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SKGH流神経診療のTIPS紹介

#1.

Daisuke Yamamoto Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital 誰も教えてくれない! SKGH流神経診療 100のTIPS!PART②

#2.

Introduction 特定の疾患に対する対応はもはやどこでも学べるものです。 しかしながら、実際の臨床をうまく回していくコツ(TIPS)は 言語化しにくく、誰も教えてくれません。 AIに対比される情報がここにはあります。 ここでは、本気で役に立つ、SKGH流TIPSを伝授しましょう。

#3.

Tips/Clinical pearlsの意味 即時性と実用性 :​クリニカルパールは現場で即座に使える知識を教えてくれる。 経験知の共有 :​ベテランの経験に基づく知見を若手と共有する手段になる。 EBMとの補完関係:​エビデンスが不足している状況や個別性の高い症例において、            クリニカル・パールが意思決定を支援する。 知識は調べれば知ることができるが、Tips/Pearlsは得難い。生身の教育の中で醸成される。 AIは教えてくれないことを人間が伝える必要がある。

本態性振戦の診断と治療

#4.

TIPS 本態性振戦なら、 ①甲状腺ホルモンは一応測る。 ②薬剤要因も一応チェック。 最終的に ③機能神経外科紹介も検討。

#5.

CASE 70歳女性例。5年来の振戦症状を主訴に受診。 動作で増悪する振戦である。 動作緩慢は認めない。また、その他目立った身体症状はない。 慢性疼痛で、トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠を常用している。 振戦症状は比較的高度で、QOL低下が顕著であり、積極的治療を希望している。 架空症例

#6.

一応、甲状腺機能亢進症は確認すること。 身体症状が特に何もないので 甲状腺ホルモン測定は不要か? 高齢者では典型的な甲状腺機能亢進症の症状がない場合がある。 加齢に伴う甲状腺機能の鈍化により、典型像がないことも。 振戦のみの甲状腺機能亢進症もある。 よって、ルーチンの甲状腺ホルモンチェックは無難。 解説 J Am Assoc Nurse Pract. 2022;34:1098-1102.

薬剤誘発性振戦の検討

#7.

薬剤誘発性の振戦の可能性も検討 使用薬剤が振戦の原因になっている可能性も 検討してほしい。 本例はトラマドールがそれに該当する。 使用薬剤の悪影響はないか?は診療入り口の検討事項になる。 その可能性があるものは確認しておくこと。 解説 J Am Assoc Nurse Pract. 2022;34:1098-1102.

#8.

解説 J Am Assoc Nurse Pract. 2022;34:1098–1102. Mov Disord. 2018;33:75–87.

#9.

薬剤抵抗性の場合には機能神経外科での治療を提案する 内服療法でコントロールできない場合に 治療ステップアップを提案する。 集束超音波治療(FUS):MRgFUS(MRI-guided focused ultrasound) 原理:MRI誘導下で超音波を一点集中させ、熱凝固により関連領域を治療する。 外科的治療(高周波熱凝固術)としての、視床VIM核破壊術も選択肢となる。 薬物療法で部分的な有効性がある場合でも、外科的治療の選択肢を提示することが重要である。 解説 Mov Disord. 2018;33:75–87 Lancet Neurol. 2011;10:148–161..

進行性慢性疾患のフォロー方針

#10.

筋強直性ジストロフィー: 一通りの臓器障害のチェック。 フォローは必要。 そして、何かサポートできることはないか? TIPS

#11.

CASE 50歳男性例。10年来の進行性の運動障害の増悪あり。 把握ミオトニアあり。前医で筋強直性ジストロフィーの診断に至った。 前医で「何もしてくれない」ので患者さんの不満があり、 転医となり紹介。どうするか? 架空症例

#12.

進行性慢性疾患でできること。フォローの方針。 治療がないから何もない、なんてことはない。 患者さんと外来受診のテーマを共有する。 症状経過の確認、心配事への相談、臓器障害の評価、各種支援・補助の申請を行う。 解説 Clin Med (Lond). 2020;20(1):76–82. Pract Neurol. 2016;16:418–430.

身体障害者手帳の重要性

#13.

進行性慢性疾患でできること。フォローの方針。 想定されうる臓器障害を網羅的にチェックし、 それを経時的に評価する。 心臓:心エコー。ECG。 呼吸:呼吸機能検査。必要に応じて動脈血液ガス分析。 嚥下機能評価 採血 解説 Lancet. 2001;358:1737–1744. Pract Neurol. 2016;16:418–430.

