テキスト全文
血液ガス分析の基礎と重要性
血液ガス分析の目的と目標
#4. 向井俊平 波多間浩輔 医師
(整形外科) 医師
(救急科) 楪雄太郎 医師
(総合診療科) 難波剛史 医師
(小児科・救急科)
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血液ガスでわかる病態と検査の比較
#7. 本日の目標 血液ガスについて
●とるべき場面がわかる
●何がわかるか列挙できる
●解釈ができる
●解釈を踏まえて介入できる
#8. 血液ガスでわかること ●重篤な病態を推察可能!
●2mLで2分でわかる!
●コストは1350円…
#9. 血液ガスと他の検査の比較 ●電解質、血糖、Hb
➡採血でわかる
●COHb、Lac、酸塩基平衡
➡血液ガスでしかわからない! SpO2で
代用可 EtCO2で
代用可
酸塩基平衡の理解とその要素
#11. 守破離で血液ガスをマスター 守:血液ガス解釈の型を学ぶ(型を徹底的に守る)
破:解釈をもとに各病態ごとに介入
離:型にとらわれず離れて自在となる
#13. 目標 酸塩基平衡とアニオンギャップを説明できる
血液ガス分析の型に沿って計算できる
血液ガス分析を解釈してみる。
#14. 酸塩基平衡 肺 腎臓 緩衝系 pH Ex)
リン酸
Hb
血漿タンパク pH 7.20(酸性) 7.60(塩基性) 7.35~7.45 アシデミア
● アルカレミア
●
#15. 酸塩基平衡の理解のコツ CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3ー 代謝性アシドーシス
代謝性アルカローシス
呼吸性アシドーシス
呼吸性アルカローシス 肺 腎臓 酸塩基平衡を崩す要素の出現
それに対して代償する流れをイメージ
酸塩基平衡を崩す要素と代償機構
#16. 酸塩基平衡を崩す要素 CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3ー 代謝性アシドーシス
代謝性アルカローシス 呼吸性アシドーシス
呼吸性アルカローシス CO2 ↑ CO2 ↓ H+↑ or HCO3ー↓ H+↓ or HCO3ー↑
#17. 肺と腎臓の役割 CO2 + H2O ⇄ H2CO3 ⇄ H+ + HCO3ー CO2排泄 H+排泄
HCO3ー産生 肺 腎臓 酸塩基平衡を崩す要素を、肺と腎臓で代償する。
#18. 代償機構(呼吸性アシドーシスの場合) CO2↑ + H2O → H2CO3 → H+ + HCO3ー CO2排泄 H+排泄↑
HCO3ー産生↑ 肺 腎臓 呼吸性要素による酸塩基平衡の崩れ→腎臓で代償(代謝性代償) ① ②
#19. pH 7.20(酸性) 7.60(塩基性) 7.35~7.45 アシデミア
● アルカレミア
● 酸塩基平衡が崩れると… 酸塩基平衡の崩れを認知して介入することが大切!
血液ガス計算のステップと解釈
#20. 呼吸性アルカローシス
呼吸性アシドーシス 代謝性アルカローシス
代謝性アシドーシス
AG開大性
AG非開大性 「力」がいくつあるか?を解き明かす作業 最大3つの要素が合併しうる 血液ガス計算編 5step
#21. Step1:“アシデミア” か “アルカレミア”
Step2:ベースは、“呼吸性” or “代謝性”
Step3:AG開大性代謝性アシドーシスはあるか
ある場合 → Step4 へ
ない場合 → Step5 へ
Step4:AG開大ありの場合、補正HCO3-で他の代謝性変化をチェック
Step5:現在の酸塩基平衡が代償範囲内にあるか
酸塩基平衡の組み合わせで,病態を想定する
計算編 解釈編 血液ガスStep解釈法
#22. pH 7.20(酸性) 7.60(塩基性) 7.35~7.45 アシデミア
● アルカレミア
● アシドーシス アルカローシス ①アシデミア or アルカレミア
#24. ②ベースは、“代謝性” or “呼吸性”
PaCO2 40 呼吸性アルカローシス 呼吸性アシドーシス HCO3- 24 代謝性アシドーシス 代謝性アルカローシス
アニオンギャップの理解と計算
#26. ③AG開大性代謝性アシドーシスがある?ない?
#27. アニオンギャップとは?
Na+ Cl- HCO3- 陽イオン 陰イオン 測定されない
陽イオン 測定されない
陰イオン 測定されない陰イオンと
測定されない陽イオンの差
#28. アニオンギャップとは?
Na+ Cl- UC UA HCO3- 陽イオン 陰イオン Anion Gap=UAーUC
#29. アニオンギャップとは?
