#4.
ついに自宅療養困難となり、救急搬送されてきた。
医師(あなた) 「徐々に癌が進行してきており、残された時間は日単位だと思います。
延命処置をしても本人が苦しむだけなので、穏やかに看取ってもいいでしょうか?」
患者 「…(既に会話は不可能)」
家族A 「急にそんなこと言われても…。私たちだけでは決められない…。」
家族B 「延命処置をしないで良いなんて言うと、見捨てたみたいな気持ちになります。」
家族全員 「そうだわ。出来ることは全部やってあげて下さい!」
医師・看護師 「うーん、それでいいのかなぁ…」
… どうすればよかったんでしょう?? 70歳代男性 2年間肺癌と闘病して緊急入院
#5.
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは? 今後の治療や療養について、患者さん、ご家族、医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセスのこと。
厚生労働省による愛称は「人生会議」と呼ばれている。
医学的な最善が、患者さんにとっての最善とは限らない。
患者さんが大切にしている人生観や価値観を、今後の
医療やケアの具体的な決定に反映させることを目指す。
#6.
話し合いから生まれる備え(Advance directive:AD,事前指示) 対話のプロセスを通じて、以下のことを共有し、備えます。
医療以外の価値観:趣味、仕事、家族、大切にしたい生活の質など、その人が「その人らしく」あるために重要な要素。
内容的指示:どんな治療を受けたいか、あるいは受けたくないか。心肺蘇生(DNAR)の意向や、希望する療養場所など。
代理意思決定者の選定
#7.
ACP(話し合いのプロセス) 誤解:書類(産物) 本質:対話(プロセス) AD
(事前指示) DNAR これらは話し合いの
産物に過ぎません 決定した「内容」ではなく、もしもに備えて話し合いを進める「過程」そのものがACPです。 LW
(リビング・
ウィル) ACPは書類作成の「点」ではなく、対話の「線」である
#8.
患者自身への効用 遺族への効用 代理決定者への効用 患者と家族の満足度が 患者の自己コントロール感 代理決定者と医師の が高まる 向上し、遺族の不安や コミュニケーションが より意向が尊重されたケア 抑うつが減少る が実践される 死亡場所が希望に沿いやす くなる(病院死の減少) 改善する なぜ、忙しい業務の合間を縫って対話が必要なのか?
#9.
早すぎてもダメ 遅すぎてもダメ 「生命の危機に直面した時」は 「健康な時」は意向が曖昧で 患者との話し合いが十分出来ない。 変わりやすく、不確実な判断 次ページ: 救急や死の前日などに短時間(平均 になりがち。1-2年経つと違う この「最適な窓」を 選択をすることも。 1分という調査も)で行われる。 どう見極めるか? スイートスポット タイミングには「早すぎ」と「遅すぎ」の罠がある
#10.
他覚的評価(SPICT 指標) 直感的評価(Surprise Question) PS が低い、または低下しつつある(PS3以上目安) 「この患者さんが、 過去6か月間に2回以上の予定外入院があった 1年後に亡くなられたら 過去3-6ヶ月間に顕著な体重減少(5-10%)がある 驚きます?」 疾患別の臨床指標(がんの抗がん剤治療不可、 心不全 NYHAIII/IV など) 直感で”No”(驚かない)と感じたら、 対話を始めるサイン。 これらを満たす場合、積極的な治療 だけでなく並行して ACP の導入を検討。 介入のサインを見逃さないための「2つのアンテナ」
#11.
介入タイミング② がん(Cancer) 「診断時·再発・進行時」 介入タイミング① 「今回は乗り越えられましたが…」 臓器不全(Organ Failure) と急性期を脱したタイミング。 心身の機能 (High to Low) 心身のフレイル(Frailty) 時間の経過(To Death) 介入タイミング③
「年月を経て、ちょっとずつ
お身体が衰えてこられて、
今後のことを考えると…」
と日常の延長線上で。
疾患の軌跡から見る、対話のベストタイミング
#12.
患者さんから「病状が悪化した時のことが心配なんです…」と言われた時 推奨される対応(実践話法) 避けるべき対応 「悪化した時のことが心配なのですね? どうして急に心配になったのですか?」 「まだ大丈夫、時期が来たら 相談しましょう」 「病状が長い間安定してくれていたらいいの ですが、お元気を維持できている今だからこそ 備えとして相談しておきましょう」 (対話の扉を閉ざしてしまう) Hope for the best, but prepare for the worst. (最善を願い、最悪に備える) 心理的ハードルを下げる「マジックワード」
#13.
