#4.
乳癌治療には、手術療法、放射線療法、薬物療法がある。
手術療法と放射線は局所療法、薬物療法は全身療法と分類される。
薬物療法にはホルモン療法、化学療法(抗がん剤治療)、分子標的薬療法、免疫療法がある。 乳癌治療の種類 集学的治療 ホルモン療法 免疫療法 分子標的療法 全身療法 手術療法 放射線療法 局所療法 化学療法
=抗がん剤治療 薬物療法
#5.
全身に乳癌細胞が
広がる 潜んでいる乳癌は
見えない 切除不能進行乳癌 切除不能進行乳癌がなぜ治らないか? 全身療法 局所療法 部分的:見えている病変のみ
強力:根絶可 全身:見えていない病変も対象
弱力:根絶不可 見えていない癌細胞も
含めすべてを根絶させることは
できない
#6.
患者さんが希望する生活をできるだけ維持すること。 切除不能進行乳癌の治療目標 時間的な側面 質的な側面 乳癌診療ガイドライン 2022年版、金原出版、日本乳癌学会編 治療の主体は全身薬物療法
(緩和的薬物療法)
#7.
乳癌薬物療法の種類 トラスツズマブ(抗HER2療法)
ラパチニブ(抗HER2療法)
ベバシズマブ
ペルツズマブ(抗HER2療法)
エベロリムス
パルボシクリブ
オラパリブ
アベマシクリブ
アテゾリズマブ*
ペムブロリズマブ*
タラゾパリブ
パクリタキセル
ドセタキセル
Nab パクリタキセル
エピルビシン
ドキソルビシン
シクロホスファミド
フルオロウラシル
カペシタビン
S-1
エリブリン
ビノレルビン
ゲムシタビン
アナストロゾール
レトロゾール
エキセメスタン
フルベストラント
タモキシフェン
トレミフェン
LHRHアゴニスト
ホルモン療法薬 化学療法薬 分子標的治療薬
(*免疫療法薬) 各薬剤の特徴を把握する。
作用機序(対象)、
有効性、副作用 など トラスツズマブ エムタンシン
トラスツズマブ デルクステカン
サシツズ マブゴビテカン
ダトポタマブ デルクステカン
抗体薬物複合体
#8.
サブタイプに基づく切除不能進行乳癌治療 ★ 生殖細胞系列BRCA1/2変異を有する場合:オラパリブ(分子標的療法)
#9.
切除不能進行乳癌における意思決定プロセス:Shared Decision Making (SDM) JAMA 2014 Oct 1;312(13):1295-6. EBM 臨床試験などのデータ
有効性(効き目)
安全性(副作用) 患者さんを中心とした
コミュニケーション 個々の患者さんの希望
何を大切にするか?
何を避けたいか? 意思決定プロセスの
共有 患者さんの思いや医療者の迷い
すべての過程を共有 個々の
患者さん・家族に最適な治療
#10.
副作用=質的側面に影響
副作用の注目すべきポイントが、患者と医療者で異なる 緩和的薬物療法の落とし穴 重要なイベントに参加できるか?
大切な目標を持ち続けられるか? 毎日の生活を送る上での治療の影響 The Oncologist 2019;24:1313–1321 患者さんの
価値観や生活状況などを踏まえて
治療を選択すべき。
#11.
最新の話題 抗体薬物複合体
~分子標的薬と化学療法のいいとこどり~
#12.
Cancers 2021, 13, 2898.https://doi.org/10.3390/cancers13122898 トラスツズマブ
(抗体薬) デルクステカン
(化学療法薬) 抗体薬物複合体とは?
~トラスツズマブ デルクステカンを例に~ 分子標的薬に化学療法薬(抗がん剤)を付け足した。
トラスツズマブの標的である
HER2に出ている癌にのみくっつく 副作用で普通には使えないほどの
とても強力な化学療法薬(抗がん剤) 抗体薬物複合体の特長
「ターゲットが出ている細胞 だけ に化学療法(抗がん剤)が作用すること」
(トラスツズマブ デルクステカンの場合:HER2発現乳癌細胞だけにデルクステカンが作用する)
#13.
