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図解 Screw と Plate Part1 基本知識 編

投稿者プロフィール
shun@形成外科
Award 2023 受賞者

総合病院

386,402

391

概要

骨折の手術で良く使うスクリューとプレートの基本的事項を解説します。骨の手術をおこなう科(整形外科・形成外科・胸部外科・口腔外科など)を回るすべての医学生・研修医、これから骨折の手術の勉強を始める専攻医を対象としたスライドです。スクリュー や プレートの 仕組み が分かれば手術が理解できるので、ますます手術が楽しくなるはず!

◎目次

・本スライドの対象者

・目次

・くぎ と ねじ の違い

・スクリューの名称

・骨にスクリューを固定する流れ

・スクリューの分類

・ベンディング

・スクリュー(ネジ)の基本

・ラグスクリュー

・ラグスクリューテクニック

・ロッキングプレート

・ロッキングプレートの違い

・ロッキングプレートのメリット・注意点

・ダイナミック コンプレッション プレート

・ダイナミック コンプレッション プレートの適応・注意点

・Take home message

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医

参考文献

  • 田嶋定夫. 顔面骨骨折の治療 改訂第2版.克誠堂出版, 1999.

  • 小室裕造. 頭蓋顎顔面の骨固定 基本とバリエーション. 克誠堂出版, 2013.

  • 菅原康志. インストラクション・フェイシャルフラクチャー. 克誠堂出版, 2007.

  • 菅原康志. インストラクション・クラニオフェイシャルサージャリー 改訂第2版. 克誠堂出版, 2012.

  • 田中正. Locking Compression Plateの理論と有用性. 臨整外. 2009, vol.44, no.5.

  • 山川泰明. ロッキングプレート. 臨整外. 2016, vol.51, no.3.

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テキスト全文

スクリューとプレートの基本知識

#1.

図 解 Screw と Plate Part1 基本知識 編 shun@形成外科

#2.

本スライドの対象者 ・骨の手術をおこなう科を回る すべての 医学生・研修医 ※ 整形外科・形成外科・胸部外科・口腔外科など ・これから骨折の手術の勉強を始める 専攻医 ・こんにちは! shun@形成外科 です。 形成外科では主に 顔面骨の手術でスクリューやプレートを扱います ・今回は、骨折の手術で良く使う、スクリューとプレートの 基本的事項を解説します ・スクリュー や プレートの 仕組み が分かれば 手術が理解できるので、ますます手術が楽しくなるはず! Twitter ID @shun46618111

#3.

目 次 <Contents> ・くぎとネジの違い ・ドリリング・タッピングとは ・いろいろなスクリュー セルフタッピング・セルフドリリング スクリュー コーティカル・キャンセラス スクリュー ラグスクリュー ・ラグスクリューテクニック ・いろいろなプレート ~~コンプレッションプレート ロッキングプレート

スクリューの種類と特徴

#4.

くぎ と ねじ の違い クギ(釘)nail ・らせんのねじ山がない → 抜けやすい ・ハンマーで打ち込む ・横からの力に強い…建築などで使用される ネジ(螺子)Screw ・らせん(螺旋)のねじ山をもつ ・抜けにくい、 物をしっかりと密着させる ・ドライバーで回転させながらいれる ねじ山が大切なのね

#5.

スクリューの名称 A A:ネジ頭 (Head) B:ネジ山 (thread) ※オネジ(雄ネジ)とも呼ぶ B C:ピッチ (pitch) = ネジ山の間隔 C D:内径(Inner diameter) ※ シャフト径・コア径とも呼ぶ E:外径(Outer diameter) D E ※ Thread diameterとも呼ぶ 内径と外径があることを意識しましょう

#6.

骨にスクリューを固定する流れ ① ① ドリリング ・まず、ドリルで骨に穴(青)をあける ・デプスゲージで深さを測る ② タッピング ② ※ タップを切るともいう. 図②の赤い溝 ・ネジ山(雄ネジ)が通るらせん状の溝(メネジ=雌ネジともよぶ) をあける。この作業をタッピングと呼ぶ ・タップとは、工具の名前 ※軟らかい吸収性スクリューでは必要だが、硬いチタンスクリューでは不要 ③ スクリューをドライバーで挿入 ③ ・スクリューをねじ込む時は回すだけ! 押し込む力を加えない ※押し込むとネジ山が潰れる プレートで固定するには、①②③の順で行う 開けた穴の場所と角度が分からなくならないように 目線を穴から外さずに、一連の流れを行いましょう

スクリューの分類と使用法

#7.

スクリューの分類 通常は ①ドリリング ②タッピング ③スクリュー固定の3工程が必要よね 本数が多いと大変だけど、便利なスクリューもあります セルフ-タッピング スクリュー ・スクリュー自体が、タッピング(らせんの溝を切る)できるため タッピングの工程を省略できる ・①ドリルで穴をあける → ②スクリュー固定 の2工程で済む ・チタンスクリューはセルフタッピングスクリューが多い ※違う場合もあり セルフ-ドリリング スクリュー ・スクリュー自体が、ドリリング(穴あけ)とタッピングができるため ドリリングとタッピングの工程を省略できる ・骨にいきなりスクリューを打ち込めば良いので1工程で済む

#8.

