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放置しない!便秘の基本を学ぼう

投稿者プロフィール
くるとん@消化器内科

総合病院

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概要

便秘は放置すると心血管イベントのリスクファクターとなり、生命予後を低下させる恐れがあります。このスライドでは、便秘症の概要、適切な便秘治療を行うための治療法と薬物療法について解説します。

◎目次

・便秘とは?

・便秘を放置すると?

・便秘の分類

・症候性便秘の原因

・薬剤性便秘の原因

・問診のポイント

・ブリストル便性状スケール

・問診のポイント

・食事/生活指導のポイント

・酸化マグネシウム

・刺激性下剤-センノシド

・刺激性下剤-ピコスルファート

・分泌型下剤-アミティーザ

・リンゼス

・浸透圧性下剤-ラクツロース

・浸透圧性下剤-モビコール

・胆汁酸トランスポーター阻害薬-グーフィス

・漢方薬

・便秘治療のまとめ

・Take Home Message

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

便秘の定義と影響についての解説

#1.

放置しない!便秘の基本を学ぼう くるとん@消化器内科 twitter:@Dr_Claude_Japan

#2.

便秘とは? 本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出 できず,検査や治療を必要とする状態を便秘症と呼ぶ. 症状として ・排便回数減少によるもの(腹痛,腹部膨満感) ・硬便によるもの      (排便困難,過度の怒責) ・排出障害によるもの   (残便感とそれによる頻回便) 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#3.

便秘を放置すると? 国内では便秘群(2-3日に1回)は,非便秘群(1日1回以上)と比較して心血管死亡が21%高かったと報告がある. 米国の研究でも便秘群は非便秘群と比較して, 全死亡は12%,冠動脈疾患は11%,脳卒中は19%高かったと報告されている.  便秘が心血管イベントのリスクファクターとなり,生命予後を悪化させる. 参考文献:Honkura K. et al.: Atherosclerosis 2016;246:251-256 参考文献:Sumida K. et al.: Atherosclerosis 2019;281:114-120

便秘の分類とその原因の詳細

#4.

便秘の分類 原因として,器質性,機能性に分類される. 器質性には 非狭窄性:巨大結腸や直腸瘤など 狭窄性:大腸癌,クローン病,虚血性腸炎がある. 腸閉塞のリスクがあるため, まずは狭窄性の便秘の除外を行う!

#5.

便秘の分類 機能性には ①排便回数減少型 症候性,薬剤性,経口摂取不足 ②排便困難型 硬便,便秘型過敏性腸症候群,腹圧低下などがある.

#6.

症候性便秘の原因 内分泌・代謝疾患 糖尿病,甲状腺機能低下症,慢性腎不全 神経疾患 脳血管疾患,Parkinson病,脊髄障害,精神発達遅滞 膠原病 強皮症,皮膚筋炎 変性疾患 アミロイドーシス 精神疾患 うつ病,統合失調症 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

便秘の問診ポイントと評価方法

#7.

薬剤性便秘の原因 抗コリン薬 蠕動運動,腸壁分泌の抑制 向精神薬/抗Parkinson病薬  抗コリン作用を有する オピオイド 蠕動運動の抑制 カルシウム拮抗薬 腸管平滑筋の弛緩 利尿剤 体内の水分排出促進作用 など 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#8.

問診のポイント ①排便回数 排便回数減少型:週3回未満 排便困難型   :毎日排便はある ②便の性状 ブリストル便性状スケールで客観的に評価する. ③排便に要する時間 トイレに5分以上こもる場合は,排便困難型を考慮.

#9.

ブリストル便性状スケール 1-7に分類され,数字が大きいほど 軟らかい(=大腸通過時間が短い). Type1-2 腸内の停滞時間が長く,便秘と判断 Type3-5 正常便,特に4が理想便 Type6-7 下痢と判断 便秘や下痢の患者は,3から5に近づくほど, 症状が改善されたと判断する.

#10.

問診のポイント ④既往歴/服薬歴 症候性便秘や薬剤性便秘の可能性を考慮する. ※下剤,坐薬,浣腸使用の有無も確認しておく. ⑤大腸内視鏡検査の施行歴 器質性便秘の除外が可能となる. ⑥食事・生活習慣 食事摂取量(特に食物繊維)や日頃の生活活動度の確認を行う.

便秘症に対する食事と生活指導

#11.

