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地方一般病院
鼠経ヘルニアに関する手術書では男性について解説したものがほとんどで、女性について解説したものはほとんどなく、鼠経ヘルニアは圧倒的に男性が多い(男:女=10:1)が、女性の患者への対応も知っておく必要があります。本スライドでは女性の鼠径部ヘルニアの概要と治療法についてまとめました。
◎目次
・本スライドの内容
・女性の鼠径部ヘルニアと鑑別すべき疾患
・今回扱う女性の鼠径部ヘルニア及び類似疾患
・女性の鼠経部ヘルニア
・妊娠中の鼠経部ヘルニア
・鼠経ヘルニアの手術はいろいろありますが…
・女性の鼠経部ヘルニアの治療方針
・Nuck管水腫とは?
・Nuck管水腫の手術
・鼠径部子宮内膜症
・大腿ヘルニア
・大腿ヘルニアの手術
・Tips
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女性の鼠径部ヘルニア、どうします? 女性の鼠径部膨隆を見たら 何を考えるか Melon@消化器外科
本スライドの内容 ✓ 鑑別疾患と類似疾患 ✓ 大腿ヘルニア ✓ 女性の鼠径部ヘルニアの概要 ✓ 大腿ヘルニアの手術 (妊娠中を含む) ✓ 鼠経ヘルニアの手術の概要 鼠径部切開前方到達法及び内視鏡下 ✓ 女性の鼠径部ヘルニアの治療方針 ✓ Nuck管水腫とその手術 ✓ 鼠径部子宮内膜症 鼠経ヘルニアに関する手術書では男性について解説 したものがほとんどで、女性について解説したもの はほとんどない 鼠経ヘルニアは圧倒的に男性が多い(男:女=10:1) が、女性の患者への対応も知っておく必要がある
女性の鼠径部ヘルニアと鑑別すべき疾患 鼠径部の膨隆・腫脹に関して 膨隆のない疼痛や不快感に関して ✓ Nuck管水腫 ✓ 恥骨結合炎 ✓ 子宮内膜症 ✓ 子宮内膜症 ✓ 動脈瘤 ✓ 内転筋付着部炎 ✓ 鼠径部リンパ節腫脹 ✓ 軟部腫瘍 ✓ 子宮円靱帯静脈瘤 ✓ 膿瘍 鼠径部ヘルニアの診察時には視触診やエコーを立 位でも行う
今回扱う女性の鼠径部ヘルニア及び類似疾患 ✓ 鼠経ヘルニア ✓ 大腿ヘルニア ✓ Nuck管水腫 ✓ 鼠径部子宮内膜症 鼠径部ヘルニアとは、外鼠経(間接型鼠経)ヘル ニアと内鼠経(直接型鼠経)ヘルニアと大腿ヘル ニアのことである デンマークとスウェーデンでの検討によると、女 性の鼠径部ヘルニアのうち、鼠経ヘルニアは69%、 大腿ヘルニアは31%であった
女性の鼠経部ヘルニア ✓ 女性の鼠径部ヘルニアでは男性と比べ緊急手術、腸管切除の割合 が高い ✓ 鼠経ヘルニアと大腿ヘルニアの鑑別には、視触診のみならずバル サルバ法を用いた超音波検査が有用 ✓ 診断がつけば原則手術を検討する。特に大腿ヘルニアは嵌頓のリ スクが高いため、待機的手術が望ましい ✓ 女性の鼠経ヘルニアでは、大腿ヘルニアの確認および予防の観点 から腹腔鏡下ヘルニア修復術を含む腹膜前修復法が望ましい ✓ 術前診断が大腿ヘルニアで併存ヘルニアがない場合には大腿法を 検討してもよい
妊娠中の鼠経部ヘルニア ✓ 妊娠中の鼠径部ヘルニアについての論文は少 なく、エビデンスレベルの高いものはない ✓ 妊娠中はヘルニア嵌頓のリスクが低く、出産 後の手術を検討してもよい ✓ 妊娠中も安全に手術が可能であったという報 告もある ✓ 嵌頓などの緊急の場合には手術が必要
