テキスト全文
#1.
セーフティーネットアドバイスの論文を訳してみた。 ゆきあかり診療所管理者
小林聡史 #2.
はじめに 藤沼康樹先生がFacebook上で紹介してた論文を実際に読んで、訳してみました。
Development of a tool for coding safety-netting behaviours in primary care: a mixed-methods study using existing UK consultation recordings.
Br J Gen Pract. 2019 Nov 28;69(689):e869-e877. #3.
注意 とりあえず全部読もうと思って一通り訳したので、メリハリがなくあまり見やすいスライドではありません。自分で見直しても何を書いてるのかよくわからない部分が多いです笑
スライド29-31枚目のコピーを次に載せます。多分この論文の中で一番印象的な部分だと思うのでもし興味がわいたらそれ以外も読んでみてください。 #4.
セーフティーネットアドバイスコードの例① 抑うつ性障害のプロブレムに関する場面。 #5.
GPのセリフ:注意してください。悪化した場合には(状況)観血的治療のための来院を(推奨行動)しなければいけません。(推奨の強さ)私たちの誰かにすぐに伝えてください。(行動の時間尺度)
患者のセリフ:はい、わかりました。(患者の応答) 抑うつ性障害で
Open surgeryって何?
電気けいれん療法の事?? #6.
開始:臨床医から
診察の段階:クロージング
適用:問題に対して(詳細は次項)
フォーマット:条件付きの行動方針
推奨の強さ:強い
症状の状況:「悪化したら(n=1)」
包括的か特異的か:包括的
推奨行動:再診または連絡を取る
行動のフォーカス:患者
行動の時間尺度:緊急
患者の応答:承諾
質問があったか:なし
コミュニケーション:言葉のみ #9.
セーフティーネットアドバイスとは? もし状態が改善しなかったり、変化したり、健康に関して心配があったときに、医療の助けを求めるべきかどうかがわかるようにデザインされた、患者やケアラーとともに共有する情報 #10.
イントロダクション セーフティーネットアドバイスはプライマリケアにおいて不可欠な要素である。
しかし、 どの程度の頻度でどのような戦略が用いられるか、 患者はどのように反応するか、 患者の安全に対してどの程度有効かについてのエビデンスは不十分である。
本研究ではセーフティーネットアドバイスをコーディングし、実臨床でどのように用いられているかを検証する。 #12.
データ 過去の研究で集められた、318の非選択的な成人の診察風景を用いた。(ビデオが300、音声のみが17、文書記録のみが1) #13.
コード表の開発① 筆頭著者がSafety netに関する文献レビューを実施し、既存のコードを探索した。
ランダムに選ばれた93の診察記録を用いてコーディングを行った。
2人のコーディング実施者(コーダー)が独立して診察記録を評価し、新しいコードの作成や既存のコードの精錬を行った。
コーディング、ディスカッション、別の診察記録による各コードの精錬と段階的なアプローチを行った。 #14.
コード表の開発② また、患者側からの視点を取り入れるために、5人の一般人をアドバイザーとして採用した。
2人のコーダーが双方ともコードの内容に納得した後、検者間信頼性を評価するための形式的評価を実施した。 #15.
セーフティーネットアドバイスの有無 2人のコーダーが独立して、ランダムサンプル(32/318)を用いてセーフティーネットアドバイスの有無を評価した。
コーダーはそれぞれ診察記録中の個々のプロブレムに対してセーフティーネットアドバイスの有無を評価し、マーキングした。
コーダー間で意見の不一致が見られた場合、3人目のメンバーと話し合いコンセンサスを得た。
残りのサンプルは1人のコーダー(第一著者)がチェックした。 #16.
診察記録へのコーディングツールの適用 セーフティーネットアドバイスを含むと判断されたすべての診察やプロブレムはコーディングの適格性を満たすと考えられた。
A prioriに、検者間合意が全体で85%になるよう目標を定めた。(文脈的にA prioriの良い日本語訳がよくわからず)
再度文書記録と診察記録双方を用いて、正確なコーディングを促進した。
Microsoft excelにデータを収集し、Stata(Ver15.1)にインポートした。 #17.
統計学的解析
~用語の意味??? 検者間信頼性やクラス内相関係数の評価のため色々用いたようですが調べてもよくわからず・・・
percentage agreement?
Cohen’s κの重みづけ?
Mixed-effects model?
#18.
RESULTS
-Sample characteristics #19.
サンプルの特徴①:医療者の特徴 318例中32例のランダムサンプルは23人いるGPのうち19人(男性9人女性10人)による診察であった。
GPは全員白人で、平均年齢47歳(32-62歳)だった。 #20. サンプルの特徴②:
患者の特徴 男性15人女性17人
平均年齢48歳(20-83歳)
白人27人、その他4人、記録なし1人
*IMD:相対的な豊かさを収入・教育・雇用・健康・犯罪率・住居などで数値化した指標 *http://u0u0.net/vFqU #21.
RESULTS-
Tool components #23.
