テキスト全文
糖尿病の概要と自己紹介
#1. 糖尿病 藤田医科大学総合診療プログラム
専攻医:金子浩之
指導医:近藤敬太
#2. 自己紹介 金子 浩之
・豊田市出身
・藤田保健衛生大学卒業
・トヨタ記念病院 初期研修
・総合診療プログラム 専攻医2年目
・今年度はゴルフを始めてみたい
#3. 〜ある日の豊地外来〜
先生、次は当院人間ドックにて 血糖異常で受診の方です!
糖尿病の疫学と診断のポイント
#4. ・糖尿病の疫学
・診断と診療のポイント
・合併症について
・治療の基本 アジェンダ 甘いジュースとお菓子を食べながらどうぞ(^^)
#5. ・糖尿病の疫学
・診断と診療のポイント
・合併症について
・治療の基本 アジェンダ 甘いジュースとお菓子を食べながらどうぞ(^^)
#6. 日本人の糖尿病・予備軍はどれくらいでしょうか?
① 100人に1人
② 20人に1人
③ 5人に1人
#7. どれくらいいるの? ー日本人の疫学ー HbA1c>6.5%or糖尿病治療中の割合 12.1%
HbA1cが6.0~6.5%の割合 12.1%
平成28年国民健康・栄養調査結果の概要より おおよそ、日本人の
5人に1人は糖尿病!
もしくは予備軍
#8. ・糖尿病の疫学
・診断と診療のポイント
・合併症について
・治療の基本 アジェンダ
糖尿病の診断基準と問診の重要性
#9. 診断の流れ ー診断ー まずは糖尿病型の基準値を覚える!
1.空腹時血糖値≧126mg/dL
2. HbA1c≧6.5%
3. 75gOGTT2時間値≧ 200mg/dL
4.随時血糖値≧200mg/dL
#10. 出典)日本糖尿病学会 編・著 : 糖尿病診療ガイドライン2016,P.5,南江堂,2016 糖尿病型を2回確認する 1回は必ず血糖で確認する
#11. そのあとはチャートに従って診断 出典)日本糖尿病学会 編・著 : 糖尿病診療ガイドライン2016,P.23,南江堂,2016
#12. 問診のポイント ー一般的な病歴はもちろん聴取!ー
身体所見と合併症の理解
#13. 身体所見のポイント ー糖尿病診療で特に気を付けるべきポイント!ー
#15. 初回診断時には
抗GAD抗体
を測定しましょう 1型糖尿病、特に
「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」の除外のため
#16. ・糖尿病の疫学
・診断と診療のポイント
・合併症について
・治療の基本 アジェンダ 甘いジュースとお菓子を食べながらどうぞ(^^)
#17. 合併症は・・・
しめじ
し:神経障害
め:網膜症(目)
じ:腎症
#18. 神経障害:自覚症状、振動、腱反射、 筋萎縮、関節変形、起立性低血圧など
網膜症:運動療法前に眼科受診して もらう!
腎症:尿Alb/尿Cre≧30mg/gCre
外来なら随時尿で可能!腎機能採血も
1年間に1回スクリーニング 網膜症なし:1−2年間に1回スクリーニング網膜症あり:最低1年に1回スクリーニング 約1年間に1回スクリーニング standards of medical care in diabetes 2019
糖尿病の合併症とその管理
#19. 大血管障害 ・脳梗塞
・心筋梗塞、狭心症
・閉塞性動脈硬化症
など
#20. ・糖尿病の疫学
・診断と診療のポイント
・合併症について
・治療の基本 アジェンダ 甘いジュースとお菓子を食べながらどうぞ(^^)
糖尿病治療の目標と方針
#23. ・合併症予防のためには、7.0%未満を目指す
・若年かつコンプライアンス良好で、低血糖などの
副作用なく達成できそうな時は、血糖正常化を目指す 血糖コントロール目標
#24. 高齢者の血糖値の目標は? 低血糖の予防のため、緩めにコントロール!!