#14.

「何かできることはないか?」を、 診療の一部として必ず考える。 身体障害者手帳・各種診断書の作成    → 日常生活の支援、就労支援、社会参加の基盤づくり 「手帳は“特別扱いの証明”ではなく、生活を守るためのツールです」 サポートデバイスの提案    → ADL/IADL を維持するための具体的介入 患者会・支援団体への参加提案    → 疾患理解、心理的サポート、孤立の防止 解説 Pract Neurol. 2016;16:418–430.

#15.

PD:新たな治療薬を 使うときにはコストを議論する。 TIPS

パーキンソン病の治療選択肢

#16.

CASE 60歳男性。パーキンソン病発症し、治療開始3年目。 L-DOPA/DCI 300mg/day。ロピニロール塩酸塩徐放錠 8mg/day。 薬剤追加の提案をしたが、実は薬価が高くて困っていると発言あり。 主治医として、患者さん負担について十分に考えられていなかったと 反省した。 架空症例

#17.

患者さんがどれくらい毎月負担しているかは知るべき。 是非、自分が処方する薬剤の薬価は 知っておいてください。 高い薬がある。薬価も処方選択の根拠になる。 患者さんは何割負担なのか? 処方薬全体の薬価はどうなのか? 今回新たに処方する薬はどれくらいのコストなのか? 答えられますか? 解説

#18.

薬価について考えてみる 解説

#19.

コストにも配慮した治療選択 特にPDでは、複数薬剤を併用することが多い。 薬価や自己負担額について、患者さんと共有・相談することが重要である。 高額療養費制度・難病医療費助成制度など、公的制度の利用を検討する。 ジェネリック医薬品の使用や、薬価の低い代替薬の選択も選択肢となる。 病院ソーシャルワーカーや保健所と連携し、制度利用を支援する。 解説 Neurology. 2010;74(7):536–543.

#20.

患者さんの背景に留意して、 精神症状に留意ながら ASM使用する。 TIPS

ASM使用時の副作用リスク

#21.

CASE 50歳男性。知的発達障害がある。施設で生活している。 最近てんかん発作のコントロールが悪化している。 もともとLEV 3000mg/day処方されていた。 抗てんかん発作薬を変更しようとして、LTG を追加した。 追加後、精神症状が悪化し、困っているとクレームがあった。 架空症例

#22.

ASMの副作用が出やすいリスクについて ASMには、精神症状が出やすい薬剤と、 比較的出にくい薬剤がある。 出やすいASM:LEV・PER・TPM・ZNS 出にくいASM:CBZ・VPA・LTG・CLB まずは一般的な薬剤特性に沿って、処方変更を検討する。 ただし、薬剤の相性は個人差が大きく、最終的には個別に判断する。 解説 Res Dev Disabil. 2011 Nov-Dec;32(6):2660-8. Front Neurol. 2012 Dec 7;3:163. Neuropsychol Rev (2007) 17:413–425

#23.

ASMの副作用が出やすいリスクについて ASM使用時に、精神症状が出現・増悪しやすい患者背景 中等度以上の知的発達障害(IQ < 50) ASD(自閉スペクトラム症)の併存 限局性言語発達遅滞(症状の表現が困難) 行動障害や易刺激性の既往 多剤併用(ASM + 抗精神病薬など) 家族・介護者の支援が乏しい状況(副作用の気づきが遅れる) 解説 Res Dev Disabil. 2011 Nov-Dec;32(6):2660-8. Front Neurol. 2012 Dec 7;3:163. Neuropsychol Rev (2007) 17:413–425

#24.

高齢者の失神: PAFは忘れずに想起する。 TIPS 純粋自律神経不全症 (PAF: pure autonomic failure)

高齢者の失神とPAFの考慮

#25.

CASE 75歳男性例。立位になると失神する、というエピソードを 反復している。何度も失神しているので、入院対応になった。 循環器では特に問題ないと評価されている。 ドロキシドパ(ドプス🄬)+ミドドリン塩酸塩(メトリジン🄬)を処方したがまったく反応性なく、失神の反復あり。 頑固な失神の原因は? 架空症例

#26.