ツールの構成要素~主に4つ 管理的コード(administrative codes)
セーフティーネットの文脈的コード(safety-netting contextual codes)
セーフティーネットアドバイスコード(safety-netting advice codes)
任意の一連のプロブレムに付随する文脈的コード(additional optional set of problem contextual codes) #24.
管理的コード(administrative codes) 割り当てられた研究識別番号、診察中に浮上したプロブレムの数、国際プライマリケア分類(ICPC-2)によるプロブレムの分類 を記録した。 #25.
ツールの構成要素~主に4つ 管理的コード(administrative codes)
セーフティーネットの文脈的コード(safety-netting contextual codes)
セーフティーネットアドバイスコード(safety-netting advice codes)
任意の一連のプロブレムに付随する文脈的コード(additional optional set of problem contextual codes) #26.
セーフティーネットの文脈的コード(safety-netting contextual codes) 計画的フォロー、診断の不確実性、プロブレムの予想されるタイムコースなどを記録した。(これらはセーフティーネットアドバイスコードには含めない)
診断の不確実性コードには以下両方を含めた。
直接的表現「診断が何かはっきりしません ‘ I’m not sure what the diagnosis is’,」
間接的表現「おそらくXだと思います ‘ I think it’s x ’」 #27.
ツールの構成要素~主に4つ 管理的コード(administrative codes)
セーフティーネットの文脈的コード(safety-netting contextual codes)
セーフティーネットアドバイスコード(safety-netting advice codes)
任意の一連のプロブレムに付随する文脈的コード(additional optional set of problem contextual codes) #28.
セーフティーネットアドバイスコード(safety-netting advice codes) コードの大部分を占めた。
診察を締めくくる場面の途中や終わりの段階で提供されることが多かった。 #29.
セーフティーネットアドバイスコードの例① 抑うつ性障害のプロブレムに関する場面。 #30.
GPのセリフ:注意してください。悪化した場合には(状況)観血的治療のための来院を(推奨行動)しなければいけません。(推奨の強さ)私たちの誰かにすぐに伝えてください。(行動の時間尺度)
患者のセリフ:はい、わかりました。(患者の応答) 抑うつ性障害で
Open surgeryって何?
電気けいれん療法の事?? #31.
開始:臨床医から
診察の段階:クロージング
適用:問題に対して(詳細は次項)
フォーマット:条件付きの行動方針
推奨の強さ:強い
症状の状況:「悪化したら(n=1)」
包括的か特異的か:包括的
推奨行動:再診または連絡を取る
行動のフォーカス:患者
行動の時間尺度:緊急
患者の応答:承諾
質問があったか:なし
コミュニケーション:言葉のみ #32.
行動のフォーカス 患者フォーカスの場合:「あなたは再診しなければいけない」
医師フォーカスの場合:「私がもう一度診察しようと思います」
双方がフォーカスの場合:「あなたは再診しなければいけない、 そうすれば私はもう一度診察ができます」 #33.
包括的か特異的か 包括的アドバイス→多数の状況に対応可能:「何か問題があれば」「状況が悪化したら」「良くならなかったら(*時間尺度を提示しない)」
特異的アドバイス:・新規症状が出た時 「胸が痛くなったら」「血を吐いたら」・症状が持続した時(時間尺度を提示して) 「2週間以内に良くならなかったら再診してください」 #34.
セーフティーネットアドバイスコードの例② アドバイスの適用の対象により、プロブレム、治療・マネジメントプラン、両方の3つに分類。 #35.
なので、これに関してはご安心ください。
でももし状況が変わるようならまたご来院ください。 プロブレムに対する適用 #36.
抗炎症薬は鎮痛にとても有効ですが、胃を荒らします。
最悪の場合潰瘍や出血を起こすこともあります。
なのでもし消化不良の痛みや吐血、黒くて粘つく便が出るようならナプロキセンを中止してすぐに来院してください。 治療・マネジメントプランに対する適用 #37.
もし何か問題があればまたご来院ください。
もちろん状況が快方に向かわずむしろ悪化したり、抗生剤投与で何か問題があれば、また会いましょう。 両方に対する適用 #38.
ツールの構成要素~主に4つ 管理的コード(administrative codes)
セーフティーネットの文脈的コード(safety-netting contextual codes)
セーフティーネットアドバイスコード(safety-netting advice codes)
任意の一連のプロブレムに付随する文脈的コード(additional optional set of problem contextual codes) #39.
任意の一連のプロブレムに付随する文脈的コード(additional optional set of problem contextual codes) どのようなプロブレムがあるとセーフティーネットアドバイスが出現しやすいかを同定するのに役立つコード。
例えば、プロブレムの性質(急性か慢性か) #40.
RESULTS-
Patient and public involvement group #41.
患者や住民(PPI)グループ PPIグループはコードをレビューし、更に2つのコードを開発した。①医師は患者がアドバイスを理解したかを確認したか?②患者はアドバイスに関して何らかの質問をしたか?
更に、このグループは既存のコードを1つ洗練させた。セーフティーネットアドバイスの一部としてアドバイスされる行動に対して、営業時間内のその他のプロバイダー(薬局等)の助けを求めるオプションを含めるようにした。 #42.