インスリン治療の適応と開始
#25. こういう人は糖尿病専門医に紹介 お願いします!! ・1型糖尿病
・急性合併症
(DKA、HHSなど)
・妊娠糖尿病
#26. 次にインスリン適応か判断 インスリンの絶対的適応
1型糖尿病,糖尿病昏睡・ケトアシドーシス,
重度の肝障害・ 腎障害・感染症,妊娠 インスリンの相対的適応
高血糖による症状,著明な高血糖(約300 mg/dl 以上),尿ケトン体陽性 ,経口血糖降下薬で血糖コントロールが 不十分(HbA1c≧9.0%)
#27. まずは食事・運動療法 食事療法:
当院では栄養指導を依頼しよう! →次の外来のタイミングで栄養指導も
フォローしてもらうw
運動療法:
1回30分間、1日2回(1日の歩数約 8,000~9,000 歩)、週に3日以上 禁忌:空腹時血糖値250mg/dl 以上,尿ケトン体陽性,眼底出血,
腎不全,心疾患,骨 ・ 関節疾患,壊疽, 急性感染症,
高度の自律神経障害
#28. ただし、
・血糖値が250~300mg/dl以上
・HbA1c>7.5
の場合は最初から薬物療法を
食事運動療法に併用して開始する。
糖尿病診療ガイドライン2016やADA2015より
薬物療法の選択とメトホルミンの使用
#30. 食事療法・運動療法を2-3ヶ月行っても、HbA1c>7.0%の時は
⇨⇨薬物療法を開始する
どの薬剤を使ったらいいの?
#33. 欧米ではメトホルミン1st ・米国糖尿病学会(ada)/欧州糖尿病学会 (EASD)の提唱ではメトホルミン を第一選択薬として推奨
・肝臓からの糖放出の抑制、インスリン 感受性の改善、各種代謝面に効果
・心血管死を減らすエビデンスあり
・安い!(250mg錠9.9円 500mg錠16.7円)
#34. メトホルミンの注意点 ・副作用として、
消化器症状(腹痛・食欲不振・下痢など)
→数日間で慣れる事が多い
・乳酸アシドーシス(稀だが致命的)
※ eGFRが60未満のときはヨード造影剤使用時にも注意
① eGFRが30 未満は禁忌 eGFRが30〜45は慎重投与
②脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取あれば避ける。
③心疾患・肺機能障害、手術前後、肝機能障害では避ける。
④高齢者では避ける。75歳以上の新規導入はしない。 ビグアナイド適正使用に関する勧告(日本糖尿病学会2016)
心血管疾患に配慮した治療法
#35. 定期的なVitB12の測定も! メトホルミン長期内服患者でVitB12の低下の報告あり
2017年版「Standards of Medical Care in Diabetes」より
#36. メトホルミンの使い方 ・消化器症状があり、少量から初めて徐々に増量
・最初は250mg/2*朝夕食後(食前でも良い)
・その後500mg*2 500mg*3と増量していく
・外来では2-4週間隔、入院中は数日間隔でも良い
・最大投与量は2250mg/dayだが、 容量依存的に効果が増強するのは1500mgまで
#38. 心血管疾患やCKD既往を確認 心血管イベントを有意に低下させるエビデンスのある薬物を使用する Yesなら
#39. 心血管イベントを有意に低下させるエビデンスのある薬物は? SGLT2阻害薬 GLP-1受容体作動薬 ビクトーザ®️ ジャディアンス®️
カナグル®️
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の特徴
#41. SGLT2阻害薬 尿細管でブドウ糖の吸収を阻害し尿糖として排泄する。
体重減少効果もあり、低血糖起こしにくい。
心保護、腎保護作用あり
心血管イベント抑制のエビデンスがあるのは現在、
ジャディアンス®️、カナグル®️のみ
脱水、尿路感染の合併症あり(高齢女性で注意)
カナグル®️は下肢切断リスクの報告あり
#42. GLP-1受容体作動薬 皮下注射製剤です