高齢者の頑固な失神:PAF PAFの定義:中枢神経系に明らかな異常を認めず、主として末梢の交感・副交感神経系に限局した神経変性疾患。 神経病理:ノルアドレナリン作動性交感神経節および神経終末の変性を特徴とし、Lewy小体を伴う場合がある。 画像所見:パーキンソン病と同様に、MIBG心筋シンチグラフィーが陽性となりうる。 予後・経過:20〜40%がパーキンソン病(PD)または多系統萎縮症(MSA)へ移行(conversion)するリスクがある。 解説 Rev Neurol . 2024 Jan-Feb;180(1-2):94-100.

#27.

脳梗塞後不具合に対する 処方バリエーションを 押さえておく。 TIPS

#28.

CASE 65歳男性例。心原性脳塞栓症後。 めまい感で困っている。 元気がない。 うつっぽい。 上肢・下肢の痙性が強い。 痛みがある。 架空症例

#29.

脳卒中後の処方介入の選択肢 対症療法には、いろいろな処方オプションがある。 もちろん吟味して使用すべきだが提案できると心強い。 脳卒中後めまい :イフェンプロジル酒石酸塩(セロクラール🄬) 脳卒中後アパシー:アマンタジン塩酸塩(シンメトレル🄬) 脳卒中後うつ  :セルトラリン(SSRI)、SNRIなど 脳卒中後痙縮  :バクロフェン、チザニジン ➡ A型ボツリヌス毒素注射 脳卒中後の痛み :TCA・SNRI、プレガバリン・ミロガバリン 解説 Rev Neurol . 2024 Jan-Feb;180(1-2):94-100.

#30.

手指のMMTは とれるようになる。 これは、かなり使う。 TIPS

パーキンソン病の診断の難しさ

#31.

CASE 50歳男性例。急性発症の右上肢遠位麻痺が主訴。 手の様子は手関節背屈、手指伸展が障害されており、下垂手の様相が前景にある。前医では橈骨神経麻痺として紹介されてきた。圧迫性橈骨神経麻痺、という評価だが、果たしてそれでいいのかどうか、を論点として診察することにした。 架空症例

#32.

橈骨神経の診察 手指伸展:総指伸筋 これをMMTで評価する。 これが橈骨神経を評価するための診察。 解説 Campbell WW, Barohn RJ, DeJong RN. DeJong’s The Neurologic Examination. 7th ed. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins; 2013.

#33.

正中神経の診察 親指を立てる:短母指外転筋 これをMMTで評価する。 これが正中神経を評価するための診察。 解説 Campbell WW, Barohn RJ, DeJong RN. DeJong’s The Neurologic Examination. 7th ed. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins; 2013.

#34.

尺骨神経の診察 手指を外転:第一背側骨間筋 これをMMTで評価する。 これが尺骨神経を評価するための診察。 解説 Campbell WW, Barohn RJ, DeJong RN. DeJong’s The Neurologic Examination. 7th ed. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins; 2013.

#35.

PDじゃないとは なかなか言い切りにくい。 時間を味方につける。 TIPS

#36.

CASE 80歳女性。歩行障害を主訴に受診。 2年経過で歩行の緩慢さがあると。 診察室での評価では、何とも言えない所見。確かに少し遅い感じもする。 無動といえば無動といえるのかもしれない。 PDといえるかどうかは自信が持てない。どちらかというと違う気がする。 架空症例

正常圧水頭症の管理と鑑別

#37.

パーキンソン病の診断の難しさ:誤診の理由 パーキンソン病(PD)の診断は難しい。 運動障害の原因が「パーキンソニズム」か「そうでないか」を明確に判断できない場面は少なくない。 重要なスタンスは、安易に「その可能性を否定しない」ことである。 判断に迷う場合は、経過を観察しながらお付き合いし、診断の可能性を残していくことが大切である。  ➡結局PDはありうる。 解説 J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992 Mar;55(3):181-4. Lancet Neurol. 2006;5:75–86.

#38.

パーキンソン病の診断の難しさ:誤診の理由 解説 J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992 Mar;55(3):181-4. PD診断は時に難しい、ということを肝に銘じる。 PDは症状の多様性が大きく、非典型例も少なくないため、典型像のみに当てはめて判断すべきではない。 誤診は一定の頻度で起こりうる(約20%)。類似疾患として MSA、PSP などが存在する。 時間経過が診断の助けとなる場合があり、初診時に判断できないこともある。 確立した診断バイオマーカーは存在せず、DaTスキャンや MIBG 心筋シンチグラフィーにも限界がある。

#39.

