テキスト全文
急性期栄養療法の重要性と課題
#1. 先を⾒据えた栄養療法 〜今こそチーム医療の底⼒を〜 ⿅児島⼤学病院 救命救急センター 集中治療部 岩永 千尋
#3. 急性期を脱しているが…なかなかICUを退室できない… 残すは 栄養とリハビリ でしょ… いや 急 で 性し 期ょ ‼ いや
急性期における栄養管理の基本
#4. 急性期に栄養をつけて, 筋⼒アップするぞ!! とは思っていません 患者⾃⾝の栄養状態のBaseをいかに 落とさないかが勝負 急性期は, まずは 攻め << 守り 最初が肝⼼!! 継続が肝⼼!!
#5. 急性期/重症患者にとって栄養って⼤事︖ 感染合併症↓ 筋⾁量 ⾝体機能維持
世界の栄養療法ガイドラインの比較
#7. 栄養は未知なところが多い だからこそ, 可能性がある領域 結果がすぐ⽬に⾒えなくても 患者の将来につながる可能性あり 多職種で栄養のこと考え, 取り組みましょう!!
#8. 先を⾒据えた栄養療法 〜今こそチーム医療の底⼒を〜 ① 代表的なガイドラインから 急性期栄養のトレンドをおさえよう ② ⿅児島⼤学病院 集中治療部の チームで取り組む栄養管理
#9. <世界のさまざまな栄養療法ガイドライン> ESPEN ASPEN (The European society for Clinical Nuttrition and metabolism) (American society for parenteral and enteral nutrition) 日本版重症患者の栄養療法ガイドライン JAPAN
#10. 日本版重症患者栄養療法ガイドライン (2016) 熱量 重症化以前に栄養障害がない症例では, 初期の1週間は消費エネルギーに⾒合う エネルギ投与量を⽬指さないことを弱く推奨 重症化以前に栄養障害がある症例では, ⾄適投与量は不明である. 蛋⽩ 1.2-2.0g/kg/day モヤっと
急性期栄養療法の実践とエビデンス
#11. ESPEN&ASPENの⽐較 初期投与経路 投与量 投与開始時期 栄養の進め⽅ 蛋⽩ ESPEN ASPEN 経腸 経腸 or ⾮経⼝ (Grade A) (強い推奨) 熱量控えめ(Grade B) ICU⼊室7-10⽇間に 48時間以内(Grade B) 12-25kcal/kg/dayまでup 3-7⽇間かけて徐々にup (弱い推奨) (Grade A) 1.3g/kg/dayを段階的に (Grade 0) 1.2-2.0g/kg/day Intensive Care Med(2024);50(7):1035-1048 (弱い推奨)
#12. <急性期の栄養療法ここだけは押さえておこう!!> ICU⼊室48時間以内に栄養開始 急性期は, カロリー控えめに 蛋⽩は, 明確なエビデンスは現在なし JAPAN︓1.2g/kg/day ESPEN︓1.3g/kg/day ASPEN︓1.2-2.0g/kg/day
#13. <急性期の栄養療法ここだけは押さえておこう!!> ICU⼊室48時間以内に栄養開始 急性期は, カロリー控えめに 蛋⽩は, 明確なエビデンスは現在なし JAPAN︓1.2g/kg/day ESPEN︓1.3g/kg/day ASPEN︓1.2-2.0g/kg/day
#14. 【48時間以内の開始が望ましい理由はこれ】 ⼈⼯呼吸器管理中はPPIを全症例使⽤ 粘膜障害は24時間以内に起こり始める 粘膜障害予防のためにも, 腸管を使⽤ Clin Nutr. 2018;37(1):19–36. 粘膜障害が進⾏すると… 消化管出⾎, 腸管虚⾎ バクテリアストランスロケーション 腸管透過性亢進をおこす
