#4.
1. 利尿薬概要 体液量過剰とは? Ø 一般に細胞外液( 血管内volume+間質)の過剰 Ø 浮腫は間質の液量過剰を示す所見である Ø 血管内volumeを正しく評価するすべはあまりないが、 (慣習的に)病歴・身体所見に加えて、下大静脈径や肺エコーを参考にすることが多い Ø 血管内脱水と間質の体液過剰は同時に存在するため、間質の液貯留(third spaceへの移行) を起こしうる病態がないか評価する 例)低Alb血症、炎症所見など Ø また、体液量過剰をきたしうる疾患が背景にないか評価する(腎不全、心不全など) Ø ただ、体液量の正確な評価は困難なので実際に困っている方向に介入するとよい
#5.
1. 利尿薬概要 利尿薬とは…? Ø 腎臓の尿細管などのチャネルに作用してNaや水分を排泄を促進する薬剤 Ø いちいちどこにどんなふうに作用するとかを覚える必要はない Ø ただ、多数ある利尿薬の大まかな臨床効果の特徴や副作用は覚えておく
#6.
1. 利尿薬概要 利尿薬の分類 分類 主な薬剤 説明 体液過剰に用いる ループ利尿薬 トルバプタン 主に体液量過剰の際に使用される Na利尿を狙う サイアザイド Na利尿を促し、降圧作用がある アルドステロンブロック スピロノラクトン 降圧薬として使用 心不全の際に使用 その他 マンニトール アセタゾラミド マンニトールとグリセロールは脳浮腫 や緑内障に使用される アセタゾラミドは眼圧を下げるが、 最近は利尿薬としても第2-3選択薬 として使用される
#7.
2. それぞれの利尿薬の特徴 フロセミドの特徴 *フロセミド以外のループ利尿薬については後ほど紹介します Ø Henleループ太い上行脚のNa-K-Cl共輸送体に作用 Ø 強力な利尿作用を有する 基本的に等張尿(半生食のイメージ)が出る Ø 半減期 30分程度(Last six=6時間持続 ラシックス):1日複数回用いる Ø 一定量以上を使用するとレニンアンギオテンシン系の作用で再吸収が働くので 効果が頭打ちになる Ø Bioavailabilityの個人差がかなり大きい 10-90%程度 Ø そのため確実に効果を得たい場合はivで投与する 平均は50%
#8.
2. それぞれの利尿薬の特徴 トルバブタンの特徴 Ø 水利尿がメイン Ø 高ナトリウム血症や肝酵素上昇に注意が必要 Ø 入院で導入する Ø 薬価が高い(7.5mg錠で361円、15mg錠で626円) Ø 臨床的には単体で使用することは少なく、ループ利尿薬で抵抗性がある症例で用いる Ø 低ナトリウム血症を併発する心不全症例とかで使いやすい Ø 尿量は確かに結構確保できるが、ハードアウトカムを改善したというエビデンスに乏しい
#9.
2. それぞれの利尿薬の特徴 その他の利尿薬の特徴 Ø サイアザイド Na利尿による降圧効果がメイン 塩分過多の患者の降圧薬として用いる ループ利尿薬単独で抵抗性のある症例で上乗せで用いる Ø MRA レニンアンギオテンシン系が亢進している心不全などの病態で用いる 利尿というよりは降圧や心不全の長期予後に対する薬 Ø アセタゾラミド あまり用いることがなかったが最近話題(後述)
#10.
2. それぞれの利尿薬の特徴 ループ利尿薬の副作用と注意点 Ø 低K血症、低Mg血症に注意 Ø 当たり前だが血管内脱水に注意 Ø NSAIDsやACE阻害薬/ARB/MRAとの併用に注意 Ø 耳障害は2000-3000mgとかで起こるのであまり心配しない Ø 光線過敏症が稀にある Ø 血圧の下がりすぎはそんなに心配しないで良い?(後述)
#11.
