テキスト全文
外来マニュアルの限界と初診外来の流儀
#1. 外来マニュアルではカバーできない 当院指導医達に聞いた 当院指導医達に聞いた 初診外来の流儀 初診外来の流儀
#2. 外来マニュアルだと 頻度が高い症状,診断, 治療という流れが多い プライマリケア外来では, それだとうまくいかない こともある
#3. 外来のヒントを当院総合診療科指導医達に聞いた
受診理由の重要性とFIFEの活用法
#4. 当科指導医達の外来のヒント 受診理由 病歴聴取 診断 コミュニケーション
#7. 「受診理由」を知らねば 外来のゴールを間違える 主訴と受診理由が異なることもある 主訴:慢性頭痛 受診理由:脳出血が心配 こうなると,CTを撮って欲しいという期待があるかもし れない.「肩こりです」では患者さんの受診理由は解決 できていない
#8. ファイフ FIFEを早期に知る (藤沼康樹先生レクチャーから) 受診理由を含め,診療の方向性を決める上で重要. 患者さんの意図とすれ違いがおこらないようにする Feeling(感情) 聞くことは少ないが,イライラは不安だったりする Idea(解釈) その人が感じる原因/診断/重症度/予後 「仕事に支障あります?」「お風呂に入れてます?」 「思い当たるフシは?」「ほっておくと怖いと誰かに言われました?」 Function(生活への影響) 症状が軽そうでも影響があれば 「仕事に支障あります?」「お風呂入れてます?」 レッドフラッグとして対応 Expectation(期待) 診断?症状緩和?不安解消?それによって 「特に心配なことあります?」 どこまで病歴をガッツリ聞くかなどが変わる 「私は○がいいと思うけどどうですか?」
病歴聴取の技術とレッドフラッグの意識
#10. 開幕からの 「今日はどうされましたか?」 は避ける 問診票を見ていない感じが出るので 「○○日前から大変でしたね」とか 問診票の内容に触れながら始める
#11. レッドフラッグを意識せよ 1:各症候のレッドフラッグ 例えば腰痛の夜間痛など.教科書参照. 2:イルネス的な状況のレッドフラッグ 例えば仕事バリバリで受診しづらい人がなぜか軽い症状で受診
#12. どの症状と向き合うか 多くの症状がある場合 それが独立したものなら,優先順位をつける 各症状についてさらっと聞いた上で レッドフラッグを満たす症状を優先的に対応する 全ての症状を診断,治療する必要がないことも多い 「多く症状がある」事自体が問題かもしれない 1回の診察で全症状に同じ力で対応すると,時間も非常にかかる
常用サプリの副作用と注意点
#13. 病歴聴取は映像化 Opened/Closed Q,傾聴スキルを駆使して 映像化を心がける 初学者とそうでない医師の病歴聴取の違いは映像化が できるかと言われている(志水太郎先生レクチャー) 字面ではなく,その人が症状がでる状況や, どんな困り方をしているかまで, 細かく自分の頭の中で再生できるようにする. それが増悪寛解因子などのヒントになって 診断につながっていく.
#14. 常用サプリに注意 サプリには意外と副作用がある 特に個人輸入系は注意 わけがわからないものは調べるひと手間をかけよう 自験例では患者さんが個人輸入していた サプリにスタチンが混入していて やめた翌月にLDLが跳ね上がった
診断時の考慮事項と不確実性の共有
#16. 診断エラーしてない? 診断自体が認知バイアスや 自分の置かれた状況に大きく左右される 認知バイアス: アンカリングバイアス:はじめに思いついた診断にこだわる 確証バイアス:自分の診断に都合の悪い情報は無視 自信過剰バイアス:前医,先輩,専門医の診断に引っ張られる 利用可能バイアス:最近見た/経験した疾患に引っ張られる 状況:疲れ,寝不足,イライラ,時間がない,患者が多い,夜遅い 自分の暫定診断で合わないところはないかを 向上のための誤診を恐れるな. あえて自問する 生坂政臣先生.直感で始める診断推論 日本医事新報社.2022年.