#15. <急性期の栄養療法ここだけは押さえておこう!!> ICU⼊室48時間以内に栄養開始 急性期は, カロリー控えめに 蛋⽩は, 明確なエビデンスは現在なし JAPAN︓1.2g/kg/day ESPEN︓1.3g/kg/day ASPEN︓1.2-2.0g/kg/day
過剰栄養のリスクとその影響
#16. <どうして過剰栄養はいけないのか︖> 筋⾁合成 健常者の場合 脂肪 筋⾁ 糖新⽣の抑制 分解 糖質
#17. <どうして過剰栄養はいけないのか︖> 重症患者の場合 筋⾁分解>>筋⾁合成 脂肪 筋⾁ ⾼⾎糖 ⾼TG⾎症 尿毒症 分解 糖質 エネルギー産⽣ 糖新⽣↑ オートファジーの抑制 ケトジェネシスの抑制 Intensive Care Med(2024)50:1035-1048
#18. <オートファージーとは> ひとことで⾔えば… 損傷した細胞の修復に重要な機序
#19. <ケトジェネシスとは> ケトン体⽣成のこと. ケトン体は, オートファジー&筋再⽣促進, 抗炎症作⽤
#20. <どうして過剰栄養はいけないのか︖> ⾼⾎糖 ⾼TG⾎症 尿毒症 オートファジーの抑制 ケトジェネシスの抑制 細胞修復や筋⾁の再⽣が ⾏われない Intensive Care Med(2024)50:1035-1048
重症患者における蛋白質投与の考察
#21. <急性期に栄養療法ここだけは押さえておこう!!> ICU⼊室48時間以内に栄養開始 急性期は, カロリー控えめに 蛋⽩は, 明確なエビデンスは現在なし JAPAN︓1.2g/kg/day ESPEN︓1.3g/kg/day ASPEN︓1.2-2.0g/kg/day
#22. <Bad> ⾼蛋⽩投与群(≧2.2g/kg/day)では ⽣存退院までの期間や60⽇後死亡率は 通常蛋⽩投与群(≦1.2g/kg/day)より⾼い. 急性腎障害や臓器不全スコアのベースラインが⾼い患者では ⾼蛋⽩投与は有害である. Daren K Heyland. Lancet. 2023;401(10376):568-576
#23. 重症患者は, 摂取した蛋⽩を筋⾁合成に 使⽤する能⼒は60%低下 多臓器不全患者 >> 単臓器患者よりも 1週間以内に筋萎縮が急速に進⾏ Am J Respir Crit Care Med 206:740-749,2022
#24. <Good> 重症患者で4〜10⽇⽬に 1g/kg/day以上の蛋⽩質投与を⾏うことで 優位に筋萎縮を抑制 Crit Care 25:260,2021
鹿児島大学病院の栄養管理プロトコル
#25. ② ⿅児島⼤学病院 集中治療部の チームで取り組む栄養管理 医師/看護師/管理栄養⼠による 毎⽇(休⽇・祝⽇は除く)の栄養回診
#26. 医師/看護師/管理栄養⼠による 毎⽇(休⽇・祝⽇は除く)の栄養回診 医師 看護師 患者の病態 管理 栄養⼠ 患者の状態 現在の投与量 排便状況 ⽬標投与量
#27. <当院ICUでの栄養プロトコール> 1.5kcal/ml, 蛋⽩ 約6g/100kcal 1.5kcal/ml, 蛋⽩ 5g/100kcal 消化態栄養 半消化態栄養 45ml/hr 40ml/hr オーダーメイドで 調整⾏う 30ml/hr 20ml/hr 10ml/hr Day1 Day2 Day3 Day4 Day5
#28. 当院ICUの栄養⽬標 熱量︓⼊室5⽇⽬に25kcal/kg/day 蛋⽩︓1.2g/kg/day 栄養療法 is オーダーメイド!! ①いつまでに ②どれくらい ⽬標設定し, 計画⽴て 評価しつつ⾏う!!
#29. Take Home Message!! 急性期栄養療法は初めからが肝⼼!! 継続が⼤事!! 多職種で情報共有し, オーダーメイドな栄養療法を!! 熱量は控えめに. 蛋⽩は適度に.