質を除去し、動脈硬化惹起性リポタンパクである small-dense LDL を⽣成 動脈硬化が進⾏ Ø 運動や GLP-1 作動薬によって、TG 低下も認められる
#13.
さまざまな残余リスクコンセプト Ø ⾊々な臨床研究で LDL のコントロールだけではASCVDは予防しきれないことが認識されている その他の因⼦は LDL とは独⽴して残存している = 残余リスク → コレステロールリスク、炎症、 ⾎栓、TG、Lp(a)、⾎糖の残余リスクが指摘されている 残余リスクとその構成要素 European Heart Journal 2021,42,113–131, Fig 2 を参考に作成 残余リスク コレステロール 炎症 ⾎栓 TG Lp(a) ⾎糖 バイオ マーカー LDL-C ≧ 100 mg/dL hsCRP ≧ 2 mg/dL 単純な バイオマーカーなし TG ≧ 150 mg/dL Lp(a) ≧ 50 mg/dL HbA1c 空腹時⾎糖 介⼊ LDL・Apo Bの低下 炎症の低下 ⾎栓薬 TG の低下 Lp(a) の低下 SGLT2 阻害薬 GLP-1 作動薬 IMPROVE-IT FOURIER SPIRE ODYSSEY CANTOS COLCOT LoDoCo2 OASIS-9 ZEUS HERMES HORIZON OCEAN EMPA-REG CANVAS DECLARE CREDENCE LEADER SUSTAIN-6 REWIND RCTの エビデンス Ziltivekimabu PEGASUS COMPASS THEMIS REDUCE-IT PROMINENT Pelacarsen
#14.
さまざまな残余リスクコンセプト Ø 近年、肥満症や残余慢性炎症は新しい Colchicine コンセプトであり特に注⽬されている︕ マクロファージ (LDL、TGにより惹起された動脈硬化性の炎症をブロック) 将来の Big 4 …︖ p 炎症管理 p 脂質系(LDL、TG、Lp(a)) p Adiposity(異所性脂肪) IL-1β 内⽪細胞 炎症の各 Stage に対して 抗炎症薬が検討されてきた 抗 IL6 抗体薬 Ziltivekimabu 平滑筋細胞 マクロファージ Ziltivekimabu IL-6 が期待されている p ⾎糖管理 CRP 肝臓 Journal of Cellular and Molecular Medicine ︔July 2021:25(2) DOI:10.1111/jcmm.16798 を参考に作成
#15.
TG ⾼値を想起するポイント Ø 以下があれば TG 値の確認が必要︕ 同時に動脈硬化の進⾏程度の観察もとっても重要︕ p ⾷事内容が間⾷・夜⾷、⾼糖質・脂質摂取(ラーメン過多などあれば注意) p 肥満症、特に中⼼性肥満(ぽっこりお腹なども⾒逃さない) p 基礎疾患︓糖尿病、甲状腺機疾患、腎不全(TG 上昇に注意) p 急性膵炎の既往(病歴から聴取を)
#16.
治療 Ø まずは薬物・⽣活習慣管理を含めて LDL-C の管理を進める Ø それでも⾼値が持続する場合には、フィブラート系薬剤 を検討する → フィブラート系は薬剤は TG 低下作⽤が強く、併⽤には注意が必要とされる Ø N-3 系多価不飽和脂肪酸も TG 低下作⽤が認められているので有⽤ Ø 他にはスタチンや PCSK-9 にも⼆次的な TG 低下作⽤がある Ø 肥満症合併例ならば、GLP-1 受容体作動薬で TG 低下作⽤あり → Semaglutide に⼼筋梗塞を含む⼼⾎管 outcome の evidence あり Diabetes, Obesity and Metabolism, May 2023:25(8):2388 -2392 DOI:10.1111/dom.15081
#17.
専⾨医紹介のタイミング Ø TG = 内分泌代謝内科だけでないことに注意︕ Ø TG 管理の⽬的は ⼼⾎管イベントの抑制 → そのため、TG ⾼値に加え、⼼⾎管イベントのスクリーニングも重要 Ø もちろん既往、症状があれば循環器内科専⾨医への紹介が必要 Ø 管理に難渋する症例は、遺伝性 や ⼆次性疾患 の否定のため、 内分泌代謝内科専⾨医へ紹介 Ø TG 500 mg/dL を超える症例 や 膵炎既往 なども、内分泌代謝内科への受診を指⽰する