眼球運動障害は  FISHER SYND/MG/甲状腺 の検査は とりあえずの反射神経で提出。 TIPS

#40.

CASE 60歳男性例。急性発症の複視を主訴にERを受診。 発症2日目だが、複視症状は悪化していると。 複視以外に特に症状はない。 診察すると、全方向注視においても複視の訴えがある。 架空症例

#41.

眼球運動障害の鑑別に必要な反射的検査オーダー まずはぱっと鑑別に挙げる疾患を検討し、検査提出する。 鑑別① 重症筋無力症:抗AchR抗体 鑑別② Fisher症候群:抗GQ1b抗体 鑑別③ 甲状腺眼症 :TSH, freeT4, TSH受容体抗体(TRAb) ※甲状腺眼症:TSH受容体に対する自己抗体(TRAb)による免疫性炎症 眼球運動障害では、特異度の高い疾患をまず一括で除外する。 抗体は結果に時間がかかる。開幕時点で提出すること。 解説 J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992 Mar;55(3):181-4. Eur J Endocrinol. 2021;185:G43–G67.

#42.

NPHやシャント術後症例の かかわり方。 TIPS Normal Pressure Hydrocephalus: NPH

ジストニアの診断と治療

#43.

CASE ①75歳男性例。2年前に正常圧水頭症でシャント手術後。 術後も、進行性に運動機能障害があるので、脳神経外科から紹介になった。 ②75歳男性例。2年前から進行性増悪のある歩行障害愁訴に外来初診。 パーキンソニズム・認知症あり。画像上は正常圧水頭症疑い。 架空症例

#44.

正常圧水頭症の併存症としての変性疾患 NPHはTreatable dementiaとしてとらえられる疾患の一つ。 パーキンソニズム+認知機能障害はキーワード。 ただし、それが背景にある変性疾患に由来する症状かどうか?は議論になる。 iNPH術後状態で、進行する機能障害をどうとらえるか? iNPH疑いだが、NPHでなく、そもそも変性疾患そのものなのか? 術前・術後、両方の側面から悩むことがありうる。 解説 Lancet Neurol. 2017;16:957–966.

#45.

正常圧水頭症(NPH)に併存しうる変性疾患 NPHの原因なのかどうかは言い切れないが、変性疾患の併存がありうる。 ADが最も多い。AD(50%)>>DLB(10%)>PD(5%)/PSP (5%)が併存しうる。 これら併存症があると、パーキンソニズムの由来がわかりにくい ❌「NPHか変性疾患か、どちらか」 ✅「両者が重なっている前提で考える」 高齢者では変性疾患とiNPHが病理学的にoverlapする可能性が高く、  臨床的判断が重要。 解説 J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992 Mar;55(3):181-4. Lancet Neurol. 2017;16:957–966.

#46.

運動障害でわすれがち、 ジストニア。 TIPS

#47.

CASE 30歳女性。右手の動かしにくさを主訴に受診。 書字をしているとだんだんうまく書けなくなる。 脳・脊髄MRIは施行済。他施設では心因性として評価されている。 パーキンソニズムっぽいが、PDとしては評価しきれない。 やはり心因性??? 架空症例

#48.

ジストニアは忘れがち。「当てはまらない運動障害」を見たら、ジストニアを思い出す。 運動障害が話題になる時の思考の順序はおそらく、    麻痺 ➡ パーキンソニズム ➡ 失調 の順だろう。 これらが違う、と考えた時に想起するのはジストニア。 ジストニア誤診の理由 パーキンソニズムや心因性障害と診断されやすい。 他の運動異常症と症状が類似している。 臨床像が多彩で、症例間のばらつきが大きい。 特定の検査のみで確定診断できない。 解説   Mov Disord. 2013;28:863–873. Mov Disord. 2010;25(11):1619–1626..

CIDPとTTR-FAPの鑑別

#49.

ジストニアとは、特定の動作や姿勢で再現性をもって出現する、持続的または反復的な筋収縮により、異常姿勢や捻転運動を呈する運動障害である。 ① 再現性(reproducibility) 同じ動作・同じ姿勢で、同じ異常が出る/task-specific ② 持続性(persistence) 一過性ではなくある程度持続し、姿勢が固定化しやすい ③ 姿勢異常(abnormal posture) 筋力低下ではなく過剰収縮による「引っ張られる感じ」「ねじれ」。 そして、投薬治療には不応なことが多い。 機能神経外科へのコンサルテーションは妥当。   Mov Disord. 2013;28(7):863–873. Lancet Neurol. 2018;17:864–876.