#17. 時間を味方につける 色々な主訴は日を分けて時間に 追われないようにしよう 症状が揃っていない疾患は 時間経過で真の姿を現すことがある 外来の強みはフォローで 時間軸を味方につけられること
#18. 診断の不確実性を意識しよう プライマリケアの状況なので,典型例ばかりではない 典型的な症状が揃う前の未分化な患者さんも多い 診断がつかなくてもしょうがない場合もあり,時間を味方につける 診断がつかない場合には,知ったかぶりをせず どんな可能性があるかなどの不確実性を患者さんと共有する
コミュニケーションの重要性と熟語の使用
#20. 待ち時間が長い場合はまず共感 「はぁ,待つのが長くて眠っちゃったよ」 こっちもずっと患者さんを頑張って診ているのでそんなこと言われても.... 「混んでますからしょうがないですよね」と言いたくなる気持ちはわかるが 「そうですよね,それは大変でしたよね」とまずは相手の気持ちをおもんばかる お互いの陰性感情で診断を含めた診療が格段に難しくなるので しっかりと診療するためにも一言の配慮を
#21. 「それは副作用ではありません」 とは意外と言えない 多剤処方があると,3剤以上の相互作用は未知数である そのため,添付文書での副作用情報はあてにならない場合がある また単剤であっても報告されていないものもあるため副作用とするには ・これまで報告があるか ・薬剤投与後に症状が出現しているか ・薬剤中止で改善したか ・再投与で症状が再燃したか ・症状をきたす他の原因はないか ・用量依存関係にあるか ・他覚的にその症状が確認できるか などを確認する 細かい判定基準はNaranjoの副作用判定スコア(Clin Pharmacol Ther. 1981 ;30:239-45)参照
#22. 熟語は避けよう 医学用語の熟語はだいたい非医療者に とっては理解しづらい 自分が使う単語が熟語になっていないか チェックし,どう翻訳すればよいかを 常に考える 南郷栄秀先生の金言
プライマリ・ケアの包括性と患者への配慮
#23. 向かうのはPCではない そんなことはないと思っても 自分の診療を録画すると だいたいカルテを見てたりする
#24. 「あ,それ専門外なんで」 と言わない プライマリ・ケアの包括性. 解決できるかはわからないけど, とりあえず話は聞こう.
#25. 「いったん外でお待ちいただく」 という手段 こちらの感情が苛立ったり, 調べ物や考え事したいときは, 患者さんに診察室からでてもらう (難しいそうな場合は検査など理由 をつけて) これで時間をとったり,気持ちを リセットする
#26. 帰宅時に伝えること 診断(不確実性も含め) 「前医で何て言われました?」→「よくわかりませんでした」というパターンは 非常に多い.病状を理解してもらうことも大事. また診断が不確実であればそれを伝えて共有することも大事 その疾患の予想される転機 「昨日受診して気管支炎と言われ,今日も症状が出るから来ました」ということも多い. その疾患の重さや生活への影響,予想される罹病期間を伝える 帰宅後の対処方法 自宅でどうすればいいですか?と聞かれることも多い. 帰宅後に悶々とさせてしまうので,はじめから伝えましょう 受診しなければならない状況 セーフティネット.その疾患として受診を急ぐ状況や, 診断の不確実性を補う次の受診のタイミングなどを説明
ドアノブクエスチョンと受診の流れ
#27. ドアノブクエスチョン 患者さんが診察室を出る前の最後の質問が 実は本当の受診理由かもしれない 診療が終わりかかっていて,ここにキチンと 対応するのには体力が必要だが,ここを しっかり対応したい
#28. 外来マニュアルではカバーできない 当院指導医達に聞いた 初診外来の流儀