鼠経ヘルニアの手術はいろいろありますが… ✓ 鼠径部切開前方到達法 組織縫合法:Marcy法、Bassini法、iliopubic tract repair法、McVay法、Shouldice法 メッシュ法:Lichtenstein法、Plug法、Bilayer法 (腹膜前修復法)Kugel法、Direct Kugel法、TIPP(transinguinal preperitoneal repair)法 内視鏡下 TAPP(transabdominal preperitoneal approach)法 またはTEP (totally extraperitoneal approach)法 基本はメッシュ法だが、 嵌頓→絞扼して 腸管切除を要したときなど、メッシュを 使わない組織縫合法を用いる TAPPかTEPかはどちらでもよいが、日本 内視鏡外科学会のアンケートによる症例 数の比較では、TAPP 82%、TEP18%
女性の鼠経部ヘルニアの治療方針 ✓ 女児の鼠経ヘルニアはほとんどが先天的な Nuck管の開存でヘルニア門が1cm未満の小 さな外鼠経ヘルニアが多い 10代後半まではメッシュを使用せずに手術可能(生体 修復術) 子宮円靱帯のみ残しヘルニア嚢を切離、閉鎖する 水腫がなくヘルニア門が1cm未満であれば女児と同じ 生体修復術を行う ✓ 若年女性の鼠経ヘルニアは外鼠経ヘルニア が多く、女児よりはヘルニア門がやや大き い。Nuck管水腫合併に注意 ヘルニア門が1cmを超える外鼠経ヘルニアやそれ以外 のヘルニアの場合はTAPPなど 整容性のため、細径鉗子の使用も考慮 Nuck管水腫については後述。 ✓ 中高年女性の鼠経部ヘルニアは内鼠経ヘル ニアや大腿ヘルニアの占める割合が増加 大きな外鼠経ヘルニアに加えて大腿ヘルニアや内鼠経 ヘルニアの割合が増える 鼠経ヘルニアであっても大腿輪をカバーできる術式が 望ましい(TAPPなど) 開腹歴などにより、鼠径部切開法も考慮
Nuck管水腫とは? ✓ 腹膜鞘状突起が開存したまま液体貯留をきたしたもので、男性の精 索水腫に相当 ✓ 無症状のものもあるが、疼痛を伴うこともある ✓ 腹腔との交通がある交通性と,交通がない非交通性に分類され、交 通性は小児発症例に多く,非交通性は成人発症例に多い 子宮円靱帯 ✓ 子宮内膜症が合併する可能性があるので、月経に関連するサイズの 増減や疼痛の有無、子宮内膜症の既往を問診で確認する ただし、術前に症状と月経との明らかな関連を認めるものは約3割 ✓ エコーやCT、MRIなどで子宮円靱帯の走行と一致する囊胞性腫瘤を 確認する 内鼠経輪 鼠経管 腹膜 外鼠経輪 ✓ ごくまれに悪性腫瘍の報告もある Nuck管水腫
Nuck管水腫の手術 ✓ ヘルニアの合併があればメッシュによるヘルニア根治術を行う ✓ 内鼠径輪の開大や鼠径管後壁の脆弱を認めなければ、前方アプローチに よる水腫摘出のみでよい ✓ 子宮内膜症を合併していれば再発を避けるため十分な切除が必要 ✓ 鼠径部切開法による水腫の切除が一般的であるが、内鼠経輪より腹側に 進展する水腫を前方から切除するのは難しいため、この場合は腹腔鏡に よる手術とする ✓ 水腫が皮下と内鼠経輪より腹側の両方にまたがって存在する場合には、 前方と腹腔鏡による両側からのアプローチも ✓ 病理検査に提出し、子宮内膜成分が含まれていないかなど必要に応じて 免疫組織染色を行う