#50.

CIDPで悩んだら、 TTR-FAPは鑑別に。 TIPS トランスサイレチン型 家族性アミロイドポリニューロパチー (遺伝性ATTRアミロイドーシス)

#51.

CASE 58歳男性。主訴は両下肢のしびれと歩行困難。2年前から両足趾のしびれと灼熱痛が出現。徐々に膝下まで広がり、1年前から歩行時のふらつきが目立つようになった。他院で神経伝導検査を施行し、「脱髄性多発ニューロパチー」とされ、CIDPを疑われて紹介受診。CIDPの診断でステロイドパルス療法、その後IVIgを複数回施行したが、有効性は乏しく、むしろ体幹失調と体重減少が進行した。その後起立性低血圧や消化器症状(便秘・下痢)を認めている。 架空症例

#52.

CIDPのミミック:TTR-FAP CIDP(慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー)は、免疫介在性ニューロパチーとして比較的頻度が高いが、臨床的に「CIDP様に見える」他疾患が少なくない。 TTR-FAP(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)はその代表例であり、誤ってCIDPと診断され、免疫療法を長期間受けてしまう症例が報告されている。 両者に共通する臨床像: 慢性進行性の多発ニューロパチー:筋力低下・しびれ・歩行障害 神経伝導検査での伝導遅延 解説 Lancet Neurol. 2014;13:132–144. Brain. 2015;138:3471–3482.

#53.

「免疫療法が効かないCIDP様ニューロパチー」  では、TTR-FAPを必ず再考する。 鑑別のポイント 自律神経症状:CIDPでは稀、TTR-FAPでは頻度が高い(起立性低血圧、消化管症状)。 家族歴 :陽性のことがある(ただし孤発例もあり注意)。 臨床経過:免疫療法(ステロイド・IVIg・血漿交換)に反応しない/あるいは悪化。 合併症 :心肥大、不整脈、腎障害、眼病変などの全身臓器障害。 解説

#54.

TIPS 末梢神経障害の鑑別では、 悩む症例は心エコーをやっておく。 (※TTR-FAPを確認しておく)

脳炎の診断と脊髄MRIの重要性

#55.

CIDPのミミック:TTR-FAP➡鑑別のポイント TTR-FAPでは、遺伝子型によって「先行する臓器」が異なる。 早発Val30Met:神経優位     → 心病変は後期 晩発Val30Met:神経+心病変  がほぼ並行 非Val30Met :心病変が先行 → 神経症状は後から 日本の遺伝性ATTRアミロイドーシスではVal30Metが最多だが、非Val30Met変異も  少なくなく、特に心優位・晩発・孤発例として臨床で問題となる。 心病変の評価はTTR-FAPの検討には重要。 解説 Lancet Neurol. 2014;13:132–144. Brain. 2012;135:3559–3570. N Engl J Med. 2019;379:1007–1016.

#56.

脳炎では、 脊髄MRIを撮っておくのも アイデア。 TIPS

#57.

CASE 42歳女性。一週間38℃前後の発熱、激しい頭痛、項部硬直感あり病院受診。性格変化・注意障害も認められた。髄膜刺激症状と軽度の小脳失調を認め入院。 髄液検査は、細胞数120/μL(単核球優位)、蛋白:120 mg/dL、糖:正常。 MRI FLAIR:両側視床~基底核・脳幹背側に淡い高信号、軽度脳室周囲の高信号。脳炎の診断として入院。追加で脊髄MRIを施行するとT2WIで脊髄炎も指摘された。最終診断は、GFAP astrocytopathyだった。 架空症例

#58.

「脳炎だが、脊髄も評価しておく。」 脊髄評価はアイデアとして忘れがち。 脊髄MRIは“診断を広げるための発想ツール” 脊髄MRIが有効となる自己免疫性脳炎関連病態 (1) MOG抗体関連疾患(MOGAD) (2) AQP4抗体陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD) (3) GFAP抗体関連脳炎(GFAP astrocytopathy) (4) 抗Hu抗体関連脳炎(傍腫瘍性脳脊髄炎) (追加)血管内悪性リンパ腫(IVLBCL) 解説 Neuroradiology. 2024 Mar 20;66(5):653–675. Lancet Neurol. 2016;15:391–404.

#59.

TIPS てんかん診療の困ったときの 選択肢: フェノバルビタール坐剤

#60.

