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藤田医科大学/豊田地域医療センター
今回は森川先生&寺澤先生によるがん検診のまとめです!本当に必要な検診について、さらに検診のバイアスの話までまとめてくれています!!是非御覧下さい(^^)
※過去にFacebookページにてシェアしたスライドを再度アップしております。
フィードバックを身につけて今日から君もTeacherだ!
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がん検診 藤田医科大学 総合診療プログラム 専攻医:森川慶一 指導医:寺澤佳洋
予防医療とは 予防医学とは、 American Board of Preventive Medicine 個人だけでなく、 地域や集団を対象にし、 人々の健康を増進する 予防的介入に特化した専門分野
USPSTF United States Preventive Services Task Force の略 予防医療のエビデンスが総括・推奨されている
USPSTF 推奨度 A: 強く推奨する B: 推奨する C: 推奨がない D: 推奨しない I : エビデンスが不十分
USPSTFはアプリもある 年齢、性別、たばこの有無、性習慣、妊娠の有無から各人に推奨される 項目をピックアップしてくれる 実際に 使用してみよう!! ePSSで検索!!
例:70歳男性 喫煙歴あり A:強く推奨する 大腸がんスクリーニング 高血圧スクリーニング・家庭血圧測定 たばこの中止 B:推奨する 腹部大動脈スクリーニング アルコール多飲の有無 うつ病 糖尿病 転倒リスク CVD予防のための食事・身体活動 HBV・HCV 潜在性結核感染スクリーニング 肺癌 肥満 CVD予防のためのスタチン使用
USPSTFはアメリカ基準であり、 日本国内とは状況が異なるため、 適応をよく考えて行うと良い
がん検診
日本のがん死亡数順位 2017年
日本のがん罹患数 2017年
がん死亡数順位 がん罹患者数 死亡順位と罹患率は一致しない 2017年 2017年
がん検診 がん検診 何が思い浮かびますか??
口腔がん 甲状腺がん がん検診 大腸がん 前立腺がん 膀胱がん 卵巣がん 子宮頸がん 精巣癌 乳がん 肺がん 胃がん 膵臓がん 皮膚がん
口腔がん 甲状腺がん がん検診 大腸がん 前立腺がん 膀胱がん 卵巣がん 子宮頸がん 精巣癌 乳がん 肺がん 胃がん 膵臓がん 皮膚がん この中で 推奨されているものと 推奨されていないものは どれでしょう??
USPSTFでは??
USPSTFのがん検診 推奨 (A・B) 乳がん 子宮頸がん 大腸がん 肺がん エビデンス不十分 膀胱がん 口腔がん 皮膚がん 非推奨 (D) 卵巣がん 膵臓がん 前立腺がん 精巣がん 甲状腺がん
厚労省推奨のがん検診 厚生労働省HP https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html
子宮頚がん USPSTF 21-29歳 30-65歳 子宮頸部細胞診にて 3年ごとにスクリーニングを行うことを推奨 子宮頸部細胞診のみで3年毎 ハイリスクヒトパピローマウイルス(hrHPV) 検査で5年毎 細胞診とhrHPV検査の組み合わせで5年毎 罹患率 60-90%低下 死亡率 20-60%低下 Ann Internal Med 2012 ;156:880-891 2018年
2年ごとの マンモグラフィを推奨 乳がん USPSTF 50-74歳女性 40-49歳女性 偽陽性が増えるため、個別に検討. 親・同胞・子供に乳がんの患者を持つ女性は40歳代から検査することで意義がある可能性がある 1000人に10年検診し、 約600人の偽陽性を生じ、 3人の乳がんを救命する JAMA Intern Med 2014;174:448-54 2016年
大腸がん USPSTF 50‐75歳 大腸がん スクリーニングを推奨 76‐85歳 患者の健康状態および 以前のスクリーニング歴を 考慮する 2016年
大腸がんスクリーニングの内容 便潜血反応:毎年 全大腸内視鏡:10年毎 CT colonography:5年毎 S状結腸内視鏡:5年毎 年1回の便潜血 それに対する内視鏡 →死亡率30%程度低下 NEJM 2013;369:1095-105
大腸がん家族歴あり 60歳未満の第一近親者 2人以上の第一近親者(年齢関係なし) 大腸がん 腺腫性ポリープ または 40歳から 親族で最も若年の発症-10歳 or 5年おきの全大腸内視鏡スクリーニング あり
肺がん USPSTF 喫煙歴のある 55-80歳 30pack-year以上の喫煙歴、 過去15年以内に禁煙、 低線量CTを用いた肺がんの1年1回 2013年
低線量CT 通常のCTの1/10程度の線量にて検査する 毎年の低線量CT実施により、 相対死亡リスクを20%低下させられる 一次予防が圧倒的に重要!! NEJM2011;365:395-409 肺がん死亡者数を減らすことはできない JAMA2011;306:1865-73 X線検査では
胃がん 米国 日本 10,990人 48,632人 死亡率 死亡者数 10万人当たり 3.5人 10万人当たり38.7人 2014年 2013年
胃がん 米国 日本 10,990人 48,632人 死亡率 死亡者数 10万人当たり 3.5人 10万人当たり38.7人 2014年 2013年 日本の死亡率は 圧倒的に高い!!
