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眼科救急の重要疾患3選
#1. 知っておきたい眼科救急3選 ドクターK@眼科医 twitter: @doctorK1991
#2. 「明らかに眼科の病気だよな」 「・・・でも、眼科医がいない」 僕も研修医の頃、このシチュエーションが何度かありました。こ のスライドでは、眼科医がいなくてもある程度診断、初期対応 ができるように、緊急性の高い3つの疾患に絞って解説します。
#3. 知っておきたい眼科救急3選 ①急性緑内障発作 ②眼窩骨折(眼窩吹き抜け骨折) ③角膜化学外傷 それでは、順番に見ていきましょう。
急性緑内障発作の概要と治療
#4. ①急性緑内障発作とは 急激かつ高度の眼圧上昇により不可逆的な 視神経障害をきたす状態 一刻も早く治療が必要 緑内障のない方が突然に中等度~重症の緑内障になるイメージです。
#5. 急性緑内障発作の機序 散瞳薬や膨隆した水晶体など 眼球内で排出される房水の出口が閉塞する 房水が排出されず、眼球内に貯まること で眼圧が上昇する 眼圧の正常値は10-21mmHgですが、急性緑内障発作では 40mmHg以上になることが多いです。
#6. 急性緑内障発作の疫学 ①遠視の(目が良い)人に多い ②女性に多い ③高齢者に多い ①、②に多い理由は眼の容積が小さいため、③は高齢にな ると白内障となり、水晶体が膨隆するため眼の容積が減るた めです。
#7. 急性緑内障発作の症状 他覚症状 自覚症状 • • • • 視力低下 眼痛、頭痛 霧視、光視症 悪心、嘔吐 • • • • 角膜浮腫 充血(結膜、毛様) 瞳孔中等度散大 浅前房 赤文字は自覚症状として多く、赤文字の他覚症状は眼科医 でなくても判断できます。基本的には片側ですが、稀に両側 の症状を訴えることもあります。
#8. 急性緑内障発作の治療 1)薬物治療 ① 高浸透圧薬の点滴静注 (マンニトール、グリセオール) ② 降眼圧薬点眼薬 2)外科的治療 ① レーザー虹彩切開術 ② 周辺部虹彩切除術 ③ 白内障手術 マンニトールの禁忌 ・急性頭蓋内血腫の存在 する患者 グリセオールの禁忌 ・先天性のグリセリン、果糖 代謝異常症の患者 ・成人発症Ⅱ型シトルリン 血症の患者 急性緑内障発作で使う薬剤は副作用が多い。しかし、眼科医が不在なことも 多く、その場合は20%D-マンニトール 1回1〜3g/kg(300〜500 ml)を 30〜45 分で点滴投与してながら、その間に眼科医がいる病院を探すのも良いです。
眼窩骨折の診断と治療方針
#9. ②眼窩骨折(眼窩吹き抜け骨折)とは 眼窩を構成する7つの骨 前頭骨、頬骨、上顎骨、篩骨、涙骨、蝶形骨、口蓋骨 これら骨に鈍的外力が加わり、眼窩内圧が上昇する。 眼窩骨折(眼窩吹き抜け骨折) 特に、眼窩の下壁と内壁は壁が非常に薄いため 骨折しやすいとされています。
#10. 眼窩骨折(眼窩吹き抜け骨折)の症状 • 腫脹による眼球突出 吸収されると眼球陥凹 • 複視 骨折により嵌頓した筋により複視を生じ る方向が異なる。 例)下直筋嵌頓→上下方向視で複視 外直筋嵌頓→左右方向視で複視 眼球運動障害による複視を客観的に評価するため、 眼科ではHessチャートを利用した検査を行います。
#11. 眼窩骨折(眼窩吹き抜け骨折)の検査 • 眼窩骨折の診断は眼窩部CTが有用である。特に、下壁骨折は冠 状断や矢状断が有用である。 • 開放型眼窩骨折では骨折片、軟部組織が副鼻腔へ偏位する像を 認める。 • 閉鎖型眼窩骨折(下壁骨折が多い)では偏位した骨折部に軟部組 織が挟まったような像や、骨折部に嵌頓した外眼筋が消失したよう に見えるmissing rectus signなどを認めることがある 眼窩骨折の診断には眼窩部CTが有用です。ここで開放型 か閉鎖型の判断が治療で重要です。また、MRIは金属異物 の恐れから第一選択にはなりません。
#12. 閉鎖型か開放型かが治療に超重要 外眼筋が絞扼(+) 24時間以内の緊急整復術 閉鎖型 外眼筋が絞扼(-) 外眼筋以外の絞扼(+) 眼球運動障害など 不可逆性変化(+) 開放型 眼球運動障害など 不可逆性変化(-) 2週間以内の予定手術 2週間以内の予定手術 経過観察 ※施設によりオレンジ文字の日数は異なります。
眼窩骨折患者の注意事項
#13. 患者を帰宅させる際の注意事項 眼窩骨折と診断した患者さんには 「鼻をかまない」よう指示しています。 受傷後に鼻を強くかむと眼窩気腫を生じ、眼 瞼腫脹や眼球運動障害が増悪することがあ ります。 もし「瞼の腫れが強くなった」、「二重に見え るようになった」などの症状があれば眼窩部 CTをオーダーしましょう。
角膜化学外傷の対応と注意点
#14. ③角膜化学外傷とは 化学物質(酸、アルカリ)が眼に飛入することで、角 膜や結膜が障害されることを角膜化学外傷という。
#15. 角膜化学外傷の問診のポイント 「何が眼に入ったか」これが最も重要です。 特に、アルカリの化学物質が眼に飛入していないかどうかを 確認しましょう! アルカリは組織蛋白のゲル化と細胞膜の脂質のけん 化による細胞膜の融解が起こり、上皮細胞のバリア を溶かします。より深く、より短時間で前房内に達する こともあります。
#16. 角膜化学外傷の症状 • 視力低下 • 流涙(穿孔していると流涙が強く出ることがありま す) • 結膜浮腫 • 結膜充血 • 眼痛 いつ受傷したかが明確なので、その後から上記の症 状を訴えます。
#17. 角膜化学外傷の対応の基本は3つ 1.十分な洗眼 2.残存異物の除去 →1、2では、患者に速やかに水道水などの流水で10分以上洗眼するよう指示する。さらに、 来院時に生理食塩水などを用いて10-20分以上かけて、1-2L以上洗眼を行う。 3.適切な薬物治療 →感染予防のため、抗菌薬の局所・全身投与を行い、ステロイド点眼・内服による消炎やヒ アルロン酸ナトリウム点眼なども併用する。また、炎症性の眼圧上昇に備えて、予防的にア セタゾラミド内服も投与する。 まずは、とにかく洗眼して、異物を除去することに徹し ましょう!
#18. Take home message • 片眼に眼痛、充血、視力低下があれば急性緑内障発作を必 ず疑おう • 閉鎖型眼窩骨折は24時間以内の対応が必要 • 眼内に酸、アルカリが入った可能性があれば、まずは洗眼を!