CASE 72歳女性。進行胃癌(腹膜播種あり、在宅緩和ケア導入中)。側頭葉てんかん、10年前よりレベチラセタム(LEV)内服で発作抑制良好。在宅療養、食欲低下と嚥下障害が進行してきている。EDチューブ留置困難。経口内服がほぼ不能となり、LEVを継続できない状況。代替経路を検討:静注持続は在宅移行に不向き。 医療チーム内で相談し、フェノバルビタール坐剤を選択。 坐薬100 mg /dayで、発作なし。 架空症例

てんかん診療の選択肢

#61.

PB坐剤の選択肢を心得ておく。 座薬の抗てんかん発作薬は貴重な選択肢。 使い方① 緩和ケアのセッティングで発作を抑えたい 使い方② 腸管からの吸収が許容できないセッティングで発作を抑えたい てんかん発作抑制を達成したいが、点滴は無理、やEDチューブは無理、というセッティングで役に立つ選択肢である。覚えておく。 解説 Am J Hosp Palliat Care. 2019;36(10):871–876. Lancet. 2009;374:159–167.

#62.

ALSの鑑別に、 PNSはあげられることも大切。 TIPS Paraneoplastic Neurological Syndromes

#63.

CASE 62歳 男性。6か月前より右手の巧緻運動障害と筋萎縮を自覚。その後、左手にも筋力低下が拡大し、2か月前から嚥下障害と構音障害が出現。受診時には、四肢の進行性筋力低下と球麻痺。日常生活動作が急速に制限されている。感覚障害はなし。 ALSうたがいで評価を開始した。胸部CTで肺門部腫瘤を指摘。 最終的にこれは肺小細胞癌だった。 PNSとして神経症状は評価した。 架空症例

#64.

ALSの鑑別ではTreatableな疾患の検討を 解説   ALSと傍腫瘍性神経症候群の関係 PNSは腫瘍に対する免疫応答が神経系を標的として障害することで発症。 運動ニューロン障害型のPNSは、ALS様の臨床像を呈することがあり、ALSと誤診されることがある。 特に急速進行性の筋力低下や非典型的な経過(感覚障害や自己免疫的特徴を伴う場合)ではPNSを鑑別に入れる必要がある。 Eur J Neurol. 2023;30(6):1574-1584. Pract Neurol. 2013;13:153–164.

#65.

ALSとPNSを鑑別する特徴と検査方針 解説   進行速度:PNSは数週~数か月で急速に進行することが多い。ALSは通常年単位。 典型的ALS像にそぐわない症例(急速進行、感覚障害、自己免疫的所見)ではPNSを疑う。 検査と方針は以下のごとく 髄液検査(細胞数増加やOCBなどALSと異なる所見)。 抗神経抗体(paraneoplastic antibody panel)を測定。 全身検索(胸部CT、PET-CT、婦人科/泌尿器科腫瘍スクリーニング)。 Eur J Neurol. 2023;30(6):1574–1584.

#66.

謎の9+10障害の鑑別: VZV感染症の可能性は? TIPS

高度脊髄障害の対症療法

#67.

CASE 68歳男性。発熱や皮疹の前駆なく、3日前から嚥下障害と構音障害が進行。 来院時、球麻痺症状が顕著であった。 神経所見は、IX, X, XII脳神経麻痺を示唆する嚥下障害・嗄声・舌偏倚。 画像検査:MRI脳に明らかな梗塞・腫瘍性病変を認めず 髄液検査:細胞数軽度増加(単核優位)、蛋白増加、糖正常範囲 髄液VZV PCR:陽性 最終診断は、VZV感染による下位脳神経障害として評価した。 架空症例

#68.

ヒントの乏しい急性球麻痺障害の鑑別 解説   球麻痺障害の鑑別は多様 血管障害、変性疾患、自己免疫性疾患、感染性疾患 筋疾患、神経筋接合部疾患、腫瘍性疾患 感染性疾患としては、ウイルス感染症、特にVZV感染症を鑑別に挙げる。  皮疹がなくてもVZVを疑い(zoster sine herpete)、  CSF PCR/抗体検査を積極的に行う。  内視鏡検査で咽頭粘膜・喉頭部粘膜に皮疹があることもあり、有用。 Ear Nose Throat J. 2024 Oct;103(10):611-613. Nat Rev Dis Primers. 2015;1:15016.

#69.

高度脊髄障害の対症療法: DVT対策+便秘対策 TIPS

#70.