食事/生活指導のポイント ①欠食せず栄養バランスの良い食生活,適度な運動 ②食物繊維(目標20g)を十分に摂る 野菜の目標摂取量は350g/日 手のひらサイズ大の小鉢5-6皿 ③水分補給を行う 食事で摂取する以外に,1.0-1.5L/日の水分補給が望ましい. ④発酵食品を利用する 動物性乳酸菌,ビフィズス菌:ヨーグルト 植物性乳酸菌:味噌,醤油,納豆,ぬか漬け 塩分の摂りすぎに注意 その他特定保健用食品(トクホ)や機能性表示商品も活用する.

#12.

便秘症の薬物治療

便秘治療に用いる薬剤の種類と効果

#13.

酸化マグネシウム 慢性便秘治療の第一選択薬(安価,用量調節しやすい). 胃酸と反応し,小腸で炭酸Mgとなり,浸透圧によって腸管内へ水分を引き込み,便の容積を増大させる. 腎機能障害では,高Mg血症に注意する. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#14.

刺激性下剤-センノシド 大腸粘膜の筋層間神経叢を刺激し,腸管収縮を誘導する. 強力な排便作用を持つが,ガイドライン上推奨度は高くない. 長期間の内服で耐性を生じることがあり,他剤が効果がない場合の頓用,または短期間投与が推奨されている. 大腸粘膜を黒色に変化させる,大腸メラノーシスの原因となる. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#15.

刺激性下剤-ピコスルファート 大腸内の腸内細菌由来の酵素に加水分解されできた 活性体が,腸管蠕動を惹起し,排便を促す. 大腸内視鏡検査の前処置としても使用される. 腸管蠕動運動の亢進により腸管内圧の上昇を来たし, 虚血性大腸炎を生じる可能性がある. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#16.

分泌型下剤-アミティーザ 小腸のクロライドイオンチャンネルに作用し,腸管内の水分 分泌を増加させ,便を柔軟にして自然な排便を促す. 悪心,嘔吐の副作用が多い(特に女性に多い). 高齢の難治性の便秘患者には推奨されるが,妊婦には禁忌. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#17.

分泌型下剤-リンゼス 腸粘膜のグアニル酸シクラーゼに作用し,サイクリックGMPを増加させ,腸管内への水分分泌を増大させる. 腹痛が強い慢性便秘症患者や便秘型の過敏性腸症候群に推奨される. 副作用として下痢の頻度が高く,減量または少量より開始. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#18.

浸透圧性下剤-ラクツロース 生理的な消化を受けず,浸透圧性負荷となり水分を腸管内 に保持する. 甘味で乳幼児にも忍容性が高い. 肝性脳症に代表される高アンモニア血症で使用される. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#19.

浸透圧性下剤-モビコール 多量の水分を含有可能な増粘性に優れたハイドロゲルを 形成し,便の滑りの良さを改善させる. 2歳以上の小児に使用することができる. ジュースやスープで溶解することができる. 他の薬剤で改善が乏しい難治例に適している. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#20.

胆汁酸トランスポーター阻害薬-グーフィス 終末回腸の胆汁酸トランスポーターを阻害し,大腸への胆汁酸の流入量を増加させる.水分分泌増加作用と蠕動運動促進 作用を持つ. 効果発現が非常に早い. 内服当初は腹痛の訴えがある(1-2週間で減少する). 良好な効果を得るためには食前内服が望ましい. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#21.

漢方薬 ①大黄(主成分はセンノシド)を含むもの 大黄甘草湯 長期使用の際には低K血症に注意する. 麻子仁丸 コロコロとした固い便を柔らかくする効果がある. ②大黄を含まないもの 大建中湯 腸管ガスが多く,腹部膨満を訴える場合に効果がある. イレウス再燃予防に用いることもある. ガイドラインでランダム比較試験が行われているのはこの3剤であるが, 他にも防風通聖散,桂枝加芍薬湯,大柴胡湯などが記載されている. 参考文献 慢性便秘症診療ガイドライン 2017

#22.

便秘治療のまとめ ①問診を行う  ・ブリストル便性状スケールなどで評価する. ・症候性便秘,薬剤性便秘の有無を確認する. ・可能であればCTや大腸内視鏡検査を行う(狭窄性の便秘の除外). ②食事/生活指導を行う ③薬物治療を開始する 酸化マグネシウムが第一選択薬 刺激性下剤は頓用/短期間使用 浣腸/坐薬を頓用使用とし,漢方薬を併用. アミティーザ,リンゼス,モビコール,グーフィス,ラクツロースへの変更あるいは併用を検討する.

便秘治療の重要なポイントとまとめ

#23.

Take Home Message 便秘は放置すると心血管イベントのリスクとなり, 生命予後を低下させる. まず大腸癌などの狭窄性便秘を除外しよう! ブリストル便性状スケールで客観的に評価しよう!

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