スクリューの分類 コーティカル スクリュー (cortical screw) 皮質骨 海綿骨 ・皮質(Cortical)骨用のスクリュー ・骨の外周は皮質骨、中心は海綿骨でできています ・手前と奥の2つの皮質骨を貫き固定するスクリューです 皮質骨 キャンセラス スクリュー (cancellous screw) ・海綿(Cancellous)骨用のスクリュー ※ スクリュー先端は海綿骨内 ・奥の皮質骨が貫けない時に使用する ※ 反対側が関節(軟骨)の場合など ・特徴:軟らかい海綿骨で固定するために ねじ山の ①高さが大きく ②ピッチ(間隔)も大きい 先端が海綿骨 海綿骨は柔らかいく固定性が悪い、砂の様なイメージ! 木の根っこも広く張っていた方が抜けにくいですよね キャンセラススクリューは、ねじ山を大きくし固定性を上げています

#9.

スクリューの分類 カニュレイテッド スクリュー(Cannulated Screw) ※Cannulate:カニューレを挿入する ・ドリルとスクリューが中空(中心部が空洞)になっていて ガイドピンと呼ばれる細いワイヤー(鋼線)が通せる様になっています ・使用法 ① ガイドピンを骨に刺し、場所を確認する ② ガイドピンを通しながら、ドリルで穴をあける ③ ガイドピンを通しながら、スクリューを挿入 ・ガイドピンでまず確認するため、スクリューが誤った部位に入らない ・デメリットは、ソリッドスクリューより強度が弱いが 複数本入れれば強度はカバーできます ガイドピン ソリッドスクリュー(Solid Screw) ※Solid:中身がある ・中が空洞ではない、一般的なスクリューのこと ・Cannulated Screwの対義語の様なもの

ベンディング技術と注意点

#10.

ベンディング ぴったりあわせる ベンディング ※Bend=曲げる ・骨の彎曲に沿って、プレートを曲げること ・ベンディングでプレートと骨の彎曲を丁寧に 合わせる必要があります ※実際やってみると結構むずかしい ベンディングを合わせやすくする方法 ・必要な長さで最短のプレートにする ※長いほど難しい ・術前に3Dモデルを作成し、あらかじめプレートをベンディングしておき 滅菌したものを使用する ・ロッキングプレートを使用する ※ロッキングプレートだと、骨から浮いたまま固定できるため 多少ベンディングが甘くても、整復位はずれない

#11.

ベンディング ベンディングがぴったり ベンディングが合ってないとどうなるの? プレートと骨が密着してない場合 ベンディングが足りない ・通常のスクリューでは、骨がプレートに引き寄せ られるため、整復位がずれてすき間ができます ベンディングが足りない ・骨が引っ張られ、外側が跳ね上げられてしまう ベンディングが強い ベンディングが強い ・骨が押さえられ、下に落ち込んでしまう

#12.

スクリュー(ネジ)の基本 板Aと板Bが 接して いる場合 A ・板Aと板Bは密着した状態で固定される 板Aと板Bに すき間 がある場合 B ・板Aと板Bは両方の木材にネジが効くため すき間はそのままで固定する ・板Aと板Bが回転しないように固定されている場合 始めにすき間があれば、ネジを締めてもすき間の距離は 維持される A A すき間は維持 B ・ポジショナルスクリューとも呼ばれる B ※板Aと板Bを密着させたくても、始めにすき間があると そのまま間が空いてしまう

ラグスクリューとその技術

#13.

ラグスクリュー ね じ 山 な し ね じ 山 あ り A B 固 定 さ れ な い ラグスクリュー(Lag screw) ・下半分はネジ山があるが、上半分はネジ山がないスクリュー ※半ネジとも呼ぶ. それに対して全部ネジ山があるのは全ネジ すき間なく密着させたい(押し付けたい)場合は クギとネジの性質をもつ ラグスクリュー を使用します A B 圧 迫 ラグスクリューで板を固定する場合 ・ラグスクリューの上半分はネジ山がないため 板Aは、ねじ頭で圧迫することで固定されます

#14.

ラグスクリューテクニック ラグスクリューがない時は、ラグスクリューテクニックを使いましょう ね じ 山 が 無 効 A B ラグスクリュー ・下半分はねじ山があるが、上半分はねじ山がない ラグスクリューテクニック ・板Aに外径(ネジ山)より大きい穴をあける →ねじ山が効かない →ねじ山がないのと同じ ・板B(下半分)はネジ山が効くが、板A(上半分)はネジ山 が効かない →ラグスクリューと同じ状況になる

#15.