CASE 72歳男性。高血圧・脂質異常症で通院中。喫煙歴あり(40本/日 × 40年)。 朝、排便時に突然両下肢の力が入らなくなり立位保持困難となった。数分以内に歩行不能となり、救急搬送された。発症から来院まで約2時間。 両下肢:徒手筋力テストで0〜1/5、完全麻痺に近い 感覚:Th10以下で温痛覚の低下あり、触覚・振動覚は比較的保たれる(解離性感覚障害) 膀胱直腸障害:尿閉 脊髄MRI(拡散強調画像):Th9〜11レベルに紡錘形の高信号、脊髄中央部主体 診断は、脊髄梗塞(前脊髄動脈症候群)。治療にあたって心得ておくべきことは? 架空症例

#71.

便秘管理とDVT予防 解説   脊髄障害時は、便秘症は高頻度に生じる。便秘になる前提で投薬調整を最初から行っていく。 リハビリ介入とともに、排便コントロールにも留意していく。 もう一つは、DVT対応。覚えておかないと忘れがち。 ヘパリン皮下注射+間欠的空気圧迫、弾性ストッキング 慢性期にはDOACへの移行も検討。 Top Spinal Cord Inj Rehabil. 2021 May 24;27(2):75–151. Top Spinal Cord Inj Rehabil. 2016 Summer;22(3):209–240.

#72.

抗うつ薬を飲んでいる ➡セロトニン症候群を想起する 反射神経。 TIPS

抗うつ薬使用時の注意点

#73.

CASE 72歳女性。アルツハイマー病でドネペジルを内服中。うつ症状に対してSSRI(パロキセチン)を3週間前から開始。さらに腰痛に対してトラマドールを処方された。内服開始3日後から不安と焦燥が強まり、夜間不眠を訴えた。受診当日、家族が「手足がガクガク震え、汗びっしょりでおかしい」と救急搬送。 架空症例

#74.

抗うつ薬使用者の変調でセロトニン症候群を想起する! 解説   Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2023 Aug;133(2):124-129. セロトニン症候群(serotonin syndrome)は、過剰なセロトニン作動性神経伝達により生じる中毒性症候群で、臨床的には 三大要素(精神症状・自律神経症状・神経筋症状)を中心に多彩な症状を呈する。 抗うつ薬+多彩な症状で、この病態を想起する。 不随意運動:振戦>ミオクローヌス 精神症状:不安・焦燥・混乱 自律神経症状:発汗・頻脈・高血圧 発熱(重症例) 消化器症状(下痢、嘔気)

#75.

セロトニン症候群の代表的薬剤 解説 J Family Community Med. 2024 Jan-Mar;31(1):1-8.

#76.

抗うつ薬使用者の変調でセロトニン症候群を想起する! 解説   抗うつ薬と合わせ技に注意する よくあるパターン 「SSRI/SNRI + トラマドール」 薬剤の副作用は、特定薬剤のみでなく、処方経過(追加処方など)も 併せて検討する必要があろう。 Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2023 Aug;133(2):124-129.

#77.

パーキンソン病で気にする処方: PPI・SNRI・トラマドール TIPS

#78.

CASE 70歳男性。1年で進行する歩行障害でPDの診断とした。 さて、治療開始するのだが、併用薬に注意したい。 PPI            :レボドパ吸収遅延 SNRI     + MAO-B阻害薬:セロトニン症候群リスク トラマドール + MAO-B阻害薬:セロトニン症候群リスク 架空症例

パーキンソン病の進行と管理

#79.

PPIとL-DOPA/DCI 解説   機序:レボドパは小腸上部で吸収される。PPIにより胃酸分泌が抑制されると、胃内pHが上昇し、レボドパの溶解度・胃排出速度に影響が出る。 結果、小腸での吸収開始が遅延し、血中濃度低下や吸収遅延が生じうる。 臨床的影響:レボドパ効果の立ち上がりが遅れ「wearing-off」様症状や、日内変動の増悪を招くことが報告されている。 対応:不要な長期PPI処方の見直し。     レボドパ投与タイミングとPPI服用の時間をずらす工夫。 Eur J Neurol. 2023;30(6):1574-1584.

#80.