胃がん検診 X線検査 内視鏡検査 50歳以上/間隔1-3年 50歳以上/間隔2-3年 2014年
Helicobacter pylori 感染すると胃癌のリスク 萎縮性胃炎や腸上皮化生を生じる前に 除菌できるとより有効である 3-20倍 除菌 vs 対象群(プラセボまたは治療なし) 1.6% 2.4% BMJ 2014;348:g3174 胃癌発症率
USPSTFのがん検診 推奨 乳がん 子宮頸がん 大腸がん 肺癌 エビデンス不十分 膀胱がん 口腔がん 皮膚がん 非推奨 卵巣がん 膵臓がん 前立腺がん 精巣がん 甲状腺がん
卵巣がん 腫瘍マーカーCA125 経腟超音波 で行われていたが…. 死亡者リスク減らず、 偽陽性の不必要な手術が多く実施された JAMA2011;305:2295-303 家系に多くの乳がん、卵巣がんあり BRCA遺伝子変異疑い →遺伝子変異を確認後、予防的卵巣摘出術により救命が期待 2018年
膵臓がん 発見された時点で 手術は20%程度にしか適応にならない 手術ができても、2年生存率は10-20%程度 発見できても、 根治が非常に難しい 2019年
前立腺がん 55-69歳 70歳以上 見込まれる利益と不利益が明確に理解されたうえで、患者の判断に基づいて決定されるべきである。 行うべきではない!! 2017年
前立腺がん 前立腺がん死亡を10年以上かけて 1000人に1人減らす程度 PSAスクリーニング AUA 2013 約5億円費やして、 1人の死亡を予防することになる NEJM.2009:360(13):1320-8
がん検診の エビデンスとバイアス
Case.1 検診により見つかったがんの80%がStage1であり、 症状が出てから見つかったがんの30%と比べるとずっと高い Case.2 検診でみつかったがんは早期のものが多く、 5年生存率は90%である一方、検診を受けずにがんが見つかった場合の5年生存率は60%である Case.3 ランダム化比較試験(RCT)において、 検診をした群の死亡率は検診をしなかった際の 死亡率と比較して有意に低かった
Case.1 検診により見つかったがんの80%がStage1であり、 症状が出てから見つかったがんの30%と比べるとずっと高い Case.2 検診でみつかったがんは早期のものが多く、 5年生存率は90%である一方、検診を受けずにがんが見つかった場合の5年生存率は60%である Case.3 ランダム化比較試験(RCT)において、 検診をした群の死亡率は検診をしなかった際の 死亡率と比較して有意に低かった この中で がん検診の有効性を 証明するエビデンスは どれですか?
Case.1 検診により見つかったがんの80%がStage1であり、 症状が出てから見つかったがんの30%と比べるとずっと高い Case.2 検診でみつかったがんは早期のものが多く、 5年生存率は90%である一方、検診を受けずにがんが見つかった場合の5年生存率は60%である Case.3 ランダム化比較試験(RCT)において、 検診をした群の死亡率は検診をしなかった際の 死亡率と比較して有意に低かった
がんを早期発見できる事実をもって 検診の効果が証明できるわけではない 検診により発見されたがん患者の生存率が 高いからと言って、検診が有効なわけではない バイアスが存在する!! ※ただし、推奨されている すべての検診でRCTで有効性が示されているわけではない
がん検診のバイアス Selection bias Lead-time bias Length bias Overdiagnosis bias
Selection bias がん検診を受ける人は 受けない人と比べて属性が違う 交絡因子を調整することである程度リスク回避できるが、 未知の交絡因子が残る可能性あり 特に自主的な参加者を対象にした コホート研究などで差が生じやすい これらを防ぐために RCTを しっかり行うことが大切!!
Lead-time bias がん発生 検診発見 症状出現 死亡 A B Lead time
Lead-time bias Aさんは検診のおかげで長生きしたようにみえるが、 実際はBさんと死亡する時点は変わっていない 検診を始めた時点から計測した集団の死亡率を 検診群と非検診群で比較することで解消できる 5年生存率の比較による有効性の検証には 注意が必要である
A B Length bias 検診 1回目 検診 2回目 検診 X回目 がんが発生したタイミング 検診発見可能な大きさ 発見される タイミング
Length bias 検診で発見される癌は、 検診で発見されない癌に比べて緩徐に進行し、 そもそも予後が良い可能性がある
Overdiagnosis bias 放っておけばそのまま消失するか、 死ぬまで進行がんにならないような 遅い早期がんも拾い上げてしまう可能性のこと 早期がんが多く見つかったことが がん検診の有効性の証明でなく、 検診する群としない群の死亡率の比較が大切!!
まとめ 実は推奨されているがん検診は限られる!! 日本人では 胃がん 乳がん 子宮頸がん 肺がん 大腸がん が推奨!! 有効性の判断には各種バイアスを意識する!!
一覧表
まとめ 胃がん 子宮頚がん 乳がん 肺がん 大腸がん v 50歳以上 50-74歳 20-29歳 30-65歳 55-80歳 50-75歳 v 胃内視鏡/2-3年 胃X線検査/1-3年 v 細胞診/3年 細胞診±hrHPV/5年 v マンモグラフィー/2年 v 30pack-year以上 低線量CT/1年 v 便潜血/1年 大腸内視鏡/10年 2014 2018 2016 2013 2016
参考文献 国立がんセンター 癌情報ホームページ https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html USPSTF: https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/ 最終閲覧2019/4/9 あめいろぐ予防医学 反田篤志 著