◎がん細胞に選択的に届く
正常細胞の障害が減る
→ MTD(最大耐用量)が上がる
→ 投与量を増やせる
がん細胞内の薬剤濃度が高まる
→ MED(最小有効用量)が下がる
→ 同じ投与量でも効果が高まる T. Nakada, et al. Chem. Pharm. Bull. 2019 ターゲットだけに化学療法(抗がん剤)が届くメリット 相乗効果
#14.
Pharmacol Ther. 2022 January ; 229: 107917. トラスツズマブデルクステカンの作用イメージ トラスツズマブ(抗体)が
HER2蛋白に結合する。 薬剤全体が
とりこまれ分解される。 抗体から遊離した
デルクステカン(化学療法)が
細胞障害性作用を発揮する。 デルクステカン(化学療法)が
細胞外に放出され
周囲の癌細胞に取り込まれる。 細胞死の
誘導
#15.
トラスツズマブデルクステカンの対象 HER2過剰発現=HER2陽性 HER2過剰発現ではないが少しは発現
=「HER2低発現」 HER2がわずかだがある
=「HER2超低発現」 あらたな
カテゴリーの確立 トラスツズマブ
デルクステカン
の対象
#16.
切除不能進行乳癌薬物療法における抗体薬物複合体の広がり 2013 T-DM1(カドサイラ)
HER2陽性 2020 T-DXd
(エンハーツ)
HER2陽性 2023 T-DXd
(エンハーツ)
HER2低発現 2024 2025 T-DXd
(エンハーツ)
HR陽性HER2超低発現 Dato-DXd
(ダトロウェイ)
HR陽性HER2陰性 SG
(トロデルビ)
HR陰性HER2陰性 2026 SG*
(トロデルビ)
HR陽性HER2陰性 Dato-DXd*
(ダトロウェイ)
HR陰性HER2陰性 T-DM1:トラスツズマブエムタンシン、T-DXd:トラスツズマブデルクステカン、SG:サシツズマブゴビテカン、Dato-DXd:ダトポタマブデルクステカン
*承認の可能性 *承認の可能性
#17.
切除不能進行乳癌で使用可能な4種類の抗体薬物複合体
#18.
切除不能進行乳癌の代表的な治療戦略 HR陽性HER2陰性 ホルモン療法±分子標的薬 ホルモン療法
±分子標的薬 T-DXd
(HER2低発現/超低発現) 従来の抗がん剤
(HER2 null*) Dato-DXd SG 従来の抗がん剤 Dato-DXd SG 従来の
抗がん剤 HR陰性HER2陰性 抗がん剤 or SG+ICI
(PD-L1陽性) T-DXd
(HER2低発現) SG 従来の抗がん剤 SG T-DXd
(HER2低発現) 従来の
抗がん剤 *HER2 null :HER2発現が超低発現未満 T-DM1:トラスツズマブエムタンシン、T-DXd:トラスツズマブデルクステカン、SG:サシツズマブゴビテカン、Dato-DXd:ダトポタマブデルクステカン ICI:免疫チェックポイント阻害薬、PER:ペルツズマブ HER2陽性 T-DXd+PER SG
(PD-L1陰性) Dato-DXd
(PD-L1陰性) T-DM1 従来の抗がん剤
+抗HER2療法 従来の抗がん剤
+抗HER2療法 従来の抗がん剤
+抗HER2療法 抗体薬物複合体が
中心的役割
(従来の抗がん剤からの転換)
#19.
目標: 患者さんが希望する生活をできるだけ維持すること →時間的側面と質的側面
治療法: 全身治療である薬物療法が主体 →特徴的な多くの薬剤への理解
実践: 「HRとHER2に基づく4つの分類」+「Shared Decision Making」 →患者さんと医療者の協働
展望: さまざまな抗体薬物複合体が開発
→あらたなカテゴリーの誕生/従来の抗がん剤への置き換え
切除不能進行乳癌診療のまとめ