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)とMAO-B阻害薬 解説   背景:パーキンソン病では抑うつ症状や不安が合併しやすく、SNRI(デュロキセチンなど)が使われることがある。また慢性疼痛でも。 リスク:両者の併用でセロトニン過剰となり、セロトニン症候群を発症する危険がある。 注意点:添付文書でも「禁忌」あるいは「併用注意」とされている組み合わせが多い。 抑うつ症状に対しては、SSRI(セルトラリンなど)や他の抗うつ薬で相対的に安全なものを選ぶ工夫が必要。 Cureus. 2023 Mar 28;15(3):e36780.

#81.

トラマドールとMAO-B阻害薬 解説   機序:トラマドールはオピオイド作用に加え、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を持つ。 MAO-B阻害薬と併用するとセロトニン過剰を引き起こすリスクがある。 臨床的懸念:高齢PD患者では慢性疼痛(腰痛、変形性関節症など)に対してトラマドールが処方されやすく、セロトニン症候群を引き起こす可能性がある。 MAO-B阻害薬内服中の患者には、トラマドールは原則避けるべき。逆もしかり。 British Journal of Anaesthesia. 2005;95(4):434-441.

#82.

AchEIは、 慢性期でも精神症状に影響あり。 TIPS

#83.

CASE 75歳女性。3年前にアルツハイマー病の診断を受けた。 当初から、リバスチグミン(貼付剤)を継続使用している。 最近、易怒性が増してきており、家族から外来で相談を受けた。 BPSDが悪化していると評価するのか? 架空症例

#84.

ChEIの副作用は、開始直後とは限らない。 一般的に、ChEIは精神症状を惹起しうる。 基本的には投与開始直後に認めうる副作用である。 一方、遅発発症の精神症状のパターンもある。 遅発発症は  (1) 用量漸増・維持量到達後, (2) 長期継続後, (3) 別ChEIへスイッチ    などのタイミングで起こりうる。 症状は、躁症状・攻撃性増悪・せん妄・幻覚など多彩。 精神症状は投薬減量/中止で改善する。 解説   J Neuropsychiatry Clin Neurosci. 2005 Fall;17(4):552-5. Int J Geriatr Psychiatry. 2003 Jul;18(7):657-8. Case Rep Neurol. 2022 Sep 19;14(3):359–365.

TIPSの実用性と重要性

#85.

パーキンソン病は 「ゆっくり」進行する。 TIPS

#86.

CASE 75歳男性。1年前にパーキンソン病の診断を受けた。 心気的な訴えがいつも多い方。 いつも外来の度に、「また悪くなった。」と仰る。 変性疾患の患者さんとどんな言葉を使って会話ができるのだろう? もしくは、前向きさをどう表現できるのだろうか? 架空症例

#87.

パーキンソン病は進行はあるが、それはゆっくりなんだ。と伝える。 パーキンソン病の進行はゆっくりです。 そんなに早く進まないものですから、心配しすぎないで! パーキンソン病の患者さんと向き合っていると、抑うつ的な方もいる。 実際の症状の様子とは異なり、どんどん悪いよ。という方もいる。 説明①:「少なくとも月単位で進行する病気ではありません。年単位での悪化としてとらえる病気です。」 説明②:「研究では運動症状スコアが年に2~3点程度進むのが平均、HY3に進むのは5年で2~3割、10年で半分くらいというデータがあります。」 解説 Mov Disord. 2018;33:128–134. Parkinsonism Relat Disord. 2006;12:331–336.

#88.

現状維持は 悪いことではない。 TIPS

#89.

CASE 75歳男性。1年前にパーキンソン病の診断を受けた。 心気的な訴えがいつも多い方。 いつも外来の度に、「何も変わらない。何もよくならない。」と仰る。 変性疾患の患者さんとどんな言葉を使って会話ができるのだろう? もしくは、前向きさをどう表現できるのだろうか? 架空症例

#90.

「変わりがないことは、よいことだ。」と伝える。 基本的には病気は進行するようなものです。 変わりがないということは、とてもよいことですよね。 詭弁かもしれないが、自分の中で患者さんと話し合える、生きた言葉を少しでも増やしていく。 先輩から学んだことばも真似しながら。 「変わりがない=病勢が保たれている」ことは、医学的にも“良い状態” 解説 Mov Disord. 2007;22:1839–1844. Mov Disord. 2008;23:837–844.

#91.

TIPSは明確なメッセージと現場での実用性があり ます。これが絶対的な行動原理にならないものの、 行動にメリハリを与えてくれる重要な知識になります。チームでの診療レベルアップにも有用でしょう。

#92.

THANK YOU


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