鼠径部子宮内膜症 ✓ 全子宮内膜症の0.3-0.8% ✓ 発生母地としては、子宮円靱帯(45%)、ヘルニア嚢(Nuck管 水腫)(18%)、皮下(9.8%) ✓ CA125(子宮内膜症の腫瘍マーカー)の測定推奨 ✓ GnRHアナログや黄体ホルモンによる完治は困難 ✓ 手術までの短期間GnRHアナログは可 ✓ 基本は切除が望ましい
大腿ヘルニア ✓ 鼠径部ヘルニア全体の2-8% ✓ ほとんどが成人(小児は極めて まれ)に発症 ✓ 女性は男性の4-5倍の頻度 ✓ 嵌頓しやすく腸管切除の可能性 が高い ✓ 嵌頓の有無にかかわらず手術適 応である 上前腸骨棘と恥骨を結んだラインが鼠経靱帯 大腿ヘルニアは鼠経靱帯の足側に触知する (鼠経ヘルニアであれば頭側)
大腿ヘルニアの手術 ✓ 鼠径部切開法 大腿法(プラグをfemoral orificeから挿入) 鼠経法: 基本はメッシュ法(Direct Kugel法など) 腸管壊死や虚血を疑う症例では感染リスクがあるため、メッシュを 使用せず、鼠経管後壁と大腿輪を縫縮する( McVay法:組織縫合法) ✓ 内視鏡下 TAPP法またはTEP法
Tips ✓ 鼠径部ヘルニアとは内・外鼠経ヘルニアと大腿ヘルニアのことであり、Nuck管水腫や子宮内膜症などとの鑑別が必要 ✓ 鼠経ヘルニアと大腿ヘルニアの鑑別には、視触診のみならずバルサルバ法を用いた超音波検査が有用であり、診断がつ けば原則手術を検討すべき ✓ 女性に多い大腿ヘルニアは嵌頓しやすいため原則手術が必要 ✓ 女性の鼠経ヘルニア手術の際には、大腿ヘルニアの有無の確認および予防のために腹腔鏡下ヘルニア修復術を含む腹 膜前修復法が望ましい ✓ 妊娠中は嵌頓しにくいため出産後の手術でよいという報告もあるが、妊娠中の鼠経部ヘルニアについてはエビデンス レベルの高い論文がない ✓ Nuck管水腫には子宮内膜症を伴うことがあり、月経周期によるサイズの増減や疼痛の有無、子宮内膜症の既往につい て問診で確認する必要がある
参考文献 ✓ 日本ヘルニア学会 ガイドレイン委員会 編.鼠径部ヘルニア診療ガイドライン(第1版).金原出 版.2015. ✓ 笹原 正寛 ほか.大腿ヘルニア修復術 .手術 74: 157-160, 2020 ✓ 藤井 圭 ほか.TEP法.手術 74: 179-188, 2020 ✓ 宮内 竜臣 ほか.中年女性のNuck管水腫の1例 .日外科系連会誌 41: 267–271, 2016 ✓ 塚田 貴史 ほか.鼠径部に発生した異所性子宮内膜症の1例.日農医誌.60: 622-626, 2012 ✓ 松尾 洋一 ほか.鼠径部子宮内膜症の1例.日臨外会誌. 61: 3369-3373, 2000 ✓ 金平 文 ほか.女性の鼠径部ヘルニア手術.手術.72: 1071-1077 ✓ 宮崎 恭介 ほか.女性の鼠経ヘルニアに対するダイレクト・クーゲル法.手術.72: 1005-1011 ✓ 江口 徹 ほか.鼠径部ヘルニア(内視鏡下).消化器外科.43: 1091-1109 ✓ 小田 斉 ほか.鼠径部ヘルニア(直達法).消化器外科.43: 1081-1089