(よく患者さんが、インスリンと間違えていることも・・・)
#43. GLP-1受容体作動薬 外因性インクレチン作用によって血糖依存性にインスリン分泌を促進させる。
食欲抑制、体重減少、心保護など膵外作用あり。
血糖降下作用は比較的強力。その割には低血糖リスクは低い。
初期に消化器症状(下痢や吐き気)の副反応多い
#44. GLP-1受容体作動薬の代表薬 ビクトーザ®️
リキスミア®️
トルリシティ®️ 1日1回製剤 週1回製剤 消化管抑制作用は
リキスミア®️>ビクトーザ®️>トルリシティ®️の順で強い
ビクトーザ®️は心血管イベント抑制のエビデンスがある
#45. トルリシティ®️は心血管系イベント抑制のエビデンスは示されていないが、週1回製剤であり、在宅診療で使用しやすい
#47. 実際触ってみてどうでしたか? 皆さんには簡単だったと思いますが、
処方するときには、この手順を患者さんが実際にできそうかどうかを考えてみてください
もしくは家族や、訪看さんなどの協力が得られそうでしょうか。
#48. 他の薬剤(DPP-4阻害薬とか)に関しては、
巻末にまとめておきました。
(時間が余ればやります)
#49. Take Home Message ・抗GAD抗体を測定し、1型糖尿病を見逃さない
・眼科受診をお願いすることを忘れない
・薬物療法は基本はメトホルミン1st
・血糖を下げるだけではなく、 心血管系イベントを低下させて、 患者の死亡率を下げる事を念頭に置こう
#51. DPP-4阻害薬 インクレチン分解を阻害してインスリン分泌を血糖依存性に促進する
副作用の可能性が低いので、高齢者にも安全に使える
⇨個人的には、コンプライアンス悪そうな人には、メトホルミンより先に出しています(内服への抵抗感を減らしてから、メトホルミン上乗せ)
#52. DPP-4阻害薬の一覧 グラクティブ®️ ジャヌビア®️
エクア®️
ネシーナ®️
トラゼンタ®️
テネリア®️
スイニー®️
オングリザ®️
ザファテック®️
マリゼブ®️ 1日1−2回製剤 週1回製剤
#53. DPP-4阻害薬 インクレチン分解を阻害してインスリン分泌を血糖依存性に促進する
副作用の可能性が低いので、高齢者にも安全に使える
⇨個人的には、コンプライアンス悪そうな人には、メトホルミンより先に出しています(内服への抵抗感を減らしてから、メトホルミン上乗せ)
#54. SU薬(スルホニル尿素薬) 膵臓β細胞SU受容体に作用してインスリン分泌を常に促進する
昔からよく使われていた薬
低血糖を起こす可能性が高い
以下項目を注意すれば糖毒性の解除などに有効な薬剤だが、慣れた人以外は使わないのが無難 高齢者・eGFR30以下の患者には使用しない
作用時間の長いグリベンクラミドは使用しない
グリミクロンは40mg/day アマリールは1mg/day以上は使用しない
#55. グリニド薬 ・SU受容体に数秒間だけ結合してインスリン追加分泌を促進する。
・グリニド薬は食後のインスリン分泌タイミングを前倒しする
→食後高血糖を改善する
・毎食直前の投与薬(内服コンプライアンス注意)
・SU薬よりは低血糖リスクは低いが、食事摂取不可時や炭水化物が極端に低い食事摂取時は低血糖を起こす可能性がある
#56. α –GI(αグルコシダーゼ阻害薬) ・腸管内で二糖類から単糖類への分解を阻害し、糖の吸収を抑制
・放屁(ほうひ)や腹部膨満感、下痢、便秘などの消化器系副作用
→内服継続で軽減する事が多い
・腸閉塞のリスクがあるので腹部opeの既往歴のある患者では注意
・低血糖時には二糖類(砂糖)ではなく、ブドウ糖を摂取させる
・毎食直前の投与薬(内服コンプライアンス注意)
#57. チアゾリジン薬の特徴 日本ではアクトス®️(ピオグリタゾン)のみ
副作用:浮腫、体重増加、心不全増悪、骨粗鬆症
膀胱癌発症のリスクあり
今は下火の薬剤
効果に個人差が大きい
→前医からの処方で切ってみると、血糖コントロールが急激に悪化する例がある(アクトス著効例)