2. それぞれの利尿薬の特徴 他のループ利尿薬 アゾセミド トラセミド Ø メリット: Ø 効果の持続時間がフロセミドよりも 長く、長時間の利尿効果が期待できる。 Ø フロセミドと比較すると反跳性 ナトリウム再吸収が少ない。 Ø メリット: Ø レニンアンギオテンシン系を抑制する作用 により心不全における予後改善効果が 示唆されている Ø デメリット: Ø フロセミドに比べて即効性がやや劣る。 Ø 日本国内ではフロセミドほど一般的 ではないため、臨床データが少なめ。 Ø 半減期: 約3-5時間 Ø デメリット: Ø フロセミドと比べるとコストが高い。 Ø 半減期: 約3-4時間
#12.
2. それぞれの利尿薬の特徴 ivフロセミドの実際の使い方 うっ血あり→ループ利尿薬の投与開始 •自宅で使用している量の2倍を投与、もしくはフロセミド20-80 mgを初回投与(個人的には20mg) •尿中ナトリウム評価戦略(Emerging Pathway) • 随時尿中ナトリウムを評価。 • 尿中Na >50‒70 mmol/L: 現在のIV投与量を維持し、6-12時間ごとに再評価。 • 尿中Na <50‒70 mmol/L: 現在のIV投与量を2倍に増加し、再評価。 •尿量評価戦略(Established Pathway) • 2-6時間で尿量(UOP)を評価。(個人的には2-3時間) • UOP >150 mL/h: 現在のIV投与量を維持し、6-12時間ごとに再評価。 • UOP <150 mL/h: IVループ利尿薬の用量を2倍に増加し、再評価。 最大限の利尿薬用量で目標のUOPまたはナトリウム排泄量を達成できない場合 •第一選択: サイアザイド系利尿薬を追加。 •第二選択: アセタゾラミド、アミロライド、アルドステロン拮抗薬のような追加の利尿薬を検討。 Eur J Heart Fail. 2019 Feb;21(2):137-155.
#13.
2. それぞれの利尿薬の特徴 反応尿 Ø 1回のフロセミド投与でどれくらいの反応尿があるのかを予測するのは困難 Ø 前述のガイドラインの通り100-150ml/hrくらいを目安にしつつ 出過ぎた時、出なかった時の次の一手をあらかじめ考えておく Ø ただ、少なくとも体液過剰に対してフロセミドivを用いているので出なさすぎで 悩むことはあっても出過ぎて悩むことは(そこまで)多くないはず
#14.
2. それぞれの利尿薬の特徴 利尿薬が効きにくい症例 Ø CKD、ネフローゼなど低Alb血症、心不全 Ø PK(薬が作用部位に到達するまでの時間)、PD(臓器反応性の問題)に分けられる Ø CKDはPKの問題であり投与量を増やすことで対応 Ø 低Alb血症や心不全はPDの問題で投与回数を増やすことで対応
#15.
2. それぞれの利尿薬の特徴 フロセミドの実際の使い方 現実的に Ø 前述のフローチャートをベースに、利尿薬投与量を勘案(まずはフロセミド1Aから) 長期的な管理としては体重ベースで考えるとやりやすい Ø 問題なかった時の体重を目標にしてそれまで落とす Ø 特に外来においては@kgならどうする など記載・説明しておくとやりやすい 体重が増えやすい人は頓用で利尿薬を持たせておいて@kgになったら飲んでね としておく Ø 半減期とRAA系の亢進の問題があるため1日複数回投与が望ましいが、夜に おしっこが出過ぎないように管理する 日中に投与し切る
#16.
2. それぞれの利尿薬の特徴 上手に管理するには Ø まずは十分量を投与することが原則 Ø 今体液過剰に困っている状況で利尿薬を使っているのに中途半端なことはしない Ø In-out balanceでOut balanceにする必要がある Ø Inにもよるが、目標は2000-3000ml/日くらいの尿量を目指す Ø その上で高度の低Alb血症や肝不全、血管内脱水の病態などでは腎機能悪化などリスクが 大きいので体重500g/日くらいの体重減少を目安にIn-out balanceを考える Ø 効果が切れた後にリバウンドでNa再吸収が亢進し、正味として 体液量減少効果が減弱する ことも加味する
#17.