RESULTS-
Collapsed codes and repeat evaluation #43.
破綻したコードと再評価 同じ変数でも、検者間で検証すると区別が困難なもの、例:患者の応答が「はい」の時に、承認Acknowledgementなのか受容Acceptanceか区別できない→この場合、「承認または受容」と単一コードにした。
セーフティーネットアドバイスやフォロープランがきちんとカルテに文書化されたかどうか、診断の不確実性や予想されるタイムコースがセーフティーネットアドバイスとともに提供されたかどうかなどに関して、コーダーは詳細に識別することは難しかった。 #44.
RESULTS-
Adjustments and dropped code #45.
調節と、取り下げたコード 「この問題で医療者に相談するのは初めてですか?」
「診断は与えられたか?」
などのコードは、他のコードと確実に区別するのが難しかったため削除した。 #46.
RESULTS-
Inter-rater
reliability scores #47.
評価者間信頼性スコア セーフティーネットアドバイスの有無について診察レベル:32例中32例合意(100% κ=1.0)プロブレムレベル:55個中49個合意(89% κ=0.77)
セーフティーネットアドバイスがそれぞれの診察やプロブレムにおいて行われた回数についてのクラス内相関係数(ICC):それぞれ0.88と0.73
平均的な合意率は88%でκスコアは0.6 #48. クラス内相関係数(ICC)とは? 評価者内や評価者間における評価の一致度や安定性(=信頼性)を示すための指標
評価者内信頼性:同一評価者による2回以上の繰り返し評価データの一致度
評価者間信頼性:2人以上の評価者が同じ対象を評価したときの一致度
ICCは、-1以上1以下の値をとる。0に近づくほど信頼性は低い絶対値が1に近いほど信頼性は高い負の相関がある場合にはマイナスの値となる https://bellcurve.jp/ex/function/icc.html #50.
サマリー セーフティーネットアドバイスがいつどのように伝達され、受け取られたかをこの論文でまとめた。
このツールにより、誰がアドバイスを開始したか、それは診察のどの場面か、どのような形式か、などのセーフティーネットアドバイスの構成要素を定量化することができた。
またこのツールは、文脈的データとして、診断の不確実性や予想されるタイムコース、フォロープランの提示の有無なども捉えられるようなコードも含めた。 #51.
DISCUSSION-
Strengths and limitation #52.
強みと弱み セーフティーネットアドバイスの明確な定義を作成できた
評価者間信頼性テストで、設定していた目標の85%を超える88%の合意率をたたき出した。
2人のコーダーによる評価のみが評価者間信頼性テストの正式な評価に用いられたが、2人ともツールの開発に関与していた
コードの一部が二重にカウントされたりする可能性があった #53.
DISCUSSION-
Comparison with existing literature #54.
既存の文献との比較 診察の他の部分に関するコーディングツールは多数あるが、本研究はセーフティーネットアドバイスを定量化するためにデザインされた初めての研究である。
デンマークで伝統的な会話分析によるセーフティーネットアドバイスについて評価する研究がおこなわれており、本研究のツールも会話分析を元に作成されたが、完全な会話分析よりも必要なトレーニングは少なく済むようにデザインした。 #55.
DISCUSSION-
Implications for research and practice #56.
研究や臨床への意味合い このツールは、ビデオやオーディオによる診察記録からセーフティーネットアドバイスを体系的に評価するのに役立つだろう。
過去の研究結果に関しても、再度評価することができるだろう。
セーフティーネットアドバイスに対する患者の理解度をGPがチェックしたかどうかは現在のツールでは十分に評価できない。診察後に質問票を埋めてもらうことで評価するしかないが、直接的に理解度を尋ねられるよりも正確に理解度を評価できるかもしれない。 #57.
研究や臨床への意味合い 現在のツールは記録された診察に使われたため、生の診察の直後のフィードバックとして用いるためには、コードの数を減らすことなどのマイナーチェンジが必要かもしれない。
まとめると、セーフティーネットアドバイスを体系的に評価できるツールを開発したが、患者の理解度の評価や、アドバイスが臨床アウトカムにどう影響するかに関しては更なる研究が必要である。 #59.
実臨床で用いるには? 本文Discussionにもあった通り、この研究のツールを実臨床でのフィードバックに用いるにはやや煩雑。
もう少し簡便な形で評価できると使いやすい。→作ってみた #60.
簡略版チェックリスト(私案) 注意すべき状況について触れているか
推奨行動について触れているか
推奨の強さをどのように伝えているか
行動の時間尺度をどのように伝えているか
患者の理解度の確認を行ったか
このくらい少ない方が外来の合間のフィードバックにはいいかなぁと。 #61.
雑感 家庭医療系の論文を初めて最初から最後まで読んでみた。
いまいちニュアンスがわからない言葉も多く、訳しづらいところはスライドには載せなかった。
実臨床で普段からやっているセーフティーネットアドバイスを、体系的に評価しようとするとこんなに大変なのかと思った。
診察記録が豊富にあるのはすごくうらやましい。うちでも導入するか・・・見る時間があるかわからないけど