代理意思決定者をうかがう 命に対する考え方を探索する 「すべての患者さん・ご家族に一度は 命に関わる治療の決断には2つの考えがあります。 いくら辛くても生きていることに価値を見出すか、 お尋ねするようにしているのですが、あなたに トラブル・急変など命に関わる事態が または、 起こったとき、あなたの意思をもっとも 特定の状況(会話ができない等)になったら 生きている価値がないと感じるか。 尊重して物事を判断できる方は誰ですか?」 ◯◯さんはどちらのお考えですか? Tips Point:
・「もし◯◯さんだったら…」と考えてくれる人を 探す(必ずしも家族・親族とは限らない)。 ・話を「一般化」して恐怖感を和らげる。 価値観と代理意思決定者を引き出す「魔法の質問」
#14.
Step 4:活用·更新 Step3:共有 Step2:記録 Step1:聴取 (Utilize) (Share) (Listen) (Record) カンファレンスでは最新版 記録は電子カルテ内の 電子カルテ内の専用 価値や事前指示(AD)を を参照。意向の变化があれ 対話から引き出す。 「ACP テンプレート」に 「ACP フォルダ」に保存 集約され、付箋をつけて ば、過去のテンプレートを 遅滞なく記載する。 流用し「常に最新版」に
更新。 多職種で共有。 一人の記憶に留めず、カルテの所定位置に残すことで、 夜間救急や急変時でもチ一ム全員が患者の意思を尊重できます。 「聴取」をチームの財産にする当院のルール「残す」
#15.
患者の選好 医学的適応 • 診断と予後 ・患者の判断能力 ・生活で大切に ・医療に対する見解 しているもの ・目標の確認 治療等がアウトカム(転帰)に与える効果 事前の意思表示 ・理解と納得 治療等が与える有害性 代行判断者 周囲の状況 ・心理状態
・さまざまなレベルと側面での痛み
・安楽
・幸福
・自己価値感 ・家族や利害関係者 ・施設の資源者 ・守秘義務 ・診療チームの状況 ・法律、宗教 ・施設の資源方針 「患者にとっての最善」が分からなくなった時、この4つの要素から 情報を整理し、多職種で討議するための羅針盤として使います。 ・人生観 ・経済的問題 ・医学的無益性 迷ったときの思考ツール「Jonsenの4分割法」
#16.
主治医と家族で慎重に討議しても、倫理的 葛藤が打開できない場合は多職種で考えましょう こんな時は一人で抱え込まず相談を: 1.患者本人に意思決定能力があるが、その選択に 対して医療者側に強い倫理的葛藤がある場合。 2.心身の状態等により、治療・ケア内容の決定 そのものが極めて困難な場合。 3.医療者間、あるいは家族等の間で意見が対立し、 まとまらない場合。 4.身寄りがなく、家族等が誰か分からない・全く 連絡が取れない場合。 迷うことは恥ではありません。 「複数の専門家による話し合いの場」を積極的に活用しましょう。 セーフティネットを「頼る」:臨床倫理カンファレンス
#17.
「ACP は、死の準備ではありません。 最期までその人らしく 『生きる』ための道標を、 共に見つけるプロセスです 2.残す(Record) 3.頼る(Share) 1. 聴く(Listen) チームの財産としてテンプレ タイミングを見逃さず、 迷ったらJonsenの4分割法で 価値観を引き出す。 整理し、倫理チームに相談する。 ートとフォルダに記録する。 「こんなはずじゃなかった」を無くすために。
ACP という「対話の武器」をぜひ活かしてください。 最後に:対話は、患者への 「最高の処方箋」である
#18.
参考文献 厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(平成30年3月改訂)
厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編
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Sudore RL, et al. Redefining the "planning" in advance care planning: preparing for decision-making in the face of serious illness. Ann Intern Med. 2010
Morrison RS, et al. Advance directives and outcomes of surrogate decision making before death. J Am Geriatr Soc. 2005
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Lunney JR, et al. Profiles of older Medicare decedents. J Am Geriatr Soc. 2002
Heyland DK, et al. Failure to engage hospitalized elderly patients and their families in advance care planning. JAMA Intern Med. 2013
Degenholtz HB, et al. Ann Intern Med.