2. それぞれの利尿薬の特徴 持続 or 間欠 Ø 有名なのがDOSE trial (2011) N Engl J Med. 2011 Mar 3;364(9):797-805. •目的:心不全の急性増悪時のフロセミド投与方法(持続投与 vs 間欠投与)を比較 •結果:持続投与(24時間持続)と間欠投与(8時間ごとの投与)の治療効果に差は 見られなかった •両者の効果は同等で、臨床的にはどちらでも有効 その後もフロセミド持続の方が体重減少がより得られた報告があったり はするが、基本的にハードアウトカムの有意差は得られていない
#18.
3. Q and A 腎機能悪くならない? Ø 急性心不全の治療過程で生じる腎機能障害(Worsening renal function; WRF)は 「血清クレアチニンが0.3 mg/dL以上上昇すること」と定義される Ø WRFは予後を悪化させるという報告が相次ぎ、利尿薬はできる限り制限すべきという考え方が 以前はあった。 Ø 最近では、心不全におけるうっ血腎自体が予後を悪化させるという考え方もあり、しっかりと 利尿を行うことでWRFが出現しても心不全の生命予後はむしろ改善するとの報告も散見される Ø また、血清Cre値は希釈性の病態で見かけ上低値になりうるため、利尿により希釈性の病態が改 善すると 真のCre値が明らかになることでCre値が上昇しているように見える という考え方 もある 現在体液過剰で困っているのであれば気にせず利尿を進めてください
#19.
3. Q and A フロセミドは血圧下げる? 「フロセミド投与するので血圧に注意します」 「血圧低いですけどフロセミド投与していいですか?」は日常診療でよくあります コクランレビュー 9件の試験(460人)で5種類のループ利尿薬の血圧降下効果を評価(治療期間平均8.8週間)。 収縮期血圧の降下幅は平均-7.9 mmHg、拡張期血圧は-4.4 mmHg。 副作用による中止や血清生化学的変化に有意差は認められなかった。 →内服のループ利尿薬では多少の低下あり 点滴のデータはないが、添付文書上は記載あり 個人的な経験では、 もともと血管内脱水がある症例や不整脈を合併している症例では血圧は下がる可能性があるが、 血管内を含めた本当の体液量過剰症例では基本的には大きくは下がらない 半減期・効果時間短いので血圧下がるのも利尿薬投与直後だけではないか?
#20.
3. Q and A 輸液しながら利尿? Ø 基本的には「入れながら出す」というのは意味不明な治療になる Ø ただ、血圧が低い=腎血流が低い と利尿作用が弱まることは知られている Ø そのため、一つの選択肢には上がらなくもない Ø しかし、血圧が低いが体液量過剰(と評価している)患者はthird spaceへの 体液の移行が主病態 Ø そのため輸液してもthird spaceに逃げちゃうんじゃないか… Ø エビデンスがなかなかない領域なので、患者個別のケースで考える他ない
#21.
3. Q and A アルブミン製剤併用? Ø 低Alb血症患者は利尿薬抵抗性をきたしやすい Ø そのためAlbを補充したら利尿薬効きやすいんじゃないかという仮定の元、アルブミン製剤 を併用するのが好きな先生も多い Ø ただ、Alb製剤は貴重な生物学的製剤であり、安価な製剤ではない Ø 加えてAlb製剤の適正使用の文書でも積極的な推奨はされてない Ø さらに効果があるとする報告もないとする報告もあり一定の評価はされていない Ø 上記個人的には「よっぽど困ってなければやらん方が良くね?」というスタンスです
#22.
3. Q and A 最近の話題 Ø アセタゾラミドも有効かも? Ø 急性心不全においてループ利尿薬との併用で3日以内のうっ血解除成功率が改善され、 尿量が増加して有害事象は増えなかったという報告がある N Engl J Med. 2022 Sep 29;387(13):1185-1195. Ø 作用機序からすると代謝性アルカローシス症例で使いやすい Ø ただ、まだまだ不透明で、フロセミドに上乗せするならサイアザイド系でいいんじゃないか
#23.
4. Take Home Message Take Home Message Ø 大前提として利尿薬は体液量過剰に用いる そのためまずは体液量評価を適切に行うことが重要である Ø まずはループ利尿薬の使用方法に慣れる その上で、トルバプタンなどその他の薬剤の使用に習熟する Ø 体液量を適切に評価するのは難しいことも多いが、実際に現在問題となっている 部分を是正するような介入を行うるというふうに考えると容易である