Na+ Cl- UC UA HCO3- 陽イオン 陰イオン AG = Na – (Cl + HCO3-) ※低Alb血症状の場合
補正AG=AG+{2.5 × (4- Alb)} (補正)AG > 12
↓
AG開大性代謝性アシドーシスあり Anion Gap
AG開大性代謝性アシドーシスの鑑別
#31. アニオンギャップが重要な理由 代謝性アシドーシスの鑑別に利用できる
介入が必要なAG開大性代謝性アシドーシスを 見逃さない!
#32. AG開大性代謝性アシドーシスの鑑別 AG開大性代謝性アシドーシスの存在
=不揮発性酸の存在 介入が必要な病態が隠れている!
#33. アニオンギャップが重要な理由
Na+ Cl- UC HCO3- UA 陽イオン 陰イオン AG = Na – (Cl + HCO3-) ※低Alb血症状の場合
補正AG=AG+{2.5 × (4- Alb)} (補正)AG > 12
↓
AG開大性代謝性アシドーシスあり Anion Gap
#34. AG開大性代謝性アシドーシス
Na+ Cl- UC HCO3- 陽イオン 陰イオン UA Anion Gap
#35. AG非開大性代謝性アシドーシス
Na+ Cl- UC HCO3- UA 陽イオン 陰イオン Anion Gap
#36.
補正HCO3-=HCO3- + ⊿AG
(⊿AG = AG - 12)
補正HCO3- > 24 → 代謝性アルカローシスあり
補正HCO3- < 24 → AG非開大代謝性アシドーシスあり
④他の代謝性の要素はある?ない?
AG開大性代謝性アシドーシスがあれば
→他の代謝性の要素がないかチェック!
代謝性アシドーシスの予測と評価
#38. 補正HCO3-=HCO3- + ⊿AG Na+ Cl- UC HCO3- UA 陽イオン 陰イオン Anion Gap Na+ Cl- UC HCO3- 陽イオン 陰イオン UA Anion Gap ⊿AG
#39. 代謝性アルカローシスの混在 Na+ Cl- UC HCO3- UA 陽イオン 陰イオン Anion Gap Na+ Cl- UC HCO3- 陽イオン 陰イオン UA Anion Gap ⊿AG
#40. AG非開大性代謝性アシドーシスの混在 Na+ Cl- UC HCO3- UA 陽イオン 陰イオン Anion Gap Na+ Cl- UC HCO3- 陽イオン 陰イオン UA Anion Gap ⊿AG
#41. 代謝性アシドーシス
予測PaCO2=1.5×HCO3+8 or HCO3+15
代謝性アルカローシス
予測PaCO2=0.6×HCO3+26
呼吸性アシドーシス
急性経過→予測HCO3=0.1×PaCO2+20
慢性経過→予測HCO3=0.4×PaCO2+8
呼吸性アルカローシス
急性経過→予測HCO3=0.2×PaCO2+16
慢性経過→予測HCO3=0.5×PaCO2+4
実測値が予測よりひどい?
予測PaCO2より,実際のPaCO2が
5以上高い→呼吸性アシドーシスあり
5以上低い→呼吸性アルカローシスあり
予測HCO3-より,実際のHCO3-が
2以上高い→代謝性アルカローシスあり
2以上低い
→AG非開大代謝性アシドーシスあり ⑤代償性変化は、正常範囲内か?
#42. 予測PCO2 ー 実測PCO2 ± 5 予測HCO3- ー 実測HCO3 ± 2
呼吸性アシドーシスとその介入
#47. ①脳(中枢神経)が司令
②脊髄→末梢神経と司令が下る
③筋が収縮
④胸郭(筋骨格)に肺が被包→肺が陰圧に
⑤開通している気道を空気が通る
⑥肺(≒肺胞)が膨らみ,CO2を捨てる
⑦肺胞から毛細血管に,O2が取り込まれる 呼吸性アシドーシス 呼吸性アシドーシス
#48. 呼吸性アルカローシス = 分時換気量の増加
呼吸性アルカローシス+AG開大代謝性アシドーシス
→敗血症,サリチル酸中毒を鑑別に! 呼吸性アルカローシス
血液ガス分析の実践と介入のタイミング
#49. 詳しくはこちらのスライドで…!近日公開予定!
#51. 血液ガス分析に関連した意思決定は多い
え、この人にも
ガス要りますか? Aでとります?Vでとります? なにか薬投与
するんですか?
#53. 動脈血?静脈血?