ロッキングプレート 従来のプレート ・通常、ネジ頭がプレートを骨に押し付け プレートと骨の間の摩擦力で固定します ・ネジが緩むとプレートを押し付ける力が弱くなる ため固定力も弱くなってしまいます ネジ頭にネジ山があり、プレートの穴にも 溝があるためピンク色の範囲が一体化する 骨と離れても固定できる ロッキングプレート ・ネジ頭にネジ山があり、プレートの穴にも溝があるため スクリューとプレートが連結して一体化します ※ スクリューとプレート(ピンク色の部分)が溶接されて結合するイメージ ・一塊となり荷重を受けるため、プレートと骨が 接触する必要がない(浮いていても固定可能) ※ 創外固定と同じようなイメージ

ロッキングプレートの特性

#16.

ロッキングプレートの違い 従来のプレート ・骨とプレートの間にすき間があっても、スクリュー により、骨をプレートに引き寄せられる ※ 外れる時はプレート(一方の骨)に力が加わると、骨折部 に近い方から順番に引き抜く力が掛かり、緩んでいく 骨を引き寄せられる ロッキングプレート ・骨とプレートの位置は、そのままの部位で固定 ※ スクリューは骨を引き寄せないため 整復位を先に決めてから挿入する ・プレートとスクリューが一体化しているため 全てに抵抗力として働き、引き抜くには非常に 大きな力が必要 ※ 固定力が強い

#17.

ロッキングプレートのメリット・注意点 メリット ・骨膜血行の温存 ※プレートを骨に押し付けないため ・固定力が強い ‣プレートの枚数を減らせる ‣従来プレートで限界だった粉砕骨折等にも使用可能 ・ベンディングが多少ずれても骨がずれない 注意点 ・抜釘困難になることがある ・骨に接触する必要はないが、過度な浮き上がりは避ける ・角度固定型のロッキングプレートの場合、スクリューの 方向を調節できないため、関節内などに突出していない か注意する

#18.

ダイナミック コンプレッション プレート 骨と骨の間にすき間があり、骨をもう少し寄せたい時がありますよね? そんな時に、~~Compression plateを使用します ※ Compression=圧迫 例えばDynamic Compression Plate(DCP)やLocking compression plate(LCP)など いろいろなプレートがあります ※ LCPはロッキングとコンプレッションの2つの機能があります ダイナミック コンプレッション プレート の原理 上から見た図 ・プレートの穴に工夫があります ・ネジ頭が引っかかる穴の辺縁(黄色)が 外側は高く、内側は低く滑り台様になっています 横から見た図(断面図) ・スクリューを締め込むと、滑り台を滑る様に スクリューは外側から内側へスライドする

ダイナミックコンプレッションプレートの原理

#19.

ダイナミック コンプレッション プレート 横から見た図(断面図) 上から見た図 使用法 ①プレートの穴の外側の骨にドリリング Screwを締める Screwは内側へスライド ②スクリューを締めていくと スクリューは外側から内側へスライド ※黄色部分が外側が高く、内側が低くなっている ③スクリューと一緒に骨も内側へ移動 →すき間が無くなる Screwと供に骨も内側へ移動 内側へドリリングすると、骨もスクリューも そのままの位置で移動しないから注意しよう ※滑り台の下にいたら滑らない!

#20.

ダイナミック コンプレッション プレートの適応・注意点 骨折部が離開してしまう 適応 ・骨折線の密着度はプレートの固定力に大きく影響します ※ 骨折部の接合が良い → 固定力は良い 骨折部の接合が悪い(離開,ずれなど) → 固定力は悪い ・骨折部の断端が離開しやすく、骨接合が不良な場合に ~~コンプレッションプレートを用いると良い Compression plateで寄せる 注意点 ・骨接合が既に密着している部位に使用すると 骨断端に過剰な強い圧がかかるため 骨断端に骨萎縮が生じてしまうので注意

手術の基本と参考文献

#21.

Take home message • ねじの原理が分かるとラグスクリューテクニックも理解できる • ロッキングプレートは、骨に密着しなくても強力に固定できる • ~~コンプレッションプレートは、骨のすき間を寄せる ・Part1では、スクリューとプレートの基本的な原理を解説しました ・基本事項を理解していると、手術の内容が分かります 積極的に手術の質問をすると、評価が爆上がりするかも⁉ ・Part2は実践編です

#22.

参考文献 • AO Surgery Reference のホームページ. ・形成外科診療ガイドライン 2021年版. • 田嶋定夫. 顔面骨骨折の治療 改訂第2版.克誠堂出版, ・田嶋定夫. 形成外科手術手技シリーズ 顔面骨骨折の治療.1999. • 小 室 裕 造克誠堂出版, . 頭 蓋 顎 顔1999. 面の骨固定 基本とバリエーション. 改訂第2版. 克誠堂出版, 2013. ・平野明喜. 形成外科診療プラクティス 顔面骨骨折の治療の実際. 文光堂, 2010. インストラクション・フェイシャルフラクチャー. • 菅原康志. 克誠堂出版, 2007. ・医学大辞典 第2版. 医学書院, 2009. • 菅原康志. インストラクション・クラニオフェイシャルサージャ リー 改訂第2版. 克誠堂出版, 2012. • 田中正. Locking Compression Plateの理論と有用性. 臨整外. 2009, vol.44, no.5. • 山川泰明. ロッキングプレート. 臨整外. 2016, vol.51, no.3.

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