●pH
Agas–0.03=Vgas
●HCO3-
Agas+1.03=Vgas
●pCO2
Vgas≤45mmHg→Agas≤50mmHg
(VはAより4くらい高い)
●Lac
Vgasで基準範囲内→Agasも基準範囲内
Eur J Emerg Med 21:81-88, 2014
J Emerg Med 28:377-379, 2005 SpO2を測定できない場合 ⾼度のショック時は
動脈⾎で評価︕ pHとHCO3-は
数値の予測ができそう 換気障害の除外には
使える! ショックの除外には
使える!
#54. 頻度の高い介入は自分の型を身に着ける
上級医・専門医に 相談する前に介入 を!
高カリウム血症の対応と治療法
#55. CKD かかりつけ
気分不良 血液ガス取りますか? Aでとります?Vでとります?
#57. 高カリウム血症はエマージェンシー
突然心停止することも…
K>6・心電図変化があり➡治療開始 スライド画像)広島大学病院 演者作成
#58. 高K血症+心電図異常をみたらまず… ●グルコン酸カルシウム すぐに効果発現
➡1A(10ml) 3分以上かけてゆっくり
or1AをNS100mlに希釈 20-30分かけて
●膜電位の安定化(致死的不整脈予防)
・効果なければ5分おき 2-3回繰り返し可
※体外へのK除去効果なし
※テント状T波単独は重篤な不整脈と関連なし
Gupta AA, et al. Am J Emerg Med. 2022;52
Lemoine L, et al. J Emerg Med. 2021;60(5)
#59. グルコン酸Ca投与!次の一手は… ①体外にKを排泄できるか
②細胞外➡内へのカリウムシフト
③効果発現のタイミング
④効果持続時間 に注目 引用)循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン ダイジェスト版
#60. ①体外にKを排泄できるか
②細胞外➡内へのカリウムシフト
③効果発現のタイミング
④効果持続時間 に注目 引用)循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン ダイジェスト版 グルコン酸Ca投与!次の一手は…
低血糖時の対応と血液ガスの重要性
#61. GI療法の塩コショウ 50%Glu40mL+速効型インスリン8U
※2.5g:1U➡最大75%で低血糖!
Up To Date® Treatment and prevention of hyperkalemia in adults
#62. ●GI療法による低血糖リスク
・腎不全・DM既往なし・体重<60kg・女性
Moussavi K, et al. J Emerg Med. 2019 Jul;57(1):36-42.
●インスリン投与量とカリウム低下作用
大きな相関なし
Gupta AA, et al. Am J Emerg Med. 2022;52
●50%Glu40ml+即効型インスリン4U
くらいが安全!(5g:1U)
私見 GI療法の塩コショウ
#63. 1型DM で入院中
発汗・傾眠 血液ガス取りますか? Aでとります?Vでとります?
#65. 低血糖時の対応 ●意識障害あり…
➡50%ブドウ糖液 40mlを静注
救急隊の血糖測定:DMの既往+JCS2桁以上
●意識障害なし…すぐに経口!
➡ブドウ糖末10g投与
参考)内科レジデントの鉄則 第3版
#66. 栄養失調・アルコール中毒・妊婦 etc… ビタミン欠乏
リスク高
➡ ビタミンB1投与
#67. 30代女性
心窩部不快感・下痢 心電図でST変化が
ありそうです 血液ガス取りますか? Aでとります?Vでとります?
血液ガスの解釈と臨床での意思決定
#69. 血液ガスでしか診断できない
CO中毒 高濃度酸素投与
SpO2に関係なく!
#71. 血液ガスを読むスピードはどれくらい?
結局は型通りに読んでいる
繰り返す中で洗練され、スピードがあがっていく
#72. 血液ガスでトリアージ…?
来院後5-10分で結果がわかる
多数患者対応中のトリアージに!
#73. 代償の式って覚えないとダメ?
予測PaCO2=1.5×[HCO3-]+ 8±2 極論この式だけでも!
呼吸性アシドーシスを
代償できてない
⇨⼈⼯呼吸を考慮︕
#74. Take home message ◎血液ガスにおける意思決定
・血液ガスをとるとき➡重症の可能性があるとき
・AかVか➡SpO2を測定できない / ⾼度のショック
◎5stepの基本の方を徹底的に身に着ける
◎解釈を踏まえて専門医に相談する前に介入を!
・高K血症➡グルコン酸Ca 2A
50%Glu40ml+即効型インスリン4U
・低血糖➡50%Glu40ml±ビタミンB1補正
・CO中毒➡高濃度酸素投与(酸素10L投与)
今後の勉強会とセミナー情報
#76. 次回予告 2023年5月!
詳細はLINEオープンチャットで!
#77. 臨床で役立つスキルが学べる勉強会! ⽉に1回程度開催中︕全医療従事者対象!
LINEオープンチャットでセミナー情報共有中!ぜひ登録を︕